記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

常念山脈大縦走 1日目(中房温泉〜合戦尾根〜燕岳〜表銀座〜大天井岳)

8/9。
仕事を早めに切り上げ、荷物を取りに大急ぎで帰宅。
これから数日体を洗えないのでシャワーを浴び、着替えをして
事前に用意してあったザックを担ぎ、登山靴に足を入れる。
そのタイミングで奥さんから帰るコールがあったので、
大阪駅で落ち合う。少しの時間だけだったが会えてよかった。
そこから新大阪駅へ移動。
お盆前ということもあって結構ごったがえしている。
あわてて弁当を買い込み、19:00ジャストののぞみに乗り込む。
飯を食ったら名古屋まで仮眠。


↓牛タン弁当で腹ごしらえ


名古屋駅で新幹線を降り、中央本線に乗り換え。
20:08発の快速・中津川行。
すでにこの時間帯では特急列車は走っておらず、
ここから3時間半をかけて松本を目指すのだ。
1か月以上前に手配をかけた時点ですでに、
さわやか信州号はすべてソールドアウトだったので、電車を乗り継いでいくしかないが、
スケジュールを考えると6:00登山開始に間に合わせるには前日から向かわないといけない。
かといってあまり早く着いても朝になるのをただ待つだけなので、
終電車松本駅に着くように手配するとこうなる。
他にも同じような境遇の人がいるようで、ザックを担いだ人がちらほら見受けられる。
長い電車は確かに面倒だが、狭い座席に缶詰めになる高速バスを考えると
どっこいどっこいかな。
中津川で一旦乗り換えをし、そこからは各駅停車で松本駅へ。到着は23:33。


次の列車は4:35初のムーンライト信州号。その時間まで約5時間どうするか…
事前に、駅周辺を調べたら、24hマクドが1軒ある。
ただ、長時間居眠り禁止の張り紙があり、5時間粘るのは無理そう。
漫画喫茶は2km先にあるようだが、会員登録とか面倒だし、金がかかる。
結果、松本駅のターミナルで仮眠待機することにする。
すると、東京方面からの最終電車で降りた客の中に、
同じく駅で野宿組の登山客がごろごろ。中には女性の方もいる。
テントを張るまではせずとも、通路の脇にパットを敷いて仮眠をしている。
まあ日ごろ超ロングでは、コンビニ前でノビているので自分は何ら抵抗なし。
自分も奥まったところに陣取って、しばし仮眠。
風の通りが悪く暑かったが意外と寝れた。


松本駅で野宿


翌8/10。
3時に起床し、駅前の松屋でがっつり牛丼で朝ごはん。
そこから近くのローソンへ行って、ハイドレーションに水を入れる。
なんだかんだで時間となり、改札機で特急指定券を購入し、
定刻通り4:35にムーンライト信州号に乗り込む。
旧式の特急車両は懐かしい感じだ。
中はギュウギュウの人で熱気ムンムンとしていて、
ほとんどが馬鹿でかいザックをかついた登山客。
みな寝苦しそうな顔つきで、戦場へ向かう列車のようだ。
自分は松本〜豊科〜穂高とわずか2駅の利用。
東京方面からは、新宿から中央本線1本3時間チョイでアクセスできるのが
大阪の人間にとってはなんともうらやましい。
20分ほどで穂高駅到着。


ムーンライト信州。特急じゃなくて一応臨時快速


穂高駅を降りると、小さな小さな駅舎の前に、ぞろぞろタクシーやバスの列。
空いている乗合バス(1700円)を見つけて飛び乗る。
みな目的地は同じ、中房温泉。
小さなマイクロバスに、ザックを担いだままで満員で乗り込むので結構ハード。
ここから1時間揺られて山道を進んでいく。
このバス1台だけでも相当人がいるのだが、これが朝の4:30から何台も出動し、
しかもマイカー組がいることを考えると一体どれだけの人が向かっているのか…
ザックを抱えたままの姿勢で、急カーブの連続でバスが揺れるたびにこらえて、
寝る余裕もなく6:00前に中房温泉に到着。
降りると、案の定、びっくりするくらいの人。
駐車車両は2km手前から続いているし、登山届の紙を取るのも一苦労な感じ。
出発前にトイレに行こうと思うのだが、これまたすさまじい行列で、
結局出発できたのは6:20。


