糸魚川ふぁすとらん 後半戦(金沢〜倶利伽羅〜富山〜魚津〜黒部〜糸魚川)
さてさて時刻は18:15ほど。
西の空はすっかり焼けおちて夜闇があっという間に町を覆っていきます。
腹ごしらえも済まし、いざ出発。
近江町市場を出てR159に入ります。
橋場を左折し、風情のある浅野川を渡ります。
この辺もきちんと自転車レーンが敷かれているので、走りやすい。
ただし交通量はすごく多い。
そのうち路線バスとデッドヒートになる。
細かくバス停が設定されているのかしょっちゅう停止するので、
最初は混み混みの交通量だったので大人しく後方待機したりしていたが、
遅々と進まないので途中でフルアタッキングしてぶち抜き、
そのままペースを維持して飛ばす。
で、相当差を開いたのだが、細かく信号に捕まっているうちに追いつかれ、
最後にワザと気味に幅寄せまでされて腹立つ。
あれ、きっと元阪神バスの運転主ちゃうか。
小坂でバスは終点のようでそこからは解放される。
↓浅野川
森本からは左手にJRの高架線が近づいてくる。
真新しい高架はきっと4月に開通する北陸新幹線だろうか。
線路に沿って、若干上り基調の道を進んでいく。
金沢市街地に比べれば交通量は減ったが、それなりに。
この辺に来るともうすっかり暗くなってしまった。
梅田インター口で、どういうわけか道を誤り、
山側環状というバイパスに侵入してしまいちょっと焦る。
交差点までバックして倶利伽羅方面の県道215号に入る。
徐々に交通量も減り、周囲の明かりも減ってきた。
本格的な峠越えの前にいったんドリンク休憩をしたいと思って、
道の駅倶利伽羅にインしたのが19:00。
炭酸でリフレッシュしたら即リスタート。
刈安の交差点で、ローディーが対向から曲がってきたので、
そちらだと間違って左折してしまい、あやうく能登方面へ行くところだった。(汗)
少しオーバーランをして気づいて引き返す。
北陸道県道286号に復帰し、緩やかな上り基調で進む。
本来の倶利伽羅峠はこの県道から少し外れたところにあるのだが、
さすがに真っ暗なので、このまま県道を上る。
JR線がトンネルに沈むポイント、R8との合流するところから、斜度がぐっと上がる。
大きく道は蛇行を繰り返していくのでえっちらおっちらダンシング。
民家もなくなり完全に暗闇の世界。
どうも周囲の草むらがガサゴソ言うなと思ったらイノーさんでした。
上りはいいとして下りは飛び出してきたところに衝突したらまずいな。
ご丁寧に斜度の標識があり、11%とある。意外とあるぞ。
でも暗くてよく分からないので、ドサクサで上ります。
そうして19:40に天田峠に到達。いよいよここから富山県突入!
