ヤリホ〜 1日目・2日目 天上BARを目指して
金曜日。
17時過ぎに急ぎで仕事を店じまいして帰宅。
荷物の最終チェックをしたり、風呂に入ったりして18:20に出動。
近くでタクシーを拾って新大阪駅へ。
今回はまだ行きの電車のチケットを購入していなかったので、
大急ぎでみどりの窓口へ向かうが、
さすがに連休前の金曜の夕方は大行列・・・
これに並んでいたら間違いなく電車に乗れないので、
空いている券売機を発見して慌ててチケットをゲット。
そこから大急ぎでプラットホームへ上がり、
売店で目の前にあった弁当をひっつかんで購入。
もう特急電車で車内販売している路線は限りなく少ないため、
新大阪で弁当ゲットできていて助かった。
そうして18:40発のひかりに乗り込んだタイミングでドアがプシュー。
あああ、毎度ながら間一髪。
これに乗れると、最終のしなのに乗れるのだ。
一本遅れると、名古屋から松本までおなじみの鈍行になる。
名古屋までに弁当をかき込み、これまた短い時間でワイドビューしなのに乗り込む。
家を出た時には暑かったので、2wayパンツをハーフパンツにしていたのだが、
そろそろ冷えてきたので、ロングにしようと思ったら、
右足の方のジッパーが完全にバカになってしまい延長できない…
うむう…上の替えはいくつかあるが、下は全く替えがない。
下界や行動中は暑いのでハーフ状態でも問題ないだろうが、
山上での夜は絶対に寒いはずで、半パンなどもってのほか。
どうしよう…早くもしょーもないトラブルを抱えることにする。
とりあえず松本まではひたすら仮眠をして、21:30頃に松本着。
すでに駅周辺には翌朝から山に入るであろう野宿者が多数あふれていた。
まずは、色々店があるうちに、パンツ問題を解決する策を考える。
で、コンビニで安全ピンを発見し、とりあえずそれで応急処置する。
布を重複させれば、風も入ってこないし、
脱ぎ着する時以外は特に問題がないので、今回はこれで行くことにする。
そんなこんなで時間を食う。
松本駅で他の人たちと混ざって野宿でもよかったが、
だいぶ時間を持て余しているので松本駅を後にし
20分ほど西へ進んだネカフェで仮眠&時間つぶし。
↓松本駅。野宿者多数
3時に起床し、ネカフェを出て、再び松本駅まで戻る。
腹ごしらえに駅前の松家で牛めしをかきこむ。
4時になり、切符の券売機がオープンになったので、
上高地までのチケットをゲット。
そして松本電鉄のホームへ行くと
すでにホームから溢れんばかりの登山客でごった返す。
早めに並んだので、無事新島々まで座れたが、
4:45発の臨時便はまるで通勤ラッシュのごとき混雑ぶり。
5:09に新島々駅に到着し、バスに乗り換えるのだが、
みな我先にと改札に群がり、かなり荒れ気味。
とにかくこの週末はすさまじい状況になるのは間違いない。
無事に1台目のバスに乗り込むことができ、少し遅れて出発。
十分な睡眠がとれていないこともあって、バスの中ではこっくりこっくり。
そうして6:30に上高地バスターミナルに到着する。
すぐに登山届をだし、トイレに行って出発したかったのだが、
どこもかしこも行列行列で、一向に進まない。
わたくしの場合は腹の具合が強くないので、
しっかりトイレに行かねばならないのでどうしても出発が後手に回る。
結局、上高地BTを出発したのは7時前だった。
↓河童橋
この辺りは来るたびに反復の景色なので最近は感動が薄れてきてしまったなあ…
ひたすらストイックにごったがえす道をハイペースで進み、
とにかく人をパスしてはパス。
地図の一般的なリザルトタイムで勘定すると上高地からヒュッテ大槍までは
9時間半と今回最も長い行程。
さすがにそれよりは早くたどり着けるだろうが、
いくら遅くても16時までには小屋に到着しないと迷惑がかかる。
こういう危険もなく平坦で歩きやすいところではどんどん時間を稼がないと。
しかしこの日の上高地はさすがにすさまじい人の数で、
トラフィックに何度もつかまりながら、道幅の広いところや、
皆が休憩に入るところ(明神館など)でペースアップしていく。
明神も徳沢も全くノンストップでとにかくひたすら早足で歩き切って、
横尾に到着したのが8:30。
上高地からどうにか2時間を切った。
補給にいつものカントリーマアムを3つほど流し込み8:45リスタート。
この辺りで早朝に上高地入りした人はほぼ抜き去ったが、
この辺りから徳沢・横尾前泊した人たちが列をなし始める。
涼しい音を奏でる沢伝いに深い森の中を進んでいく。
お天気は抜群で気温もちょうどいい涼しさ。
一ノ俣は9:30に通過。そこからさらに進んで槍沢ロッジには9:50着。
ここも相当数の人が出発の準備や休憩に入っていて、すさまじい。
ここでちょっとトイレタイムで行列に並ぶ。
10:00リスタート。
小屋を出発してしばらくして、
まるでジェット機がスクランブル発進したかのような強烈な轟音が谷筋の轟き、
周辺は騒然とする。
あれは一体なんだったんだろう?
