記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

Tour de チーバ君 第2区間:外房エリア(犬吠埼〜九十九里〜大原〜鴨川〜野島崎灯台〜館山)

さてさて、千葉一周ライドもようやく1/3を消化。
寒さのせいか、それとも土地勘がないせいか、いつもよりも道のりが長く感じます。
感動の犬吠埼での朝焼けショーを鑑賞し、再び走り出します。
軽く補給をしたい感じなのだが、周辺の商店は閉まっているのでしばらく我慢。
岬から県道254号に戻って、しばらく進みます。途中で犬吠駅の方へと移動し、
線路沿いに少し進むと、銚子鉄道・外川駅に到着。
なにやらレトロ感満載の小さな小さな終着駅で、
車止めには1両の古い車両が佇んでいます。
銚子鉄道はなかなかに経営難続きの路線で、
鉄道経営のほかに名物の濡れせんべいを製造・販売して運営資金に充てている。
それはそれは大変な鉄道です。
おまけにちょうどこの日の前日に脱線事故を起こして運休でした。なんと!


↓銚子鉄道・外川駅


↓レトロな車両


↓味のある終着駅


駅を後にして、外川の集落を抜けていきます。
突き出た長崎鼻の狭い台地にひしめき合って住宅が続き、
狭い路地と漁港へ向かって急な坂道が続いている静かな町でした。
海辺まで下ってしまうと、あとでまた上り返さなくてはならないので、
集落を西へと突っ切っていきます。
集落を微妙に上っていくと、今度は一面の畑となり、少し広い道に合流します。


↓坂の町・外川


少し林のようなところを抜けると、
県道254号と県道286号の立体交差部分に出る。
これを海岸沿いの道である、県道286号へと入る。
県道286号は、この道が貫いている屏風ヶ浦と呼ばれる景勝地が、
イギリスのドーバーのホワイトクリフに似ていることから
銚子ドーバーラインという愛称で呼ばれている道だそうだ。
この走りやすい道をチョイスして走っていきます。
その名称に反して、眺望はあまりよくありません。
何しろ見るべき屏風ヶ浦そのものの上を走っているので、ホワイトクリフは見えないし、
かなりアップダウンが大きいため、海もほとんど見える場所がない。
道自体は走りやすいのだが、ちょっと肩透かしである。


銚子ドーバーライン


途中で見晴らしの様さそうなところを発見し、少し入ってみる。
そこで駐車していた人たち(何かの撮影クルーらしき)が、
ここは許可をもらって入っているので、入っちゃだめだよと声をかけてきた。
(後でわかったが、ドラマの撮影で玉木宏や剛力さんおったらしい)
写真だけ撮らせてもらっていいですかというとOKしてもらえたので、
そこから屏風ヶ浦の写真をパチリ。
20台も前半、まだベッカム旋風吹き荒れる頃、
北はブラックプールから南はドーバーまで、
(さらにそこから海峡を渡ってフランスのカレーまで)
イギリス縦断旅をしたときに、ドーバーのホワイトクリフを実際に見たが、
確かに雰囲気はそっくり。
ホワイトというよりイエロークリフだけど、思った以上に迫力のある絶景だった。
せっかくなら、どこか展望台とか設ければいいのに、もったいないなあ。


↓東洋のドーバー屏風ヶ浦


写真を撮って、さきほどの人にお礼を言ってリスタートします。
思った以上に道がアップダウンが激しく、先ほど補給をスルーしてしまったために
厳しいハンガー状態に陥る。
ポケットからハイチュウを出して、3つほど放り込んでどうにかごまかすのだが、
全く力が出ない…
ヒーハー言いながら走っていると、後方からマウンテンの人にシャーっとパスされる。
でも今は全く太刀打ちできない…む、無念。
そのまま何度も押し寄せるウェーブを必死こいてしのぎ、
前方にようやく小さな町を認める。
小さくイオンモールが見えるし、あそこまで耐えれば何か絶対食べ物にありつける!
焦る気持ちを抑えて、無駄にパワーを消費しないようにじっくりじっくり進む。
最後の最後に一番デカいウェーブがやってきて、そこをのっしのっし上る。
その間に、さっきのマウンテンをパス。どうにか面目躍如だぜ…。
そうしてようやくドーバーラインを抜け、三崎町で左折してR126に入る。
入ってすぐのところに、サンクスを発見したので、一目散にイン。
イートインはなかったが外にベンチがあったので、
そこでインスタントの味噌汁と、温めてもらったおにぎりを食べる。
が、その味噌汁がイマイチだったのか、ちょっと気分が悪くなってくる。
しかし食べねば動けないので完食し、トイレを済ませてリスタートする。


食べ終わる頃には体もすっかり冷え、
放射冷却の影響か冷えがとてつもなくて泣きそう。
早く体を動かすためR126をクルクル回していくが、
この時間からすでに交通量がかなりあり、
また路肩が十分ないうえになぜか砂まみれで非常にスリッピー。
ナーバスになりながら、ひたすら進む。
体が温まり寒さはどうにかマシになってきたのだが、
先ほどからどうも胃がムカムカ調子が悪く、そのうち急激にさしこみが…
大ピンチを迎え、脂汗をかきながら、それともこの先にコンビニがあるのか、
それともさっきのサンクスまで戻った方がいいのか、軽いパニックに陥るが、
気を保って前進することにする。
そうして道の反対側に、ミニストップを発見!
ああ、それならさっきサンクスをスルーして店内で休めばよかった…
しかしそれは仕方がない。
とにかく助かった〜。大急ぎでマシンを止めてトイレに駆け込む。
もう大崩れ状態でトイレにこもりまくる。
あああ、ものすごく調子が悪い。腹に力が入らない。大丈夫かあ…
トイレでずいぶん体力を消耗してしまってすぐにリスタートできそうにない。
温かいお茶を買って、ヘナヘナ〜とイートインに座り込む。
ああ、なかなか厳しい状態になってきたぞ…
少し予定時間をオーバーしてしまうが、30分ほどここで休憩を入れ、
仮眠をしつつ体力回復を図る。
先ほどの補給から5kmも来ていないのに足踏みが続く…