↓登山口の中房温泉。


ではいよいよ山行開始!
ひとまずは、北アルプス三大急坂との呼び声の高い合戦尾根を上って、
標高2763m燕岳を目指す7km弱の道のりです。
スタート直後から、林の中を切り開いた急峻な道が続きます。
大渋滞にはまるとマズイので、スタート直後から急ピッチでガンガン攻めていきます。
が、その目論見もすぐに破たん。
すぐに先発していた人たちの大渋滞に巻き込まれてしまう。
登山道は行き違いも難しいような狭い通路なので、なかなか追い抜きをかけれない。
単独行者であれば、少し前の人と間隔が開いたところ狙ってパスしていけるのだが、
団体さんを一気に抜くほど余裕のあるスペースがなく、遅々として前へ進まない。
ベテランの方たちは結構後ろの様子を見て速いなと思ったら、道を開けてくれるのだが
なまじ体力に自信があるような中年の人や学生グループは譲ってくれない。
そのうち、1歩進んでは2歩休憩といったペースにまで落ちる。
これじゃあ、門真の教習所で並んでいるほうがまだマシじゃないの?
富士山もすごいだろうけど、ひょっとしてこっちの方がすごいんじゃないのかっていうくらい。
第1ベンチまでは30分もあれば余裕で着くはずなのに、1時間もかかった。


↓延々続く大行列…


ベンチではみな休憩を取るために、ルートを外れるので、
ここがチャンスとばかりに一気にペースを上げて、追い抜く。
そうしてしばらくは前が空いて、ペースを上げれるのだが、
しばらくすると再びトラフィックに捕まってしまう。
抜けない!抜けない!ここはモナコモンテカルロ!な三宅アナ状態です。
それにしても山の中でまで行列に並ばされるとはなんともはや…
それでも無理に追い抜きをかけたりすると混乱してしまうし、
勝手な行動は取れないので、ここは体力温存の時間帯と気持ちを切り替えて、
じっとチャンスをうかがいながら渋滞に並びます。
歩いているよりも立ち止まっている方が長いというような感じで第2ベンチ。
当然疲れることもないので、ベンチはスルーして、
とにかく渋滞を抜けるために前進あるのみ。
高度を上げていくにつれ渋滞の長さも徐々に短くなっていく。


↓停滞中…


↓合戦小屋への運搬用ケーブル


予定時間をオーバーしているので、この辺から一気にペースを上げてガシガシと進む。
なかなか急な階段だったりあるので、一気に汗が吹き出し
ハイドレーションから水を飲みつつ、上っていく。
第3のベンチからは、上って行く人の数はぐぐっと減り、
下りてくる人たちとの行き違いの回数が増えてくる。
ペースを上げたのもの要因だが、第3ベンチから合戦尾根までのところが、
一番きつかった。
8:20合戦小屋に到着。登山口から2時間の行程。
序盤は停滞で時間を要したが、温存してあった分、
後半モーレツにピッチを上げて帳尻を合わせた感じ。


↓第3ベンチ。合戦尾根もようやく半分


この日初めて、ザックを下ろして休憩を入れる。
とにかく暑くて暑くて、売店に駆け込んでコーラをがぶ飲み。
ああ、炭酸たまりません〜@@
この小屋は宿泊はなく売店のみで、名物はスイカ
飛ぶようにスイカが売れていくのを眺めていたのだが、
自分はあまりスイカが好きではないので、
その横に書かれてあったカットパインに惹かれてそちらに手を出す。
ほのかな酸っぱみが疲れた体にたまりません!


↓合戦小屋


↓コーラとカットパインで元気をつける!


