蝶ヶ岳登頂 天国の1日目
土曜日。
前日無事に娘が退院したこともあって、1日遅れながら北アに向かうことにする。
バスの予約はスタンダード上高地行がギリギリ残っていたので助かった。
単品で西穂独標、焼岳は上った経験があるが本格的なアルプスは今回がデビュー。
欲張って無茶をしがちだが、山をナメたら取り返しがつかないので
とにかく今回は無理をしないということを肝に銘じる。
予定としては1日目は徳澤から長塀尾根経由で蝶ヶ岳、ヒュッテで一泊。
翌日は稜線を伝って常念岳〜大天井まで、
最終日は大天井から燕岳で合戦尾根で下りて
中房で下山して、穂高から電車で帰る予定でした。
ただし、直前の予報では1日目からずっと雨の確率70%。
六甲ならどしゃ降りでも上るといったら上るが、アルプスではそうはいかない。
気候条件に大きく左右されるので、予定通りにはいかない可能性が高い。
そのため、もし悪天候ならば、途中数か所エスケープルートを考えておく。
1日目で荒れれば、蝶槍まで行って横尾でエスケープ。
常念で中断する場合は一の沢でエスケープとしておく。
あれやこれやパッキング。水も含めて約11kg。
防寒対策にダウンジャケットや手袋なども入れておく。
あと、山上でぜひ食べたいので自家製キーマをこしらえて入れておく。
と、パッキング途中になぜかハイドレが暴発し少し濡れる…
どうも吸口のところが弱いみたいでちょっとの圧で水が漏れる。
バスで荷物を預けている最中に漏れ出てたら最悪なので、丁寧にビニール袋で口を包んでおく。
21:30に家を出て電車で集合場所の新大阪へ。
夜行バスの出発点としてめちゃくちゃ混みあってた。大きなザックを抱えた人たちも多数。
受付を済ませていよいよバスに乗り込む。
運よく、少し足場の広い最前列の席で、簡易テーブルがついてしかも隣は不在♪
少しでも足が伸ばせるし、テーブルにアゴ肘をつければ前かがみの態勢でも寝れる。ラッキー♪
22:30に出発、吹田から名神に入って消灯。
お盆の帰省ラッシュはいかがかと道路の状況を見ていたが、
上りはスムーズに流れているが、反対側は吹田から京都東までは結構ギュウギュウだった。
帰り大丈夫かなあとちょっと心配。
竜王SAで1回目の休憩。
ここまであまり寝つけず。
小牧から東海北陸道に入ると交通量がぐっと減る。
そろそろウトウトとなるが、色々体勢を変えて寝てみるが熟睡まではいかず。
今回はいい席でラッキーだったが、普通に4列だったら8時間相当苦痛かも?
ひるがのSAで2度目の休憩ののち、高山ICからは一般道。
新穂高に到着が5:00。そこで一部の客を降ろしてから発進。
安房トンネルを抜けて直接上高地にはいかず沢渡へ。
お盆の期間は観光バスも通行規制の対象になっているため、
ここでクリーン車に乗り換える。6:15。
ずいぶんきれいになった釜トンネルを抜けると、朝日に照らされた焼岳がお出迎え。
おお、今日は雨の予報だったがこれは全く心配なさそう。
昨日のうちに入山していれば山上からきれいなモルゲンロートが見れたかなあ…
そうこうしているうちに上高地BTに到着が6:45。
バスを降りてから身支度やら登山届を提出したりして7:00ジャストにいよいよ出発!
