記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

箱根外輪山トレイル 前編(箱根湯本〜明星ヶ岳〜明神ヶ岳〜金時山〜乙女峠〜長尾峠)

前日の金曜日。
手首の様子うかがいで病院へ行くために午後休をもらう。
手首の方はまあ順調と言えば順調だが、
まだ完全にくっついてはおらず、
グリグリ回したり、ひねったりはできるようにはなってきたが
加重するとピキン、ズシンとなる。
とはいえ、手首を安静にして様子を見るしかないので、しばらくは我慢。
通院している病院はセレッソ大阪の選手が訪れるほどの人気の病院なようで
結構毎回長時間待たされるのだがあっさりと。
方々のブログを拝見して、みなそろそろ暖かさに誘われて、
あちらこちらへの冒険談。
GWも返上して、シャニムニ仕事をして、
ようやくフリーな週末を迎えることのできる身としては、やはり血が騒ぐわけです。
とはいえ、手負いの状態であまり難易度の高いことはできない。
手に負担がかからないような状況で、がっつり冒険をするにはと考えると
低山縦走が一番。
地元関西でいえば、六甲と信貴生駒交野はすでにやっているし、
思いつくのはダイトレか京都周遊トレイルか、はたまた高島トレイル?だけど、
どれもちょっと晩秋の時期に残しておきたいところ。
アクセスが良くて、できれば眺望が望めるところはというと、
以前に金時山に登って、これは一度制覇してみたいと考えていた箱根外輪山を思い立つ。
以前、二度ほどキャノボでお世話になったあうさんが
本格的なトレランをされていて、一周された時の記事も印象に残っていた。
あんなハイペースで完走はできないけど(汗)
体調的にはいろいろと不安要素は尽きないのだが、
万一体力が尽きてリタイアとなっても、途中いくつもエスケープ離脱可能だし、
怖気づいていかないより、ダメ元でいけばよろし。
ちょうど週末は、直前に雨が降って気温が下がり、
直射日光のない曇天が期待できる絶好のチャンスで、逃す手はない。
まあ毎度のごとく、不安と期待でごちゃごちゃになりながら、
家を飛び出すのであった。


18時台の新大阪は本当にものすごい混雑で、
切符を買うにも券売機に長蛇の列。
アルプスの遠征の場合は乗継の特急列車の最終が決まっているので、
シビアなのだが、今回は小田原まで行くだけなのでゆとりがある。
名古屋まではのぞみ。一旦下車して、晩飯に「みそかつ弁当」を購入。
後から来たひかりで小田原まで。
翌日は大ハードなので、ネカフェや野宿ではなく、
常宿のビジネスホテルに宿泊。
なんだかお疲れモードでノンアルコールなのにあっさり眠りに入る。


みそかつ弁当


↓小田原の常宿にて宿泊


当日。5時起床。
すぐに支度を整えチェックアウトしたら、
コンビニでドリンクと補給品を購入。
5:33の始発の箱根登山鉄道に乗り、
5:47には出発地点である箱根湯本駅にとうちゃこ。
いつもそうだが、いったん山行に入るとトイレができないので、
時間がかかってでも、スタート前にしっかり出してから出発する。
どうもこの日は腹の調子がまずくて、時間がかかってしまう。
6:05にいよいよ出発。


箱根登山鉄道


箱根湯本駅


さて、スタートしたはいいが、まずはオシリのことを考えるべし。
この日中に完走して帰阪するには20時までには箱根湯本に下山をしないといけない。
一般のコースタイムだと14.5hとあるが、それよりは早く回れるだろうと考え、
13hで完走したとして、19時台には下山できる算段。
しかしそれもほぼコース全体フルスロットルで歩いた場合であって
本当にぎりぎりのボーダーラインなのだ。
そんな時間に追われた状況で、ナイトハイクを考えると、
火事場のクソ力でスパートできる区間をラストに持ってきた方がよいだろう。
ということで、全体としては難易度が高いとされる
反時計回りをチョイスしてスタート。
まずは駅を出て、箱根登山鉄道の下をくぐり、「かっぱ天国」がある側へ。
のっけからコンクリの激坂が登場します。
まだまだ元気は有り余っているので、ペースを上げて登ります。
ミュージアムを過ぎたあたりから斜度は緩み、しばらく舗装道を進むと、
阿弥陀寺の入り口に差し掛かります。
阿弥陀寺までは結構鬱蒼とした緑の中を九十九折れ。
朝は結構気温が下がってひや〜っとしていたので
ロングのシャツを着ていたのだが、
いいペースで激坂を上がってきてすでに汗が噴き出してきたので
Tシャツに着替えます。


