記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

地獄の火打山日帰り & 妙高山撤退

この連休は、通常ルーティンで、連休にならなかったが、
駆け足で山行突撃。
台風の影響で足が確保しづらかったり(電車遅延、バス運休、林道崩落etc)、
天候が全く読めなかったり、
ぎりぎりまで目的地が定められなかったが、
台風の足が早まるのを見込んで、
この数日の降雨量が最も少なく色々なリスクの低いところを検討し、
妙高高原に狙いを定める。
どっちから攻めるか迷ったが、登山口が駅から遠い火打山からスタートして
妙高から下れば、登山道から駅までアプローチが短くて済むので
まずは標高2462mの火打山、そしてあわよくば、
真横に並ぶ標高2446mの妙高山の2つの百名山を日帰りで落とそうという
結構難易度の高いプラン。


結果としては、その読みが見事に外れ、歩き出しから全くの本どしゃ降り。
粘土質の山道は深いぬかるみとかし、くるぶしよりもさらに上まで浸かるほど。
まるでベトナムのジャングルでゲリラ戦を強いられているかのような激しい苦行。
登山口が1100mほどで、2500m以下の山で、標高差1400mなので軽いと思っていたが
本当にしんどい山でした。
それでも一般的なコースタイムの約半分の3.5hで火打山を制覇。
そしてあれだけ降っていた雨が
ピーク付近では奇跡的に止んでくれました。


↓泥地獄


↓天狗の庭から火打山


火打山にて


ここまでは本当に順調で、そのまま妙高山を目指して即時転戦。
中間にある茶臼山を抜けて黒沢池ヒュッテに到着したのが14:00前。
ここから先には、数か所の難所があるが、
このペースでいけば何とか日没までには安全地帯(ゴンドラ駅)までは抜けて
あとは車道でナイトハイクで下山できそうだった。
そこからまず妙高山の外輪山を越える大倉乗越へのエグイ上り。
激しい虫の襲来と、ドロッドロに滑る急斜面を越え、反対側へ。
そこから妙高山の取り付きの途中まで
外輪山の斜面をトラバースしていかねばならないのだが、
その間に数か所ある雪渓の急斜面に阻まれる。
ちょうど妙高山からやってきたベテランさんに先の状況を聞くと、
目の前の雪渓ですら結構危険なのに、さらにその先に3倍ほどの雪渓があり、
そちらはさらに雪が腐って危険な状況だという。
慎重にいけば問題なさそうだったが、すでに時刻が15時を過ぎていたことと、
天候が急に悪化してきたこと、明らかに日没までに安全地帯へ抜けられないこと、
それがわかっていて無理に雪渓を越えてしまってももうエスケープできないこと、
など総合的判断から撤退を決意しました。
たぶんこの危険な雪渓トラバースも自分のスキル・経験でギリギリクリアできるが
時間を急いている状況で無理すると滑落のリスクが高いし、
それをクリアしても、もっと大きな目的=下山することが不可能でした。
あそこが自分にとっては危険と冒険の境目でした。
お一方自分と同じく日帰り弾丸で火打から妙高に転戦された人がいて、
その方は果敢にも進んで行かれましたが、果たして無事だろうか…