↓穂高連峰がみごとにお出迎え
↓上高地BTから出発
まずは約3km先の明神池を目指す。
BTから300mほど歩くと上高地のシンボル河童橋。
すでに大勢の登山客でごった返している。
それを横目にテン場を通過し、白樺の森の小径をズンズン歩く。
歩くペースが速いのでどんどん人をパスしていきながら進む。
舗装はしていないがよく整備されているしアップダウンもほとんどないので楽ちん。
時折植物や花などを愛でつつ、7:30明神に到着。
ひとまずトイレ休憩。
↓河童橋
明神池には寄らずに今度は約4km先の徳沢を目指す。
出発してすぐに石ころだらけの川の沢にかかる橋を渡る。
ここは徳本峠との分岐。
そこを過ぎてしばらく行くと河原が開けたところがあって、
そこから見える明神岳が見事である。
川は左方向へと蛇行していて川の先に常念山脈の山筋がはっきりと見てとれる。
ずっと同じような砂利道を歩き8:15徳沢に到着。
休憩も含めて上高地BTから1時間15分の道のり。
ここでもトイレ休憩するが、韓国人の団体が横入りしたりマナーが悪くうっとおおしい。
徳澤園に少し寄って山バッジを含めおみやをゲット。
(本来の予定では上高地にバックしないルートだったので)
自家製のレーションをほおばりながらしばらく休憩。
8:30にいよいよ本日のメインディッシュである長塀尾根にとりくつ。
↓明神岳が見事
↓自家製レーション。プレツェル&チョコボールの相性バツグンなり
尾根への入り口は、テン場の裏手にひっそりとあった。
ここの標高が1500m、蝶ヶ岳の標高が2677mなので、
ここから1200m分の上り開始です。
横尾、さらには涸沢、槍沢を目指す梓川ルートの盛況ぶりから
いっぺんに人気がなくなります。
さすがにマイナールート。展望もなく鈍いのぼりが長く続くので仕方ありません。
上り始めからいきなり傾斜が厳しい。
深く緑に覆われているので眺望はなく、
木々の間からわずかに向かいの穂高の山すそが見え隠れしている程度。
幸いなのは直射日光を浴びずに済むので、暑さにもだえ苦しむことがないというくらいかな。
それでも急斜面をえっほえっほと上っていると当然汗ダクです。
途中から他にも蝶ヶ岳を目指す登山者と出くわします。
みなすでにヒーヒー苦しそうです。
自分は上りでもペースが速いのかすぐに追いついては道を譲ってくれるという感じです。
対向から下ってきたお年寄りパーティーの人には、
「ゆっくり行きや〜」と声を掛けられます。
一応自分では無理をしているつもりはなく
自分のペースを守って上っているだけなのでそのままキープで上ります。
ひたすらにジグザグと上りが続きます。さすがに暑いし疲れもでてきたが
チャリと同じで足を止めてしまうと、リスタートにものすごいエネルギーが必要なので
ペースを落としながら歩きもって休憩。
ハイドレからちゅうちゅう水を吸い、レーション袋からつまみもって歩く。
途中人に出くわすと、追い抜きをかけるためにペースをガンガン上げていき、
メリハリをつけて上っていく。
どれくらい歩いたろうか?
一度気を切りだしているわずかの広場みたいなのがあって、
そこから道は梓川沿いから東側に山を回り込むようにして、
今度は大滝山の山すそが見え隠れしながらさらに上りが続く。
この辺りから樹林帯だった山肌に、他の花や植物が混じり出す。
途中、こんな標高のところに池を発見。
このくらいになると斜度はだいぶ緩み、ピッチも上がる。
そうこうしているうちにようやく標高2565mの長屏山のピークに到達。
11:10。
頂上は全く眺望が効かず味気ない。
そこからは一転激下りがあり、アップダウンをこなして11:30妖精の池。
少し歩くと樹林帯を抜け、ハイマツ帯となり稜線まではあともう少し!
