記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

ツール・ド・フランス'98 プレイバック

さあ、もうじき今年もまた暑い夏がやってくる!(コンタドールは結局出るの?)
そこで過去の大会をプレイバックということで先日届いたDVD鑑賞。


'98ツールは、ロード界のパイレーツことマルコ・パンターニbianchiにまたがり、
生涯唯一の優勝を果たした大会。
しかも、同年のジロも制してのダブルツールの大偉業。(過去8人しか達成していない)
若き王者ウルリッヒの若さゆえの読み違いと焦り、
テレコムチームの戦略ミス(というよりアシストのリースの問題?)によって、
随分助けられた部分は確かにあるけど、
山岳ステージでの走りはまさに異次元。
画面見ててもダンシングとか全然きれいには見えないのに、
疲れ知らずで上っていくスキンヘッドの鬼神ぶりは、すごいの一言につきる。


一方のウルリッヒ。王者であるが故のプレッシャーとライバルからの徹底的なマークを受けて
悲壮感漂うライドは見ていても苦しくなる。
それでも、パンターニに決定的な差をつけられたガリビエ峠での敗北にもめげず、
マドレーヌ峠で一夜報いるあたりがさすがゲルマン魂。


そして序盤の平坦ステージでの主役といえば、やっぱりロックスターM・チッポリーニ
ド派手な衣装に身を包んで悠々とゴールラインを通過する姿はさすがスターですな。
それにしても平坦で勝つだけ勝ったら、ハイさいならなんて潔すぎる!


こういった魅力的な戦いの一方で、’98といえば暗い歴史がある。
ツールの歴史上でも最悪の汚点の一つであるフェスティナ事件を忘れてはいけない。
フェスティナチームドクターが禁止薬物を運んでいる所逮捕され、
A・ツーレ、R・ヴィランクなどの有力選手も含めてチームごと追放。
その後も、TVMチームの選手への昼夜を問わない強制捜査に抜き打ち検査が続き、
犯罪者扱いされた選手たちがストライキを起こすという大混乱。
結局バネスト、オンセなど他のチームがツールを離脱し、
パリにたどり着いたのがわずか96人。
これは自転車界はもちろん、スポーツ界全体をゆるがす前代未聞の大事件だった。
DVDではこのドーピングスキャンダルにも詳しく触れていて興味深い。


フェスティナと聞いて、腕時計を思い出すよりもまず、
この忌まわしき事件を思い出すという人は多いと思うが、
スポンサーからしたら、大枚はたいて悪いイメージを世界中に撒き散らしているようなもので
これだけリスキーならスポンサーが次々と撤退していってしまっても不思議ではない。
そうすると自転車界は支えを失ってしまうことになる。
スポーツマンシップからも、選手の健康維持の観点からも
ドーピングは当然徹底的に排除していかないといけないものだ。
しかし、これだけのリスクがありながら、現在までドーピングがなくならないのだから恐ろしい。
パンターニウルリッヒ、リース、この年の主役級はみな
ドーピングに関連して人生を大きく狂わされた選手ばかりなのがなんとも皮肉。


ツール・ド・フランス1998 [DVD]

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