記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

谷川岳 1日目

ひょんなことから、あこがれの谷川岳の山開きが7月第1週とわかる。
それに合わせていくつかイベントが開催されるということで、
色々見ていたら、一ノ倉沢ナイトハイクなるものが目に留まった。
こういう機会でもなければなかなか夜中に山奥を歩くことはないし、
ぜひ参加してみようと申込み。
せっかく行くんであれば、それだけで帰ってくるのはもったいない。
というとことで以前から計画していた馬蹄形縦走なるものを合わせてチャレンジ。


問題は、現地までのアクセス。
一般的には東京経由で行くのだが、
新幹線×新幹線の乗り換えは結構コストが高いため、
前日までいろいろ駆使してどうにかならないかと悩んでいたところ、
東京経由だと21000円近い運賃が、北陸経由だと15000円で済むと判明。
その分、多少は時間がかかってしまうのだが、
イベントに間に合えさえすれば、隠れ乗り鉄の自分にとっては苦にならないので
そのルートでチケットの手配。
だが、あいにくサンダーバードの指定が満席…なので自由席券を購入。
まず最初のミッションは座席の確保!


初日。娘をいつもより早く保育園へ送り出し、
取って返してJR大阪駅へと直行。
20分前には11番ホームに到着し、5〜7号車の自由席車の停車位置にて待機。
早めに到着できたので、列の早い方に間に合い、
無事に9:12のサンダーバードの座席を確保できました。
どうも、喉の調子が悪く、頭がぼんやり熱の時のような症状があって
湖西線を往くサンダーバードで早くも爆睡。
起きたらすでに福井を出ていて、北陸地方もあいにくの曇り空。
去年自転車で走ったルートを眺めつつ、12時ジャストに金沢駅着。
ここから、特急はくたかに乗り換えます。
この列車は、金沢から富山・糸魚川直江津
その先で3セクの北越急行ほくほく線を経由して越後湯沢までをつなぐ特急。
この運行があればこその今回のアプローチではあるが、
2015年に北陸新幹線開業に伴って、特急が廃止される運命なので残念でならない。
さて、乗り換え時間7分の間に、売店で駅弁を買うが大したものがなく、
ショボイ弁当で我慢。
はくたかは、順調に富山の大平原を抜け、
去年、あれほど恐怖を実感した険しい天嶮をあっという間に抜ける。
直江津より以東で、いよいよほくほく線に突入するが、
約30分間ほぼほぼトンネル区間
リニアもきっとこういう味気ない感じなのだろうな。
この区間では、在来線では最速の時速160km運転が実施されていて、
音やら体感やらがすごくて、脱線せんかとひやひやする。
一直線で山並みをぶち抜いて南魚沼の大田園地帯へと出る。
ここらでは、薄明かりが差していて、
ひょっとして天候回復?と期待をしてしまうほどであった。
そうして越後湯沢駅に到着したのが14:51。


越後湯沢駅新潟県)晴れる?


そこから上越線の鈍行に乗り換え、
緑の絨毯の美しい越後湯沢のスキー場を縫うようにして進む。
土樽から長い長い長〜いトンネル区間に突入。
(感覚的に武田尾のトンネルの倍くらい?)
そうして、土合駅上りホームに到着したのが、15:31。
しか〜し、うわさに聞いていたあの土合駅モグラホームではなく拍子抜け。
というのも上りホームは普通の地上駅なのです。
いわゆるモグラ駅と呼ばれているのは実は下りホームで、
うっかり?北陸方面からアプローチしてしまったのを失念しておったのです。
帰りに利用するとはいえおそらくその時はドタバタでしょうから、
時間の余裕もあるし、先に下りホームを撮影しに行きます。
駅舎に入り、無人の改札をスルーして、
薄暗い回廊のような渡り廊下へと進んでいきます。
国道と、湯檜曽川をまたいだ先の扉を開くと…
遥か地底まで続く長いコンクリートの階段が続いている。
スゴイ威圧感というか、これは確かに、
下りホームに降り立っていきなりこれが登場したらかなりのプレッシャーだろうなあ。
遥か下の方からはひんやりとした空気がすわ〜っと上がってきます。


↓底を見下ろす


早速一番下のプラットホームまで降りていくことにします。
5段おきに幅広のテラスが登場し、テンポ良く下る。
これは、時間ギリギリだったら、
いくら下りといっても到底電車に間に合わない距離だな。
しかも一本逃すと次は1.5h待ちとかなので、泣くに泣けないシビアな状況。
これは実際、最初に下見をしていてよかった。
10分弱でようやく底にあるプラットホームに到達。
とてもひんやりとしていて、独特の空気が流れておりますなあ。
ここが「クライマーズハイ」の一番冒頭のシーンに登場するホームです。