そうして、リスタートするのだが、どうもパワーがみなぎっていないので、
出がけにレッドブルドーピングを入れる。
これで、ペースを回復できるはず!と期待していたのだが、
これが裏目に出ることになる。
外に出ると、寒さが厳しく、そのせいで胸が硬直しているのかキュウという感じ。
そこにレッドブルの影響で動悸が非常に激しくなって、苦しくなってくる。
そうなると、胸に負担をかけれないので、ペースを上げれず、
苦しい苦しいと感じながらとにかくゆっくりでもいいから全身を続ける。
腹の痛みに加えて、胸の違和感まで追加され、本当に具合が悪い状態。
ああ、やっぱり極寒期のロングは無謀だったのか?
しかし、続けるにせよ、やめるにせよ、それなりに走らないとダメなのは同じ。
じゃあ走るしかないのです。
できるだけ体に負担をかけないようにダラダラと進み、
そのうちに体が回復するか、ごまかしが効くか期待するしかない…。
銚子市から旭市の飯岡までは、2つほど小さなの上りがあり、
まあそこそこ斜度もあって、とにかく心配が跳ねないように跳ねないように、
重々の慎重さでじっくり上る。
それでもドーピングのせいで胸はバンプするので本当につらい。
どうにか上りきり、集落を抜けると、カーブの連続するテクニカルな下り。
交通量も多いのでとにかく慎重にハンドルをさばいていく。
R126は飯岡BPとなって、ここから内陸側へと進んで行ってしまうため、
下りきったところの交差点で左折して県道30号に入る。
そこから飯岡漁港を何度か折り曲がりながら海岸沿いの道となる。
海岸に出ると、それはもうえげつないほどの向かい風…
予想はしていたが、ここまで強いとは思っていなかったヨ。
新たな敵に四苦八苦しながら、進んでいくと、
遠くに弓なりに連なっている九十九里が一望。
ああ、スゲー。スケールがデカい。
というか、あそこに見えている場所までどれくらいかかるんだろう。
果てしなさに目がくらくらする。


↓飯岡から九十九里を一望。果てしない…


向かい風の中車道で悪戦苦闘していたのだが、
途中から浜との間に自転車道が出現したのでそちらへ。
快適かと思いきや、吹き上げられた砂が乗ってスリッピーで、
目の細かい砂が堆積した個所はロードタイヤでは確実に足を取られる。
しかも現在護岸工事中のため、道は所々で予告も迂回路もなく、
突然にブツ切られ、マシンを担いでガードレールを越えねばならない個所もあり、
これじゃあ完全シクロじゃねえかと毒づきながら、結局県道30号に戻る。
風に苦労しながらも、途中までは海を眺めながらのんびり走っていたが、
途中からこの道もわずかに浜から距離を置いて集落を抜けていく道となる。
もう完全に場末感を漂わせているうらびれた集落を黙々と進んでいく。
浜から外れて少しは風が弱まるかと思ったが、無駄な期待だった。
踏んでも踏んでも埒が明かず、
果てしなく続くド平坦の一本道は少しも減る様子がない。
これは、素晴らしきシーサイドラインを疾走♪という戦前の期待とは逆で、
相当にハードな予感がしてきた…
そのうちに道は足川浜のライオン信号のところにぶつかりそちらを左折する。
標識を見てもさっぱり土地勘がないので、よくわからないが、
特に「匝瑳市」は読めん…
とりあえず、浜側を進んでいれば間違いはない。


↓足川浜


浜にそって続く県道30号をただひたすらに進む。
左手は丈の砂防林がつづき、
道に沿って低い家々が大地にへばりつくようにして立ち、
ただ空がぽっかりと大袈裟に広がっている。
その中に全く変わり映えのない道がはるか先まで終わりなく続いている。
まるで無限ループに放り込まれたかのような感じで呆然とするしかない。
そうして厳しい向かい風が吹き、腹を壊し、激しい動機に苛まれている。
もうオワリを感じざるを得ない。
それでもここでマシンを降りたら一生帰れないと感じるようなほどの
単調で一平面の風景からなんとか抜けださねばという
焦燥感のようなものに駆り立てられて、彷徨える亡霊のごとくペダルを回す。
向かい風に押され、25kmが精いっぱいの状況で黙々と進むが
ランドマークとなりうるようなものが一切なく、どのくらいまで来ているのか、
あと何キロあるのか、地図を見ても場所が特定できない。
あいにくサイコンも不調で表示が飛び飛びなため、距離表示もアテにならない。
とにかく黙々と進むしかない、まさに地獄の時間。
砂あらしに引きずり込まれたような感じ。
海はすぐ左手にあるのに、それが見えることもなく、ひたすら淡々と進む。
そのうちにそこそこ大きな川があり、
それを渡ったところに、自転車道の表示があったのでそちらへシフトしてみることにする。
やっぱりせっかく九十九里へ来たのだから退屈でも海を見ながら走りたいじゃない?
それで川べりに沿って海へと向かうと…
ああああ、一目でロードでは走行できないことがわかる。
サラサラの砂が道中に四散し、場所によっては完全に道を埋め尽くしている。
しかもそれらの砂が、真横の低い護岸を越えてくる波に洗われて泥炭化している始末。
波と砂と風のトリプルパンチで道は完全にダート化しているため、
あっさりと断念し、先ほどの無限ループへと引き戻される…
なかなかメンタル的に厳しい…


