針ノ木岳&蓮華岳 弾丸登山
前日の破砕帯ツアー後、翌日の山行のために扇沢駅にて野宿を敢行。
初めて寝袋を実戦投入したが、9月末の標高1400m地点はなかなかに冷え、
時々寒さで目を覚ましながら、張るカイロなども使いつつ、どうにか一晩。
本来のプランであれば、2:30には起床して3:00には山行スタートをしなければならないが
あまりに寒いし、真っ暗だし、御嶽の状況も全くわからないままで、
時間通り目は覚ましたのだが、どうも乗り気せず、
とりあえず日の出時間までひきつづき寝る。
次に起きたのは、5時ごろ。
早起きの老ハイカーグループが真横で、山行前のラジオ体操をおっ始めて
びっくりして飛び起きた。
元気なのは何よりだが、もうちょっと…
↓扇沢駅の朝
寝たような寝てないようなぼんやりした状況で寝袋を出て、とりあえず荷造りをする。
続々と早立ちの登山客が集まってくるので、
その中の一人に御嶽の様子を聞いてみるが、
どうも昨日奥さんから聞いた情報以上の情報は聞けなかった。
それほど現地が混乱している状況なのか、
それとも大した報道がないほど小規模だったのか…
いずれにしても、続々とハイカーが集まってくるということは
少なくともこの周辺では平時と変わりがないようだし、
今のところJR運休の話もなかったのでとりあえず1day登山なら支障はなかろうと判断。
ただ、ある程度レスキューの皆さんはそちらに集中されているだろうし、
スタート時間も予定より3時間ほど遅くなってしまったので、無理のないところで。
ということで、無難に針ノ木岳へのピークハント、
もし時間があれば、お向かいの蓮華岳も狙うというプランに決定。
朝飯は、温かいコーヒーを入れ、
昨日売店で買ったライチョウの卵(という名のお菓子)を4個流し込む。
そして寝袋類は不要なので、防寒類など不要なものとまとめて
駅のロッカーに放り込み軽量化。
もろもろ準備完了で、山行スタートが6:10。いざ参ります。
まずは扇沢駅の左手にある遊歩道の入り口へ。
ここからはまず石がゴロゴロとした樹林帯を進みます。
道はゆったりとした斜度で、何度か林道とクロスをしながら奥へ奥へと進みます。
すでに東の空からは鮮やかな光線が差し始めていて、
早く開けた場所に出たいと先を急ぎ、朝日を一枚収めておきます。
深い茂みの部分と、大きな石がゴロゴロと広がる涸れた沢を交互に進んで、
林道が関電トンネルに合流する地点で、
いよいよ針ノ木岳登山道の入り口に到着です。
↓針ノ木岳登山道
ここからは結構、深いブナ林の中を進んでいくことになります。
斜度はゆるやかで、登山というよりハイキングに近い感じ。
眺望もないし、いずれえげつない斜度になることは目に見えているので
こういうところで時間を稼いでおきたい。
ずんずん進んでいくと、ちょっとした広い沢に出ました。そこから上を見上げると、
鳴沢岳〜赤沢岳がまるで屏風のように広がり、
色とりどりの紅葉が朝日を浴びて輝いておりました。
おお、これはなかなか素晴らしい!