救助ヘリとかとは明らかに違う音だったし、空を見てもそれらしい機影はない。
マジでどっかの山が崩壊したのかと思うくらいのすさまじい音だったのだが、
後で聞いたら、もう少し離れた場所にいた人は全く音が聞こえなかったというし。
皆しばしその場で身を固くして様子をうかがっていたのだが、
特に何も起こらなかったので、一安心し先へと進む。
徐々に険しくなる山道を進んで、槍沢のキャンプ地に到着したのが10:40。
ドリンク休憩をしてテント場を出発。
岩だらけの幅広い沢をどんどん詰めていきます。
少しだけ右へとカーブを切り、進んでいくと、
眼前に東鎌尾根が屏風のように立ちはだかっております。
そちらへ向けて進んでいくと、沢の流れよりもだいぶ高巻きに道が続き、
えっさほっさと詰めて大曲に到着したのが11:00。
ここでみなゼエハアと腰を下ろしている人が多い。
自分も休憩を入れたかったのだがもうちょっとだけ踏ん張ろうと、
そのままスルーして、左手に広がる槍沢に挑む。
少しずつではあるが傾斜もきつくなり、高度も徐々に上がってきて息が切れる。
空も晴れ渡り、遠慮のない日差しが憎らしい。
これだけすっきりと空は晴れているのに、
肝心の槍の穂先はここからでは拝むことができない。
槍沢からでも飛騨沢からでも、ギリギリまで姿を見せてくれないのが槍。
ツンデレです。
そうこうしているうちに、前方に雪渓が横たわっている地帯へとたどり着きます。
軽アイゼンは今回は持参していなかったが、さほど傾斜もきつくなく、
また多くの人が歩いて踏み固められているので、
その足跡を蹴り込みながら進んでいけばなんら問題はなし。
ただし、下ってくる人が勢い余って尻もちをついているのを何度か目撃。
あれは痛そうだなあ〜と思っていたら自分も危うくスリップしかける@@
やっぱり油断しちゃいかんのです。
雪渓を渡りきったところで少しブレイク。
なかなかハードにアタックし続けて息が上がってきました。
ザックを一旦おろし、水分を十分にとって、休憩。
そしてここから天狗原分岐点までの九十九折れが今回一番きつかったところ。
岩でゴツゴツしたジグザグ道を一歩ずつ上がっていくのだが、
何度も同じような個所が続き、上を見上げても一向に差が縮まったようにも思えず、
3歩進んで2歩休憩。2歩進んで3歩休憩。
いやああ、かなり辛かった〜。
そうして12時に息も絶え絶え天狗原の分岐点に到着。
ここで前方にようやく槍が姿を見せました。会いたかったよ〜。
ここで正面に槍を捉えながらしばし休憩。
目標物が見えると不思議なもので力がわき、再スタートを切ります。
先ほどの急登に比べれば少し傾斜もマシになるが、
岩のサイズが少し大きめでそれをガシガシ登っていくような感じで
坊主岩屋下の分岐点に到着。
ここから自分はヒュッテ大槍の方へと行かねばならないのだが、
ほんのちょっと上がったところに槍ヶ岳開山の祖である
播隆上人がねぐらとしたと言われている坊主岩屋があるので、
分岐点に荷物をデポしてそこまで登って洞穴を拝んで
再び分岐点まで戻ってきました。
分岐からはメインルートから外れて、東鎌へと直登するのだが、
さっきまであれほどあふれかえっていた登山客は皆、
槍ヶ岳へ向かう正規ルートへと進むため、
ここからは1人寂しく急登を登ることになります。
槍沢を進む人の群れがだんだんと豆粒のように小さくなるにつれて、
こちらは厳しい斜面を一人取り残されたようにへばりつく感じで
なんだかさみしさを感じます。
分岐には小屋まで600mとありましたが、なんのなんの!
