記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『君の名は』聖地巡礼

笠ヶ岳を後にし、10:55の濃飛バス北アルプスを離脱。
本当はもっと山に留まりたかったのだけど、
今回はもう1つミッションがあり、次の仕事の素材集めとして
『君の名は』の聖地巡礼スポットである飛騨古川へ向かいます。
JR高山線は本数がきわめて少なく、高山BSでバスを乗り換えるのだが、
乗り換え時間が5分しかなく、それを逃すと1時間待たされるので忙しい。
大きなトランクを持ち込んだお客でバスは満載で、
下車に手間取っているうちに、
古川行きのバスが行ってしまう危険性が大いにあったので
機転を利かせて1つ前の国分寺でバスを降りてダッシュし、
どうにか接続に間に合いました。


神岡行きのバスに揺られること40分で飛騨古川駅に到着。
時刻は14:20。
まずは帰りの電車の手配をしておかないと、
特急ひだはめちゃ混み必至。
ということでみどりの窓口へ。
すると、東海道本線木曽川駅付近で事故があり、
そのせいでダイアが乱れていて、
特急ひだは、名古屋まではいかず岐阜止まりか、
車両によって大阪行きしかないとのこと。
とりあえず岐阜まで出れば、名鉄もあるし、どうにかなる。
特急自体が運行するというのを確認して15:35の特急の指定を取る。


↓飛騨古川駅


わずか1時間しか滞在できないので
『君の名は』の聖地巡礼スポットを一斉取材を早速スタート。
まずは駅前にスポットが集中しているので、そこをささっと。
まずは駅構内にある「ひだくろ」の顔出し看板。
劇中では、看板ではなく着ぐるみでしたが、
主人公たちがはしゃいでいるシーンがありました。


↓飛騨古川駅構内 ひだくろの看板


続いて、主人公がヒロインの住む糸守町について
情報収集していた駅前。
そこにタクシーが出てくるのですが、
ちょうど実在する「宮川タクシー」が停まっていました。


↓飛騨古川駅前 宮川タクシー


そして、この聖地巡礼の最も象徴的なスポットとして
各メディアでも取り上げられている、飛騨古川駅の陸橋からの眺め。
ここはファンの人の人だかりがすごく、
同じショットを撮れるのが1つの窓しかないので、
非常に混雑しています。
ちなみに、これは駅構内の陸橋ではなく、
駅を出たところにある自由通路からの眺めでした。
劇中ではちょうど電車が停車していましたが、
そのタイミングを待っていると時間が惜しいので待ちませんでしたが、
街の方が到着時刻の案内を張り出していたり、
地元では比較的このブームを好意的に受け取っているようです。


↓飛騨古川の陸橋


↓陸橋は大賑わい


↓こんな案内も


続いては、駅から少し歩いたところにある
飛騨市図書館へ。
ここは、糸守町について主人公たちが調べ物をするシーンで登場します。
本来であれば、公共施設内は撮影禁止のはずですが、
ブームへの理解があって、
受付で申し出たうえで、
通常の利用者に迷惑がかからないように十分配慮すれば撮影OK。
しかもじゃんじゃんSNS等で拡散を希望されていて、
非常に好意的です。
しかも『君の名は』コーナーまで設けられ、
全国各地からたくさんの人が訪れているのがよくわかります。


飛騨市図書館


↓ウェルカムモード


↓きれいな館内


↓特設コーナー


↓こちらも大賑わい


続いては、駅と反対側の山のふもとまでダッシュして、
気比若宮神社へ。
ここも主人公たちがヒントを探しているシーンで登場します。
幅広の石畳の階段と、中央の鉄柵が特徴的ですね。
ここにもたくさんのファンがいて、
写真をバシバシ撮っておりました。


↓気比若宮神社


駆け足でしたが古川駅周辺の巡礼スポットを無事撮り終えたので
お昼ご飯に蕎麦屋に入り、ささっと済ませたら、
もう電車の時間となりました。


飛騨牛冷やしそば


それにしても正直言ってこんなのどかで静かな山間の小さな町に、
全く不釣合いとしか言いようがない若い人たち
わらわらと街を歩いていて、ブームの大きさがよくわかります。
この聖地巡礼というのも、ある意味、
形を変えたポケモンGOみたいなものだなと感じます。
正直、自分はあんまし思い入れのある作品でもなくて
(娘と一緒に映画館に観に行ったという意味では思い入れはありますが)
実際、作品の出来も、別にOVAとかわらないようなものだと思うのですが。
嫌いでもないし、それなりにいい作品だと思いますが、
ついこの間地上波でやっていた、ルパンVS複製人間のように、
画は雑でも、奇想天外な物語やキャラクターの個性に
ぐいぐい引き込まれるような名作を見て育ってきた身としては、
ここまで本当に騒ぐものなのかなあという印象が強い。


