記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

御嶽山

10月の頭。

長野県の木曽町・王滝村岐阜県高山市にまたがる

標高3067mの独立峰で百名山御嶽山に登ってきました。

 

御嶽山といえば、2014年9月27日午前11時52分に起こった

噴火を思い起こさざるを得ません。

当時の噴火の規模は自然界においてはごく小規模なものでしたが、

ちっぽけな人間にとっては相当な破壊力を持っていました。

秋晴れのお昼時間というタイミングもあり、

戦後最悪の被害をもたらす火山事故となってしまいました。

目撃者、生還者が撮影したあまりにも生々しい映像の数々を

今なお記憶している方も多いと思います。

本当に不運なことでしたが、

山に登る人間なら決して他人事ではありません。

 

同じ日同じ時間、自分はちょうど、

御岳山のふもと、最寄り(といっても20kmほど離れているが)の

木曽福島駅を特急電車で通過中でした。

その時はまさかそんな大災害が起こっているとは

全く気付かず、知らず、別の山に向かっていました。

まだ当時自分はスマホではなくガラケーで、ネット環境になく、

その晩、扇沢のバスターミナルで野宿中に、

仕事から帰宅した奥さんから心配の電話があって、

初めて事の次第を知りました。

 

噴火以降、山頂付近は進入禁止、通行禁止となっていたのですが、

去年おととしあたりから、時限的に開放されるようになって、

いずれお参りにいかなければと思っていました。

 

今年はコロナ禍の影響で、

多くの山小屋が営業を取りやめたり、

短縮、受け入れ縮小などがあり、

入山できる山域が限られ、その限られたところに、

自粛明けで待ち望んだ登山客が殺到するという状況だったので、

なかなか遠征するのが難しい状況でしたが、

そろそろ山小屋のクローズが間近に迫り、

またあまり天候が望めない、日月であれば、

まだ混雑を避けられるであろうということで慰霊参りへ。

 

初発の新幹線に乗り込み、

名古屋で初発の特急しなのに乗り換え。

そこから木曽福島まで。大阪から約2時間30分で到着です。

しかしここからの路線バスがなかなか大変。

くねくねと山間を抜けること1時間弱。

御岳ロープウェイに到着しました。

 

 

 

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お天気はどうにか雨が降らずに持っているといった感じで曇天。

それにしてもこの山麓駅(標高1570m)まで来ると

さすがに寒い!!

検温等コロナ対応をして、チケットを購入。

ゴンドラに乗り込みます。

 

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ぐんぐん高度を上げていくにつれ、どんどん雲の中へ。

予報通りとはいえ、できるだけ雨はもってほしいところ。

15分ほどで標高2150mの山頂駅に到着。

ここから約900mの標高差を歩きます。

10:00ジャスト山行スタートです。

 

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ロープウェイ駅からは

よく整備されたフラットな道を5分ほど歩くと、

7合目にあたる行場山荘。

ここは小屋の方にご挨拶しながら通過していきます。

それにしても年季の入った風情ある小屋です。

 

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実際の登りはこの小屋の裏口からスタート。

のっけから階段が続きます。

このあたりの森はまだ紅葉には少し早い感じだったが、

所々色づき始めているようです。

 

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なおも会談を上り詰めていると、前が騒がしい。

何事かと思えば、装束を身に纏ったお参りの列でした。

御嶽は古くからの由緒ある山岳信仰の山でもあるのです。

 

この一行以外にも、

土日の休みで登られた登山客が続々下山してきて

頻繁にすれ違うので、マスクを装着しながらの登りで、

なかなか息が上がる。

 

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40分ほどかけて、8合目の女人堂に到着しました。

この先は明治初期まで女人禁制だったため、

女性がここでお参りをすます場所でした。

しばらくの休息。

 

ここで樹林帯を抜け、視界が開けます。

上部の低い木々が点々と色づいている、

さらに上部は岩盤がむきだしの険しい山容。

あの奥まったところがピークになります。

天気は相変わらずですが、少し雲間を抜けたのか、

上部は先ほどよりも明るい。

 

