記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

私はフロンタルさんの味方です!

ということで、ようやく全部見終わったガンダムUC
(トメと一緒に観るということで延びてしまった)
宇宙戦争のそもそもの発端となるラプラス事件の真相が物語の中軸というだけあって
ファーストから、Z、ZZ、逆シャアと続く直系ガンダムのファンとしては
大変素晴らしい出来だったと思います。
何より、最重要人物であるサイアム・ビストの声を
急逝された永井さんがどうにか務め上げれたことが
ガンダムという世界観に奥行きと説得性を持たせる意味では
非常に重要だったのではないかと思います。
そのあたりは、特典の『百年の孤独』の出来栄えとともに本作の一番の功績かと。
加えて、鈴置さん亡き後のブライトを担当した成田さんの、
あまりにも自然なブライトの様、これも大いに評価できるところであります。
あと、本作は何より音楽の出来栄えが素晴らしい!
この作品は過去の経緯がわかっていないと、なかなか読解が難しいのですが、
それだけガンダムシリーズの中核をしっかりと描くという信念に基づいていると思います。



物語としては、呪われし一族の血を引き継ぐ2人の若者、
ミネバ・ザビ(閣下に似ずによかったですね♪)と、バナージ・リンクスを中心として
お約束の私怨で動く輩によって、取り返しのつかないことやら何やらが起こって
敵味方入り乱れのお決まりの泥沼状態へとなっていきます。
まったく小義ばかりに囚われて大義を見ない連中というのは本当にどこにでもいるものです。
そうして、ラプラスの箱と呼ばれる、数々の宇宙戦争の発端となる秘密、
地球の重力に縛られた人間と、
人類の新たな可能性としての力を秘めたニュータイプとの新しい関係性、
その秘密が百年の孤独を経て明かされるという筋書き。


ただ、見どころはその話の本筋よりもむしろ、
主人公バナージを含めた新しい世代に対して、
様々な生き様を遺していくサブキャラの男気!
巷での一番人気はやはりジンネマンですが、
自分の一番シビれたのは、やはり男気溢れるダグザ・マックール中佐でしょう。
彼もまた自らの力ではどうすることもできない時代のうねりや強大な権力の渦の中で、
歯車は歯車としての意地があると、自らの役割を全うした漢でした。
しかし、あのシナンジュにバズーカで応戦するとは勝ち目ゼロですけどね。


↓ダグザさん。こう見えてまだ38歳です。


一方、肝心の主人公バナージといえば、
むしろ彼らの強烈さに比べてあまりに影が薄い存在です。
そもそもユニコーン機があくまでただの”鍵”でしかないのと同じで、
バナージは、例えばシャアやアムロのように自らが積極的に意思を発するというのではなく
サブキャラたちのような旧世代の想いを受け止めるための
一種の”器”のような役回りのように感じました。
それは、自らをあくまで人類の総意を受け止める単なる”器”だと
はっきり明言したフロンタルとのちょうど一対のようにも受け止められ、
それはそれでバランスのとれた人物相関となっているのでしょう。


そして一番同情するのは、やはりフル・フロンタルさんでしょう。
話の筋はきちっとトレースしているつもりだし、
あの赤い彗星の再来というキャラ設定上、
最終的にラスボスにならざるを得ないことは当然のこととはいえ、
あまりにも貧乏くじを引かされているような気がします。
本当に非難されるべきはフロンタルではなくて、
私利私欲のために宇宙中を紛争にまみれさせたピスト財団とマーセナス家のはずなのだが、
全ての責任を背負わされた上に、レジェンドたちの亡霊に魂もっていかれちゃうという…
もし生き残っていたらば、愚痴ぐらい聞いてやるから、
ちょっと今晩付き合えと誘ってあげるのですが。


アクシズ落とし以降、四散したネオ・ジオンの残党を再集結させるために、
シャアの栄光を背負って担ぎ出され、自らもその役割を十分に理解したうえで、
自らを単なる器だと割り切ってその期待に応えようとしているのに、
結局、奴はシャアだから信用できんぞと味方(ミネバ)からも嫌われる。
ラプラスの箱を政治的道具として利用しながら、
地球をはずして宇宙圏だけで経済的な結びつきを強めて、
宇宙の民の存在価値を自ら押し上げるというコロニー共栄圏構想を掲げるのだが、
つまり、簡単に言えば、戦争という最も避けるべき事態を回避して
経済的外交的にコトを進めるという、実は最もまっとうで大人な解決策を提示しながら、
そんなのオールドタイプの時代とかわらんじゃないか!という理由だけで
ニュータイプの皆さんに拒否られる。
ニュータイプは所詮、可能性!可能性!と叫んでおきながら、戦をしたいだけなんじゃ…)
そもそも、その構想を推し進める第一歩だって、
無理矢理ラプラスの箱を強奪しようとしたのではなくて、
ピスト財団の方から譲渡を申しだされたのであって、
そのやり方だってきちっと筋を立ててやろうとしていたのに、
ミネバ様のご乱心でフイにはなるし、
戦闘になったのはアナハイムと連邦が最初に介入してきたせいなのに、
バナージには恨まれるし。
なんかことごとく可哀そうな役回りを演じさせられているような気がしてなりません。
シャアの再来であったばっかりに、シャアと常に比較され
はじめからいいように利用された上に、結局みんなから嫌われて…
フロンタルさんは実はとってもかわいそうな人なんじゃないかと(涙)
そこんとこ池田さんはどうお思いか?


↓本日の被害者・フロンタルさん


何と言っても、ミネバのやろうとしていることの大義が自分にはよくわからんのです!
結局は最後ラプラスの箱の秘密をミネバがザビ家の末裔として全世界に公表をするわけですが、
あれは本来であれば、地球側の人間が自主的にこうだったと認めて
地球側(あるいはピスト家)から公表しなければ全く意味がないのであって、
それがザビ家の末裔によって行われようが、シャアの再来によって行われようが、
宇宙の側の人間の方から証拠を突きつける形で、
俺たちには存在意義があるぞ〜と主張するだけのことになっては全く無意味だと思うのだが…
結局ミネバは自分で手柄を立てたかっただけなのか、
あるいはもしかして今度はザビ家からシャアへのややこしすぎる復讐だったのかも?
(シャアの亡霊を葬ることでザビ家の行いの贖罪とする)
とか考えてしまうと、ミネバはああ見えてめちゃくちゃ怖い女だなあと身震いしてしまうのです。
なにせ、ドズル閣下の血を引き、シャアとハマーン様に育てられた女ですからね。
絶対ブラックだぁ〜。
といった風に、オーソドックスな見方とはちょっと離れた感想を持ちました。
チャンチャン♪


↓魔性の女?