沢を手製の木橋で渡り、少しずつアップダウンをこなしていきます。
まだまだ扇沢の本流からは離れた林の中を進んでいきます。
時折、上部の峰々が木々の間から見えるが、この辺りはほとんど眺望は期待できない。
そうして6:50に大沢小屋に到着。
小屋はすでに営業を終了していてヒッソリ閑としておりました。
その脇には、針ノ木小屋を開設した百瀬慎太郎レリーフがありました。
↓百瀬慎太郎レリーフ
そこを過ぎてもまだしばらくは深い林の中を進んでいきますが、
徐々に沢を流れる水の音が近くなっていきます。
左手が少しずつ開けるようになっていき、
そうして本日1本目の小さな梯子場を通過すると、
ようやく針ノ木岳へ向かう登山道の全容が姿を現します。
本来であれば、日本三大雪渓の1つである針ノ木大雪渓が
この谷筋に横たわっているはずなのだが
さすがに9月も終わりの季節ではほとんど解けてしまって、
谷の一番狭小部分に少しだけ雪渓が残っているのが認められる程度でした。
あの山の稜線上にある、ひとまずの目的地である針ノ木小屋の標高は2536m。
スタート地点の扇沢駅の標高は1433mなので
ざっと1100mは登らないといけないのだが、
ここまでほとんど緩やかな道だったので、ここからいよいよ急登となります。
↓右手のピークが針ノ木岳。あそこまで沢を登っていきます
まずは、滑りやすそうな岩場が登場しました。
真上にというよりも、斜め右方向へと緩やかに展開しているため、
三点確保するには四つん這いになってしまう。
それでは逆に不安定なので、
ロープを補助的に使いつつしっかりと二足歩行で抜ける。
その先に支流の谷と合流する広い意志の河原に出て
いよいよ扇沢の本流にたどり着きました。
登山道は中州のようなところを進み、しばらくいくと本流の沢の右岸へと渡ります。
雪解けの水が結構勢いよく流れていました。
この辺りでポツポツと下山される方との行き違いが発生します。
少しお話をすると、紅葉も景色も高度を上げるにしたがってどんどん良くなりますよ!
ガスが出る前に早く登った方がいいですよとのことでした。
もうシーズンを過ぎているのか上はほとんど混雑していなかったということでした。
これはますます急がねば!
沢の右岸に取り付けられた高巻き道は結構細く、
谷の斜面に刻まれた厳しい道でした。
夏場であれば、この谷全体を覆っている雪渓の上をストレートにザクザクと進めるのですが、
もうほとんど解けてしまっていて、残っている雪渓もいつ崩落するかわからないので
こちらの細い高巻き道を行くしかありません。
徐々に谷底から高度を上げていくのだが、ガレガレの道なので慎重に進みます。
見上げると、右手に迫る山並みの賑わいが素晴らしい。
時折立ち止まって写真に収めます。
右手側が断崖のようになった高巻き道を詰めていくと、
徐々に谷筋が細く狭くなってゴルジュを形成してきた。
その部分だけはまだしっかりと雪渓が残っていて谷を覆っている。
雪渓の上には赤いペンキマーカーで夏道ルートを示していたが、
その下は完全に穴が開いていて、非常にもろくなっているので、
当然立ち入り禁止。
このゴルジュ帯は、左岸にいったん渡りなおしたところにある
高巻き道で抜けることになる。
そうしていよいよ、針ノ木岳登山のハイライト部分に取り付きます。
時刻は7:50。
ここからいきなりガツンと難易度がアップします。
なかなか切り立った岩場を鎖やロープを補助に直登していきます。
岩自体がギザギザとしているので手がかりや足場は十分ありますが、
何しろ勾配が急でなかなか高度感があるのでスリリング。
まあ、荒地山の岩場に慣れていれば、同じような感覚で行けます。
ただ、この高巻き道はなかなか区間が長く、
ずっと急峻な岩場が続くので集中力が必要です。
しばらく必死で岩場に取り付いて、
ようやくゴルジュ帯の上部へと抜けて、一息。
振り返ってみると、後立山連邦の山々がぶわ〜っと広がり疲れも吹き飛びます。
中央に岩小屋沢岳があり、右端に色づく爺ヶ岳。
その稜線のひとつ向こう側に鹿島槍ヶ岳の双耳峰がちらり。
左端に見えるのは唐松岳でしょうか?
↓後立山連邦の山々がお出迎え(右端が爺ヶ岳・中央奥が鹿島槍)
しばし景色を見ながら休息をし、リスタート。
岩場を抜けても高巻きのガレガレの道がしばらく続きます。
支流の沢との合流点が広い岩場となっていて、
そこを左俣から右俣へトラバースするような形で進みます。
そこから右俣を沢伝いにずんずん進んでいきます。
なかなか骨の折れる登り。
上から下りてこられる方々との行き違いのタイミングを利用して休憩をはさみつつ、
8:25に最終水場の札が掲げられた場所に到着。
この水場の直上で、沢を一旦またいで
木で補強された道に出ます。そこから仰ぎ見ればようやく先に稜線が見えてきました。
そこからさらに上に進んでいくと、ザレザレの砂の斜面に、
ジグザグと取り付けらた登山道が見えます。
あともう一押し!