↓倶利伽羅の登り。11%の表示
↓天田峠にて富山県突入
峠は真っ暗なので写真を撮ったら即下ります。
大きく2度ほどカーブをこなしたら、安楽寺西でR8にぶつかる。
そこをまたいで県道16号をそのまま下ってR471に入り、徐々に市街地に入っていく。
しばらくして石動駅を通過する。石動大橋で小矢部川を渡ると、大田園地帯に突入。
どこがどこかもよくわからないままとりあえず標識だけが頼り。
R8にぶつかる手前の芹川で右折して県道9号に入る。
この道で20km近く小杉まで進むことになる。
この辺になると、景色も単調で変わり映えのないド平坦道となり、
周囲の暗さも相まって、マインドが非常に危機的な状況。
眠いし、体中がビンビン痛いし、みるみるうちに集中力が落ちていくのがわかる。
しかも、この大平原地帯もアゲインストの風が厳しく、なかなか思うように進まない。
どこかで休憩をしたいが、市街地からは遠く離れ、
ただっ広い田園の闇が広がっているのみ。ここが正念場。
同じような交差点をいくつも越えて、大きな庄川にぶち当たったのが20:40。
中田橋は脇に歩行者用の橋があったのでそちらを利用する。
庄川をわたると道は大きく左へと旋回していく。
方角が変わるにつれて風が余計にうっとおしい状況になる。
もう足も首もパンパン。
早く休憩を入れたい。早く飯を食いたい。
もう思考がそっち方面でFIXされだすと、もう本当にヤヴァイ状況。
少し大きな道(県道58号)にぶち当たり、
この辺に休憩できそうな店がないかどうか地図を取り出してチェック。
すると、今いる交差点名が、本来進んでいるはずの県道9号とは違うポイントと気づく。
どこで間違ったか、2つ筋が違うようだ。
大したミスではないが、しかし道なりに進んできたはずなのに…
これは相当疲労しているようだ。
富山市街まではあと20kmほどあるが、そこまでもたなそう。
コンビニはあるが、外で休憩といっても長居できないし、
まとまった休憩を取るにはどこかお店に入りたい。
この際休めればどこでもいいのだが、
欲を言えばこういう時、ファミレスが望ましい。
丼屋はそもそも長居できないし、
ハンバーガーチェーンとかは回転率を上げるために、
椅子とかあえて長居しづらい居心地のよくない造りになっているのでしんどい。
その点、ファミレスはゆったりとソファに体をうずめるし、メニューも豊富。
ドリンクバーをつければ堂々と長居できて、水分補給も十分できるので、
超ロングの場合、ファミレスは本当に重宝するのだ。
いずれにせよ、小杉辺りまでいかないとお店はなさそうだ…
とりあえずガス欠気味なので手持ちのエナジーチューブを注入して急場をしのぐ。
↓中田橋で庄川を渡る
マインドはもちろん、全身がピクンピクンと脈打つ感じで痛みが走っている状態、
眠気もMAXで非常に危機的な状況。
しかしもう少しで休めるはずとペダルをこぎ続ける。
生源寺で左折して県道9号に復帰。相変わらずの農村地帯をかろうじて進む。
途中で小高い丘(太閤山)が前方にあり、エイヤッと上りきる。
赤信号で停止して左右を見渡すと、赤い看板発見!ガストだっ!
これ幸いとルートを外れて、転がるように入店し一息つく。
ああ、休める…
時刻は21時ちょい。料理を注文し、ドリンクバーをがぶ飲みしまくる。
残り距離を換算すると100kmを切っている。
このままのペースで行くと6時間かかったとして、3:30に糸魚川に着く。
そんな真夜中にゴールしても何も見えないし撮れないし、身動きがとれない。
そのため、時間調整の意味も込めて、2時間ほど休息をとることにする。
ダラダラと飯を食べながら、ウトウトと仮眠。
ひたすらドリンクを飲み、また寝落ち。
ひさびさのロング、というより久々の自転車で、かなり疲労の色が濃い。
今は次に備えてできるだけ体を休めることだけに集中する。
そんなこんなで2時間ほど経ち、多少は体力を回復して、
ダラダラとリスタートの支度。
そうして再びマシンに乗り込むが、お尻が痛い痛い…
でもこんなところで終われないので、気をしっかり保っていきます。
県道9号に復帰し、再び殺風景な田園地帯のストレート道を進む。
前方にぼんやりと小高い森が連なっているのが見えてくる。
道はその森をなぞりながら少しずつ方向を変えていく。
茶屋町で県道44号と当たり、右折。
小さな峠を越えて反対側へ下ると、周囲も賑やかになってくる。
右手に富山大のキャンパスが現れ、道も幅広となり路面電車がセンターを行く。
きれいな道で非常に走りやすい。
雰囲気から富山市街はもうすぐとわかり、気分も前向きになってきた。
えっほえっほとペダルを漕ぎ、大きな大きな富山大橋を渡ります。
丸の内で路面電車とともに左折をし、北上に転じる。
にわかに交通量も増え、タクシーの出入りに注意しながら進み、
ついに富山駅に到達!イェイ!
