記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

北穂チャレンジ feat Mr.K

毎年恒例となったK大先生との山登り。

千丈、槍、鹿島槍と続いて、Kさん未踏の穂高へ。

自分も奥穂、前穂、西穂へは登ぼったことがあったが、

1峰だけ残っていた北穂にようやく上り詰めることができました。

登頂の日はどんよりと曇りがちでしたが、

登頂前後だけは、すっきりと眺望がクリアとなり、

北アルプスの名だたる名峰がずらりと顔を見せ、

直下には荒々しい大キレットがむき出し。

さすが標高3106mの絶景です。

下山日はこってりと雨に降られ、心身ともに疲弊しましたが、

難易度高めのコースと、体力勝負の長丁場と、

存分に出し切ることができた充実の山行でした。

Kさんも、南陵テラスまでには満身創痍の状態でしたが、

どうにか登頂でき、満足されて何より。

詳細はまたおいおいとして、概要だけ。

 

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例によって、事前の天気予報は二転三転し、

1日目横尾泊はイキとして、

状況次第では険しい穂高はあきらめて

涸沢or蝶ヶ岳のBプランも想定しつつ、とりあえず山入り。

前日まではかなり激しい大雨が続いていたようだが、

拍子抜けするほどの快晴!

意気揚々と横尾まで。

 

2日目はうっすらどんよりだが、

雨は降らず、むしろ暑い日差しに焼け出されることのない

登りやすいコンディション。

さくっと涸沢までたどり着き、息を整えたら、

目の前に屏風のように立ちはだかる岩の殿堂に取り付き。

 

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スタート直後から厳しい急登を上り詰め、

ゴローゴローと大岩がひしめく沢をクリアすると、

その先、本コースの核心部である南陵への取りつきである

鎖&梯子場が登場。

左手がスパッと切れ落ちた急斜面の一枚岩を、

鎖と、岩のクラックと、岩肌に切ってあるステップを

フルで駆使してよじ登り、

その先さらに30段ほどの直登の梯子を慎重に上りきる。

なかなかどうして緊張の連続です。

 

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南陵へ上がると、一気に眺望がパワーアップ。

涸沢カールを全体に見渡すことができるようになり、

その上部にはまさに岩の殿堂の称号にふさわしい、

荒々しい山容。

ゴジラの背のようなギザギザのテッペンに前穂、

そこから険しい吊尾根が続き、穂高の最高峰である奥穂。

その奥手には、選ばれしものだけがたどり着けるジャンダルムで、

手前下に目をやれば、驚く場所に立つ穂高岳山荘の赤い屋根。

そこから涸沢岳からこちら側に

見るからに危険な香りを漂わせる稜線が連なり、

目的地の北穂がまだまだ遥か上部。

目のくらむような岩の山塊から転じて、東を見れば、

見事な常念岳三角錐からたおやかな蝶ヶ岳

さらに八ヶ岳から南アルプスまで!!

 

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南陵に取り付いてからも、険しいジグザグが続き、

一か所、右手がスパッと切れ落ちた断崖をトラバースする鎖場。

さらにタテの鎖場をこなせば、テン場に到着。

ここまででかなりの疲労蓄積で足取りの重いKさんを置いて、

自分は分岐まで先行し、Kさん到着までの間に、

北穂南峰で小休止。

分岐で再びKさんをアテンドし、

北穂沢源頭(松涛のコル)を慎重に抜けて、ようやく、

標高3106m(日本第9位)の北穂高岳に登頂しました。

上部は黒い雲が覆っていて、

下界も薄く白雲が張っていましたが

主だった山々は奇跡的に見事に姿を見せてくれて、

ここまでの激闘がいっぺんに報われました。

 

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この日は頂上の直下にある北穂高小屋で宿泊。

こんな断崖絶壁の岩のわずかのスペースに、

まさかこんな立派な山小屋が!人間ってすごいです。

そして到着してたちまち生ビールで乾杯!!

こんな標高3000m越えで生ビールが飲めることも、

名物のしょうが焼き定食をいただけるのも、

ひとえの小屋の方々のおかげ様です。

ありがたや、ありがたや!!