合戦小屋を過ぎると、斜度は一気に緩み、人気も減ってペースが上がっていく。
所々で見晴らしがよくなり、今日の最終目的地である大天井岳や、
表銀座の山並みなども見える。
反対側には有明山や、上ってきた中房の谷間なども見える。
こうみると一気に高度を上げてきたのだな。
何度か偽ピークがあり、そこから燕山荘がチラチラと顔をのぞかせる。
途中、1か所、鎖場があったが、大した難易度でもなく通過し、
燕山荘に到着が9:20。3時間の行程でした。


↓やっと燕山荘が見えてきた


↓鎖場を抜けたらもうすぐ


↓燕山荘(帝国ホテルが協力して建てた小屋です)


↓燕山荘から燕岳をバックに


ひとまず燕山荘を覗く。ポカリのペットを買い、ついでに土産物を物色。
さすが人気NO.1の山小屋だけあってアイテムは充実。
だが、序盤から不用意にお金は使えないし、荷物も重くなるので、
奥さんへのみやげとして定番の手ぬぐいと、山バッジだけ購入する。
お店の人に断って、軒先にザックをデポし、
ポカリとカメラだけ持って空身で燕岳山頂を目指します。


↓空身で燕岳へテッパツ!


標高2763m、日本二百名山に数えられる燕岳は、
まるで南国ビーチのような白砂の斜面に、
色々な形をした奇岩が点在する摩訶不思議な山。
危険個所はないが、ザラザレで滑りやすいので気をつけながら
奇岩を見たり、対岸の山並みを眺めたりしながら小屋からは片道30分ほどで登頂。
ヤクルトファンの自分としては、まさに聖地でございます。(byつば九郎
やはり2500mを越えた山の上では肌寒いのだが、うかつにも小屋に全部置いてきてしまった。
天気はよいが、少しかすんでいるような感じ。
燕岳からは、さらに北側に餓鬼岳、蓮華岳針ノ木岳、さらに奥に鹿島槍などが見える。
対岸には鷲羽岳水晶岳など、はるか眼下には高瀬ダム湖が見える。
一通り満喫したら、すぐに小屋へ取って返します。
何しろ、今日の最終目的地はまだまだ先。本番はここから。


↓イルカ岩


↓めがね岩


↓燕岳(2763m)


のんびりと燕岳を散策しながら小屋に戻ってくると、
さっきよりもだいぶ人が増えている。
後続の登山客がどどどどっと上がってきた様子。
縦走を始める前に、軽く冷えた体を温め、補給をしておきたいので、
せっかく燕岳荘へ来たのだから、人気のケーキセットを食してみよう。
ホットコーヒー+3種類のうち1品のケーキで950円と、
梅田で食べるのとなんら変わらない価格でケーキが食べれるなんて!
3つのうちからモンブランをいただきました。
いやあ、疲れた体に優しい甘みがうれしいですなあ。ごちそうさまでした。


↓メニュー充実♪


↓ケーキセット950円。モンブランにしました


さて時刻は10:45。ちょっと休憩しすぎました。
腹ごしらえも済まし、いざ稜線歩き!
お天気は良好そのもの。
進行方向にはまだまだはるか先に目的地の大天井岳が見え、
そのさらに奥には北アルプスの王様、槍ヶ岳のお姿が!
ああ、こんな長いトレイルを果たして歩いていけるのだろうか、
ドキドキ、ワクワクが止まりません!
ではでは出発!
合戦尾根ではあれだけあふれていた登山客も、ほとんどが燕岳・燕山荘止まり。
縦走に出る人の数は半分以下になります。
序盤はアップダウンも少なく、緑の絨毯の中に敷かれたトレイルを歩いていきます。
同じく縦走している人たちと挨拶を交わしながら、ずんずん進む。
あまりに天気がよく、日差しが暑い。
そして景色がきれいすぎて、ついつい立ち止まってカメラを向ける時間も増える。
のんびりとしたアップダウンをこなして1時間ほどで、岩礁地帯に到達。
いわゆる蛙(ゲエロ)岩と呼ばれる個所。
写真右側の岩が、上を向いている蛙に見えませんか?ゲロゲーロ
冬季はこの岩の間をルートが通っているらしいですが、
夏場はこれを左に巻いていきます。


表銀座縦走へ、いざ!(左奥が目的地の大天井岳、右奥には槍)


↓蛙(ゲエロ)岩


蛙岩を抜け、しばらく進んで大下りの頭に到着したのが11:30ごろ。
何人かの方がここで休憩をされていました。
ここから見える槍もまた素晴らしい。
槍から手前側に切れ落ちている北鎌尾根、槍から真横に伸びていく西鎌尾根、
眼下には湯俣の谷筋。自然ってすごいわ…。
しばらく写真を撮ったりなんだしてリスタートします。
が、トレイルはここから大きく降下を始めます。
で、すぐその先にこれまた急な上り返しが見えている!
ああ、橋かけてくれ橋!