相当ダメージかくる急登です。
しかもこの絶壁の上に小屋があるはずなのに、
この登山道からはその姿が全く見えないので
登っても登っても終わりがなくてマジでたどり着くのか!?と焦ります。
すでに上高地からここまで20km・7時間近く歩き詰めで疲労困憊。
ゼエハア言いながら、ようやく急登が終わり、
ヒュッテ大槍に到着したのが13:40でした。
お疲れ!
到着時には結構周囲にガスが出てきて、
眼前にあるはずの槍も白い煙の中。
何はなくとも、まずは宿泊の手続きをば。
髪をオールバックにたくし上げたアンディ・ガルシアのようなご主人に出迎えていただき、
まずは寝床を確保します。
東鎌と名付けられたカイコ部屋の下の段を確保します。
この日はかなりの混雑が予想され、3畳に6人、1枚の布団を2人でシェアです。
これでも他の小屋に比べたらまだまだ全然ゆとりのある方でした。
ひとまず両左右の方に一晩よろしくのご挨拶。
ここで愛知から来られているWさんとは仲良しになり、
一晩楽しく過ごさせていただくことになります。
さて、寝床を確保したら昼飯です。
ここまでおなじみのカントリーマアムをひたすら食べてきただけで
上高地から歩き詰めだったので、きちんと食事をとらねば。
とはいえ、今回は最初から小屋メインのプランと決めていたため、
自炊道具一式はあえて持ってきていない。
そこで、赤いきつねを購入していただきます。
ついでに、おみやげもゲット。
ここの手拭いのデザインはどれもなかなかイカしてます。
あと、ここの小屋の特徴の一つがドリンクバー制度。
500円支払えば、小屋の入り口にあるドリンクバーが翌朝の7時まで飲み放題。
高所では喉がすぐ乾いてしまうので、これはありがたい!
さてさて、ひとしきり休憩を済ませ、夕食までまだ2時間以上時間があります。
本当は荷物をデポして、この日のうちに槍に登頂するというのも考えたのだが、
小屋の人の話では、この日も上はものすごい渋滞しているから、
到底夕食に間に合うようには戻って来れないだろうとのこと。
小屋から見ても槍はガスっていて眺望もよくなさそうだし、
翌日はもっと激混みが予想されるが、
ゆったりスケジュールなので慌てることもないだろうということでこの日の登頂は断念。
余った時間で、小屋の周辺から色々と撮影会をすることにしました。
東京から天狗池目的で上ってこられたAさんがいて、2人で色々と撮影を楽しみます。
この日登ってきた槍沢方面を見ると、
まだまだたくさんの登山客が上を目指しているようで、
カラフルな点々が列をなしているのが見えます。
槍沢の向こう側には天狗池がポツンと見えます。
あの池に映る逆さ槍というのが素晴らしいのだとか。
本当は野営禁止なのに、テント2張りが見えますねえ…
東側を望むと、表銀座の核心部から登り返しての西岳、
そこから北へ連なり大天井岳がチラチラ見え隠れ。
その南側にそびえる常念岳は残念ながら雲に覆われて頭を出そうとしない。
常念山脈の方は雲がしきりに被って、白い煙幕を張り続けていてすっきりしません。
翻って、主役の槍はというと飛騨側から上がってくる雲を浴びながら、
ようやくその姿を見せ始めました。
ここからの槍の姿はまさに迫ってくるような威圧感があって、
北側に羽根を広げるようにして連なる険しい北鎌のギザギザが、
まるで人を寄せ付けようとしません。
まさに北アルプスのど真ん中君臨する堂々たる王者の風格。
Aさんと2人で色々と話をしながら写真を取っていると、
西の雲間から木漏れ日が指すようになってきました。
これはもしや〜と思って、東側を覗くと…
おおお、ブロッケン現象!
薄い雲の上に、輪っか状の虹ができ、その中に自分の影が投影されている。
雲が薄いのでなかなか写真に収めるのが厳しいのだが、
下の写真ではうーっすら右下にあります。
2人でワアワア言いながら、その不思議な現象を眺めていると、
雲がどんどん散り散りになって変形していくにつれて、
虹も形をどんどん変えていきます。
普通の円形の虹から、平行に二重ラインを引いたような形のようなものに変わり、
(環水平アークてやつ?)
そして極めつけは下の四重虹!