そしてそして、稜線に出て回れ右をしてみると…
穂高の山々がお出迎え〜♪
もうこれだけで長く苦しい長塀尾根を上ってきた甲斐があるというものです。
完全に報われました。
そうして11:45、標高2677mの蝶ヶ岳登頂。
上高地BTから約5時間、徳沢から3時間15分でした。
そこからはまさに大パノラマが広がっています。
向かいにはきれいに穂高連峰が見え、南から前穂、奥穂、涸沢岳、北穂、
大キレットをはさんで槍ヶ岳までが丸見えです。
遥か下には梓川の流れが見えています。
逆に反対側、東斜面は眼下に安曇野の風景が望めるはずですが
もうもうと白雲に敷き詰められて一切展望なし。
山頂から少し下ったところに蝶ヶ岳ヒュッテが見えます。
予定ではもっと時間がかかって15時ごろに到着する予定だったのだが
思った以上に早く着いたので、これは今日頑張って、
常念までさらに4時間がんばるかどうか悩む。
そうすれば翌日以降の行程がぐぐっと楽になるからなのだが、
この大パノラマに出会ってすぐにサヨウナラするのはもったいないし、
体力的にも一気に高度を上げすぎたし、夜行バスでの寝不足もある。
急いで先を急ぐよりも、この贅沢な景色をゆっくり時間をかけて心行くまで堪能しようじゃないか!
ということで、やはり予定通り、蝶ヶ岳ヒュッテで宿泊することにする。
写真を少しだけ撮って、まずは寝床確保ということでヒュッテに向かいます。
ここでストイックに頑張っていれば常念に行けただろうとあとで後悔するのだが…
でもまあ結果的にはここで存分景色と流星を楽しめたのだから正しい選択でした。
小屋に入り売店横で宿泊の受付。
1泊2食にしようか迷ったが、翌日の朝食を弁当にしてもらう。
受付は8人目で隅の布団をゲットできた。
混雑期には敷布団1枚・掛け布団2枚を3人でシェアして寝るのですが、
この日はまあまあ宿泊客がいたのですが、ラッキーなことに独り占めすることができました。
あと小屋ネタとしては、やはりトイレがものすごい!
貴重な水は使えないので当然ボットン。
しかもバイオ分解するため拭いたティッシュは便器には捨てずに
横に供えられた箱に捨てるので、ハンパない悪臭なのです。
あれはすさまじい体験です。
↓本日の宿泊は蝶ヶ岳ヒュッテ
色々と荷物の整理をして、昼食の準備にかかる。
小屋で食べることもできるのだが、せっかくなら雄大な景色のど真ん中、
穂高連峰と対座して食べようじゃないか!
ということでバーナーやらなんやら食事の用意を担いでいく。
小屋を出る前に缶ビールを買って見晴らしのいいところを陣取って食事の準備。
稜線上は結構風が強いが、プリムスちゃんはがんばりますヨ。
まずは湯を作り、フリーズ米で飯を炊く。
その間にお疲れさんの一杯を頂きながら
移りゆく雲の流れや、雄大な山肌の隅々までを眺める。
15分くらいして米が完成。そこに温めた自家製キーマをオンして食べる。
このキーマは中津の「SOMA」で食べたカレーがウマすぎて感動し、
見よう見まねで食感をいかに楽しませるかということをテーマに家で作ってみたものを
パックして持ってきた。
山上は冷えるだろうから相当辛めにしたが、ちょうどいホット加減でメチャうまかった。
食後は余った湯でコーヒーを入れてまったり。
ひたすら同じ風景を眺めているが、まったく飽きるなんてことはない。
ああ、これが名だたる北アルプスか〜。
あれが奥穂、あれが槍。
あまりの雄大さに、あんなところへはさすがにいけないんじゃないかと思ったりするが
よくよく考えてみれば今いる高さからわずかに500mほどしか違わないのだ。
それにしても人間はすごい。こんな険しく屈強な山にも平気で上ることができるのだから。
いずれは自分も上ってみたいと思う。
そうこしているうちに、疲労のせいか高度のせいか、缶ビール1本が回りだしてきたので
小屋に戻って少し休憩することにする。
↓大キレット
↓梓川からの強風で松本側に立ち込める雲は山を越えられないのだ
1時間半ほど仮眠をとって起きたのが16時。夕食まではまだ時間あったので