↓いきなり激坂スタート


↓ここから山道


阿弥陀寺


阿弥陀寺の右手から本堂の裏に回り込むと、
塔ノ峰へと続くトレイルの始まり。
序盤は野放図の竹藪の中に、長らく放置されていたのかと思うほど荒れた道で
朝露に濡れた木々や石が滑りやすく、道も細く、
やはりここがラストだったらば、大変だったろうなと。
しばらく直角に斜面を登るような形だったが、
そのうちに斜面と並行するようになり、
いったん大きく山を右手からなぞるように進む。
少しだけ登りが発生したのちは、
森の中にほぼフラットにつけられたイージーな道が延び、
そのうちに標高566mの塔ノ峰にとうちゃこ。


↓荒れた山道


↓山上まで来ると穏やかに


↓1つ目のピーク、塔ノ峰


時刻は6:50。
ピークというよりも山道の分岐点という方がピッタリな
何もないところで、撮影を済ませたらさっさと次へ進みます。
ここからは若干の下り基調で歩きやすい道が続く。
じきに右手側の茂みが薄まって眺望が出てきます。
この日は予報通り、スカッとしたお天気ではなく、
雨は心配なさそうだが、厚く雲が垂れ込めてどんよりとしている。
その雲間から、方角的に松田や秦野方面の街並みが遠くに見える。
さらにその裏手にある山並みのもう1つ向こうの山並みは丹沢山ではなかろうか?
そして視線を左へと旋回し、進行方向に目をやれば、
雲間から大きな山が1つ2つ。
今から向かう、明星ヶ岳と明神ヶ岳である。
どちらも1100mほどなのに、やけに威圧感を感じるのは、
コンディション不足のせいだろうか。
歩きやすい穏やかなトレイルも長くは続かず、そのうちに一般道へと出る。
ここからしばらく、意外と交通量の多い舗装道を歩くことになる。
山肌に沿ってクネクネと距離を伸ばすので、ダレてくる。
そのうちヘアピンカーブを抜けた先の路肩に登山道の入り口を発見。


↓松田方面の眺望。奥は丹沢山系?


↓舗装道に出る


↓明星ヶ岳登山口


再び山道へもぐりこむ。
鉄塔の先から結構ガレた急斜面がありそこをえっちらおっちらと登る。
一旦斜度が落ち着いたと思ったら、杉林の間に壁のような垂直の登り。
気を引き締めてエイヤと登りきると道は直角に折れ、
その先は穏やかとなり、緑の間を抜けていく。
軽快に森の中を抜けていくと、長いドロドロの溝のような切り通しがあり、
そこをジワジワと登っていく。


↓急登


↓穏やかなトレイル


↓ドロドロ@@


その先進んでいくと、道の周辺はボーボーに伸びた竹藪の間を進んでいく。
意外と背丈があり、眺望を隠しているだけならいいのだが、
ちょうど自分の顔の高さに、ぴょーんぴょーんと垂れてきているので
それをいちいちかき分けるか、頭を上下にせねばならず、意外とお邪魔。
時々左の竹藪がの切れ目に
ちらちらと箱根(太平台?)の街並みが見える。
箱根登山鉄道スイッチバックのキーンという金属音も時折。
道は引き続き穏やかで、そのうちに、
2つめのピーク、明星ヶ岳(924m)にとうちゃこ。8:05。すでに2時間…
何やら石碑のようなものがあり、広々とした場所ではあるが、
残念ながらここも眺望はなく、ただの通過点。


↓太平台温泉の街並み?奥は二子山


↓2つめのピーク、明星ヶ岳


かなり広々としたまっすぐ続く緑の道を進んでいく、
宮城野方面への分岐をスルーして進んでいくと、
時々ボオンボオンと爆発音がする。
いきなりだったので、もしや箱根山が噴火!?とビビるのだが、
どうも音が鳴っている方向が微妙に違う。
何度も何度も色々な種類の爆発音がするので、なんだろうと考えてみたら、
金時山の向こう側からどうも音が聞こえてくるので、
あれはきっと御殿場の自衛隊演習場の訓練の音だろう。
この日は、大きい大砲のような音や、パラパラと機関銃のような音やら
ずっと物騒な音が一日中聞こえてきました。
ここから前方に大きく立ちはだかっている明神ヶ岳を目指すのですが
そこまでに緑の凸凹がだら〜と続いているのが見通せます。
まだまだ序盤戦すら先は長い!


