記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

伏兵 荒島岳の巻 詳細編

少し時間を巻き戻して、荒島岳の詳細編。
29日、4時起床でいそいそとお山の準備。
4月末からどうも具合がよろしくなく、
この日もよっぽど二度寝しようと思ったが、
そんなことではいかんと思い直し、慌てて家を出る。
この時期まだアルプスは春を待ちわびる雪の世界。
残念ながら十分な装備とスキルのない自分にとっては
手を出すにはまだリスクが高すぎる。
それでも毎度毎度近所のお山パトロールでは面白みがない。
どうしようかと考えた末に、日帰りで福井にある荒島岳に向かうことにする。
名前を聞いても?な山だが、実は立派な日本百名山に数えられる越前の名山なのだ。


始発のサンダーバードに無事乗り込む。
北陸方面は新幹線開通で賑わっているようだが、
関西にはまったく恩恵がないどころか、
富山まで直通で行けなくなって逆に不便になった。
この整備新幹線が福井・敦賀とつながったところで果たしてどうなんだろうかと思ったり。
その上リニアが名古屋まで開通したら、
大阪の没落は避けられないだろうな。
車内で仮眠を取りながら2時間弱で福井に到着。9:02。


ちょうど出発しかけていた九頭竜湖線に乗り換える。
行き先案内が越前大野行となっていたのと、
事前の調べより早い出発だったので不安だったので、運転手に確認。
すると、どうも午前中に勝原に着くのはこの1本だけだという…
んん〜検索と情報が違うぞ…
たまたまこれに乗れたけど、乗れてなかったらその時点でプランがとん挫していました。
これはもう帰りの不安がよぎりますが、もう出たとこ勝負で行くしかない。
2両ぽっきりのワンマンカーが福井の片田舎をトコトコ進みます。
途中、越前大野駅で後ろの1両が切り離され折り返し運転となり、
九頭竜湖や勝原へ向かう人が1両にギュギュっと押し寄せて超満員でした。
そうして10:33に勝原駅に到着する。
思ったより降りるお客さんが多い。どうも花の名所らしく、
ほとんどはそちらへの行楽客のようだ。
(しかしみんなどうやって帰るんだろう…)


↓勝原駅


すでにこの時点で、帰りの電車が怪しいので駅の時刻表を確認すると、
絶望的な案内…
おおう、18:40の一本しかないのん?
事前の調べでは17:14、18:14とあったのだが、まさか古いデータだったのか…
しかしひょっとしてGWの臨時ダイヤということも考えられるし、
まあなんとかなるでしょう。
駅前の観光案内所のところに自販機があり、そこで水とアクエリを1本ずつ購入し、
荷物を整理して10:40に移動開始。


↓絶望的な時刻表


駅からまずスキー場跡へ向かうため国道に出る。
10分ほどあるいていくと、右手に広場が広がっていてそちらへ。
荒島岳登山の最もポピュラーな登山道である勝原コースの入り口です。
ここで電話ボックスを利用した登山届入れで届を出したり、
トイレを済ます。
そうして11:00に山行開始。


↓スキー場跡への入り口


↓登山届は出しましょう


↓いよいよ山行スタート


まずは、スキー場のゲレンデに敷かれたコンクリの激坂を上ります。
なかなかの急こう配で、序盤から結構ハード。
どうにかこうにか、リフトの橋桁のところまで到達しそこから山道になる。
小さなピークを右手に巻きながら足場の悪い道が続く。
途中、下山してきたおっちゃんとすれ違い挨拶した途端に、
おっちゃんスリップ。
大丈夫かいなあとお互い苦笑いだったが、
まさかこの後自分がスリップしまくるとは思いもせず。


↓激坂!


↓えっちら山道


この時間帯は雲が全くない、スッキリとした青空だったのだが、
そのせいで日差しが直撃し、非常に暑い。
眼下を見るとすでに結構な高度を稼いできたようで、
スキー場の入り口がはるか下にあり、
向かいの山すその広がりの向こうに
白いものを被った白山連峰がちらっと顔をのぞかせている。
ここまでで結構疲労が襲ってきました。
予想以上の暑さもあるが、調子が悪く腹に力がこもらないので
前へ進む元気がわかない感じ。
んん〜なにか体がおかしい…