↓大下りの頭にて


↓大下りの頭


↓大下りの頭からハードな下り。そしてその先の上り返し…


ガレガレで急な下り坂をちょっとへっぴり腰気味に下っていきます。
本当はしっかりと立った方が安定するのは分かっているのだけど、怖いよ。
慎重に歩けばなんら危険なところではないけど、
ちょっとでも勢いついたら50m,100m滑落なんてあっという間のところです。
特にこういうガレガレの下り、それも谷筋へ一直線に道が付いているようなところは
やっぱり怖いですよ。
そんなところをトレイルランナーはえっほえっほと走って行っちゃうんだから、
もう変態を通り越してますな。


↓ガレた下りは苦手だ!


無事に鞍部まで降りてきたら、今度は下った分だけ上り返し…
何気に結構ハードな個所もいくつかあったり、梯子もあったりしんどい。
1か所、左側がスパッと切れ落ちているガレ場があって、そこを慎重に渡りきる。
反対から来たおばあさんが、「ああ、こういうところ本当に嫌だわ」と
話しかけてきましたが、全く同感です。
2つほどピークを詰めると、そこからは再びなだらかな道のり。
でも、すでに眼前には今までとは比べ物にならないスケールの山が立ちはだかっています。
そうです。今日の最終目的地である大天井岳です。
まるで最後のとどめ、ダメ押しとばかりにそびえたっております。


大天井岳。山肌に刻まれた斜面を上り、左上部の小屋がゴール


しばらくなだらかな道を進んでいくと、切通岩に到達します。
時刻は12:30。
ここは一旦鎖とはしごで鞍部に降り、そこからはひたすら厳しいのぼりを詰めていきます。
鎖場は、対して高度感もなく、軽く補助的に使用するだけで簡単に降りれます。
降り立って、上り返しの梯子の脇に小さくレリーフがあります。
この縦走路を切り開いた地元のスーパー猟師の小林喜作のものです。
写真を撮ったら、いよいよ大天井岳に登っていきます。
梯子は高度感も斜度も大したことはなく、
また道も整備されているので問題なく、常念と槍の分岐点まで到達します。


切通岩の鎖場


↓このように下る。高度感もなく全然イージーっす


↓小林レリーフ


↓常念方面と槍方面の分岐点。表銀座とお別れ〜。


↓縦走路全景。結構歩いたなあ


さて、ここからいよいよ急な上りを詰めて大天井荘を目指します。
大した距離じゃないように感じるが、手元の地図のコースタイムでも40分とあるから
相当にしんどい上りと予想される。
道は徐々に道らしいものではなくなり、
ゴロゴロとした岩の道を、マークに従って進んでいく。
その斜度もまた急激で、さっきまでいた切通岩などはあっという間に眼下に。
左手の高度感にビビり、ヒーヒーいいながら岩場を上りつめていく。
見上げるとはるか上の方で格闘している登山客が見えるが、
まだあんなところまでいかないといけないのかあと、絶句する。
ただ今日は本当に天気がよく、遠くまで見渡せる景色が緊張感と疲労を和らげてくれる。
これだけ天気がよく暑ければ、
午後から松本方面から雲が上がってくるかなと思っていたのだがその心配もなし。
視界不良、天候不良でこの上りだったら、さぞかしキツイだろうなと考えながら
ひたすら岩場を登ること30分!ようやく小屋の入口に到着です。
時刻は13:30。山行開始から7.5h。無事に本日の行動を終えることができました。


表銀座を離れると小屋までは激上り…


↓1日目最大の難所。大天井岳もあなどれない


表銀座分岐から上り続けること30分…ようやく小屋に到着!