↓トレイルを直進


↓向こうに明神ヶ岳が見える


左手に斜面にへばりついた強羅のリゾート地を見ながら、
緑生い茂るトレイルを上ったり下りたりを繰り返す。
このトレイルには50mおきに道標が打ってあり、
歩いた距離の目安になる。この辺で約7kmくらい。
ただ50mずつだと細かすぎる気がしないでもないけど…


↓強羅の街並みと奥に大涌谷


↓50mおきの道標(この写真は箱根峠付近のもの)


しばらくアップダウンをやっつけると、鞍部に出て、
宮城野への分岐。
ここから前方にようやく人影が出るようになり、
何人かをパスしながら、狭い九十九折れの道をやっつけていきます。
周囲は竹藪から、ブッシュへと変わったかと思うと、
急に荒廃したガレ場へと変化していきます。
周囲に高い木々がなくなり、
ゴツゴツとした石と赤茶けた土の広がる山肌に変わったと思ったら
標高1169mの明神ヶ岳に到着。ここまでちょうど3時間。


↓ここから急登スタート


↓歩いてきたトレイルを振り返って


↓ワイルドな斜面


↓はるか向こうに湘南の海


ここからは真正面に強羅〜大涌谷箱根山を望むことができるのだが
この日は雲が低く垂れこめて見え隠れ。
シンジ君よろしくしばし黄昏ていると、
登ってきた方向からトレイルランナーさんが到着。
しばし休憩と補給で休めてから出発です。


↓3つ目の明神ヶ岳


道は再び豊かな緑に覆われながら下り基調。
ちょうど前方に、次の目的地・金時山
ボコっと雲に突き刺さったような格好であり、
そこに向かって緑の尾根が表情豊かに波打ちながら引き寄せられているのが見えます。
まだまだまだ先は長い。
しばらくすると、道はガレて、急斜面となって一気に高度を下げるようになります。
ふらついて左手をついたらいけないので、
いつもよりも慎重にガレ場を下っていきます。
道も、西へ進んだり、南へ転じたり、細かく進路を変えながら。
今からこの日最高峰を目指すというのに、
こんだけ下っていいの?と不安がっていると
「火打石岳」という標識のある鞍部に出る。


↓今度は金時山を目指す


↓火打石岳とあるけど…鞍部だよねえ


そこからいったん深い森の右側の斜面にへばりつくようにして
細い道がつけられてあって、そこをなぞっていく。
山を右側から迂回するような恰好で乗り越すと、
そこから先は再び竹藪の中。
勢い余った笹が顔のあたりをなでるので
最初は手で払ったり、よけたりしていたのだが、
きりがないので、途中からは無理やり突撃していく。


この辺りになると対向者が結構増えてくる。
みんな全身びっしり山ファッションに身を包んでいるが、
汗だくで疲労している。
自分なんかTシャツに、パンツは膝までまくって、
それでも汗びっしょりなのに、
猫も杓子も雑誌に載っているような格好を律儀にしている。
こんな低山で何をそんな重装備する必要があるのか、
40Lの見るからに重たそうな馬鹿でかいザック抱えて
雨も降っていないのにオサレなレインウェアを着て
暑いなら脱ぎゃあいいのにねえ。
あっぷだうんをこなしているうちに、眺望がききはじめ、
左手には仙石原、正面にはニョッキした金時山がどーん。
緑の草原を抜けるようにして矢倉沢峠に下る。


↓仙石原が見えてきた


↓そそり立つ金時山


ここはいくつかの登山道が分岐していて、
その1つは仙石原の登山道につながっており、
そちらからたくさんの登山客が上がってきている。
分岐点にはうぐいす茶屋があり、
この先体力的にきつい区間が続くし、
どうせ金時山はすごい人だろうから、
ここで腰を下ろして休憩を入れることにする。
150円でサイダーを購入し、ベンチに座っていると、
わざわざグラスに目いっぱい氷を入れて提供していただいた上に、
みそコンニャク2本のオマケつき!
キンキンのサイダーは乾ききった喉を見事に潤してくれ涼を得る。
みそコンニャクもスルスルとのど越し良く、
味噌との相性もばっちりで、
これほど元気の出るものとは今まで知らなかった。
こんにゃくさん甘く見てました!
最高のおもてなしで元気復活し、意気揚々と金時山の登りに挑む。


↓矢倉沢峠にあるうぐいす茶屋


↓ちょっと一服。このセットで150円!