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しばらく休憩ののち、リスタート。

小屋から水平に少し歩き、

たくさんの石碑が立ち並ぶ一帯から、

ハイマツ帯の間にまっすぐ伸びる階段を進みます。

何気にここが急で、腿上げがしんどい。

 

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ハイマツ帯を抜けて、釣り鐘のある、

少し開けたところまでやってきました。

振り返ってみると、先ほどの女人堂が真下にあり、

その先は雲の世界。

そしてここから上部は岩稜地帯となります。

 

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若干、濡れた岩場をえっちらおっちら上ります。

今回は歩く距離もそれほどなので、登山靴ではなく、

機動力に優れたトレランシューズにしたのですが、

軽い分、グリップが弱いので帰りが少し心配になってくる。

(めちゃくちゃ履き古してるというのもありますが)

 

三ノ池方面の山肌が色づいているのを横目に見ながら、

えっほえっほと登っていると、

背後から雨雲と追いかけっこになって、

若干濡れながら急ぎます。

幸い雲は小さな塊みたいで、ミストシャワーのよう。

なんだかんだこのあたりも、

岩場の急斜面なのでしんどいのだけど、

眺望があることもあって、それほど気にならない。

 

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すぐ眼上に見えている小屋の直下が、

まずまずの急こう配で、息が切れますが、

それほど距離もないので、スイっとやっつけ、

9合目の石室山荘に到着。

ここでおトイレを拝借し、

それから少し休憩をと思ったら、

小屋の中はかなりの混雑だったので、あきらめて、

そのまま山頂を目指すことにしました。

 

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混雑する山荘を後にしてもうしばし、

急峻な岩場を登ってくと、

ほどなくして覚明堂にたどり着きます。

ここは山上の分岐点となっていて、

二ノ池、三ノ池方面と山頂・剣ヶ峰へ向かう方面に分かれるが、

もちろん、今回はそちらへ。

 

噴火以降は山頂方面へは

少し前までは完全に立ち入り禁止になっていた。

現在は期間限定で通行可能となっている。

(火口から概ね1km圏内は原則立ち入り禁止区域に指定されている)

 

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分岐を折れて進んでいくと、

右手に大きな泥炭の池が見えてきます。

これが二ノ池。日本最高地点にある湖沼。

その脇に二ノ池小屋が建っています。

 

ちなみに火山湖は一ノ池から五ノ池までがあり、

それはこの山が場所を移しながら、

これだけの大規模な噴火を何度も繰り返してきた証です。

 

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そこからさらに荒廃した世界を、

緩やかに登っていくと前方にお社が見えます。

また周辺には緊急用のシェルターなどがいくつも建ち並び、

そこでたくさんの登山客や工事関係者が休憩していました。

 

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最後に急な石段を登れば、

標高3067mの御嶽山山頂、剣ヶ峰に登頂です。

時刻は12:40。ロープウェイから2時間40分でした。

 

まずはあの日ここで被害に遭われた方々に、

黙とうを捧げました。

 

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山頂からはすぐ真下に広がる一ノ池と、

その奥に二ノ池、

その先に外輪山を形成する摩利支天山に継子岳が見えます。

これほどまでに荒廃した世界で、

人知をはるかに超えた畏れを感じるとともに、

むきだしの自然が見せる、

ある種の美しさをひしひしと感じます。

 

一ノ池は枯れていることが多いようですが、

この日は鈍い鉛色の一面。

そして荒々しい岩礁帯に、雪のようにまぶされた粉塵が、

まるで現世ではなく黄泉の国のごとく。

その一帯に散らばった、砕け散った石の塊たちは、

噴火の際に、飛び散ったものだろう。

こんなものがツブテのように降ってきたら、

ひとたまりもない…

 

目の前に広がる生々しい自然の険しさにただただ圧倒されて、

しばらくの時間呆然としていました。

 