↓ずいぶん上ってきました。日差しがエグイ


リフト乗り場跡に到達したのが、11:40。
この原っぱにはたくさんのケルンが築かれていた。
森の上部に、小荒島の稜線がずーっと横切っているのが見える。
意外と近くに感じるが、まだここから800mほど(つまり六甲くらい)登らないといけない。
とにかく日差しが暑いので、ここでは休憩せずに、さっさと森の中へと進む。


↓リフト乗り場跡


ブナ林へ逃げ込むと、暑さは遠のき、歩きやすくなる。
序盤は勾配は緩やかで少しずつペースを上げていく。
比較的足元はベチャベチャで、つい最近まで雪が残っていたようである。
この頃になると、すでに登頂を終えた登山客と数多くすれ違う。
ほとんどはきっと車でアクセスした人たちで、
車を持たない自分が大阪から日帰りを狙おうとするとどうしてもこんな時間になる。
結局、後から登ってくる人はいなかったので、
自分がこの日のシンガリだった。


↓ブナ林が続く


ひたすらに眺望のない森の中を少しずつ高度を稼いでいくと、
前方に特徴的な木が現われる。地元ではトトロの木と呼んでいるよう。
12時を少し過ぎ、ここまで休憩なしで来たのでしばしドリンク休憩。


↓トトロの木


ここから苦手な階段が増え、斜度も少しずつ増してゆく。
途中一か所展望のきく場所があり、白山ベンチの名のごとく、
遠くに白山が見えた。
あちらはまだ随分雪が残っているようだった。


↓白山ベンチから白山を望む


そこを過ぎて、さらに進んでいく。
標高1000mを過ぎたあたりで徐々に周囲に残雪の塊がちらほらと見え始めた。
苦手な階段も増え、いよいよという感じ。
そうこうしていると、登山道にも雪が出現し、雪上を歩くことになる。
といってもしっかりと踏み固められているので、アイゼンを履く必要はなく、
シャーシャーと滑るように進んでいく。
ちなみにアイゼンは一応持ってきたのだが脱着が面倒なのでこの日が使わなかった。
ちょっと平坦で広い場所に差し掛かるが、
道しるべの赤テープが随所にあるし、
対向から続々下山者がやってくるので迷うことなく進む。


↓1000m近くなると残雪がちらほら


↓苦手な階段地獄


↓雪道スタート


↓まだしっかり雪が残っている


一旦窪地のようなところに下り、そこから雪に埋もれた階段道を進む。
そこからしゃくなげ平までは結構急な階段続きの道で、
雪解けのベチャベチャな部分と、
しっかり雪が残っている部分がミックスされて、結構難儀。
何度か雪を踏み抜いてびっくりする。
足場が悪いうえ、狭い道で下山者と頻繁に離合するので、悪戦苦闘して
12:50に登山道の分岐点であるしゃくなげ平に到着。
山上は思った以上に雪が残っていて、分岐の標識がほぼすっぽり埋まっておりました。


↓微妙に溶けてベチャベチャ歩きづらい…


↓しゃくなげ平。標識は雪の中


ここからは稜線を歩きます。山頂までいくつかのピークを伝って約2km。
少し休憩を入れてリスタートします。
最初は下り。雪解け水が足元を流れてベチャベチャ。
下った鞍部を進んでいくと、前方に白い壁のようなものが立ちはだかります。
通称、もちが壁です。
これを右手側に登っていきますが、なかなか急な斜面で、
踏み固められているとはいえ、結構ヒヤヒヤしながら慎重に上っていきます。
途中で下山者とすれ違ったが、
彼らもアイゼンなしのままでヒヤヒヤしながら通過していました。
ここは下山の時にちょっと怖いかも。


↓もちが壁


↓振り返って。滑りそう…


もちが壁を過ぎると、急な岩場を直上するようなコース取り。
途中途中に鎖も設置されているが、足場はしっかりしているのでガシガシ上っていく。
そうして岩場を上り詰めると、一気に眺望がよくなります。
白山方面が堂々と対峙していてなかなかのものです。


↓なかなかの眺望


そこからもうしばらく登っていくと、前荒島という小ピークに到達。
そのさらに先に、本丸が見えています。
そこへ向かっていくには、数か所雪面を突っ切らなくてはなりません。
稜線上で結構斜度があるので、若干ビビリながらもツボ足で登り、無事にクリア。
そこからまた急な岩場を登ると中荒島に到達。