しばらくは緑の原っぱの間を抜けるのだが、
じきに足元は土がむき出しとなり、大きな岩がゴロゴロとしてくる。
長く泥まみれの階段場や、ロープ場などもあり、
これまでと少し様子が違ってくる。
難易度的には全然問題なく、恐怖感を感じる場面も一切ないのだが
とにかく金時山界隈だけはものすごいハイカーの数なので
ちょっとしたところでも渋滞が起こって大変。
上からも下からも、老若男女問わず人が行き交う。
少し停滞しつつも、箱根湯本からジャスト4時間で
この日のチマコッピ、標高1212mの金時山に到着。
案の定ものすごい人が小屋の周りや、岩場にびっしりなので、
看板のところで写真を撮ったらすぐにスルー。
本当ならここから富士山の姿を拝むことができるはずなのだが
分厚い雲が視界を遮っていて全く見えず。


金時山の前後はゴツゴツした岩場が続く


↓大賑わいの金時山


この金時山は一周の円の西北の角に位置しており、
ここを起点としてトレイル東西から北南へと転じ、
いよいよ核心部に入っていく。
まずは乙女峠を目指して、荒々しい稜線を下っていく。
矢倉沢からの道もなかなかワイルドではあるが、こちら側もなかなかのもの。
しかもこちら側から上がってくるハイカーもかなり多く、
ロープ場などでは停滞する。
途中、長尾山という地味すぎるピークを抜けるために鈍い登り返しがあり、
そこから再び一気に峠まで下っていく。
乙女峠のすぐ手前に展望所として、ベンチとテーブルがあり、そこでしばし一服。


↓地味な長尾山


乙女峠


ほとんどのハイカーは、
矢倉沢〜金時山乙女峠区間だけに集中していて、
この先から狐につままれたように人がいなくなる。
道も先ほどとは打って変わって幅広で穏やかなトレイル。
相変わらず右手から砲弾の音が聞こえる以外は静かな山歩きが楽しめる。
わずかにに右手の空が晴れた瞬間に富士山の先っぽだけチラ見。
そのうちに、右手に電波塔をみやって、丸岳(標高1156m)に到着。
ここにもベンチやテーブルが備え付けてあって、
眼下に仙石原を見下ろす絶好の展望所。
何人かのパーティーがのんびりくつろがれているのを横目に先へ進みます。


↓電波塔のある丸岳


↓富士山の先っぽだけ


↓隠れ絶景スポットの丸岳


ここから先は、丈の低い笹に囲われたなだらかなトレイルを下っていくのだが
この辺りは本当に眺望がよく、風が抜けて何とも清々しい。
眼下に見える仙石原の様子と、その先にある芦ノ湖
そしてトレイルの先に続いていく緑の稜線は、
思わず走り出したくなるほどの光景である。
軽快な足取りでトレイルを下っていくと、徐々に竹藪の中へと潜り込んでいき、
稜線の左手側をなぞるようにして同じような道が続いていく。


↓仙石原


↓富士見台


長尾峠


長尾峠を過ぎ、さらに竹藪の中をずんどこずんどこ進んでいくと、
右手側の繁みの向こうがにわかに車の音で騒がしくなる。
ここからトレイルは御殿場方面から箱根スカイラインへと続く道と
沿うようにして進んでいくことになる。
途中で一度、駐車場へ折れる分岐をスルーしたのだが、
料金所を少し過ぎた辺りの繁みの切れ込みから、
料金所へといったん出ることにする。
思惑通り、トイレと自販機を発見し、ここで少しだけ一息つくことにした。
トイレで汗まみれの顔を洗い、
大好きなアンバサの炭酸をあおり疲れを癒します。


箱根スカイラインの料金所で一服


ここで距離だけでなく難易度も加味して、全行程のほぼ中間。
序盤にキツイ坂と標高の高い山をほぼ攻略したという安心感はあるが
ここからは距離が課題となる。
ほとんど休憩らしい休憩も採らずに黙々と歩き登り、
疲労も確実にたまってきています。
足はまだ全然行けるのだが、体がカッカして頭がぼんやり。
ここでしっかりと一息ついて、後半戦へと挑むのであった。
つづく…