自転車道はロードでは走行不能


再びひたすら伸びる道を朦朧としながら進んでいく。
少しずつ集落も増え、ポツポツとではあるが高いマンションも出てきた。
少し大きな屋形橋を渡り、その先の屋形交差点のところで信号停止。
そこに標識で左手に少し行けば食堂があるようなので行ってみると、
まだ開店の11:00まで30分もあるために断念。
さらにその先に道の駅があるようなので、そちらへと向かうことにする。
中下の交差点で右折し、内陸へ1kmほど進んだところで、道の駅オライはすぬま到着。
ここで昼食を兼ねてしばし休憩をすることにする。


↓道の駅オライはすぬま。風がすごい…


ここはどうもイワシが名産らしく、それを食べさせるレストランが結構有名らしい。
イワシを含めた銀モノは大好物。
レストランがあくまで10分ほど店の前で、寒さしのぎの地団太を踏みながら待つ。
人気なようで次々と自分の後ろに長い列ができてくる。
そうして、一番乗りで店に入って、色々迷った挙句、
イワシ天丼とつみれ汁のセットを注文。
なめろうなどもあったが、もう寒くて寒くて温かいものを!
で、さっそく出てきたので、いただきます。


↓はすぬま名物、イワシ天丼+つみれ汁(マズかったわけではないのよ…)


イワシはさすが名物だけあって1つ1つが大きく脂がのっている。
だが、衣がちょっと余計に大きくて徐々に脂っこさが目立ち、
甘辛い味付けがちょっと濃すぎる(関東向き?)ことで、
だんだんと箸が進まなくなってきた。
つみれ汁もおいしかったのだが、
いつもなら美味しく感じるイワシ独特の臭みが、
この時は非常に気持ち悪く感じてしまい、もうそれ以上食べるのが苦しくなってやめてしまった。
熱いお茶を飲み、しばらくテーブルで気を落ち着かせていたのだが、
どうにも気分がすぐれない。
店もかなり混んできたし、料理の臭いがもうダメなのですぐに店を出る。
出たのはいいのだが、再び寒い風に当たってさしこみがいきなり迫ってきてトイレに駆け込む。
とにかく大崩の状態で、激しい腹痛に襲われ、頭がくらくらとめまいがする。
口の中に漂う生魚の臭いに気分が悪くなり、一気にリバース。
もうどうしようもないくらい消耗しきって放心状態。
寒さで体の震えも止まらないし、妙な汗がジトリジトリとこぼれ、まさに絶体絶命。
あまりに具合が悪いので、外の人に助けを呼ぼうと思ったが、
もう少しだけ様子を見ようとひたすら安静にする。
目を閉じてひたすらじっと我慢。
しばらくして腹痛も治まり、出すもの出し切ったので随分楽になる。
まず昨晩からさっきのイワシ天丼までなぜかずっと油ものばかり摂ってきたのがマズかった…
それに加えて朝からの相当の冷え込みの中、
ずっと野外にいて心肺を中心に相当のダメージ。
そして決定的だったのは、そのダメージを取り除くのではなくて、
レッドブルで隠そうとしたことでダメージが増大してしまった。
そういう諸々が最後のトドメ、イワシの臭いで雪崩を打って押し寄せてきたのだった。
ここで真剣にDNFをするかどうか悩む。
しかしダメージのピークはすでに去った感がある。
こんな具合でもどうにかこうにか200km近く走ってきたのだ。
とりあえず無理をしない程度にいけるところまで行って、
無理なら最寄りの駅ですぐにリタイヤすればよいだろう。
いかなる理由であれ途中で断念するのだけはどうしても避けたいタチなのだ。
ヤレヤレと、我ながらに思いながらも、
せっかくこんなところまで遠征させてもらっているのだから、やりきりたい。
その気持ちさえあればきっと完走できるだろうともさ。


スケジュールからはもう大幅に遅れている。
省エネモードでリスタートすることにする。
とりあえずここから先110kmの野島埼灯台を目指す。
本当ならそこで夕焼けを見たいのだが…
そうしてそこから先さらに30kmがんばれば、館山で温泉タイムにありつける。
あと140km。あと140kmはがんばろう。
140kmなら大阪から日生までと同じ。日没まではまだまだあるし。
そうイメージするとどうにか行けそうだ。
ゆっくりペースでリスタートをし、県道30号まで戻って南下を始める。
先ほどと全く変わり映えのない道をひたすらに続く。
コンディションが絶不調なこともあり、気分は相当に萎える。
少しばかり天候が好転し、暖かい日差しが出てきたのはよかったが、
その分暖かさで眠気が襲ってくる。全方面的に大ピンチが続く。
ダラダラと走っているとようやく九十九里町の標識を発見。
これでまだ大九十九里エリアのようやく半分てとこ。


