手塚治虫生誕90周年記念 『MANGA Performance W3(ワンダースリー)』
子どもの頃、演劇好きだった母親に連れられて
イッセー尾形さんの一人芝居や、
白井晃さんや高泉淳子さんの遊◎機械/全自動シアター、
”レミゼ”などを観に行っていて、
今思えば、意外と演劇の世界に通じた子供でした。
当時80年代後半〜90年代初頭にかけては、
関西の小劇場ブーム・小劇団全盛期などもあり、
色々賑わっていたという土壌もあったのでしょう。
しかし、自分が中学・高校となるにつれ、
いつしか関心は映画や音楽の方へと移り、
演劇とは疎遠になっていました。
映画や音楽は気軽にCDやDVDで楽しめるけれど、
生の演劇はその分少しハードルがあるというか、
よし!劇を観に行こうという機会がなかったのですが、
去年あたりから、演劇の面白さを再発見して、
色々見るようになりました。
そのきっかけとなったのが、
小さな子供時代の記憶との再会を果たした『夜の子供2』でした。
(観に行くことになった過程は過去記事参照で)
↓過去記事(現代演劇レトロスペクティヴ<特別企画> AI・HALL+生田萬『夜の子供2 やさしいおじさん』)
http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20160920/1474352127
そこに出演していた、坂口修一さんという役者さんがおられて、
ものすごいパワフルで面白いなあと気になってたら、
どうも同じ大学の少し上の先輩ということもわかり、
ブログやツイッターなどで引き続き注目していました。
その後、天王寺のお寺で行われた『指紋は象のはたけ』 という
奇妙な劇にもお邪魔させていただいたり。
坂口さんという役者さんをきっかけにして、
演劇に少しずつ親しんでいくというのもいいかなと。
↓過去記事(森林浴 思考採集イベント 劇 『指紋は象のはたけ』 〜バーチャル社会 in 應典院〜)
http://d.hatena.ne.jp/arkibito/20170116/1484556900
そんな折に、何やら面白そうな劇に出られるというリリースが。
手塚治虫生誕90周年の記念公演で、
もちろん手塚漫画を原作にした『ワンダースリー』というお芝居。
やっぱりこれはぜひ生で目撃してほしいから
あまりストーリーを事細かには書きませんが、
銀河の果てから派遣されてきた3人のキャラクターが
漫画家の真一くんと出会い、
地球を救うべく、悪と戦うSF活劇。
原作が漫画だととっつきやすいし、
しかもプロジェクションマッピングとか、
色々な仕掛けが満載でとっても面白そう。
でも東京のみの公演のようだし、
今年は何度も上京して金欠だし、
何より年末にかけての忙殺のスケジュールを調整するのは至難の業。
これはさすがに無理できないなあと諦めておったのですが、
その後、その劇についてのあまりの賞賛ぶりが、
ツイッター上にとめどなく流れ、
それがまるでサブリミナルのように自分を揺さぶり続けた結果、
根負けしたというか、
もう居ても立っても居られないというか、
たぶん、観なかったら一生後悔する気がして、
上京を決意しました!(笑。大袈裟)
もちろん、せっかくなら坂口さんの出番に合わせたいので
あれやこれやギリギリまでスケジュールの調整し、
どうにか段取りがつきました。
で、せっかくなので坂口さんにお土産を持っていこうと思うのですが、
坂口さんは大阪の人だから、
大阪みやげというわけにもいかないし、困った。
それならば!わが家の工作部隊の出動です。
どうせなら、インパクトのあるお土産の方が面白いだろうし、
ここ最近、色々な人に会うたびにその人の似顔絵を描いて、
それをグッズにしてお渡ししているので、それで行こう!
ということで、さっそくドローイング。
なかなかうまく描けたんじゃないでしょうか!?
笑った時に口元がギュッとなる感じをしっかり出してみました。
でも、よく考えると自分の顔がデカデカとプリントされた
Tシャツを本人が着るっていうのもアレだし、
せっかくなら普段使いしてもらえるようなものにしないと。
そこで、顔を並べて、それを一色ずつ刷り分けて、
カラフルにしてはどうか。
イメージとしてはウォーホールのマリリン・モンロー?
そして、カラフルな顔が並ぶデザインと、
色々な人を演じる=化けることを掛けまして
「Chamereon(カメレオン)」という1フレーズをトッピング。
実際、七変化の坂口さんにぴったりではないですか!?
で、早速いつものレトロ印刷さんで、スリマッカ。
原画を製版フィルムにプリントしてもらい、
キットをセッティングしていざ刷り刷り。
しかし、今回はなかなかハードルが高い!
何しろ、6色+ブラックの7色刷り分けという
とても難解なチャレンジなのです。
スタッフの人もさすがにここまでの多色刷りは見たことがないらしくて
あれこれアドバイスをいただき、
マステで細かく目張りをして丁寧に丁寧に。
慎重に進めた結果、思ったよりもうまく刷り分けることができました。
ということで、これを手渡しするという
新しいミッションもできましたので、
これでますます行かなくてはならなくなりました。
思わず前置きがすっごく長くなりましたが、
そういうプロセスこそ忘れがちなことで、残したいことなので。
で、ようやく本題。
やってきました東京!
しかも、会場がどこかといえば、なんとDDD青山クロスシアター!!
9月10月と、アンサンブルズ東京のワークショップで
何度も訪れたレッドブルスタジオの地下!!