時刻は23:50。駅前はまだまだ賑やかそのもの。
いやあ、富山まで来た。富山まで来た。でもここはまだ通過点。
↓富山大橋で神通川を越える
↓富山駅にて
富山駅ではさっと写真を撮ったらすぐにリスタート。
時刻も0時を過ぎ、少し肌寒くなってきました。
やはり関西に比べると北陸は少し季節が先をいっているようだ。
ひんやりとした空気の中、再びゆっくりと進み始めます。
一旦すぐにJR線をくぐり、牛島新町で右折。
少しばかり路面電車と並走して直進。
もう一度JRをくぐったら県道65号に入る。
交通量もほとんどなく、快適なナイトライド。
五本榎でR41に入ると少し交通量が増える。
すぐにR8滑川富山バイパスをくぐって北上を続ける。
針原中町でR415となり、そのまま常願寺大橋を渡る。
橋からは富山平野の東側がうっすらと見渡せる。
真っ暗な田畑の海原に点々と人工の灯りが散らばめられている。
その先にすうっと天まで上がっているより黒い塊はきっと立山連峰へと続く山並み。
ああ、思えば遠くへ来たものだと感傷に浸る。
橋を下りきった先でR415と別れて、大きく左にカーブしながら県道135号に入る。
ここから先はこの道1本で魚津まで行くことができる。
この道は去年暮れに高熱隧道ツアーの際に電車が遅延して、
富山から代替タクシーで走った時に使えるなあと思っていた道。
交通量も少なく、フラットストレートで無駄がないのだが、
なにしろひたすら変わり映えのない単調さがマインドにこたえる。
向かい風はあいかわらずだが、夜も深くなるにつれて収まってきている。
でもこちらの体力は限界に近い。
さっき小杉で十分休憩を取ったはずなのに、ひたすら眠いし、ツライ。
残りゴール地点までは70km程度となり、それほど慌てることもない。
休憩したところだが、このままではいかんともしがたいので休憩を
と思っていたら、滑川に入ったところにマクドがあり緊急ピットイン。
30分ほど失神する。
1:30となり、ヨロヨロとリスタートする。
あとはもうごまかしごまかし行くしかない。
無理せず少し仮眠を取ったのがよかったのか、
リスタートしてしばらくすると頭のモヤモヤも収まってきた。
早月大橋を渡りいよいよ魚津。入ってすぐに猫っぽい交差点。
周囲もの少しは住宅や店舗も増えるが、
さすがにこんな時間。ひっそりとしている。
少しアップダウンをはさんで魚津を後にする。
↓魚津市突入
魚津を過ぎ、長かった県道135号は江口でR8に吸収合併される。
道幅十分でのんびりと走る。時々、けたたましく音を立てて大型車が行きかう。
こんな時間でも大型車が行きかっているということは、
オーラスの難所が少し不安だ。片貝川をわたるといよいよ黒部市に突入!
まさかまさか黒部の標識をサドルの上から見る日が来るとは。
なんかとても感慨深い。
時刻は2:15。
↓黒部市突入
黒部市に入り、富山地方電鉄をくぐる。
さすがに2時を回り、眠気が再び襲ってくるようになる。
肌寒さで筋肉も思うように動かず疲労の色が濃い。
少し先のセブイレで一旦ブレイクすることにする。
いつものようにフルーツゼリーの甘みに癒され、
そしてここぞという時に残していた秘密兵器レッドブル注入!
これでもう糸魚川までしのぎきる!