九十九里町突入


小さな川を渡るとまとまった集落に入っていく。
その先、片貝漁港のところで県道30号は左折していき、
九十九里有料道と並走する区間に突入。
だが、交通量を考えて、県道30号から1つ山側の道を直進する。
こちらが旧道の様で、民家がひしめき合っている中をほとんど交通量なく流す。
先ほどよりも建物が密集してきたので、風も少し弱まり、
ペースを上げたいのだが、民家と民家の間に細かい路地が何本もあり、
飛び出しを警戒するとなかなか難しい。
案の定、電動の車椅子に乗ったお年寄りがバッと出てきたり、
軽自動車が頭を出したりしてくる。
千葉の車の特徴は、左右をちゃんと確認してるのかというくらい、
ババババっとロードサイドから顔を出すので怖い。
ただ、通過する存在を確認すると、かなり距離があっても侵入せずに待機してくれる。
大胆なのか慎重なのか。いずれにせよタイミングが関西とはやっぱり違う。
集落をずんずんと進んでいくと、九十九里ICの高架があり、そこをくぐる。
くぐってすぐに真亀川をまたぐ。
橋から県道30号の方を見るとそこそこ交通量があるようで、旧道で正解だったようだ。
そこからもひたすら平坦のストレート道をずんずんと進む。
旭橋を渡り、白子エリアに入ると、ホテルなどが連なるエリアに入る。
そこを通過していくと、新一宮大橋に到達。
ここで並走していた県道30号、九十九里有料道が一本化される。
この交差点で対向してきた単独ローディーさんが来たので挨拶。


そのまま県道30号(九十九里ビーチライン)を南下していく。
途中で部活帰りのママチャリ学生に挑まれ、ヘトヘトだが受けて立ち、
向かい風の中を40kmまで上げて疾走。
東浪見で、R128に入る。
ここからはこのR128(外房黒潮ライン)を出たり入ったりして進むことになります。
そうしてようやく、ようやく、ようやく九十九里浜の無限ループを脱出!
まさに命からがらの大脱出でした…


東浪見でR128に入る


まずは太東埼までの軽い上りをこなします。
ようやくこの辺で海が左手に少しの間見えました。
太東の海岸ではカヌー教室みたいなのがあるのか、たくさんのカヌーが色とりどり。
その海の景色もじきになくなり、台地の上を走るコースとなる。
夷隅川を渡り、三門付近に差し掛かると
交通量がぐぐぐっと増え、なおかつ路肩が最悪状態。
ナーバスにハンドルをさばきながら進んでいく。
しばらくは路肩で悪戦苦闘をしていたのだが、
そのうちに渋滞で車の流れが完全にストップしてしまうほど大混雑で、
脇を縫うことも難しくなる。
仕方がないので歩道へと逃げ込み、ぼちぼちと前進する。
そうしているうちに大原に到達。
ここでちょっと寄りたいところがあるので、休憩もかねてR128を離脱。
右折をして少し進み、線路を渡ったらすぐに南下して、大原駅に到達。
時刻は14:00。


この大原は、自分が一番大好きなローカル線、いずみ鉄道の終着駅なのです。
ということで、ちょっと駅舎で休憩です。
駅舎に入ると、オリジナルグッズが多数販売されていて、思わず長い時間かけて物色。
ほしいものはたくさんあったが、持てる荷物に限りがあるので、
ここは嫁子のお土産として、タオルと小さなドロップ缶、それからストラップだけ購入。
ああ、色々ほしいものがたくさんあったなあ…ジュルリ。
千葉には味のあるローカル線が多数現存していてええですな。


↓いずみ鉄道。キハ28


↓終着駅・大原駅


大原駅でゆっくり30分ほど滞在し、いい気分転換ができました。
そろそろ夕暮れ時が気になり始める時間帯。
名残惜しいがリスタートして大原を後にします。
県道174号を南下していきます。
途中で2人組ローディーとすれ違い元気よく挨拶。
踏切が鳴る直前に渡りきり、しばらく進むとR128に再合流する。
前方が山間となっていき、徐々に緩やかに上りが始まっていく。
斜度は大したことはないのだが、長いストレートなので萎える。
前方からローディーの小集団が下ってきて各々挨拶。
この辺りではすれ違うローディがとても多かった。
右手から鉄道が寄り添ってきてピークにたどり着く。
小さなトンネルをくぐったら御宿まで下り。
交通量が多いので慎重にさばいていく。
下りきるとお宿の集落に入り、こまごまと抜けていく。
集落の出口で海が見えたので、少し立ち止まって写真を一枚。


↓綱代湾


月夜見神社のところで少しアップダウンを挟み、
短いながらもトンネルが連続する区間を通過する。
トンネルが微妙にカーブしているので、
できるだけ路肩を走行するが、あまり路面はよくない。
そこを抜けてしばらく進むと、見晴らしのとてもよい直線のシーサイドライン
海岸にはたくさんのサーファーが繰りだし賑やかそう。
ディス・イズ外房といった風景が広がっていて、心も踊る。
その先でR128はバイパス化するので、
部原の分岐で側道に入り、勝浦市街方面へと歩みを進める。