しかしこれを巻き起こしている現象を考察することは面白いと感じます。
これはきっと、ゆとり世代特有の”ユルい連帯”が
生じさせている現代的な現象なのだと思います。
(ここでいう”ゆとり”とは、いわゆる10〜20代の若者のことではなく、
彼らをゆとりにさせ、彼らのゆとりを許してきた親の世代もまた
所詮ゆとりであるという意味で、
大人になりきれない大人のことを指しています)
つまり、常に誰かと繋がっていたい、世界と繋がっていたいという
一種強迫観念的な深層心理にせつかされながら、
かといってわずらわしいような深い関係性は拒絶する
引きこもり体質という、
二律背反的でわがまま勝手な状況を実現するために、
リアルではなく二次元的あるいは疑似世界の中に逃げ込み、
匿名性という心地よいベールに護られながら、
それを現実として生きていく”ゆとり”の人たちが、
自分たちの正当性を担保するために生み出す”ユルい連帯”。
それは、フェイスブックtwitter、LINEやインスタなど
次々形態を変えて登場するSNSの普及や、
猫も杓子ものポケモンGO
毎年次々と生み出されては消えてゆく一発屋芸人のギャグ、
毎年次々と生み出されては消えてゆく、新グルメやスイーツの数々、
メディアで垂れ流される下世話なネタに噛みついて一斉に制裁を加える現象、
ここ数年急増したニワカカープファンや、
ただどんちきコスプレをして騒ぐだけのハロウィンの盛り上がり、
あるいは選挙ごとに右へ左へと大きく揺り動かされるムーブメントetc、
すべて同じメカニズムで生じている現象なのだと思います。
自らが何かを創造して道筋をつけていくというのではなく、
余計な労力をかけず大きなムーブメントに心地よく乗っかって
世間との間合いを図ることが大事で、
その現象の一つとして現れたのが、
この『君の名は』ブームなのだと思いますね。
つまり、この作品の良し悪し云々ではなく、
話題になっているということ自体が重要であって、
その流れに乗っかることが、あるいは乗っかれている自分こそが大事、
ということなんでしょう。
この作り手はそのメカニズムや時代的な深層心理を
非常にうまく利用しているという点で
ビジネス的な観点から非常に優秀だと思います。
でもクリエイティブな観点から言えば、
それは結局没個性を助長するにすぎないし、
人を煽動できさえすれ、中身は何もない。
物事の本質を語ることなく、表層の流れにただ身を任せ、
一過性の面白さに満足して、
賞味期限が過ぎると使い捨てをしているうちに、
いつしか己を見失う。
日本は一億総モラトリアムな時代に
突入しているのではないだろうかと危惧してしまいます。


さて、予定通りの時刻となり、高山行きの各停で出発。
20分ほどで高山駅へたどり着くと、
改札前が異常な人だかりでかなりざわついている。
何事かと駅員に聞いてみると、
先ほど古川駅で聞いていた事故の影響が、
予想以上に深刻で、
本来自分が乗るはずだった
特急の車両が事故に遭っていたようで、
しかもその事故で車体が破損してしまったために、
高山まで来て折り返すことができなくなったので
最低でも2時間以上の遅れが発生するとのこと。
そのため1時間後の特急への振り替えのために
みな窓口へ並んでいるのですが、
1つしかないので、長蛇の列と化してしまっていました。


↓特急の運休で大混乱@@@


これでは1時間後の特急はもはや絶対に座れないし、
その次の特急はいつになるか目途さえついていないという状況で
帰れない可能性が非常に高くなってきました。
2時間以上待つならそれはそれで、
高山散策でもしてみようかとも思いましたが、
重い荷物をかかえているし、山行と突貫取材で疲れ切っているし、
歩き回れる体力がない。
何よりこういうトラブルの状況は早くに脱するに越したことはない。
何か策はないかと考えた結果、思い浮かんで、濃飛バスのターミナルへ。
すると、10分後に、特急岐阜行きのバスがあるではないか!
ただし予約制だったので、受付のお姉さんに聞いてみると、
あと3席まだ空いていますとのこと。
さっそく手配しようと思ったが、その前に、
手元にあるこの特急券を払い戻ししないといけない。
間に合うか!?
とりあえずお姉さんに1席仮押さえをしてもらって、
すぐさまJRの改札へ舞い戻る。
みどりの窓口では到底間に合わないので、
改札の駅員室に話をして即座に払い戻しをしてもらい、
取って返して、バスの窓口へ行って手配完了!
ふぃ〜、バタつくぜ。


↓高速バスに間一髪切り替え


こうして16:10発の岐阜行きの特急バスに無事乗り込みました。
この日は朝から、何本もきわどいバスの接続を繰り返して、
もうヘロヘロ@@@
太川さんと蛭子さんがいかに大変か、身に染みてよくわかりました。
2時間ほどバスに寄られて18時ごろに岐阜駅に到着。
するとまだ、ダイヤが乱れていました。
ここでようやく遅延の原因の詳しい情報が得られたのですが、
どうも事故が発生したのは朝の9時台のことだったらしく、
それが今この時間まで回復していないとは、国鉄さんしっかりしてよ!
岐阜駅から、10時台の表示の快速で大垣まで行き、
2分しかない乗り換えで鉄橋をダッシュして米原行に乗り換え。
米原駅までたどり着けばそこはもう西日本の管轄。
新快速で帰ることもできたのですが、
もう色々ありすぎて疲労困憊だったので、
ちょっと贅沢に新幹線こだまに乗り換えて帰阪しました。