 

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翌日は事前予報が大きく逆転し、雨風の強い天候。

時間が経過するごとに悪化するのは間違いないので、

早立ちをして、ガスガスの世界の中を下山します。

朝露で滑りやすい岩に序盤から苦戦。

時折、あらゆる方角からの突風に思わず煽られたり、

カレカレの浮石に肝を冷やしたり。

そして険しいコースは上りよりも

むしろ下りの方が危険度が増し、

慎重に時間をかけながら進みます。

 

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そしていよいよ核心部の下り。

登り以上に手足の置き場がシビアで、

慎重に丁寧に時間をかけて下ります。

一枚岩の鎖場のところで、

途中なかなか足の置き場が見当たらず悪戦苦闘しましたが、

どうにか2人とも無事に下り切りました。

 

かなりの緊張を強いられて疲労困憊となったため、

核心部を下りて、少しだけ進んだところで一息入れ、

残りの岩場への下りへ態勢を整えている矢先、

核心部の上の方から「ラクラク!」の叫び声。

核心部の上部はガスガスではっきりとこちらから様子が見えないが、

焦りと重大さが伝わるその声に、とっさに身構えていると、

鎖場の上の白いモヤの中から、

突如、電子レンジ大の岩が音もなく姿を現し、

鎖場をかすめるようにして、左の崖へと降っていく。

そうして一度、ボコッと不気味な鈍い音がして、

岩が砕けて、さらに下へと落ちていき、

ブッシュでようやく止まったようでした。

その様を目の前で目撃して、

Kさんと2人、サーっと血の気が引いていきました。

万一を考えて、比較的安全な位置取りで休憩場所を定め、

休憩している間も常に上部を警戒していたし、

ラク!」という合図があったがために、

身構えることができたのでよかったが、

もしちょっとのタイミングがずれて、

まさに鎖場で格闘中だったりとかしたら、成すすべなく、

ヘルメットは装着しているとはいっても、

あの規模の岩がヒットすれば無傷では済まないどころか、

辺りどころが悪ければ即死するほどの落石でした。

原因は、「ラク!」と叫んだ若者2人組が、

梯子を下りた地点、その先続く鎖場へのわずかの踊り場で

×マークがされている方へ足を踏み入れたために、

そこにあった浮石を落としたようで、

後で追いつかれたときに平謝りされました。

幸いにして怪我人もおらず、

岩も結果的にはルートから逸れて落下したので

事なきを得てよかったですが、

やはりそれなりに踏み固められたルートを少しでも逸れると

イレギュラーを引き起こしかねないというのは、

全登山者が最悪のケースを想定しつつ行動する上で、

肝に銘じておかなければならない事です。

結果的に彼らが落石を起こしましたが、

このルートは確かに浮石が多数あり、

決して良好ともいえないコンディションで、

いつ誰が落石を引き起こしてもおかしくない状況だったし、

人為的でなく自然発生的に落石も発生しているから、

常に注意や備えが必要です。

まさに明日は我が身。

それにしてもこれほどまでに本格的な落石を

眼前で目撃するのは初めてだったから、

本当に衝撃的で怖かった…

 

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核心部より下は、相変わらず難儀な急登ではありながらも、

難所や危険個所はないので、辛抱強く降りる。

安全圏である涸沢に下りた時には、

本当に心底ほっとしました。

が、ここからいよいよ天気が悪化しはじめ、

冷たい風が強く吹き体温を奪い、雨が降ってきました。

本谷橋までは降ったりやんだりの小康状態で、

騙し騙し来れましたが、その先からいよいよ本降りに。

横尾からはしとしとと降り続く雨と、ぬかるむ道に疲弊。

ただ黙々と上高地までの道を歩き、

どうにかこうにか上高地へと戻ってきました。

 

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全身びっちょりと濡れに濡れて、満身創痍でしたが、

最後はひらゆの森でゆっくりと温泉に浸かり完全復活!!

長い長いアプローチに、険しい岩場の難所、

体力を削る大雨に背筋も凍るハプニングなど、

山の厳しさをしっかりと味わうことにはなりましたが、

やはりあの頂からでしか見ることのできない景色を

この目で見ることができて本当によかった。

 詳細はまた後日きっと…

 

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<1日目:山行2時間10分>
07:00大阪発⇒13:00あかんだな駐車場13:20⇒14:00上高地BT

14:05上高地BT⇒14:10河童橋14:12⇒14:47明神館14:50⇒

15:30徳澤園15:35⇒16:15横尾 (横尾山荘)泊

 

<2日目:山行7時間15分>
06:15横尾 (横尾山荘)⇒07:05本谷橋07:10⇒

07:50Sガレ⇒08:50涸沢ヒュッテ09:25⇒

09:32北穂高登山口⇒10:35岩沢の下部⇒11:00鎖&梯子場11:18⇒

12:40北穂高岳・天場⇒12:50分岐⇒13:00北穂高南峰13:05⇒

13:20北穂高岳13:28⇒13:30北穂高小屋泊

 

<3日目:山行8時間50分>
05:50北穂高小屋⇒06:50鎖&梯子場07:10⇒08:20涸沢ヒュッテ08:50⇒

09:33Sガレ10:10⇒本谷橋10:18⇒11:30横尾 (横尾山荘)12:00⇒

13:00徳澤園⇒13:40明神館⇒14:30河童橋⇒14:40上高地バスターミナル

15:00上高地BT⇒15:30あかんだな駐車場15:40⇒

15:50ひらゆの森16:30⇒21:30大阪着