黒部大橋を渡ったのが2:50。
この川を遡上すれば宇奈月〜黒三〜黒四〜雲ノ平〜鷲羽岳へと続いているのだなぁ。
なんかすごい。
我ながらよくここまで来た。
黒部川を渡ると徐々に山肌と海とに囲まれた狭い狭いエリアへと入っていく。
上野でR8はバイパスと合流。入善の市街地を抜けていく。
朝日町に入ると、ウラ寂しい集落へとはいっていく。
朝日IC前では舗装工事中なのか、アスファルトが全面はがされてとても走りにくい。
この先、トンネル回避のためにR8をはずれて海際を走る県道60号へと向かう。
泊の集落に入ったのが3:30。まだまだ夜闇が濃い。
この少し先へ行くと、広義の意味でいう「親不知・不子知」の西の端に当たるエリア。
日本列島を南北に貫いてきた北アルプスが突如として日本海へ没する地点であり、
険しい断崖に激しい日本海の荒波が押し寄せる難所中の難所である。
古くから越中〜越後を結ぶ交通の要である北陸道は、
あまりの険しい山並みに内陸に迂回路を取ることができず、
明治期までは文字通り波際のルートを通っていた。
人々は荒波に削り取られた絶壁にわずかに残る磯を頼って、
容赦なく押し寄せる波が引くタイミングを見計らっては前進をするというような
非常に危険な往来を余儀なくされ、当然、海にさらわれる犠牲者も後を絶たなかった。
そのあまりの厳しさに、親は子を、子は親を省みることができないほどに険しい
というところが名前の由来の1つとされている。
明治天皇の北陸巡幸に合わせて、より内陸側に国道が整備され、
以降、幾度となく改修工事が繰り返されているが、
絶対的に困難なロケーションであるがゆえに、
現在も日本有数の難所であることに変わりはない。
特に、日本側としては東日本と西日本をつなぐ唯一の道であり、
幅員不足、見通しの悪いカーブの連続等々、
そしてWEB地図では確認できないのだが、
ほぼ全区間にわたって洞門化されていて非常に困難な酷道でありながら、
大型車がひっきりなしに往来するローディーにとっては悪魔のような場所である。
そんな決して通りたくない難所ではあるが、
そこを抜けていかねば目的地である糸魚川にはたどり着けぬ。
他にエスケープできるわき道はない。意を決して突入を開始する。
核心部については覚悟を決めて突入せねばならないが、
そこまではできるだけ裏道を使っていく。
泊の集落を抜けるころには右手からJR線が寄ってくる。
R8は長い城山トンネルで山腹に潜んでいて確認はできない。
このあたりに来ると、ザバ〜ン、ザバ〜ンと波の音が静寂を切り裂くようになる。
左手はすでに目前に海が迫ってきている。
道はいよいよ海の真横を行く。ガチガチに護岸を固めたコンクリの先に、
絶望的な暗闇が広がっていて、その闇から勢いよく白波がこちらへ迫ってくる。
それはまるで、こちら側を引きづり込もうとしている悪魔の手に見える。
しばらく進んで、宮崎の集落に入る。
こんな波打ち際に、びっしりと寄り添うようにして民家がへばりついている。
集落は異様な静けさをたたえていて、嵐の前のなんとやら、
妙な緊張感がヒリヒリと全身を駆け抜けていく。
正直走る前からこれほど緊張する道は今までない。
越中宮崎駅の手前でJR線をまたぎ、いよいよR8に乗る。
対向はバンバンとトレーラーやらタンクローリーやら、
馬鹿でかい巨体を揺らしながら轟音で駆け抜けていく。
もうそのスピードも高速道路のそれ並みで圧がすさまじすぎる。
幸いにしてこちら方面の道はそこまで頻繁に車が来ない。
それでもこまめに後ろを確認しながら、車がいない間にダッシュする感じ。
境の交差点の脇に休憩所があるのだが、
そこに出入りする大型トラックの数がエグイ。
大蛇の巣に遭遇してしまったかのような絶望感を感じる。
見なかったことにして、わずかだがR8をはずれ、境の集落に逃げ込む。
もうここを過ぎれば、少なくとも核心部にある天嶮まで6km、
道の駅親不知まで10kmは地獄の特攻ゾーンに入る。
一旦集落にある自販機でドリンク休憩を入れて、気持ちを整える。
ハアハア。ドキドキ。
R8に復帰すると、しばらくして境橋を渡り、これでいよいよ新潟県に突入!