気合を入れなおして、一歩一歩確実に上がっていきます。
そうして砂の斜面を上り詰めると、突然ポツンと一軒の小屋が登場します。
9:05針ノ木小屋に到着です。
扇沢から約3時間の登りでした。
小屋の立つ針ノ木峠は、古くから交通の要所で、
アルペンルートが開通するまではこの針ノ木峠を越えて立山方面へ抜けていきました。
今でも、西側には針ノ木岳、東側には蓮華岳がそびえ、
また南には針ノ木谷〜平の渡しまでの沢ルートが続いている十字路となっています。
小屋に到着し、翻ってみるとここまで上ってきた扇沢の全景を望むことができます。
さっきまで隠れていた五竜岳や白馬岳まで、
S字を描きながら連なる後立山連邦の面々が一堂に会しています。
トイレを拝借しようと小屋の裏手に回ると、
いままで見えていなかった南側の景色が開けました。
まさしく山々のセンターに堂々と君臨する槍ヶ岳のシルエットがはるか先に堂々と姿を見せ、
そこからまるで山の怪人がマントの両裾をズバァ〜ッと広げたように山容が展開する。
なんて贅沢な景色だろう。
その槍ヶ岳の右手側にもうもうと煙を上げた山がかすかに見える。
あれは焼岳?それとも御嶽?
両山ともこの針ノ木峠からは一直線上にあるので見分けがつかない…
どうも煙は乗鞍と思われる山の向こう側にみえる気がするのだが…
↓南側の眺望が開ける。中央に君臨するは槍ヶ岳
小屋のトイレを拝借し、少しだけ外の腰かけで休憩。
補給品をむしゃむしゃ食べつつ、南側の絶景を眺める。
しかし、爺ヶ岳のあたりにはうっすらとだがガスが出始めているので
これはできるだけ早く山頂に向かわないと、せっかくの眺望に間に合わなくなる。
ということで10分ほどでリスタートして、まずは針ノ木岳を目指します。
ここから山頂まではまだ280m以上あります。
まずはテン場のある方向へ木の階段を進んでいきます。
そこを抜け、少し広場のようなところを進み、そこからジグザグとザレ道を登る。
そこからわずかに下って、前方を見上げると、
針ノ木岳の北面にへばりついた登山道が頼りなく頂へと進んでいきます。
ここからはゴツゴツとした岩の上を進んでいきます。
途中途中にペンキマークがあって、それを頼りに進む。
一旦やせ尾根の上までたどり着くのになかなか手こずりました。
そこからさらに岩場をジリジリと詰めて、10時針ノ木岳に登頂しました。
後立山連邦の最南端、標高2820mの二百名山です。
↓針ノ木岳に向かいます
↓小屋から結構来ました。向かいは蓮華岳
針ノ木岳からはまさに夢の大パノラマと言っていいくらい、素晴らしい眺望。
針ノ木峠からさらに高度を上げたことで西側の山並みが見えるようになりました。
眼下には黒部湖が満々と水をたたえ、そこからスク〜っと立山が立ち上がる。
その脇で豪快な肉体美を惜しげもなく披露しているのは剱岳である。
この湖と名だたる峰々の共演は本当に素晴らしかった。
そしてそこから南へと続く稜線をたどれば、
驚くほど広大な平原のごとき五色ヶ原が真正面に広がる。
その先には薬師岳と黒部源流の山々。
アニキは達者でやっているだろうかと目を凝らしてみる。
南側では真下にある針ノ木谷の対岸から始まる裏銀座の山並みが、
まるでその抗いがたい魅力に吸い込まれるようにして槍の頂点へと連なっていく。
烏帽子岳、野口五郎岳、鷲羽岳…名峰がきれいに整列しているのがよく見て取れる。
そこから高瀬ダム湖をはさんで、燕岳、大天井岳あたりの山も姿を見せている。
残念ながらここからでは穂高の山並みは見えない。
しかし、広い広い北アルプスの北部の山々はほとんど丸見え。
天気も抜けるような晴れ間で、深く色づく山々とのコントラストが素晴らしい。
↓黒部湖と立山連邦
メジャーな山と比べると圧倒的に人の数も少なく、
静かにこれだけの絶景を独り占めできるなかなかの穴場である。
広い山頂では3,4人の人が思い思いにカメラを構えていて
