記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

崖の上のポニョ

ちょうどコハの出産の前後で、観にいけなかった「崖の上のポニョ」。
DVDが発売されたので早速購入して奥さんと鑑賞。


絵のタッチとか色使いとか新鮮でとてもよかった。
特に、ポニョが嵐の海の中を疾走するシーンの海の描写には
ホントにドキドキ、ワクワクさせられた。


観ていると、ポニョはうちのコハにそっくりで、
宗介は甥っ子のヒカルに見えて、どうしてもオーバーラップさせて観てしまう。
この作品に親近感を覚えるのはそのせいもあるし、
やっぱりコハが生まれた時のことを思い出すというのもある。


ちょっとだけシビアな意見を言わせてもらうと、
物語に奥行きがないというか、背景に広がりを感じなかった。
昔の宮崎アニメであれば、スクリーンに描写されていない部分まで
イマジネーションが広がって、もっと広大な世界観が広がっていたと思う。
でもポニョでは、おそらく瀬戸内の港町をモチーフにした舞台の町を越えた
世界をほとんど感じることができなかった。
それは宮崎駿自身の隠し切れない老いと、想像力の衰えなのかもしれない。
でもそれは見方によっては決してネガティブなものではない。


少し前の作品(千と千尋ハウル)では、自らの老いや衰えに
徹底的に抗って、もがいて創り上げたというのが作品にも表れていて、
どこかチグハグした印象につながっていた。
でも今回は、全く自分の老いや衰えを受け入れてしまって、
いい意味で力が抜けて、活き活きとした作品に仕上がっているように感じた。
遥かなる空想の世界から、より身近な世界へのシフトしたという点で
宮崎アニメの新しい始まりといえるかもしれない。
ラピュタナウシカといった世界を、もう一度創造することは
もう叶わないことかもしれない。
でも今の宮崎駿の背伸びしない等身大の世界も、それはそれで観ていきたい。


崖の上のポニョ [DVD]

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