↓部原でR128を降りて勝浦市街へ


↓トンネルには歩行者・自転車用の穴も一部ある


分岐からは少し上らされ、その先トンネルを2つほど抜けていくと、
狭い狭い平坦部にひしめくようにして町が広がり始める。
緩やかに下りつつ勝山市街へ入っていくが、そろそろ補給をしなければならない。
九十九里での消耗戦にも疲れ切っているし、
勝浦を過ぎれば、この先まとまって休みが取れそうな大きな町は、
鴨川あたりまで見込めそうにない。
まして鴨川までには、最大の難所とにらんでいる境川&内浦TN区間が待ち構えている。
勝浦といえば、勝浦たんたんめんが有名なのだが、
こんな状況で激辛のものを食べて、胃を荒らし、お尻に火がつこうものなら、
それこそ自爆行為。
ご当地のものは泣く泣く断念するしかない。
と、前方にちょうどガストを発見!
ご当地感はゼロだが、ここは体を休め、きちんと見当がつくものを補給するべし。
ということで、ピットインします。時刻は15:00。


マシンの見える窓際の席に案内していただき、
ソファに座るともう疲れがワアアっと。やはり疲労が相当きているなあ。
ゆっくりとメニューと格闘して、トマトスパゲティとシーザーサラダ、
それにイチゴのヨーグルトアイスに、ドリンクバーを注文。
なんだか丸の内のOLさんみたいなラインナップになってしまった。
自分が一番好きな味付けは酸味。トマトもチーズもヨーグルトも全部酸味系。
自分が最も好きなサラダはどんな状態でも食べれるし、
現状米が重たく感じるので喉が通りやすいパスタ。
それに荒れた胃をコーティングしてくれるイチゴアイス。
自分にとってこれ以上疲労回復にぴったりの献立はない。でかした俺!
それらをゆっくり時間をかけて食す。
さっきまであれほど食欲不振で、食べ物のにおいをかぐのも嫌だったのに、
どんどん食べれる。やはり食べれるか食べれないか、
ロングライドにとっては最も試される部分だなあと痛感する。
しっかり食べれたし、そのおかげでか、下の具合も正常に戻った。
油断して妙なものを食べないように以後気をつけねば…
せっかく体力が回復傾向なので、ここは焦らず、
少し仮眠も含めて30分ほど休憩してからリスタートする。


↓ガストで補給


さて時刻は15:30を少し過ぎたところ。
ここから野島埼灯台までは残り60kmです。
普通にいけば18:30くらいにはたどり着けそうだが、
果たして夕焼けショーに間に合うのか。
それは無理だとしても、真っ暗闇で灯台がわからないのは困る。
いきなりのペースアップは厳しいが、少しずつでもあげていかねば。
旧R128を進み、混雑する駅前を通過、そのうちに海沿いの道となり、
串浜大橋のところで、右手から大きな高架が合流してくる。
これがさっき別れたR128本線のBPで、これが左側から合流するので
そちらからの車の流れを慎重に見極めて本線合流する。


↓勝浦湾


穏やかに波を漂わせている勝浦湾をなぞり、
そこから細かいトンネルをいくつも抜けていく。
この辺のトンネルは、歩行者・二輪用の小さなトンネルが併設されている個所もあり、
車の往来が激しい場面ではそちらを使うが、
基本的に短いトンネルばかりなので車道で行った方がスムーズ。
鵜原のところで、再びR128は山間を抜けるBPとなるので、
ここで旧道の方へ侵入する。


鵜原で旧道へ


旧道に入ると交通量はほぼなくなり、ストレスフリーで進んでいく。
上総興津の集落まではなだらかな下りを行く。
駅前あたりで対向の単独ローディーさんとすれ違い挨拶。
集落を抜けると、ちょっとまとまった上りに入る。
えっちらおっちらと7〜8%ののぼりをやっつける。
前方に行川アイランド駅を認める。
その先の交差点でR128の本線に合流する。


行川アイランドでR128に復帰


本線合流後も少し上りが続き、ちょっと長いトンネルを我慢走行。
この辺は交通量が結構あり、しかもみなそこそこスピードを上げているので
久々にナーバスな展開。
しかもこのさき800m級のトンネルが2つ連続で待ち構えている。
その1つめ境川トンネルに意を決して突撃を敢行する!
ドストレートで見通しはきくのだが、その分車もスピードを上げにあげているので
脇をかすめていくときは怖い。
全力スパートでどうにか抜けると、わずかなオープンスペースがあり、
そこに鴨川市の標識があった。
すぐ次の内浦トンネルがぽっかりと口を開けているが、一旦息を整え、
工法を確認して2回目のスプリント。
ギンギン踏んでどうにか無事にクリア!


境川TNを抜けて鴨川市突入。今から内浦TNにトライ。


最大の懸案エリアをどうにかパスしたが、道は引き続きシビアなトラフィック事情。
しかもその先、岩高山交差点の先に、急な下りでかつカーブ形状のトンネル。
慎重に大外を回り、ようやくトンネルエリアを脱出です。
小湊の観光海岸をぐるっとなぞりながら抜けていきます。
町の出口には最後のトンネルが待ち構えていて若干ののぼりだが、
ここは歩行者・自転車用のトンネルの方へエスケープ。
ここは地元の小学生によって楽しい感じになっていました。


↓とんえるすいぞくかん!


