『JASON BOURNE』 by P・グリーングラス監督
無敵のジェイソン・ボーンが
9年ぶりにスクリーンに帰ってきた!
2000年初頭まで、
火薬と筋肉の量でしか競い合いしていなかった
アクションスパイ映画に
”リアリティ”という新しい要素を注入し、
金字塔を打ち立てた『ボーン』シリーズ。
非現実的な爆発シーンやドンパチではなく、
現場にあるモノや地形を巧みに利用しながらのアクションや、
手持ちカメラを多用して緊迫したチェイスシーンを演出するなど
新しいアクションの見せ方のリアリティを構築するとともに、
類まれな運動能力や頭脳を持ちながらも、
決して国家をピンチから救うような完全無欠のヒーローでもなく、
アクシデントによって失われた過去の記憶を取り戻しながら、
その記憶によって苦悩し続ける孤独な人間として描かれる
主人公の人間的なリアリティの両面が、
当時は本当に異色の作品だった。
それが、この分野のトップブランドである007でさえも、
その方向性に同調して舵を切る(ブロスナン版⇒クレイブ版)など、
多大なる影響力を及ぼしてきた。
マット・デイモンとポール・グリーングラスの
最強コンビが再びタッグを組んだ最新作を
見に行かないわけがないということで劇場へ。
前作のラストで自由を得たはずのボーンが、
再びCIAの陰謀に巻き込まれてゆく。
アテネの暴動、スノーデンによる監視暴露事件など、
時事問題をうまく絡めつつ、
緊迫したチェイスや格闘シーンがちりばめられ、流石の一級品。
特に冒頭の、アテネの暴動のさなかに
バイクで追ってから逃げるシーンなどは
一体どうやって誰も無傷で撮影したのというくらい。
そして何よりこのシリーズは毎回脇役が渋いキャスティングで
今回は、いぶし銀のトミー・リー・ジョーンズと、
仏映画界きっての曲者で大好きなヴァンサン・カッセルで文句なし。
(モニカ・ベルッチと離婚したの知らなかった!)
そして主人公のボーンはというと
回を追うごとにほとんどセリフらしいセリフもなくなって、
段々デューク東郷みたいになってきました。
毎回エスプリの効いたラストだが、今回も健在。
単品でみると、前の三部作からの目新しさはないけれど、
早くも続きが見たい。