土合駅下りホーム


ひとしきり写真を撮ったら、仕切り直しで、スタートします。
ここから地上まで段数にして462段、長さ338m、高低差81mを上り、
143mの連絡通路、さらに24段の階段を上る長い道のりです。
山に登る前に駅でちょっとした登山です。
ご丁寧に一段一段ナンバリングがされていて、
それを数えながらテンポ良く上ります。
途中にはベンチなども用意されていて、
のっけからなかなかの難所だったります。
そうしてようやく薄明かりが見えて、462段目をクリア。
所々に、お疲れ様とかあと少しとかアナウンスがあって、励まされますね。
そうしてようやく駅舎を出ました。


↓日本一のモグラ


↓はてしないエントランス


↓462段目


↓あと少し


↓回廊


土合駅


新潟側は薄日が差して、天候も期待できそうな感じだったが、
群馬側に入った途端に邪悪な雲が低く垂れこめて、
いつ降り出してもおかしくない感じ。
眼前には、谷川連峰がそびえているはずなのだが、
その中腹すら雲に隠れて見えやしない。
駅前はな〜んにもなく、目の前を通るR291に出ます。


このR291というのもまた、キング・オブ・酷道として有名。
群馬県前橋市から新潟県柏崎市を結ぶこの国道は、
明治期に馬車通行可能なR8(今のR8とは別物)として整備された古い幹線道路なのだが、
ちょうどこの谷川連峰にある清水峠の前後合わせて28km区間
開通の翌年の大雨と豪雪により崩壊し、
それ以降130年以上にわたって通行不能状態の陥っているという、
まさに伝説の酷道なのだ。
現在ではほぼ廃道と化し、登山道としてもほぼ利用されないような状況ではあるものの、
今なお点線国道して指定ははずれていないが、復旧の見込みはほとんどない。
この区間では大規模な路盤決壊や崩落などもあり、徒歩で歩き通そうとすれば
本格的な登山装備に加えロッククライミングスキルがいるという、
あまりに難易度の高すぎる状況だそうである。


そこを少しだけ進み、踏切を渡ったところで、
本日のお宿、土合山の家に到着です。
まずはここで荷物を置きます。
一泊夕食と、翌日は早朝に立つ予定で朝食をお弁当にしてもらい7020円。
スキー合宿とかで利用しそうな昔ながらの宿舎のようなところ。
晩飯の時に2人ほど他に客が飛び込んできましたが、その3人だけでした。
まあ山開き直後はこんなもんなんでしょう。


↓本日の宿・土合山の家


さて、重いザックを置いて、必要なものだけを天蓋に入れて、
それをサドルバックに変形させて、晩飯の18時まで2時間ほど散策開始。
散策といっても、上高地のように開けた観光地ではないのだけど、
とりあえず下見。
天気はますますよろしくない状況で、
かろうじて白毛門の中腹辺りまでは見えたり隠れたり。
一応上下レインウェアを着ていく。
R291をもう少し歩いていくと、土合橋に出る。
そこからオフロードの道を少し入ると、そこに白毛門への登山口を発見。
登山口には馬蹄形縦走の立て看板が立っておりました。
ここは湯檜曽谷をぐるっと谷川連峰が取り囲んでいて、
ちょうどこの間の播磨アルプスのように縦走が可能で、
関東周辺のハイカーには有名なトレイルなのです。
全長約22km、獲得標高約2200mの長い道のりを期待していたのだが…
天候にだけは勝てないな…


白毛門への登山口


↓馬蹄形縦走の看板


一応、翌日のスタート地点を確認できたので、
そこから再び国道に戻り、ロープウェイ駅のある土合口までさらに歩くことにします。
土合橋からはいかつい隧道がヘアピン状態に設置されていて、
そこから土合駅が見下ろせます。
トンネルを抜けると慰霊碑の立つ広場があり、そこからさらに進んで、
いくつかのカーブを抜けると谷川岳ロープウェイ土合口駅に到着します。
麓から意外に上りを歩かされて15分ほどかかりました。
すでに営業は終了していて(上りは16:30最終、下りは17:00)、閑散としています。
そのロープウェイ駅からさらに少し上がったところに、
谷川岳山岳資料館があり、ナイトハイクの集合場所になっているところです。
ちなみにここから先、一ノ倉沢までは舗装道路が続くのだが、
一般車両は通行が禁止されています(自然保護のため)。
ナイトハイクでは、この先にエコバスを使って進んでいくことになるので楽しみです。