みなスゴイスゴイと感嘆の声を上げておられた。
すごいですねえと互いに声を交わしました。
お一方などはあまりの絶景に見惚れて1時間もここで写真を撮っておられるようで、
ナルホドこの絶景ではついつい長居してしまうのも頷けます。
この方は続いて蓮華岳へ連続登頂されるとのこと。
写真をお願いすると快く受け入れてくださり、無事に山頂シェ〜も収める。
あざーす。
この方もすぐに出発され、山頂には年配のもう一方との2人きりになります。
この方もせわしなく三脚を移動させて絶景をバシバシ撮っておられました。
「同じ写真ばっかりだけど、つい何枚も撮ってしまいます」と言っておられましたが
まさしく自分もそうでした。
日頃山頂では意外とあっさり移動をはじめちゃうのだが、
結局自分も45分もの長居をしてしまいました。
それだけ素晴らしい景色が広がっておりました。
さて、そろそろ移動を開始せねばなりません。
本来のプランで歩くはずだったスバリ岳方面の山並みに未練を残しつつ、
小屋まで下山を開始します。
歩きづらい石だらけの道をずんずん進んでいきます。
扇沢のカールを眼前に下っていくのでなかなか迫力があります。
そうして少しずつその存在感を増してくる蓮華岳。
ジグザグと刻まれた登山道よく見ると、
先ほどカメラをお願いした方が登っていくのが見えます。
↓針ノ木岳の三角点
↓ここまで戻ってきました。次は向かいの蓮華岳を攻めます
11:15に小屋に戻ってきました。
頂上で長居をしたので早く蓮華岳に向かいたいが、
朝にまんじゅう4個入れただけだったので、ここらでガス欠。
ちょいと小屋で食事を頂くことにします。
色々悩んだが、他の人が注文していたみそラーメンの匂いにつられて同じものを。
食事ができるまでに、みやげを物色し、山バッヂと奥さん土産にてぬぐいをゲット。
そうこうしているうちにラーメンが運ばれてきました。
いただきま〜す!
あまりに腹が減っていたのであっという間にペロリ。
山頂で予想以上に長居したため、そろそろ後ろの時間が気になり始めます。
腹ごしらえを済ませて、すぐに蓮華岳へと突撃します。
と、その前に、少しでも機動力を上げるために、
この小屋に荷物をデポしていくことにしました。
天蓋をウエストポーチ化し、カメラとペットボトル、
それから念のための防寒具など最低限の荷物だけを入れて、
ザックは外のベンチに置いておきます。
ではでは2座目に挑みます。
峠の分岐からすぐに勾配のきつい上りがジグザグとハイマツ帯を登っています。
そこをズンズンと詰めていきます。
軽量化したのが功を奏してハイペースで登る。
一旦斜面の反対側へ回り込むような感覚で道は平たんとなり、そこを進んでいくと、
前方から下山者が来られたので少しお話。
すると、今見えているピークのようなものは偽で、
あそこまで登ったらはるか向こうに本当のピークが見えるよとアドバイスいただきました。
そうかあ、あれ偽ピークなんだなあ…
そこからさらに進んでいくと、北側の斜面が崩落している地点に来ました。
なかなか激しく崩落しているなあ。
その横を幅広い尾根道を進んでいきます。
道は結構乾いてガレているが、幅が広いのでじゃんじゃんペースを上げていく。
そうして鑑賞のようなところの裏側からジグザグ登っていくと、
偽ピークがどんどん大きくなってきました。
あれは誰がどう見たってピークだと間違えるよなあ…
ガレガレの道は丁寧に蛇行して歩きやすく整備されているが、
左右も余裕たっぷりで心配がないので、
道を無視して一直線に突っ切る形で進みタイム短縮。
ガランガランと岩を鳴らしながらどんどん詰めていき、
その偽ピークと言われるピークの上に出ると…
あああ、ホントだあ…
想像以上に遠くに本物さんがコンニチワ。
わーい。まだ登れるぞ〜(汗)
時刻は12時を少し過ぎたところ。
翻って、針ノ木岳方面を眺めれば、
さきほどピストンした登山道が険しい山肌に刻まれてるのが見える。