時刻は4:00。
あえて早朝明け方を選んだのは、一番交通量が少ない時間帯だからなのだが、
果たして吉と出るか凶と出るか…
R8に合流すると、当然交通量は増える。
常に後ろを確認しながら軽くスプリントモードで展開していく。
普通の自家用車でもかなりスピードを出しているし、
大型車が来たらそれはそれは身がすくむ。
まだ、対向が来ていない場合は、
大げさにセンターラインを割って追い抜きをしてくれるのでいいのだが、
これが対向が差し掛かったタイミングだと本当に恐ろしい。
そういうことにならないように、ぴいっと飛ばしては、後ろを確認し、
後続車が来ていないかどうかぬかりなく目を光らせる。
市振駅を過ぎると、いよいよ狭義の意味での親不知に突入する。
ここまできた以上もう後戻りはできない。
とにかく落ち着いて慌てず行こう。
↓どさくさ境橋で新潟県突入!
まるで地獄の一丁目のようにぽっかりと黒い穴をあけて待ち受ける洞門。
きちんと整備されたトンネルではなく、
波と雪に削られ崩落の激しい岸壁から道路を守るために
ガチガチに固められただけのトンネルなので、照明もなければ、
十分な路肩もない。
ほとんど真っ暗闇の状態で突っ込むのは昼間でもかなり勇気がいると思われる。
一旦入口で停まり、後方からのライトが見えないかどうかしばらく観察。
すると、洞門の中から地獄に落とされた罪人のうめき声のごとく
ゴゴゴゴゴゴ〜と激しい爆音が轟いたかと思うと、
突き刺すような光を放ちながら馬鹿でかいトレーラーが
まるで狂気じみた速さで道を転がり落ちてきた!
あああ、もう怖すぎる。
しかし行くしかない!行くしかないゾ!
後方からライトが来ていないことを確認し、いざ特攻!
こちら側からは天嶮までひたすら6%前後の上り基調。
ゴリゴリ踏んでいきたいが、飛ばし過ぎてもまずいので、くるくる回していく作戦。
道は海岸線に沿ってへばりついているため、1ケタ国道とは思えぬ蛇行ぶり。
右へ左へとトンネルが振られているので、光が届かず本当に暗い。
前の具合がよく確認できず、
突然トレーラーがはみ出し気味に向かってくる。
これ以上の絶叫マシンはないんじゃないかというくらい怖い。
そうして1つ目の洞門を抜けると間髪いれずに次の洞門。
そういう状況が何度も何度も続く。
当然全区間を逃げ切れるはずもなく、
後方に車を察知したら、できるだけ見通しのいいストレートの場所で
一旦停止をして壁のキワキワに身を寄せて車が過ぎるのを待ったり、
洞門が切れるところまで全速力でぬけて、出口のわずかな広がりで待機など。
緊張感はピークに達し、かなり疲労しているが、
恐怖心が勝り、とにかく早く切り抜けたい一心。
長い洞門を抜け、すぐに次の洞門があるのだが、道はなんと直角に折れてる。
こんな道聞いたことない。
ここをトレーラーは苦労して曲がるんだろうが、そんな場面には出くわしたくない。
ちなみにこの洞門には「浄土」という地名が記されているが、
これは糸魚川方面から親不知を抜けてきた人たちが
ようやく難所を抜けてきた場所だからである。
しかし、ここまでも十分エゲつない道だが…
浄土のトンネルも長く、きわめて危険な位置で後方からトレーラーが!
慌てて回避行動を取り、海側に連なるコンクリの柱と柱の間に体をねじ込み、
マシンをできるだけ柱に寄せて待機。
まばゆい光と轟音が真横をかすめていく。おおお、怖っ〜!