今年はこの場所にとても縁があったようです。
まずは地下へ降りるエントランスから、
楽しそうなSFの世界観が表現されていてワクワク。
チケットを見せて中へ。
照明のライトがぐわんぐわんと回っている不思議な会場。
座席は前から2列目のど真ん中!
座席にはアンケートともにブックレットが置いてあるのだが
それがパスポートのようになっていて、
そこからもうすんなりと世界へと入っていける演出がなされていて
スッバラシイ!
ロビーにも開演まで楽しめる撮影スポットが用意されていたり
その雰囲気からもうワクワクさせられます。
そしていよいよ開演。
客席の裏側から、銀河法廷の係員が舞台へ。
劇中の法廷の注意事項と、実際の観劇の注意事項を
うまくオーバーラップさせながら、いよいよワクワクの幕開け!
縦横無尽に駆け巡るプロジェクションマッピングのオープニングから
すでに胸を鷲掴み!!
そしてそこから、超絶スペクタクルに酔いしれる
あっという間の宇宙旅行へ!!
演者の切れ味鋭いダンスやパントマイム、
漫画チックに大胆デフォルメされたアクション、
大立ち回りのチャンバラにマジックまで、
生身の肉体だからこそ繰り出せる、
実にリアルでダイレクトな皮膚感覚や
汗とともにほとばしる熱量。
ほとんどセリフらしいセリフのないノンバーバルな劇で、
演者は全身全霊を駆使して、物語を紡ぎだす。
と、同時に、舞台転換や黒子の役回りまでをこなし、
たった5人で舞台の上の世界を成立させる、
そのすさまじさ!
チームとしての堅い絆がありありとうかがえるほどのシンクロニシティ。
まさに圧倒的!!
漫画的アニメ的な表現方法で展開する大胆な演出はもちろん、
ハンドメイド的にほっこりと場を和ませる
パペットたちの姿やしぐさに、思わず、
かつてお茶の間でテレビアニメにかじりつき、
純真なまなざしでヒーローの背中を追いかけていた
あの頃の気持ちを蘇らせる。
もうワクワク、ドキドキが止まらない。
そこに、最新デジタル技術を盛り込んだ、
プロジェクションマッピングや音響、
ライティングが絶妙に混ざり合い、
まさに銀河の如く世界を拡張し続けてゆく。
アナログとデジタルがこれほどまでに幸福に手と手を取り合って、
1つの世界を繰り広げるということがあったでしょうか!??
ある意味、総合芸術の一つの到達点と言っても過言ではない!
そしてまた、表現の更なる無限の可能性の予感がする。
とにかく、これはもはや事件です。
とてつもない衝撃をまさに今、目の前で目撃したのだっ!
エンドロールに入ると、
写真撮影がOKになるというサービス付き。
この目くるめく世界をどうにか少しでも長く留めておきたい、
たくさんの人にこの世界を発信したいという気持ちで
バシバシと写真を撮りました。
主人公の真一さんを演じた藍さんは、
もう、その愛くるしいフェイスと
天性のコミカルさが役柄にぴったりで、
存在感も抜群でした。
そして我らが坂口さん。
70分ノンストップ勝負で大汗をかきながら、
あんなにも充実した表情を浮かべて、
おそらく、きっとここにいる誰よりもこの芝居を愛してらして、
ちゃっかり一番楽しんでいること間違いなし!
そういうのを見るとこちら側も思わずうれしくなってしまう。
”風船男”のマジックもお見事!
関口さんの操るボッコ隊長、
母性的なしぐさが細かく丁寧に伝わってきましたし、
途中で出てくる恋に恋焦がれる
水の女の妖艶さったらなかった!
梅沢さんのおかっぱブッコは、
いわゆる「スネ夫」的な役回りなのだけれど、
そのニヒルな感じがとてもよく出ていました。
サイコでアナーキーな臭いをプンプンと醸し出した
白衣の男もCOOL!
そして謎の女スパイを演じた松本さん。
その最初の登場シーンでは、
主人公の家の扉をハイキックでドカーンぶち破るのだけれど、
その高く上げた足の角度がスッバラしくキレイで、
激しいアクションシーンでも、
1つ1つのモーションがとてもきれいで印象に残りました。
兎にも角にも素晴らしいクインテッドの全力投球に
ありったけの拍手。
目くるめく70分間を駆け抜けました。
意を決してわざわざ大阪から見に来て本当によかった。
↓素晴らしいクインテットでした!
全て終わってロビーでまずはアンケートを仕上げる。
差し入れ等は受付に渡すようなのだけど、
どうにか手渡しできないかなあと思っていたら、
ちょうど袖から坂口さんがひょっこり!
ああ、もうゼッタイ今しかない!と大人げなく突撃。
大阪から来たんですとお話をすると、
すごくうれしそうに堅い堅い握手をしていただきました。
で、しょーもないお土産なんですがと例のTシャツをお渡し。
後日ツイッターで触れていただいたようでありがたし。
おまけに記念撮影までしていただきました。
いやあ、大阪から来た甲斐がありました。
素晴らしい時間を本当にありがとうございました!
もうね、できるだけ多くの人にこの芝居を生で体感してほしい。
絶対、何かが心の中で弾けるから。
できれば関西公演もしてほしいケド…
でも、2,3月追加延長公演が発表されたので、
上の娘を連れて再見のチャンスをひそかに狙い中。
ああ、また観たい!