記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

北摂縦走サバイバル

さて新三田でkurubiさんとお別れしたのが正午。
すでに盛りだくさんのメニューをこなしたが、家路に着くにはまだ早い。
たまたま新三田駅前交差点は、「北摂里山街道」の西の基点で、
一庫ダムを経て黒川まで続いている。
ということで、ひとまずダムつながりで一庫ダムを目指すことにする。
のっけから有馬富士公園までの鈍い上り。
どうも左のクリートの具合がよくなく、すぐにパリっとはずれてしまう。
下りに入る前に公園の入り口で停止して確認すると、
かかと側のパッキンの部分が完全に消失している。
落車の影響なのかどこかではずれてしまったのだろう。
つま先立ちスタイルでならなんとか固定は維持できているので、
ダンシングせずに、踏み込んでいけば問題ない。
リスタートして、徐々に里山らしい風景の中を進んでいく。
相変わらず風が強くて難儀。
方角的に斜め後ろからの追い風で、下りでのバランスがとりづらいので慎重に。
千刈ダムの頭の部分を右に掠めながら進む。
この辺りは小・中時代の主戦場。よく十万辻から上って三田で折り返してきたものだ。
宝塚自然の家を過ぎて、下野田橋前交差点に到達。
里山街道を忠実にトレースするならここで右折して、
素直に道の駅いながわへ進むべきなのだが、
ちょうど、一度行ってみたかった「くろまんぶ」が近いので、左折して寄り道。


↓有馬富士


↓千刈ダム


県道319号に入り若干の北上。途中ローディーさんと何人かすれ違う。
ひさびさ週末の晴れだからこぞって出動しているのだろう。
上佐曽利で右折し、そこから短いながら急斜面を駆け上がる。
しゃーっと下って県道12号に合流。
ローソンの先で道をまたぎ、裏道へ。
林田の住宅地をなぞりながらわずかに高度を上げると、
その先に小さな隊道がぽっかりと口をあけている。
北摂の重鎮asyuuさんのこよなく愛する「くろまんぶ」です。
なかなか趣のある佇まい。
夏の暑いときに訪れると心地よさそうである。


↓くろまんぶ(津坂隧道)


ひんやりとした空気を味わいながらゆっくりとくぐり反対側を下る。
すぐに12号には合流せず、集落の中にある和菓子屋の「うませ」で一服する。
さっき食べたばかりだが、甘いものがほしかったので
うぐいす餅とつつじまんじゅうをお願いする。
ここで補給をしておいて心底よかったと後で感謝することになる。
御主人がお茶を出してくれて、これから行く方面の峠のことなどしばらく談笑。
ご馳走様でした。近くを訪れたときは寄ることにしよう。


↓うませで一服


リスタートして県道12号をしゃーっと下る。
途中、お腹が痛くなって道の駅いながわでおトイレ。
どうも強風でお腹が冷える。
紫合北ノ町で県道68号の大通りに出て、えっちら上り返して日生中央
一応ここも終着駅。なんか宝塚駅をしょぼくしたような感じだなあ。
能勢電鉄沿いに下っていくが、高架のせいか風がバラバラでバランスとりづらい。
前方にR173のバイパスが見え、そちらへは行かずに旧道の激坂を上る。
バイパスの橋をくぐると、堂々たる一庫ダムが正面に鎮座していてなかなかの迫力。
ジリジリとシッティングで井補野まで上り詰める。
トンネルを抜けて一庫ダムの事務所に到着。
何人かローディーさんが休憩をしていました。


↓一応終着駅の日生中央


さっそくダムカードをゲットするべくチャイムを鳴らすが誰も応答しない。
2度ほど鳴らすが全く反応がなく、門が開いていたので建物を覗き込む。
誰もいなさそうなのであきらめて立ち去ろうとしたら
ぼんやりしたおっちゃんが出てきて、用件を言うとダムカードを持って来てくれる。
時間をもてあましていたのか、格好の話相手だったらしく色々と話しかけられる。
なんと自転車競技で昔国体にでたらしい。
談笑していると段々と雲行きが怪しい。話を打ち切ってリスタートする。


