記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

紀伊半島縦断 後編(本宮〜新宮〜串本〜潮岬)

ひとまず、エスケープ不可能な熊野の山岳地帯は抜けることができた。
しかしまだ100kmあるので気は抜けない。
特にここからは暑さと疲労という新しい敵が立ちはだかる。
山間では25℃くらいと快適であったが、さすがにここまで下って来ると30℃近い。
そして今日はどうもピーカン。すでに直射日光が痛い。
とりあえずは35km先、熊野川の河口に広がる新宮を目指す。
現在9:30。新宮に11:00、那智勝浦に12:00、串本に14:00の目標。


道自体は路肩も多少できて走りやすくなってきたが、逆に交通量が増えてくる。
長い長い東敷屋トンネルを抜けると、鈍いアップダウンが連続していく。
途中、とある日本一のバスとすれ違う。
奈良の大和八木から新宮までの160kmを走る日本一長距離を走るローカル路線バスです。
アップダウンアップダウンを繰り返し、途中でハンガー気味になってきたので
走りながら携帯していた羊羹をほおばりながら進む。
途中で対向から2人組のローディーさんがやってきたのでご挨拶。地元ローディーさんでしょうか。
そして熊野川が大きく左へ蛇行してさようならし、旧道の方の越路トンネルをくぐると新宮市街に入る。
やった〜やっと来た〜!それにしても暑い!


↓大河・熊野川


新宮は実に5年ぶり。院生時代、研究室のプロジェクトで何度も訪れたり、
1週間公民館に泊まり込んでは法務局へ通い詰め、
明治時代からの土地台帳をしらみつぶしに分析したり、
まあブラタモリをもっとアカデミックにしたような活動をした思い出の地。
そして中上健二が生まれ育った路地の街でもある。
懐かしい街並みを駅前を中心にさっと回る。ほとんど変わってないなあ。
せっかく新宮まで来たので、熊野速玉大社にも参拝する。
熊野詣での出発点は天満橋なので、そこから終点の地まで自転車でやってきたことに改めて感無量。
お参りを済ませ、せっかくなので奥さんと娘さんにお土産としてお守りを買う。
リュックを持ってないのでこんくらいしか入らないので。
それにしてもカンカン照りで、超暑い。南紀の夏だぜ!
駐車場で、コーラとSOYJOYで一服。本当はお腹が減って減って仕方がなく、
近くにあるめはり寿司本舗のめはり寿司を腹いっぱい食べてもよかったのだが、
ここで腹いっぱいになるわけにはいかない。
今日はあと15km我慢して、何が何でも那智勝浦のマグロを食べるのだ!


↓熊野速玉大社



11:30にリスタート。ここからは基本R42の1本。
橋本から高森まではちょっとした丘越え。交通量が多く慎重に上る。
高森で直進すれば那智勝浦新宮道というところを左折。
車が減るかと期待したが、ほとんど変わりなし。
しゃーっと三輪崎へと下り、ようやく海沿いらしい景色になってくる。
それにしても暑いぞ!太陽!
宇久井を過ぎるといくつかのトンネル。旧道の方へ逃げて通過する。
那智駅を通過し、熊野那智大社の案内板。
そうか、熊野三山を全て詣でると言うのもいいなあとちらっと考えるが、
さすがに20kmもの本格的な上りは無理だと諦める。それより飯だ、飯!
12:00ちょっと過ぎに紀伊勝浦駅前へ。
たくさんマグロ料理の店がありますが、うまく店を選ばないと残念なことになることが多い。
というのはマグロで有名な街ですが、上等な本マグロはみな首都圏や関西圏に出荷されてしまうので
地元ではなかなかそういったものを食べさせてくれる店は意外と少ないのです。
特に地元民向けの食堂のようなところでは出てこない。
なのでせっかくマグロの本場に行ったのに、大したことなかったというのはよく聞く話。
まあ、マグロだったら何でもよいのだが、とにかくうまい飯を食べさせてくれるところということで、
事前にしっかりリサーチして店は既に決めてある。


ということで入ったのが、駅のまさに目の前にある、ちょっとオシャレな居酒屋風のbodai(母大)さん。
人気店なのか結構込んでいたが、カウンター席が空いていたので飛び込む。
ここの名物は中トロカツ。なんで新鮮な生じゃなくてわざわざフライ?と思う人がいるかもだが
マグロの最適な食べ方は何と言ってもカツなんです!
そしてマグロカツを食べさせてくれる店は意外と少ない!なぜだ!
ではでは、さっそく中トロカツ定食を注文。
水をお代わりしているうちに、あっというまに料理が出される。速い!
中が半生のマグロをさっそくいただきま〜す♪いやん♪トロットロすぎてお箸でうまく持てな〜い♪
さっとおろしポン酢にくぐらせて、パクッ!ヤヴァイ、マジウマ!
ああ、美味しいものをいただけるなんて幸せです。
白飯にワンバンさせながら、ガツガツ食べる。
お味噌汁はにゅうめん入りでこれまたうれしい。
必死に食べてしまい、店に入って20分くらいであっという間に食べ終わる。
おいしゅうございました。


↓中トロカツ定食(1500円)