向かって右手側つまり南側には
北葛岳や、船窪岳といった山々が回り込むようにして展開している。
そうして蓮華岳からそちらの山々へは大きく落ち込んでいて、
これが有名な蓮華の大下りである。
本当は今年ぜひとも、船窪小屋に泊まってみたかったのだが、
これは来年に持ち越しです。
↓振り返って針ノ木岳への上り。結構厳しいよなあ
広く緩やかな稜線をえっさほいさと頂まで急ぎます。
ここらの雰囲気はなんだか蝶ヶ岳の二重稜線を思い起こさせるような感じ。
蓮華岳はなんだか女性的なふくよかさを漂わせた山容をしていますね。
一か所下りがあって、その先がやせ尾根となるがまたすぐに幅広くなる。
そこを詰めて12:20に蓮華岳に登頂です。
↓ようやく蓮華岳の山容が見えました
山頂では数人の方が先行されていて、
中には先ほど針ノ木岳でカメラをお願いされていた方もおられました。
ここでも写真撮りましょうかとお声をかけていただき、ありがたくシェ〜。
残念ながら登頂直後から、扇沢で発生していたガスがあがってきて、
周囲は真っ白になってきました。
ガスの切れ間にそこそこ写真を撮ってすぐに下山を開始しました。
↓蓮華岳の三角点
とりあえず今回の山行の目的は果たしたし、あとは来た時と同じ道を戻るだけ。
今が12:30なので、頑張ってペースを上げて
16時ジャストのバスに間に合うようにトライする。
バスは1時間に一本でそれを逃すと最終の17時なのだが、
この1時間差は、のちの乗り継ぎの都合で、
最終的に帰宅時間が2.5時間も違ってくるので、
できれば16時のバスに間に合わせたいのである。
カメラをお願いした人には16時のバス頑張りますと挨拶をして先行しましたが
「それはかなり厳しそうですね〜頑張って〜!」と送り出されました。
小屋までは荷物をデポしているので、その機動力を生かして半分トレラン状態で
次々と先行者をパスして30分で小屋まで戻ってきました。
すぐに荷物をまとめて、ほとんど休憩なしですぐに下山を開始します。
時刻は13:10。
下り始めは急峻なザレ場で、右へ左へと登山道が設けられているのだが、
とても滑りやすいので慎重に慎重に下ります。
沢に出ると岩場の道へと変化し、
下るというよりはトントントンとリズムよく落ちていく感覚でペースを上げていきます。
行き違いや追い抜きのタイミングで小休止やカメラを撮ったりしつつも、
ひたすら黙々と下ります。
いつもはペースが速くてもそれが自分のペースなのでしんどくないが、
この日は、そこからさらに速く速くと意識的にオーバーペースの状態なので
結構キツキツ。そうして沢の支流から、合流点へと下ってきました。
ここから、一番の難所であるゴルジュ帯の高巻き道へと突入する。
岩場ももちろん難所なんだけれど、
高所に設けられたこういうザレザレで靴のグリップが弱まる砂道が
自分にとっては一番怖い。
歩いていてもいかにも滑りそうで不安定だし、実際滑った時に支えられないので。
そこを慎重にすぎると、ハイライトとなる岩場に取り付く。
ここは本当に切り立っているので、
窮屈に体を反転させて、一歩一歩確実に下がる。
そうして岩場を無事抜けて、右俣へと沢を一旦渡ります。
ここでまだ気は抜けず、最小限に切られた登山道をしばらく詰めなければなりません。
上を見上げるとザレザレの斜面に岩がゴロゴロで、落石も怖い。
慎重に進んで、沢の中州まで戻ってきてようやく危険地帯を抜けきった安堵感が出ました。
そこからはうっそうとしたブナ林を突き進みます。
ここからはもう上げれれるだけペースを上げていきます。
途中で何度か、ペースを上げ過ぎて登山道に飛び出している太い枝に
頭を強打してタンコブを腫らしてしまった。
大沢小屋を過ぎたあたりで、針ノ木岳で最後2人になった方に追いつき
ご挨拶してパスします。
この時点で時刻は14:20。
ひょっとしたら、ひょっとして、15時出発のバスに間に合うか?