↓中には子供たちの絵が


トンネルを抜けると緩く長い下りで、その先にオレンジ色に輝く海が見える。
一気にパノラマが開けます!
遠くにまだまだ続いている房総半島、その奥に赤々と燃える夕日。
なんと美しい。
下りきったところのホテルか何かの敷地にちょっとだけお邪魔をして写真を一枚。
これは思ったよりも日の入りは早く、灯台で夕焼けショーなどはまず無理。
逆に急いで、今向こう側に見えている鴨川市街に達してしまったら、
島に隠れてしまって夕焼けは見えないので、
ここからは夕暮れまであえて時間をかけて、
夕暮れのベストスポットを探すようにシフトチェンジする。


↓徐々に日が暮れてきたぞ〜


天津の入り口で、R128は本線は再び山間でBP化するので、
左方面に入り、市街地の方へ。
交通量が減り、鄙びた港町の生活道路を走る。
市街地に入ると海は建物に遮られてチラチラと見えるだけ。
前方に海に突き出た小さな岬があり、そこに向けてくいっと上る。
上りきると、目の前には東条海岸が一望できる。
これ以上近づきすぎると、太陽が前方の山間に隠れてしまうので、
ここらで夕焼けショーを堪能するため、港の方へと寄り道。
ちょうど鴨川市街を見渡せるポイントを発見。
そこで南房総の日の入りを楽しむ。


↓BPを避けて天津市街へ


朝焼けは、長い夜が明けて気分的にすごい開放感と爽快感があるのだが、
夕暮れは、ああ遠くまで来てしまったなあという寂しさとか、
また長い夜が始まるというちょっとした憂鬱感がただよう。
しかし、その哀愁漂う抒情のひとときもたまらなく好きな時間だ。


↓外房の夕景


↓夕焼けを堪能


ひとしきりマジックアワーを楽しんだら、
今度はできるだけ明るいうちに前進するためにリスタート。
海沿いにしばらく進むと、BPが合流してきて東町の大分岐を道なりに左手へ。
そこから海岸沿いのよく整備された道を進むと、鴨川シーワールド前を通過。
この時点で時刻は16:30。
思った以上に日の入りが早かったなあ。やはり関西よりも東だから?
ごったがえす観光地を抜けて川の手前の交差点でR128を一旦外れて、
県道247号に入る。
これで鴨川市街の中心部へと進んでいき、しばらくして安房鴨川駅に到達。
ちょっと公衆トイレを拝借する。と、トイレの中に誰か携帯を忘れていっている様子。
これはなんとかしえあげなきゃと、
トイレの向かいにある観光案内所の人にお渡しして後をお願いする。


鴨川シーワールド


↓R128をはずれて鴨川市街地へ


トイレ休憩ののち、すぐにリスタートし、
すっかり日が当たらなくなった鴨川市街を縫っていきます。
町はずれの川を渡ると、突端に向かってちょっとキツイ目ののぼりがあり、
そこを抜けると、八岡に向けて若干の下り。
トンネルをくぐり太海駅をスルーしてしばらく進むと、R128に合流する。
ここからしばらくは交通量の多い狭小のR128を走るしかない。
すっかり周りも暗くなり、ライトオンして、慎重に路肩を進んでいく。
そういえば、ドリンク底をついてしまっていたのを忘れていた。
喉が渇いたので、房州大橋を渡った先の道の駅鴨川オーシャンパークでピットイン。


↓道の駅鴨川オーシャンパーク


すぐにリスタートして、そろそろ渋滞の始まりだしたR128の
暗くて見えない路肩をアタック気味に駆け抜けていく。
所によっては路肩が非常にバンピーで走りずらい。
ハンドリングに集中しながら、少し停滞気味のR128を進んでいく。
和田浦の先で短いながら急な下りがあり、そこを慎重に抜けて、
完全ナイトライドで反対車線からの目つぶしに耐えて進む。
そうして橋のところで、長らく世話になったR128とお別れし、
房総半島最南端へ向けて伸びる房総フラワーラインに入ります。
目指す野島埼灯台まではあと20kmほど。ガンバレ!


↓房総フラワーライン入口


フラワーラインに入ると、防砂林の間を走っているのか、
外灯が一切なく、真っ暗闇の長いストレートに入る。
時折、車の往来がありその間だけ周囲が照らされるのだが、
その時以外はまったく真っ暗で、日が落ちるとこうも暗いのかとうろたえる。
長いストレートを抜けると、右手に道の駅ローズマリー公園があり、
その辺からぽつぽつと民家やマンションが出てきて少し明るくなる。
千歳の手前でR410と合流し、徐々に風の強まる南へとひた走る。
ちょっと腹が減ったので、道沿いに現れたセブイレにいったん入る。
お店の人に聞いたら、灯台までは車で15分ほどとのこと。
サンドイッチとホットコーヒーで補給をすませてすぐにリスタート。
時刻は18:30。


千倉の市街に入ると、やたら中国の人の通勤自転車にでくわす。
道沿いのお店から出てくる客も中国語で談笑しているし、
なにか大きな工場でもあるのだろうか。
道のドンツキ、千倉橋交差点を左折。
ひばらく集落の間を抜けていく。交通量はほとんどない。
軽く向かい風があるが、ちょっとペースを上げて進んでいく。
高台を走る道で眼下には海の気配がうかがえる。
田畑広がる真っ暗なエリアをひたひたと走るのだが、
どうにも最果てに来たなという雰囲気があり、空には星が瞬き、潮の香りを運ぶ風。
とても幻想的な夜を味わいながら進んでいく。
そのうち、人気のあるエリアを抜け、車の往来もなく、
黙々と闇を割いていく。
風邪は徐々に強さを増してきて、ペダルを踏む脚に力を込める。
なかなか疲労が蓄積して思うようにペースが出ない。
徐々に浜の方へと高度を下げ、途中四分岐に到達。
前方には海へ進む道と山へ進む道。
当然灯台は海側なのでそちらへとシケイン気味に入っていく。
浜側へと進んでいくと、周囲には立派なホテルやら民宿やらが立ち並び、
目的地が近いことがわかる。
その辺まで来ると風は狂ったように吹き荒れてきた。さすが最南端の岬だ。
そうしてにぎやかな観光エリアへと入ってきた。
目的の灯台の白いシルエットも見えてきました。
白浜のベイサイドを流しながら、灯台の入り口を探すと、
夏にやっていたらしいドラマのロケ地の看板を発見。