↓大天井荘


小屋に着いたら、まずは寝床の確保です。
事前に予約は入れてあるが、それは小屋側の都合を考えてのことで、
寝床が確保されるわけではない。
実際は先着順なので、何はさておき宿泊の手続きを済ませる。
1泊2食で9000円です。(ほとんどの山小屋が同じ価格です)
ここは夕食で、肉か魚のチョイスができるらしく、魚をチョイスしておきました。
早速寝床へ向かいます。今回は初めて2段ベッドの上の段をあてがわれました。
ちょっとドキドキ。
2畳の広さに枕が6つありますね。混んできたらそういう形で寝ることになります。
とりあえず自分は出入りの少ない端っこのスペースを確保する。
結果的に、幸いにしてそこまで混むことはなく、3人で横になれました。


↓本日の寝床。初の2階です


寝床を確保したらまずは飯です!
燕山荘でケーキを食べてのち、行動食はチョイチョイつまんでいましたが、
さすがにガス欠。
持参している食料を消費してもいいのだが、せっかくここまで来たのだから、
どうせなら小屋の名物グルメを頂きたい!
それにできるだけ小屋にお金を落としたいというポリシーもあるので。
で、山頂を極める前に、食堂へ直行。
大天井荘は、人気の燕山荘と同じ系列なので、色々充実してますなあ。
早速、ここの名物のインディアンカレーを注文。
カレーは、チキン、キーマ、ビーフの3種類から選べるし、
ナンとライス、チャイにデザートまでついて1200円なんてお値打ちすぎます。
何よりこんな3000m近い場所でインドカレーが食べられるなんて!
素晴らしすぎます。


↓名物のインディアンカレー(1200円)


さて、寝床もバッチリ、腹ごしらえも済ませたら、
とりあえず大天井岳行っとかないとね。
荷物はデポして、カメラだけもって、小屋の裏から再び上ります。
でかい岩がゴロゴロする斜面を10分ほど歩いて、標高2922mの大天井岳に登頂です。
当初この山行計画時には常念、常念と思っていましたが、
途中からどうしてもこの大天井岳で泊まりたいなあという気持ちが大きくなっていたので
本当にこの地にたどりつけてうれしかった。
この大天井岳は、実は日本で30番目に高い山です。
なのに、100名山には含まれず200名山…
周囲に槍ヶ岳常念岳、燕岳と超メジャー級の山々に隣接しているにもかかわらず、
いたってマイナーな扱い。
そんな扱いに抗うかのように、この山に直接に上ることのできる登山ルートはなく、
必ずどこかの稜線を縦走してこないとたどり着けない山。
そんな頑固で不器用な山、思わず応援したくなるでしょう!
しかし、その実力はと言えば、大天井の名にふさわしく、素晴らしすぎる眺望!
当日はかすみがちではありましたが、360度さえぎる物のない山頂からは、
穂高連峰槍ヶ岳裏銀座立山連邦表銀座後立山連峰松本盆地八ヶ岳
常念山脈、御獄山まで周囲すべてのものを見渡せる。
槍に上れば槍が見れないわけで、そういう意味でも、
まさに北アルプスの中心といって過言ではない大スペクタクルのステージです。
ここから見る槍の雄大さはとにかくすばらしく、見惚れてしまいます。
マイナーだけど、ここまでたどり着いて、この景色を見た人だけがわかる、
大天井岳の素晴らしさ。槍や、常念もいいけど、ぜひ大天井岳も登ってもらいたいなあ。


とにかく山の景色は飽きない。ただ、そびえたつ山並みを眺め、
雲と風が織りなす変化を刻々と観察する、ただそれだけを1時間でも2時間でも続けられる。
何もしない、ただぼおっと目の前に広がるあまりに非現実的、非日常的な景色に見惚れる。
本当に自然ってものすごい。人間なんて本当にちっぽけな存在だと思い知らされる。
そうであっても、この険しい山々を切り開き、登り詰めてきた人間もまたすごいと思わされる。