結局15時でも16時でも松本以降に乗る特急しなのは同じになるのだが、
速く到着するに越したことはない。
万一間に合わなかったとしても16時のバスは問題ないし、
ここからはチャレンジということでもう2段階ほどギアを上げていくことにしました。
もう脚は棒状態だし、靴底はあまりに強度が高すぎて痺れて感覚がない。
それでもお構いなしにドンドン前進する。
遊歩道入り口の林道に出た時点で14:40で、これはもう難しいかと一旦あきらめかけたのだが、
そこからもう一回気を取り直して、ペースアップ。
そうして、ウォッチとにらめっこしながら、登山道を抜けたときには時刻は14:58!
おお〜ヤベ〜!
そのままのペースで駐車場を突っ切り、
走りながらロッカーのキーをポケットから取り出し、
とりあえず荷物をロッカーから回収して手に持ったまま、
バスのチケット売り場へ一目散!
するとまだチケット購入者が3人ほど並んでいて、バスもしっかり待機している!
あああ、間に合った〜@@@@@
まるでマラソンの川内選手のように、
思わずガッツポーズしながら売り場の前で倒れ込んでしまいました。
周囲の人は、おうおうどうした?と心配して駆けつけてくれましたが、
大丈夫ですと声をかけて、チケットを無事購入。
荷物をトランクに入れて、運転手さんにジュースだけ買っても間に合いますかぁ?とお願いすると
大丈夫大丈夫!と言っていただき、取り急ぎコーラをゲットして
無事に15時のバスに乗り込みました。
針ノ木峠から扇沢までわずかに1時間45分という我ながら驚異的なスピードで
もう、今までの山行でダントツ一番激しかった@@@
座席に座るともう脚がバカになっていて
何もしていないのに脚がブルブル、膝がガクガク。
オーバーヒートで頭はカッカし、顔中塩だらけで呆然。
少し落ち着きを取り戻してから、この小さな勝利を祝ってコーラがぶ飲みしました。
バスはそのまま信濃大町に15:35に到着。
すぐさまみどりの窓口に飛び込み、チケットを手配する。
駅員に尋ねてみると、噴火の影響で中央本線の運行中止や遅延はありませんとのことで一安心。
待合室で荷造りをして、トイレで着替えを済ますと、
諏訪行の鈍行が入線してきた。
信濃大町駅で待機するより、松本駅で待機の方がみやげや弁当も豊富だろうと、
予定より一本早いがこの電車に飛び乗る。
電車では疲労困憊で爆睡。17時に松本駅に到着。
次のワイドビューしなのは17:51発なので、
その間にみやげと弁当(ラス1だった。危ない!)をゲット。
ホームで電車を待っているとこの日はやたら鉄っちゃんのカメラマンが多い。
何かあるのかと思っていたら、古めかしい特急が入線してきて、よく見ると貸切。
しかも社内ではギターを抱えた人が熱唱しているのを、みなが手拍子していて、
なんじゃこら?
どうも夢のフォーク列車というイベントでした。
↓松本駅でフィギュア自販機発見
定刻通りワイドビューしなのは松本駅を出発。
この日はもう指定は全席売り切れで混雑していた。
もうほとんど日が暮れかかっているが、窓にかじりついてずっと御嶽方面を眺めるが、
噴煙らしいものは見えない。
木曽福島駅でもそれほど騒ぎになっているようでもなく、平穏としていた。
そこを過ぎてから、弁当を広げ、祝杯を挙げる。
腹を満たしてから、カメラで撮影した写真をチェックしていると、
お隣の席の年配のお母さんも山歩きをしてきたようで、
写真に興味を持ってお話しされてきました。
色々と意気投合して名古屋まで楽しいトークができました。
20:05に名古屋駅に到着し、お母さんにさようならして大急ぎで乗り換え。
20:13ののぞみであっという間に新大阪着が21:03着。
この日は疲労が激しかったので、タクで帰宅して、山行終了。
ということで、かなりバタバタと見切り発車的な山行になってしまいました。
でも針ノ木岳、いい山だったな。