周辺をぶらぶらしながら、絶景をゆっくりと堪能する。
周辺にも晩飯までの時間を持て余した登山者が外に出て、
西の空を思い思いに眺めていました。
山ガールの集団は大声で、シアワセ〜(はあと)と叫んでましたね。
夕方になって松本側の雲も退散し、常念岳がくっきりと姿を現す。
スゲースゲー。
個人的には槍よりも常念の器のでかさの方が感動しました。
翌日はあの稜線を伝って常念に上り、そこから常念小屋まで下って
うまくいけばさらに先の大天井岳…
とウキウキ気分でした。
まあ今考えると、あのコンディションであの暴風をまともに受けて、
あの常念までの400mの上り稜線は無理でしたね。
この写真を見ただけでも、あのまま進んでいたらと思うと恐ろしい。
↓穂高の夕景
↓常念岳の器の大きさに感無量
17時になり、夕食の支度ができたので、小屋の宿泊客全員食堂に集合し、
一斉に頂きますをする。
今日の献立は、トンカツに副菜、さつまいもと玉ねぎの味噌汁という組み合わせ。
どれもおいしく頂きました。
最後、味噌汁が鍋に結構残っていて、もったいないし申し訳ないので、
他の人に断って残り全部を飲み干す。
ごちそうさまでした〜。
夕食後は、日没まで外で過ごす。少し気温も下がってきたのでダウンジャケットを装着。
日没できれいな夕焼けを見たかったのだが、
直前になって穂高連峰の裏から厚い雲が張り出し、
また梓川からも雲がとぎれとぎれに上がってくるようになる。
最後の日が落ちるまで粘ってはみたが、雲にさえぎられて日没ショーは不発でした。
それでも夜の帳が下りてゆく山々の姿はなんとも素晴らしいものがありました。
完全に日が落ちて、19時からは無料のイベントに参加する。
蝶ヶ岳ヒュッテには名古屋大医学部の先生と学生が常駐していて、
この日は高山病のセミナーを開いていました。
ちょうど今日曜日にドラマをやっていますが、まさにそのような現場です。
色々とわかりやすく説明されていてよかったです。
最後に簡単に血圧を測ったりというコーナーがあり、
血中酸素を測ってもらいましたが89でした。
昼寝から起きてから少し目まいと頭痛がしていたのだが、まだ高度に順応できていないようです。
順応のペースは千差万別というだけで、誰もが高度障害はある程度発生するもの。
程度としてはものすごく軽く、食べれないとか寝れないとかではないので、問題ないでしょう。
↓夜は名古屋大の医学生による高山病講座
セミナー後、一部の山ガール達が騒いでいるので、何事かと思ったら、
ちょうどペルセウス流星群が見られる日だったらしく、
晴れ間に広がる夜空に時折流れ星がはっきり見てとれた。
なかなかタイミング的にそう見られるものではないので、これまたラッキー♪
写真は何度かトライしましたが、当然真っ暗で無理でした。
少し不安なのは、誰から聞いたか忘れましたが、
アルプスで夜空に星がキラキラとままたく翌日は天気が荒れるということだったはず…
ちょっと心配です。(実際翌日は大荒れでした)
寝る前に明日の支度。
翌日着る衣類を布団に広げ、
汗まみれのタオルをロビーの洗濯をかけるところに持って行って干す。
戻ってくると…ザックの周辺が水浸し…
何事かと思ったら、出発前と同じくハイドレの口からコンコンと水が噴き出している。
自分の寝床の前の廊下一面が水浸しで、慌てて他の人の荷物を避難させる。
幸い他の人の荷物は濡れずに済んだが、自分のザックは底がびしょびしょで、
持ってきたレーションの大半と、着替えた衣類が水没。
不幸中の幸いだったのは、翌日切る衣類が避難できてたこと。
慌てて水をタオルで吸い、ビニールの中に絞り、水場へ持て行って捨てるをみじめに繰り返す。
なんとか30分ほどで拭き終えますが、疲労困憊。
大事な荷物を濡らしてしまったし、翌日にむけて色々と不安が残ります。
それにしてもこのハイドレ…あり得ないでしょう!
どうもラッキーだったのは夕方まででここから色々とケチがついてきたような気がする…
22時には消灯となり、眠りにつきます。
地獄の2日目に続く…