一庫ダム


一庫ダム上部から


さてここからの道のりであるが、こんな時間帯にR173とか交通量が多過ぎてNG。
であれば、知明池を周遊しつつ、いったん北上して野間峠を越えて県道110号か。
でもそれもお決まりのコースだしつまらない。
今日は全く行き当たりばったりでテーマのないライドで、
ダレていたのでこのままでは終わりたくないなあと悶々。
それならいっそ北摂を西から東へ通しで突っ切ってみてはどうか。
西は三田市から東は長岡京市まで山中を縦走。
縦走。うん、なんかアドベンチャーで面白そうだ。
時間的にはまだまだ余裕があるし、残りの道も実走済みの区間ばかりで問題ない。
ただ天気が持つかどうかはちょっと不安になってきた。
でも、まあ難しくなればすぐに高槻側に下って離脱可能だし、やってみよう!
リスタートして、知明池の周りを周遊しながら北上する。
上空からはポツポツと雨。でも雲の具合を見ると通り雨のようで一安心。
とりあえず余野まではマストで行かないといけないのでライド継続。
誰もいない旧道の方へ入り、のんびりと北上を続ける。
この辺からにわかに左手がしびれてきた。きっと落車の影響だろう。
左手のしびれと、左足のクリートの不具合、果たして。
本当は野間の大ケヤキ前に出るつもりで走っていたのだが、国崎で曲がりそびれ
そのまま北上してしまい、気がつけば倉垣橋に到達してしまう。
ということは・・・六甲も含めた120km以上走った状態で堀越の激坂を迎えることになりました。
ああ、今日は激坂のオンパレードだなあ。
上る前に自販機でコーラを補給して整える。
で、いざTTスタート。
クリートがダメになっているので左足の引き足が使えないのがもどかしい。
ダンシング封印でゴリゴリとシッティングで上る。
ちょうど中間地点の1つめのS字まではいい感じで上っていたが、
そこからさらに一段斜度が上がってからはひたすら耐えるのみ。
2つめのS字を抜けて、ゴールが見えたのでしぶとく踏んでもがいてゴール。
6:53。
なんとか7分切れたのでよしとしよう。ああ、しんど。


↓あいかわらず激坂な堀越峠


おそらく最後の難所を抜け切って一安心しながら東側へ下る。
こちら側はわずかに路面がウェット気味。ひょっとして直前まで結構降っていたのかも。
ここまでくるとさすがに疲れが出始めて、ぼんやり走っていたら
亀山GCへの分岐をいつの間にか過ぎて亀岡側へオーバーラン
いかんいかん、それでは下山してしまう。しかも反対側へ。
ということで慌てて引き返し、上り返して西別院に到達。
この時点で15:00。いくら遅くてもあと2時間あれば長岡京へ下山できるだろう。
西別院からは県道733号のロングダウンヒル
途中、恩師の眠る湯谷の入り口を過ぎて、東掛に到達する。
長い下りで、しかも気温が低いから体を冷やしてしまう。
しかも堀越峠でエネルギーを使ってしまい、若干腹が減ってくる。
寒さと飢えが新たな敵として立ちはだかる。


↓恩師が眠る湯谷の入り口


東掛で左折し、再び微妙な上り開始。
と同時にちらちらと雨模様。嫌な感じ。
しかも空腹感はドンドン増していき、微妙に力が出ない。
こんな日に限ってポッケには何のレーションも入っていない。
六甲上って、ダム行ってすぐ変える予定だったのでかなり油断してしまっていた。
記憶ではここから先は下山しないと食事処もコンビニも当然ない。
ペースをあげるのをやめて省エネモードでちんたら走る。
こうなったらもう意地です。
寒かろうが、雨が降ろうが、腹が減ろうが、縦走を完成させるまでは下山しないぞ。
と言っていると、いきなり吹雪いてくる。おい、雪は聞いてないぞ、雪は。
県道6号にぶち当たり、高槻方面へと折れる。
微妙ながら上りが続き、エネルギーがどんどん削り取られる。
樫田トンネルを抜けると、6,7人ほどのローディーの団体さんが集まっている。
よっぽど何か食べるものを恵んでもらおうかと思ったが、
へっちゃらな振りして挨拶してスルー。バカバカ!
県道6号で高槻方面へは折れずに、向日方面へ直進して県道733号へ入る。
入った途端に、吹雪は激しさを増していく。ああ寒い。大丈夫か。
でも、ここまで来たら、高槻に下りるのも長岡京に下りるのも時間的に変わらない。
むしろ一刻も早く下山する必要があるのでそのまま突き進む。
高槻霊園を過ぎると県境まで再び鈍い上り。お腹減ったなあ。
一軒、怪しげな茶屋を発見し、空腹にそそのかされそうになるが、
このまま天候が悪化し、おまけに日没間近になれば身動きが取れなくなる。
今は腹を満たすよりも、下山せねばならない。飯は下山後たっぷり食わせてやる。
吹雪が冷たく顔を叩く中京都市に突入。


↓ようやく京都市突入も粉雪が降り始める


西京都変電所を左手に見ながら、道は大きく舵を切って南へ転じる。
どんどん山間に潜り込んでいき、道も怪しく細く弱っていく。
路面は枯葉で汚れ、しかもウェット。
大原野森林公園のそばということで木々が生い茂り、
上空からの敵をわずかにシャットアウトしてくれるが、
雨なのか雪なのかがひどくなってくる。
途中で、トレイルランナーさんをパス。
ここからはもう下山したら何食べるかしか頭に浮かばない。
バーガー、餃子、牛丼、カレー、どれにしようかな。
心底憔悴しきったまま、微妙なアップダウンをこなし、ようやく善峰寺との分岐に到達。
どちらに下りるのが得策かと一瞬思案したが、善峰の後半はきっついだろということで直進。
しばらく進むと逢坂峠に到達。ようやく下界が見えてきた。


