記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

マザーウォーター

ただ川の流れのように、明日はいずこへ、気の向くままに。
野暮なことはさておいて、今日も明日も気分良く。
風を感じ、地の匂いを纏って、ふらりさすらってみようかしらん。
でも、その前に水割りを一杯くださいな。



土曜日。奥さんと2人で久々のロードショーを観にスカイビルへ。
『カモメ食堂』『めがね』『プール』を送り出したパセリ商会の第4弾。
いつものメンバー(小林聡美もたいまさこ光石研市川実日子加瀬亮ら)が
どこからともなく集まってきては、美味しいものを食べ、町をさすらい、
そしていつの間にかどこかへ去ってゆく。
同じキャストで同じような内容なので、マンネリだと言う人もいるかもしれないが、
いいと思えるものに、小手先の変化など必要ないのです。
吉本新喜劇だってそう。寅さんだってそう。
真に愛されるものとは、いつものメンバーがいつものようにふるまうことだと思う。
もう彼女たちには余計な筋書きも、小難しいセルフも必要なくて
ただただ、つつましやかに生活する様を切り取ってくれれば、それだけで満足なのです。


今回の舞台は京都。それも自分がちょいちょい通っている一乗寺や下賀茂神社界隈の
いわゆる観光地ではない、住まう街としての京都が舞台。
実際、あのあたりは独特の空気感があって、それをうまく表現できないのだが、
映画でも同じような匂いが漂っていて、なんだかとてもうれしくなった。
登場人物はみな、何らかの形で水(ウォーター)と関わる仕事をしている。
豆腐屋さん、コーヒー屋さん、ウイスキーしか出さないBARのママ、銭湯屋さんなど。
そこに沸く水と共に生きること、それが地に根ざして生きるということと直結している。
そしてそこには日々の豊かさというものが生まれるのだ。
何か特別な出来事が起こるわけではないが、豊かな映画は見るだけで心を満たしてくれる。
ひとつ残念なのは、珈琲屋の役をしている小泉今日子の珈琲の入れ方が雑なこと。
細かいけど、そういう細かいところって、特にこういう映画では大事。