2人とも目くるめく空のマジックに魅了されてテンションMAX。
これはなかなか貴重な体験でした。
↓写真じゃわかりにくいけど右はじにブロッケン現象
1時間半ほど小屋の周辺で撮影をしていると、
続々と疲弊しきった登山者が小屋に到着され、ねぎらいの言葉をかけます。
この日はどこも大混雑の様で、
予約していない人はキャパフローのために殺生ヒュッテに行くようにと指示されていて
落胆の色を隠せない方々が何人かいらっしゃいました。
しかしまあ、予約なしでという見込みがそもそも甘すぎるんだけどね。
お気持ちはお察しいたします。
翌日道中で色々と話を聞くと、上の槍ヶ岳山荘で650人定員のところ800人以上、
下の槍沢ロッジで定員150人のところ350人が宿泊されたそうです。
殺生のテント場もおびただしい数のテントが張られていましたし、
今年一番の混雑ぶり。みな8月の荒天で悶々として、
ようやく好天の連休ということでこればっかりは仕方がないが、
それにしてもすさまじい。
寝床へ戻り、Wさんとカメラ談義やらこれまでの山行の話など盛り上がります。
Wさんは愛知から来られていて、このヒュッテ大槍を常宿とされている方で、
この日槍を登って、翌日は西鎌から双六方面を目指されるとのこと。
なかなかのカメラの腕前で、この日も重装備のカメラを2セットも抱えておられました。
他にも東京から来られた方や先ほど撮影をご一緒したAさんなども含めて
単独行の方々と花が咲く。
そうこうしているうちに時刻は17時となり、お待ちかねのディナータイム♪
この日は人数が多いため3回に分けての食事で、自分は到着が早めだったので1番目。
Wさんをはじめ、みなさんと席を囲んで食事開始!
今回この小屋に宿泊しよう思ったのは、こぢんまりした小屋で、
肩の小屋などに比べても槍登頂には少々距離があって不利ながら、
この食事が素晴らしくよいということでリピーターが絶えないという評判を聞きつけてのこと。
さすが、北アが誇る信頼の燕山荘グループでございますね。
で、出てきたのがこちらのイタリアンディナー。
できるだけ冷凍野菜を使用せずに食材にこだわった料理の数々、
テーブルごとに1皿ずつの日替わりパスタ、そして食前酒に食後のデザートまでついたプレート。
これが標高3000m近いこんな場所でいただけるのですからそれはすごいことです。
窓側の席に陣取り、夕暮れ迫る大喰岳を眺めながら、こだわりの料理を味わいつつ、
みなさんと山談義。
厳しい山の上では、温かいものが食べられる、ただそれだけでも心がほっと温まります。
日頃の生活では見逃しがちな些細な幸せを身に染みて感じることができるというのが
山の醍醐味だと思いますし、まさにそれを味わえることができただけでも
この小屋にしてよかったなあとつくづく。
次の食事のグループの都合もあるので、30分ほどで食事を終えて、
いったん食堂から退散。
時間的にちょうど夕暮れのタイミングなので、
カメラを持って再び小屋の周りをうろつくが、
さっきよりも一層ガスが深くなり、
またこちら側は山の斜面に対して東側に位置しているので、
日が暮れると陰に隠れてしまい夕焼けショーはなし。
再び寝床へ戻って他の回の食事が終わるのを待って、
20時ごろから食堂に集まってお目当てのBARタイム♪
ここはおそらく日本一標高の高いBARで、ウイスキーから地酒からワインから、
結構なラインナップが充実しています。
しかも1杯500円〜800円ほどと、下界のBARで呑んでも変わらないお値段設定でうれしや。
結構なお酒好きのWさんはワインをグビグビと呑まれていたが、
自分はボウモアをロックで。氷は何と丸いタイプ。
少量でも高度が高いので酔いが回るのが早い気がします。
あまり初日からガンガン飲みすぎると翌日以降のハードスケジュールがこなせなくなるので
この日はちょっと抑え目で終わらせました。
↓ボウモアをロックで
1時間ほど山の男同士の話で盛り上がり、
寝床へ向かう前に今一度小屋の外へお散歩に出かけると、
夕暮れ時のガスはほとんど消え去り、見事な星空が眼上に広がっておりました。
南の空にはもやもやとした天の川がくっきりと映し出され、
翌朝のご来光ショーに期待が持てそうな予感。
きびきびとした冷たい空気を浴びながら、30分ほど天体ショーを楽しんだのち、
21:30ごろに就寝。
なかなかスペースはキュウキュウながらも、
同部屋の人たちはイビキもほとんどなくそれなりに寝れました。
ただ、人口密度の濃さと毛布のせいでめちゃくちゃ暑くてそれが寝苦しかった。
翌日はいよいよあこがれの突先を目指します。
つづく…