↓前荒島


↓急な雪の斜面をツボ足で


↓中荒島


中荒島からさらに雪面を通過し、しばらく進んでいき、
13:50に荒島岳に登頂です。
山頂は結構広く、白山方面はまだスノードームが残っていました。
この時間になると、結構雲が沸いてきていて、
残念ながら中央アルプス方面などは見えなかったが、
それでも文字通り白いシルエットを見せる白山や、
南方の滋賀県境の山々などは見渡せる。
さすが百名山といえるような素晴らしい眺望であった。
ここでお決まりの記念撮影をし、もってきたランチパックで簡単にランチを済ます。
雲の行方がちょっと怪しく、いやな冷たい風も出てきたので、
滞在時間わずか20分足らずで下山を開始する。


↓山頂到着


↓南東、恵那山方面を望む


能郷白山方面


越前大野の町並み


先ほど慎重に上った雪面が思いがけず難敵で、
斜度が急で前のめりになりそうなのを抑えながら、
一歩一歩慎重に下る。
わかっていてもツルッ、ツルッと瞬間に滑るので
その度に肝を冷やしながら、どうにか無事に通過する。
アイゼン履けば全く問題ないんだけどね。


↓前荒島に向かって下る。角度的に雪の斜面が怖い


↓この斜度を慎重に下る


↓山頂を振り返って


もちが壁のところも、結構怖かった。
すでに昼を過ぎ、日差しで表面が解けて
ベチャベチャとグリップがない雪質なので特に滑る。
慎重に慎重にクリアをしてしゃくなげ平に戻ってきたのが14:30。
この辺りから空がどんどん暗くなってゆく。
トトロの木辺りからポツポツ雨が降ってきた。
うっそうとした森の中なので、最初は涼しくてウェルカムと軽く考えていたら
しばらくしてバケツをひっくり返したような本降りに。
慌ててレインウェアを羽織り、ペースを上げて下山するのだが、
足元はみるみるぬかるみ、また粘土質の道はツルツル滑る。
疲労と雨とで、集中力をみるみる失い、ただ黙々と高度を下げているうちに
何度も転倒し、ケツは打つわ、手は打つわ、
気付けばウェアもパンツも泥だらけで、全くもってブザマな状況。
ああ、みすぼらしい、情けないと漏らしながらどんどん下山していく。
リフト乗り場跡からはいよいよ森を抜け、ふきっさらしとなり、
雨が直撃して悲惨な状況。
この辺りで何人かの下山者に追いついたが、みんな亡霊のようでした。
そうしてスキー場跡に帰還したのが16:10。
そこからさらに駅まで下り、駅到着が16:20。
全身ずぶ濡れで逃げ帰ってきました。


駅舎で、着替えをして補給品を摂り、少し持ち直したら
今度は帰りの段取り。
駅舎のそばにコミュニティバスの看板があり、
よく見るとこちらも1日2本だけ便があるようだ。
と、ちょうど麓からやってきたコミュニティーバスが到着。
運転手さんにどうしたらいいか相談すると、
折り返して戻りの便が17:14になるから、それで越前大野まで行けるという。
そこから先は別のバスに乗り換えないといけないようだが、
電車を待つよりは早く福井に戻れるだろうとのこと。
バスを待つ間に、衣類や荷物を乾かししばし休憩。
そうして戻ってきたバスに乗り込みます。
バスと言ってもそう名乗っているだけで、8人乗れば精一杯のバン。
どうもこの路線バスは4/20に今シーズン再開したばかりとのことで、
本当にこのバスがなかったら途方に暮れているところでした。
運転手さんといろいろ話をしながら30分ほど揺られます。
周囲を見ると麓は全く濡れているところがなく、
ピンポイントで荒島岳付近だけ集中的に雨が降っていたようです…
そうして越前大野駅に到着し、料金を払っている間に、
ちょうど福井タウン行きのバスが出発しかけている!
大慌てで手を振って停めて、ギリギリで乗り込みます。
フィ〜助かった〜。
そうして無事に福井タウンまで戻ってきたのが18:32。
すぐに特急があったが、
この日食べたのはランチパック1袋とわずかなレーションのみだったので
しばし駅で時間を取る。
立ち食いそばで腹を満たし、みやげを物色するが、福井はみやげ全然ない!


↓今庄そば


19:28、年配のツアー客で騒がしすぎるサンダーバードに乗って一路大阪へ。
そうして無事21:22に帰阪。日帰り登山ギリギリでした。
シーズンスタートでまだ体力十分じゃないのは否めないが
ちょっと疲労がひどく、その後のGW絶不調へと続いていくのであった。