妙高山目前で無念の撤退


いったん撤退を決めれば、即時下山プランを進行させます。
黒沢池ヒュッテで一泊という手もあったが、
日帰りを目論んで荷物軽減のため
山中で泊まれる十分な衣類を持っていなかったことや、
道中に大量の宿泊客がいることがわかっていたので、泊まれない。
燕温泉へ抜けるコースもあって、
その方が下山後に駅までの距離が短いのでそうしたかったし、
そもそもそういう想定でプランを立てていたのだが、
すでに16時となって、また新たに未知の山道を進み、
しかも結構強い雨が降ってきたなかで、
大きな滝壺を進むルートは増水の恐れがあったのでリスクが高く断念。
結局、上ってきたルートを引き返すのが一番安全と判断し、笹ヶ峰を目指す。
下山開始直後から、再びバケツをひっくり返した大雨が降り、
これまでの降水のせいで、登山道は完全に泥沼。
もう上も下もドロドロ、ビショビショ。
これまでも幾多の悪天候での山行も経験してきたが、
今まででダントツ危機的な状況でした。
そう考えると、あの時点で撤退を決めたのはギリギリのタイミングでの正しい決断でした。
どうにか18時前には登山口まで逃げ帰るが、もう足も棒で、
あれだけ体が衰弱したことはありませんでした。
しかし、バスはすでになく(15:50最終)、
駅からはちょうど妙高山の広いすそ野を回り込んだ反対側で、15〜20kmも先。
土砂降りの雨の中、しかもこれだけ消耗した体でもう無理…
仕方なくタクシーに電話して手配してもらおうと思ったら、まさかの拒否。
嘘やろ…
ずぶ濡れ、標高1100mで、寝具なし、宿もなしでこのままではマズイ。
歩くにしてもこれは駅まで最低でも4時間はかかる。
心底絶望していると、登山口からご夫婦が下山してきて車に乗り込むのが見え、
恥を忍んで、駅まで送ってもらえないか懇願すると快くOKしていただき、
車に乗せていただきました。本当に命の恩人です。
M夫妻ありがとうございました!


無事に駅の到着をした時点で、すでに即日帰宅は不可能だったので、
ひとまず長野駅まで出て、ホテルを確保。
そこでお風呂に入ろうとバスルームに入って顔を見たら…
耳が3倍ぐらいに膨れ上がっている。
よく見ると、真っ赤に膨れ上がって、触るとカチカチ。
まるでマギーなんちゃらのどっきりグッズのような状況。
おそらく大量の虫(ブヨ?)に集中砲火を浴びて、さんざん噛まれた結果です。
恐るべし!
そこから猛烈な熱が出て、一晩うなされる。
本当はいったん立て直して、翌日に別ルートから妙高山リベンジと思ってたのだが
そんなことをできる状況ではなく、
まるで誰かに耳を思いっきり引っ張られているような感覚で
耳にメガネをかけるだけでもつらく、
腫れはどんどん広がって、顔が2倍に膨れて、輪郭が変わり、
口を開けるのも不都合なほど…
これはもう帰るしかないと10時の特急に乗り込み、
車中から眺める快晴に恨めしさを募らせつつ15時に帰阪。
帰宅後嫁子には大笑いされましたが、笑いごとでは全然なく、
とにかくアイスノンやら何やらで顔中を冷やしまくる。
どうにか腫れも収まりつつありますが、まだ完治にはしばらくかかりそうです。


ということで、完全に間違ったタイミングで山をチョイスし、
自然の厳しさの前に撤退を余儀なくされ、
想定外のことが起こったとはいえ、
見通しの甘さで、よそ様にご迷惑をおかけし、
顔面パンパンに張れあげて罰を受けるという、
山の厳しさを今一度思い知らされた山行でした。(泣)


↓アブのせいで顔面パンパン…


<山行スケジュール>
18:15出発⇒18:40新大阪⇒(ひかり480)⇒19:33名古屋19:40⇒
ワイドビューしなの)⇒22:30長野
長野駅前のネカフェで一泊


5:31長野⇒(しなの鉄道北しなの線)⇒6:14妙高高原7:20⇒
(頸南バス)⇒8:20笹ヶ峰バス停
8:30笹ヶ峰登山口⇒8:55黒沢橋⇒9:25十二曲(12)⇒10:00富士見平分岐⇒
10:35高谷池ヒュッテ10:45⇒10:55天狗の庭⇒11:25ライチョウ平⇒
11:55火打山12:15⇒12:25ライチョウ平⇒12:40天狗の庭⇒12:50高谷池ヒュッテ⇒
13:15茶臼山⇒13:35黒沢池ヒュッテ13:50⇒14:05大倉乗越⇒
14:35雪渓トラバース14:42⇒15:00大倉乗越⇒15:15黒沢池ヒュッテ15:25⇒
16:00富士見平分岐⇒17:00黒沢橋⇒17:45笹ヶ峰登山口
18:00笹ヶ峰キャンプ場⇒(ヒッチハイク)⇒18:40妙高高原19:05⇒19:50長野
長野で一泊


10:00長野⇒(ワイドビューしなの)⇒13:05名古屋13:11⇒(ひかり)⇒14:00新大阪


↓今回のルート