↓駅の真正面


お腹が満たされ、なんとも眠たくなってきたが、残り35kmがんばります。
勝浦の町を出るとR42はいったん山間部へ入ります。
えっこらよっこら丘越えをして、湯川へ。
そこからは太地の海を横に見ながら爽快に走る。
遠くにはらくだ岩が見えます。
海では浮き輪でちゃぷちゃくしている子どもたちが気持ちよさそう。
海パンでももってこればよかったかなあ。
太地の駅のところでいったんJRをくぐり、下里の集落。
そこから再び海沿いと山間を交互にこなしていく。
そして紀伊田原からは完全なシーサイドライン
遠くに紀伊大島が見え、台風の影響で高くなった白波が海岸に打ちつけます。
やはり太平洋、外海は迫力が違う!
東宝”の文字がフェードインしてきそうな感じだ。
しかし、その爽快で豪快な景色とは裏腹に、マトモに吹き付ける潮風がハンパなし。
道のくねり具合によって、モーレツな向かい風になったり、
あるいは横風となって思いっきり煽られる。
特に大きなカーブの所では慎重にしないと、風向きが急に変わってバランスを取られそうになる。
ヒーヒー言いながらも、オーラスに向けて意地で30kmペース。
古座川の河口部の大きなうねりからのしぶきを浴びながら、ようやく串本が目に飛び込んできた!
串本市街地に入るちょっと前に名所の橋杭岩でドリンク休憩。
これから潮岬までひと上りあるので向かい風で消耗した体力を回復する。
ちょうど引き潮でみごとな奇岩ぶりでした。


↓太地の海


↓さすが外海、白波がダイナミック


橋杭岩で休憩


リスタート後、串本市街地に入るとR42の交通量も増え、路肩が狭くなる。
市街地内では建物があるせいか、交差点ごとに海からの横風がぴゅ〜っと吹いて煽られる。
潮岬東入口の交差点を左折し、いよいよ残り7kmとなる。
くしもと大橋を左手に見ながら、突風の海岸線を進む。
朝責神社のところからいよいよ岬への本格的な上り開始。
明らかに10%以上ある難斜面。青少年の家までがんばってなんとか上りきったのに
そこからまた豪快に下っていく。お〜い。
そしてまたまた同じくらいの上りが始まり、暑さと疲れでへっとへと。
上からローディーさんが下ってきたのでご挨拶。
そして道の先に見覚えのある白いタワーがみえてきたぞ!
最後の力をふりしぼって上りきると、一面緑の芝生の本州最南端に到達!14:00ジャスト。
ヘナヘナになりながら碑のところまでいって記念撮影し、しばらくぼおっと海を眺める。
ああ、こっから先は陸地がないんだなあとか、この数100km先に台風がせまってるなあとか、
それにしても我ながらよく自転車でこんなところまで来たなあとか、色々考えました。


↓本州最南端。この先に台風12号接近中!


あまり感慨に浸っていると帰りの電車に遅れてしまうので、しばらくして出発!
と思ったら、後輪がユルユル・・・おい、ミシュラン、あと5、6kmねばらんかい!
せっかくの感動もちょっと損なわれる。いい加減にしてほしい。
路面はずっとクリアだったし、異物を踏んだり、段差をえいっとやった覚えもない。
あともう少しなので目いっぱい空気を入れてとにかくごまかして走ることに。
タイヤがそれで傷んだとして、もうミシュランは用済みなのですぐに履き替えるし。
耐久性、対パンク性能が悪いとは聞いていたが、これほどひどいとは。
どうせなら同じ道を戻りたくないので、さらに先へ進み岬をぐるっと一周。
下りきってまずコンビニで汗拭きシートを購入。
風呂はもちろん入ってないし、めっちゃ臭いので周りにご迷惑をできるだけかけないように
せめて全身の汗と匂いをできるだけ落とすためです。
そして14:45に串本駅に到着。次の特急が15:17なので、輪行を詰めても十分な時間。
なんとか後輪ももって狙い通りの電車で帰れるぞ。


で、売り場で新大阪までの禁煙・指定をリクエストするとなんと最後の指定席券でした!
もしこの特急がアウトだったら串本で16:30まで待ちぼうけを喰らうところだった。
しかも車両の一番後ろの席なので、座席の真後ろのデッドスペースに自転車が置ける。
おお、なんとラッキー♪もってるなあ。
で、そそくさと輪行の準備をして、10分足らずで完了。
汗拭きパットでくまなく拭いたら真っ黒だわさ。
残念ながら着替えはなし。
売店で土産でもと思ったがめぼしいものがなく、ドリンクと補給のお菓子だけ購入。
そうこうしてると特急が入線。列の最後に並んでうんしょこらと入る。
やっぱりタイオガ、収納はスピーディーだが、でかくて邪魔だなあ。
座席の後ろのスペースに置いてみるが、横置きだと通路を完全にふさいでしまい、
トイレに行く人や車内販売のカーゴが通れないので、はずしていない後輪を下にして縦置き。
スペースがぴったりなので、ぐらぐらもせずに安定。
隣の座席の人は若い兄ちゃんで、女性じゃなくてよかった。
自分の臭さと怪しい身なりを自覚して、小さくかしこまって座って爆睡。
あいにくオーシャンアローじゃなくて、くろしおなので、黒江とか箕島とか停車駅が多い。
窮屈な姿勢で爆睡して気付いたら天王寺
晩飯食べてきてと奥さんからあったので、ぱしゃ君を誘ってみるが電話に出ず。
18:52に新大阪に到着。一度寝て起きると疲労感がたまらない。
えっちらおっちら組み立てるが、後輪は完全にぺこぺこ。
これまた家まで5km持てばいいとガチガチに空気を入れてごまかし走る。
途中十八番で男の祝杯のために晩めしを購入し、無事に帰宅。
おつかれさまでした。