まるでダイハードのマクレーン警部になったかのような超アクション。
そうしてようやく天険トンネルに到達したのが4:20。ゼエゼエ。
まだ難所の1/3しかクリアできていない…
この天嶮と呼ばれる地域がこの親不知のハイライトとなる超難所。
トンネルはこれまた最小限度の広さしかなく危険極まりない。
しかし、明治に造られた旧道が「親不知コミュニティロード」として利用されていて、
このトンネルを回避できるのだ!ありがたや〜。
ということでここからしばらくはセーフティーゾーンということで、
トンネル脇の旧道入口でへたり込む。あああ、怖かったヨ〜。
しばらくしてリスタートし、旧道へ入ります。
こちらはあまり手入れされていないようで道の真ん中まで草木がボーボー。
暗くて見えづらいので慎重に進みます。
右手は断崖絶壁でいつ上から落石があるか怖い。左手もまた切り立った絶壁で、
下の方から、バリ、バキ、ド〜ンと強い波が容赦なく打ちつける音が響いている。
昔はそのはるか眼下に道があったというが信じられない。
途中で、展望台のようなところがあり、そこで休憩します。
色々と写真を撮ってみるのだが、まだ真っ暗闇で何も映らない。
時間的には別に急いでいないし、もうじき朝が明けるのだから、
写真が撮れるくらい明るくなるまでここで待機することにする。
なにせ、再びあの道を走りたくないので、写真を撮るのは今しかチャンスがない。
それに、あの地獄にまた飛び込むには一旦落ち着いてからでないと。
真っ暗な吹きさらしの展望台でちょっと仮眠します。
言ってみれば数々の犠牲者を出した難所のど真ん中なのだから、
見える人には何か見えるかもしれない心霊スポットかもしれないが、
もう心身ともに消耗しきっているし、普通に眠れた。
5時ごろになりうっすらと東の空が白み始めてきた。
が、分厚い山肌にさえぎられて日の光が届くのにはまだ時間がかかりそう。
まだ十分とは言えないが、それなりに写真が撮れたので、
本格的に朝になって交通量が増す前にリスタートします。
少し絶壁を下っていくと、親不知観光ホテルがあり、
そこで公衆トイレをお借りします。
時刻は5:00。さて、ここからまた恐怖の洞門が3kmほど続きます。いざ!
↓親不知観光ホテルのう回路にある展望台から糸魚川方面を望む。洞門が続いてる…
展望台から洞門が続いているのは確認していた。
じっと観察してみると、新潟⇒富山方面は結構バンバン車が来るのだが、
富山からはタイミングを合わせればセーフティーにいけそう。
天険トンネルの出口で車が来ないか見図り、そこからエイヤと洞門に突入!
こちら側はひたすら下りなのだが、路面はあまりよくないし、
左右に道は振られ、暗くて前がよく見えないというリスキーな状況。
なおかつ後方の車の気配にも気を配りつつということで、
全方向に神経を張ってひたすら逃げる。
途中で何度も対向車のハイビームにびびらされながら、
転がり落ちるように下っていく。いったん洞門を抜けると、
道はΩ形に展開。なんじゃそら〜。絶壁をなぞりながらテクニカルな下り。
にしても、本当に無理やり取ってつけた道だなあ。
ずっと緊張しながらバンピーな道を駆け下りてきて手もしびれてきた。
と、風波のところにわずかな展望台を発見し、一息入れるために停止。
あらためて恐ろしい場所だ…
写真を撮っている間に、後方からバンバントレーラーが通過していく。
ああ、ブレイクを入れて大正解。
しばらくΩ道の上部とにらめっこし、車が全部はけるのを見届けて、
再び恐怖の道へイン。
徐々に傾斜も緩やかになり、外灯の明かりで見やすくもなって飛ばす。
そうして平坦になってようやく安全圏に入り安堵する。
右手から突然ぬうっと北陸道のデッカイ図体が山を貫いて海へと飛び出す。
海上に何本もの巨大な柱を連ねながら、高速は続いている。
それと並行するように、こちら側の国道とJR線は、
絶壁の真下にあるわずかな平地を頼りに延びていく。
ここまで来ると随分空も明るくなってきた。
高速の下に道の駅親不知ピアパークが設けられており、
そこへ入ってしばし一服。時刻は5:15。
ようやく親不知地区は抜けることができたが、
ここからは子不知というもう1つの難所へと突入していく。
↓北陸道もえげつないところを通っているゾ
しばし休憩ののち、子不知へいざ。ここさえ抜ければゴールはもうそこ!