↓山Pはおらず


観光エリアを進んでいくと、広いロータリーのようなところに出る。
そこから灯台方面へと切り込み、最後に台座までの旧坂をくいっと上って、
ついに房総半島最南端・野島埼灯台に到達。時刻は19:30。
残念ながら日没ショーは拝めなかったが、
ライトアップされて、白鳥と謳われた白いシルエットが
より輝きを放って見れたのでよかった。
それにしても、この荒れ狂う潮風のすさまじさは一体なんだ?
写真を撮ったら大急ぎで退散しないと、吹き飛ばされそうだ。
激しい風に汗も一瞬で冷やされ、そのせいでまたまたサシコミが!
ということでロータリーにある公衆トイレをちょっと拝借。
今回のライドのハイライトではあるが、あっさりと終了し、
頭の中はもう一刻も早く風呂に入りたいということだけ!


↓野島埼灯台にて


↓真っ暗だ


灯台にオサラバをして、いよいよ外房を後にして、内房エリアへと突入する。
岬を西へと進むのだが、外房に比べて西からの風をもろに受けるため、
風の強さが半端ない。
ちょっと悲鳴を上げたくなるようなエグイ風が、
遮るものの一切ないままマトモに吹き付けてくる。
これまでも激しい風に困らされてきた経験はあるが、
このときの風が一番激しかったといえるくらいの暴風。
一体全体何が起こったのかと思うくらいで、ハンドルに上半身をへばりつけて
これ以上ないくらい低姿勢を貫いて進むのだが、押し返す力が強く、
アウターで漕げない…
インナーに回してくるくるとまわすのだが、2ケタもスピードが出ない…
路肩を走っているつもりがあれよあれよとセンターに流されたり、
幸い通行するものは皆無なので問題ないが、
こんなのはあまり経験がないほどの狂風。
すさまじい空気の圧に抗って、全力を振り絞って前進をするが、
西へ西へと進むほどに、海が近づいて風が余計に強くなってくる。
なんじゃこら?
道の駅を過ぎ、分岐を左へ折れ、徐々に白浜の集落を外れていく。
真っ暗闇で、見えない敵ともはやDEAD or ALIVEな熾烈極める格闘。
これだけ力を振り絞っても、1ケタ台のスピードでは全く歯が立たず、
行けども行けども全然道を消化できない。とにかく焦る。
途中左手に根本海岸が広がるところで、砂礫に注意との標識。
よく見れば道の左手には、まるで立山アルペンルートの山開きの雪の壁のごとく
うずたかく積み上げられた砂がどーんとそびえている。
そしてこの強烈な風に、身の軽い砂がどんどん道路へと拡散し、
一面がダート化している。
それらを道一杯を使って回避するのだが、
スリッピーな路面と容赦ない風のダブルパンチを浴びて、思わずスリップ!
済んでのところで足を抜いたのでうまく受け身をとれたが、気分は萎え萎え。
こんな状態じゃあ、押して歩いたほうがよっぽど安全で早いんじゃないか。
こんな状況があと20kmも続いたらもう途中で力尽きてしまう。
しかも、この辺はまったく店もコンビニもないエリア。リタイアするにできない。
ああ、やばい絶体絶命のピンチを感じながらも、とにかく一歩一歩前進する。
もうこの野島埼から洲粼までの20km近くの壮絶バトルは、
今までのロード人生の中でも1,2を争うハードさだった…
フラワーラインと合流する先で、岬を乗り越えるために道は結構な上りとなる。
進行方向が真西から若干ずれるためさっきよりはまだ風はマシに感じるが、
消耗しきった体にこの斜度はかなりツライ…
ジャングルパレスの先でどうにか下りに入るが、風の強さで漕がないと進まない…
重い足でペダルを回し、もう1つ小さな上りをこなしてようやく相浜の分岐に到達。


道の駅のような休憩所が交差点の脇にあったので、たまらず休憩を入れる。
外では風があまりに強くて、一気に熱を奪っていくので、
多目的トイレに駆け込んでそこで休憩する。
ここまでライドを続けてきたという元々の疲労に加えて、
野島埼からのわずか9kmの間の激しすぎるバトルでの消耗で、
立ち上がれないほどに疲れ切ってしまい、しばらく動けないほど。
自販機で買った温かい飲み物を首筋や腹に充てて暖を取りながら、ひたすら体を休める。