山頂にいたたくさんの人が、ここは穴場だと、大天井岳ファンになっている様子。
みな、思わずフレンドリーに話しかけ、
今日来た道のりや、明日の工程など話に花が咲きます。
ある女性の方は、眼下から伸びている喜作新道をさらに進んで東鎌から槍へ。
そして飛騨沢から新穂高を目指すそうだ。スゴイ!
すもう1人男の方がいて、この方も翌日槍を目指し、上高地まで行くらしい。
この方(Sさん)とは色々意気投合することになります。
他にも、Aさんは、自分とは逆で、この日常念からやってきて、明日中房へ下りる人など、
まさに大天井岳は縦走路の交差点なんだなあと気づかされます。
そうやって気づいたら時間はあっという間に過ぎてしまいました。
17:30の夕食の時間がせまってきたので、小屋まで戻ります。


↓小屋から大天井岳までは岩場を10分


大天井岳(2922m)にて


晩御飯は、ちょうど山頂でお話で盛り上がった単独行者のSさんとAさんと
席を隣にして、いただきました。
よくよく考えると、自分は常念岳蝶ヶ岳、Sさんは槍、Aさんは燕岳と
みな明日の行き先が違うという面白い組み合わせです。
小屋によってはカレーライス、以上!ってなところもザラにある中で、
これだけ品揃えは贅沢すぎる夕食でした。
みそ汁は八兆味噌で味付けよく、デザートのグレープフルーツまで堪能できました。
ビール、飲みたかったのですが、前回飲んで頭痛がひどくなった経験があったので
翌日を考えてここは我慢しておきました。
あと、お料理はどれもとても美味しかったのですが、何より熱いお茶がウマイ!
さすがに2900mとなると夕方からはダウンジャケットがないと寒いし、
道中冷たくて甘いドリンクを飲み過ぎて飽きているところに、
素朴な熱いお茶というのが本当にしみわたる。
みな同じようで、お茶のお代わりをガブガブ行ってしまいました。


↓夕食は肉か魚のチョイス。サバのみそ煮にしました


夕食を終えたのが18時。20時の消灯までまだまだ時間があります。
あと1時間もすれば夕暮れショーとなるので、
上着を着込んで再び山頂へ向かいます。
ちょうどAさんが向かわれるということでご一緒させてもらいます。
この日は天気も良かったのだが、終日かすみ気味で、
槍や穂高方面は、肉眼ではきちんと見えていても、
カメラで捉えるとなるとなかなか難しいコンディションでした。
夕暮れが近づくと飛騨方面から雲がドワドワ〜っと上がってきて、
そのままこちら側にこぼれてきました。
その奥からまばゆい金色の光がさし、本当に神々しいの一言。
つい先日、テレビでやっていたラピュタを見たせいもあって、
頭の中ではそのBGMが鳴ってました。
思わず「バ○ス!」と叫びたくなりましたが、山が崩れるといけないので自重(笑)
でも本当にラピュタの世界でした。
と、Aさんがごそごそとなにかやっているので聞いてみると、
やっぱり頂上でコーヒーは男のロマンでしょ?と、
バーナーで即席コーヒーをこしらえて、自分の分も出してくれました。
1人で飲むより同じように頑張って登ってきた人と一緒に飲む方が美味しいですね、
と言われとてもありがたかったです。
自分はすっかり忘れていて小屋に一式置いてきてしまっていたのでありがたかったです。
色々とAさんとお話をしていると、実は同業者さんとわかりビックリ!
つい話に熱が入ってしまいました。
そうこうしているうちに、西日はすううっと西鎌尾根の向こう側へと去っていき、
北アルプス1日目の夜を迎えることとなりました。
帰りは注意しつつ岩場を歩いて小屋まで。
防寒はしていたが、さすがに長時間外で待機していたせいですっかり冷えてしまいました。


↓Aさんのご厚意で山頂コーヒーにありつく


大天井岳の夕暮れ


小屋に戻り、明日の準備を済ませたら、消灯時間には就寝。
前日駅舎での仮眠しかしていなかったし、結構ハードだったこともあり
すっかり堕ちてしまいました。
それにしても素晴らしい1日だった。明日も同じくいい天気だといいのになあZZZZZ…
つづく…