↓左が金蔵寺、右が善峰寺


↓逢坂峠


↓ようやく下界が見える


金蔵寺TTコースは特に終盤がかなりの激坂。
上るのもしんどければ下るのも一苦労。
このコースは晴れていてもなぜかウェットな路面。
当然今日もウェットで、フルブレーキングで細くて曲がりくねったテクニカルな道を下る。
寒さでかじかんだ手でしっかり押さえつけながらワアキャア言いながら無事に下りてくる。
これでなんとか縦走完結。
それより飯、飯!
とりあえずなんでもいいのでコンビニを探すが、大原野は店1軒もない・・・
このときの落胆といったらもう。
丹波街道(県道10号)に入り長岡京方面へ進むが、あいかわらず店がない。
ひどく気落ちしたまま、結局長岡天神まで走りきる。
駅前で即座に目に入ったのが、マクド・王将・ココイチ
餃子食べてえと思ったが、チャリを無事に置けそうなのがココイチしかなかった。
とりあえず、カツとか揚がるのも待ってられないので
すぐに出てきそうなハンバーグカレー。それもはじめて一番でかいサイズを頼む。
空腹で殺気立っていたのか、店員さんも大支度で即出てきたが、
あまりの憔悴振りに店員さんに苦笑いされたけど、そんなのカンケーねー。
食べるというより、飲む感じであっというまに完食。
食べ終わるとしばらく放心。10分くらい記憶がない。
予想以上に寒かったので、疲労がハンパない。今更ながら寒さは大敵だ。


時刻は17:30。日没で淀川CRが闇で見えなくなる前に家路を急ぐ。
西国街道(県道10号)に復帰し、アップダウンをこなす。
腹が満たされたので体力も幾分回復している。
途中、クリテ観戦の帰りにkurubiさんに先導された道をトレースして淀川CR(右岸)へ。
淀川CRは多少は向かい風ながら、それほどひどいものではなくて助かった。
これで強烈な向かい風だったらもう行き倒れてたかも。
仁和寺大橋で対岸に渡ると日没サスペンデッド。
と、同時にまたもや少しばかりの通り雨。勘弁してくれ。
鳥飼大橋からは大事をとってCRを離れ、阪神高速守口線の高架下のルートを取る。
無事に太子橋まで到達しR479のところで信号待ちしていると、
右手からものすごい衝撃音がしたのでとっさに振り向く。
と、豊里大橋へ続く上りのスロープのヘリに軽トラがぶつかって、
クルクルと回転し、側道の標識にぶつかってフロントが押しつぶされた状態で停止した。
そして本線を先行して走っていた3台の車がその音を聞いて急停止し、
追い越しレーンの方で、急停止に反応できずに後続の車が軽くオカマを掘った。
オカマのほうは大したことがないが、軽トラの方からはドライバーが出てくる様子がない。
ヘタすると深刻な状況になっているかもしれないので、すぐに現場へ駆けつける。
周辺住民も集まってきて、すぐに警察と救急車に連絡。
もう一人ローディーさんが駆けつけてきて、ドライバーについてしきりに声をかける。
意識はあって応対するのだが、どうやら足が挟まれて出れない状態らしく、
ハンドルで胸を強打している様子で非常に苦しそうな表情。
しばらくたって先に警察が到着。
目撃者の1人として事情を説明する。
続いて、消防がやってきて足を挟まれたドライバーの救助に入る。
ガソリンが漏れ出しているらしく、
引火の恐れがあるのでタバコや火は厳禁!との号令とともに封鎖線が張られる。
しばらくして無事にドライバーが救助され救急車で搬送されていった。
命には別状が内容で本当によかった。
野次馬がどんどん増えてくるし、現場も封鎖されたので、
バイクをかかえたまま居座っていると邪魔になるのでお役御免で立ち去ります。
まさかの事故目撃で少々ショック状態で、城北運河沿いを走って帰宅。


↓まさかの大事故目撃


今日は朝イチからの六甲に始まり、なりゆきではじまった縦走計画だが、
最初から最後まで下山せずに突っ切ると言うのは意外と面白かった。
今日の反省は補給品を携帯していなかったことに尽きる。
あとは予想以上の寒さ。寒いと疲労の蓄積具合が全然違う。
もろもろ含めて油断は禁物ということか。
今日は距離の割りにかなり疲弊してしまったが、
”縦走”というのは新しいヒントになりそう。
面白くも過酷な企画が練れそうだ。(やっぱり懲りてない)