気を抜かずに行きます。
道の駅を出ると、高速と同じように国道も海上のストレート道となり、
そこを爆走する。
何度もでかいトレーラーやタンクローリーが横をかすめていくが、
高架橋もあまり十分な路肩がなくヒヤヒヤする。
向こう側の圧にあおられてそちら側に吸い寄せられるのを
どうにか全身で押さえつける。ゼエゼエ。ツライ。
そうして子不知エリアの入り口である鬼ヶ鼻トンネルへ突入!
こちら側は逆に少し上り基調で、えっちらおっちらキワキワを走りながら進む。
親不知は波間を避けるように断崖のはるか上に道が設けられていたが、
子不知はそちらに比べるとずいぶん標高が低く、洞門の柱と柱の間から波間が見える。
とはいえ、そんな悠長に海を眺めるわけにもいかずひたすら特攻。
そして車が来たら柱と柱の間に緊急退避!
途中子不知高架橋という長い橋がかかっていて、
その区間だけは歩道がとられていて写真を取りつつインターバル。
山側には廃棄された旧道がすさまじい荒れ具合を見せていたが、
この区間も日本の近代土木技術を結集した一大プロジェクトの跡を垣間見える。
さてさて、恐怖の区間もあと残りわずか、
気を引き締めて残りの洞門を切り抜けます。
最後の残りかすも全部投入して、ゴリゴリ踏み倒して
ようやく最後の洞門を抜けた時の、恐怖からの解放感と言ったらもう。
ああ、とにかくやりきった。最大にして最悪の難所を抜けた〜。
青海でR8を下りて、ヘロヘロの状態で県道155号に入った時には
もうもぬけの殻ですよ。ホント。
そんな頑張った自分を祝福するかのようにおだやかな朝が迎えてくれました。
↓カーブの先から突然顔を出す、迫りくる対向車の圧と爆音もすごい
県道155号をヘロヘロと東進し、のどかな集落を抜けていきます。
須沢でいったんR8に復帰するが、北陸新幹線の高架で左折し裏道へ。
そして姫川にぶつかったので、せっかくならということで河口まで行く。
白馬から日本海へそそぐこの姫川を渡ればいよいよゴールの糸魚川です。
時刻は6:00。
↓南を向くと雨飾山
ちょこちょこと港湾地区をなぞって、糸魚川駅前へ到着したのが6:30。
本当は余力があれば、松本まで言ってみるというプランもあったのだが、
そちら方面も台風の影響で状況が悪いそうだというのと、
もうさっきの親不知ですっかりオールアウトしてしまい、戦意喪失。
久々に400km越えをしたし、ここで終戦とします。十分やったっしょ?
↓朝日が昇る。奥は来春開通の北陸新幹線
↓糸魚川駅にて打ち止め
休憩と祝杯をあげる前に、電車の時刻を下調べ…
ん!あと6分で始発が出る!しかもそれを逃すと1時間15分待たされる!
大急ぎで切符を買い、2分で輪行収納(おそらく自己ベスト)、
最後はビンディングをカチカチ言わせながら高架橋を渡り、
扉が閉まる寸前で駆け込みセーフ!ふぃ〜。最後の最後までビビらせないで〜。
ろくな準備もなく電車に乗り込んだので、腹も減って喉も乾いているが我慢。
走りだしてしばらくしてさっき地獄を見た親不知を通過する電車。
車窓を眺めながら、あらためてえらいところだったなあ。
それを見届けると疲労が襲ってきてZZZ…
気づいたら既に東富山を通過。
富山駅で一旦降りて、ブレイクします。
1時間後のサンダーバードの切符を購入し、
そこから汗ふきシートを購入し入念に全身をふき取ったり、
おみやげを購入したりあっという間。
きちんと祝杯のビールとアテも購入し、準備万端。
特急からあっという間に通り過ぎていく、これまでの道のりを眺め、
やはり電車は速いと再確認して寝落ち。
昼ごろに大阪に到着し、十分な休養を取りましたとさ。
↓サンダーバードで祝杯