↓相浜でR410を外れて洲埼を目指す


ここで2つの選択肢がある。
この相浜は2方向への分岐点。
すぐに風呂にありつくには館山方面へこのままR410を山間へ進めばあと9kmでつく。
山間へ入っていくので海岸沿いに比べればはるかに風はましだろうし、
前半に上りが発生しても、そこを耐えれば後半は下れる。
今の状況を考えればそれが間違いなくベストなチョイスである。
しかし熟考の末、もう1つの選択肢をチョイスすることにする。
つまり、相浜の分岐を左に折れて、再び強烈な風が支配する海岸沿いの道を西に進み、
洲粼を目指すルートである。
R410と比べて、館山までの道のりが3倍・27kmとなるのに加えて、
あの強烈な風との延長戦バトルを覚悟せねばならないのだ。
これだけ消耗しきった体で果たして勝ち目があるのか全く自信がない。
でも、ここで安易にショートカットすれば、千葉をなぞったことにはならない。
何よりここまで、相当のダメージを負いながらもプランを遂行してきたことが水泡に帰す。
それではDNFしたのと大差ないではないか!
参ろうぞ!参ろうぞ!
ということで弱りきった心をもう一度奮い立たせて、
不退転の決意で左の道へと入っていく。結構勇気いるんだぜ…


県道257号に入ってすぐに軽く下ると、そこからはダークナイトなドストレート。
両脇を丈の低い砂防林に固められ、外灯の1つもなく、真っ暗闇。
底なしの闇と、ぴゅうぴゅうと不気味な鳴き声を上げ続ける風に、
ぬぐいようのない孤独感と絶望感を味わう。
相変わらず遠慮を知らない潮風の中を、小さく身をかがめながら切り裂いていく。
周囲の具合が全く見えず、景色と自分も闇へと同化して、
朦朧とした意識だけがさまようような感じ。
時折猛スピードで走り去る車のヘッドライトにはっと我に返る、そんな状態。
やはり大事を取って右を選択すべきだったかと思ってもすでに後の祭り。
平砂浦をひたすら西へ進んでいくとホテルなどのリゾート移設が軒を連ねるようになる。
あそこではさぞ楽しい週末を過ごす人々がいるのだなあ、
一方で自分はなぜにこんな過酷な状況に自ら身を投じているのだと、
闇に飲み込まれてついネガティブな考えばかりが先立つ。
ここがしのぎ時、ここが勝負時、これを過ぎれば温泉タイム!
呪文のように念じながら、少しずつ前進する。
小高い丘をこえる上りが発生し、省エネモードで上り詰めるが、
どうしたものか、力がわかない。気づけばどうもハンガー状態。
寒さと厳しさばかりに目が行って、まったく気づいてなかった。
しかし周囲を見渡しても補給できるところはまったくない。
とぼとぼと省エネモードで進んでいくと、
途中お宿のところにベンチと自販機があったのでそこをちょっとお借りして、
手持ちの補給品、しかもラッキーなことに忍ばせていたのを忘れていた豆大福!を食べる。
ちょっと落ち着いて海の具合を眺めていたのだが、
冷静になると本当に最果てまで来てしまったなあと
当たり前のことを今更ながらに実感する。
カタカタカタと町の至る所が風に震えている。
あまり長居をして体を冷やすといけないのですぐにリスタート。


リスタートして、集落を進んでいると、
対向から猛スピードで車が!
スピードの出しすぎでカーブで対向にはみ出してきたので、
慌てて脇道へ逃げ込む。調子に乗るな!危ないやろが!
その先、少し急な上りをやっつけ、しばらく進むと、ちらっと白いシルエットが見えてきた。
はやる気持ちを抑えつつ、道を進んで灯台方面へ脇道に入る。
灯台へのアプローチがわからなかったので、ちょうど歩いていた地元の方に尋ねる。
そうして灯台の入り口に到達。ここから少し急な階段を歩いて行かねばならない。
マシンを施錠して、大急ぎで駆けあがる。軽い気分転換です。
上りきると、白亜の洲粼灯台がお目見え。
ここは対岸の三浦半島とともに、相模灘浦賀水道を隔てるポイントにあり、
つまりはここが東京湾の入り口の一端なのです。
と、はるか海の先を眺めれば三浦半島の灯が遠くに見えるではありませんか。
ああ、遠路はるばる頑張ったなあ。


↓洲崎灯台


↓遠くに三浦半島が見える


↓洲粼にて

さて時刻は20:30を過ぎたところ。
これで千葉にある主要な3灯台をいただきました。ご苦労さま〜。
ミッションを達成し、あとはひたすら東京に帰るのみではあるが
そのためにはまず15km先の館山でしっかりと休養することが肝要。
とにかく休みたい、温まりたい!善は急げ!
ということで、階段を駆け下り、マシンにまたがってリスタート。
県道257号に戻ると、今度は岬を東へと進むことになる。
ということで、さっきまであれほど痛めつけられていた風が、
今度は追い風となり援護射撃をしてくれます。
灯台の分岐からしばらく下りが続き、お宿が連なるエリアに突入。
一度大きく上り返しがあり、えっちらと上る。
だんだんと町らしくなってくるとともに、
帰りを急ぐ車があわただしく行き来するようになる。
こちらはもう頭の中は温泉、温泉とそれでいっぱい状態で、
わけもわからずペダルもまわる。
道は徐々に高台の道となり、狭小の生活道路をひた走る。
潮留橋で館山市街への分岐をスルーして、直進。
その先、道は長須賀地区で何度か直角に折れながら、
白浜方面と若干バックするような形。
どこどこ?と焦りを隠せずに周囲を見回し、
R410の角に、大きなスーパー銭湯を発見!
事前にリサーチしていた里見の湯に到着が21:45。
ああああああ、これで休める。ひとまずは休める。
まだまだ東京までは160kmもある。だけど休める!ああ、やったあ。
まるで砂漠でオアシスを見つけたような安堵感で建物に入っていくのであった。
つづく…