土合駅を見下ろす


↓土合口駅


谷川岳ロープウェイ


と、一応麓でポイントとなるスポットは把握できました。
本当ならここから先のマチガ沢くらいまでは偵察しようと思ったが
それでは晩飯に間に合わなそうだったので、ここで引き返すことにしました。
さっきスルーした慰霊碑のある広場で少し見学。
たくさんの遭難者の方々の名前が連なっているのを見ると、
やはり恐ろしい山だなあと気が引き締まります。


↓慰霊地


谷川岳に没した人々の名が刻まれている


明日の天気を案じつつ、宿に戻ったのが17:30くらい。
ちょっと咳もひどくて声が出づらく、
関節がヒリヒリと熱があるような感覚もあり少しだけ仮眠。
18時に食堂へ降りていくと、
予想以上に豪華な夕食が用意されていてビックリ。
カニまでついて、どれもおいしくいただきました。


湯檜曽川。明日は晴れるだろうか…


↓ボリューミー


18:30となり、そろそろナイトハイクに向けて出発というところで、
玄関で靴を履いていると、いきなりザザザ〜と雨が降り出してくる。
あああ、降っちゃったよ〜。と萎える。
大急ぎで部屋に戻り、飯前に脱いで乾かしていたレインウェアを再び装着。
傘があった方がいいなあと思ったら、
宿のお母さんが、持っておいきと透明のビニール傘を渡してくれました。
ありがとうございます。
さっき試しに歩いて資料館までは結構距離があったので、早歩きで急ぐのだが、
もう汗だくで、ギリギリ到着した時はもうヘロンヘロン。
でもなんとか間にあってよかった〜。
参加者はすでに集まっていて全部で12人ほど。それに観光協会の方やガイドさんが数人。
自分が関西から来たと知ると、みなわざわざよう来なすったと喜ばれました。
やはり関西からくる割合はずっとずっと低いようです。


19:00となり、まずは資料館の中で行程などのレクチャー。
ちょっと雨がひどいので途中で引き換えう可能性がるかもしれないが、
一応ここからエコバスに乗って、3.3km先の一ノ倉沢まで行きます。
その道中で、夜行性の動物たちの生態を観察したり、
バスを降りて真っ暗な中で山道を歩いたりということをします。
では出発!
まずは登山指導センターのところまで歩いていき、
そこからエコバスに乗り込んでスタート。


↓山岳資料館にてナイトハイク集合


↓キング・オブ酷道のR291


↓エコバス


バスから前方を見ていると、たくさんの虫が飛び交い、
その虫を捕食する小動物たちが出てくることがあるそうで、
ヘッドライトに照らし出されるアスファルトを見つめていると、
デカいカエルやら、猿、キツネ?のようなものなどが、
ひょこひょこ道を横切っていき、まるでナイトサファリのようでした。
途中では、バスを降りて、コウモリの出す超音波をとらえる機械(そんなもんあるねんね)で
コウモリ探しをしたりしました。あいにくの雨で発見できず。
他にもヘッドライトをすべて消して、少しの間真っ暗な山道を歩く体験など。
そうして、1時間ほどかけて一ノ倉沢へ到着。
晴れていれば満天の星空と、その薄明かりに照らされた険しい岩壁が望めるはずでしたが、
到着したころには雨脚が強くなり、退散。
でも、昼間とは違った夜の山を少しだけ体験で来て面白かった。


↓バスを降りて夜の動物をウォッチ中


↓真夜中の一ノ倉沢


↓真っ暗〜


21:00には資料館へ戻り、そこから参加者の方々と談笑してイベントは終了。
そこから歩いて宿まで帰ろうと帰ろうと思っていたのだが、
ガイドさんに車で送っていただくことができました。
部屋に戻り、冷えた体を温めるため、すぐさま用意して大浴場へドボン。
浴衣に着替えて布団にもぐりこむのだが、どうも冷えが収まらず、喉の調子も悪い。
窓をたたく雨音に、これは翌日の縦走は厳しいなあと感じつつ、眠りに落ちた。


ということで、1日目は山行というより、
がっつり産業遺産めぐりっぽくなってしまいましたが
雨模様の中存分に楽しんだ次第です。
2日目に続く…