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 少しして我に返り、先へ向かうことにしました。

石段を下りながら下を見ると、

王滝村からのルートがよく見えますが、

こちらは噴火の打撃をもろに受けて 登山道は破壊されてしまい、

通行できない状態が続いています。

工事関係者の皆さんが働いている様子がちらほら見えます。

 

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剣ヶ峰山頂を後にし、

先ほどの分岐地点まで下っていきます。

そしてその分岐を左折して二ノ池方面へ。

少しぽつぽつと雨が降ってきてしまいました。

山上はさすがに気温も下がり、風が出てきたので

体感が相当寒く、末端がみるみる冷えてきました。

 

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二ノ池は鉛色の泥炭と化して音もなく底に沈んでいます。

その際を歩いて、二ノ池山荘に到着。

雨が少し強まってきたので、ここはスルーして先へ。

そこからさらに2,3分のところにある、

二ノ池ヒュッテが本日の宿泊地。

13:25に無事到着です。

 

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少し早いですが、チェックインを済ませます。

余りに寒いので、温かいものを食べたい。

名物の担々麺はあるかと期待したのだが、

もう小屋閉め1週間前ということで、

荷下ろしも済ませてしまっていてありませんでした@@@

その代わりに、ドリンクバーがあったので、

そちらを注文して、ホットココアを2,3倍。

ロビーにはコタツが並んでいたので、そこに体をうずめ、

お昼もまだだったので持参したカルネをいただきつつ、

暖を取ります。

 

それにして10月の頭。

下界はまだまだ暑いですが、

山の上は秋を通り越して冬支度です。

 

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落ち着いたら、お部屋を案内いただきます。

この日はさすがに人も少なく、宿泊者20人程度。

1つの部屋に2人でした。

たまたま同部屋の方は大阪の方で、色々お話しできました。

 

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1時間ほど休憩をして、寒さもしのぎました。

晩御飯の時間までは何もすることがないし、

アタックザックに必要最低限を詰めて、散歩に出かけます。

小屋の方にちょっと出かけてきますと声をかけて、

さらに先を目指します。

 

雨はどうにか小康状態ですが、風が少しあります。

小屋から少し下っていくと、サイノ河原と呼ばれる、

広い場所に出ます。

この辺りはおびただしい数の小さなケルンが建てられて、

まるで寺山修司の世界か、黒澤明の『夢』に迷い込んだかのような

現世と黄泉のあわい。

 

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サイノ河原の先は登りになっていて、

外輪山を形成している摩利支天山に取り付きます。

ジグザグと登って、ヒダ山頂に到着。

ここで道は2手に。

一つは尾根を伝って摩利支天山へ向かうか、

この先を急下りして三ノ池・五ノ池方面目向かうか。

時間が時間なだけに、両方は難しい。

ちょうどこの辺りは雲がぽっかりと覆っていて、

せっかく摩利支天山へ向かっても眺望は望めなさそうだったので、

ひとまずは、話題の山小屋・五の池小屋を見学に行くことにします。

 

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ヒダ山頂をずんずんと飛騨側へ下っていきます。

こちら側は比較的雲が晴れていて、

眼下に濁河温泉方面の高原が見えています。

そこから目線をあげていくと、ちょうど真下に、

五の池小屋が建っており、

その横にあるはずの三ノ池は雲の中。

 

その奥になだらかに広がるのが大外の外輪山・継子岳。

あの穏やかに歩きやすそうな山を見ると、

どうしても欲が出て、

あそこまで行けるかなと思わず考えてしまいました。

行くはよいよい、行った分帰りがあるわけで、

あそこまで下るとなれば帰りは登りだし、

余り遅くなって小屋の人に心配をかけるわけにもいかないし…

時計とにらめっこをして、

何時何分までにたどり着けるところまでと決めて、

ひとまず一番遠いところを目指すことにしました。

(結局いつもの欲張り)

となれば、グズグズしている間はありません。

荷物も軽くなっているし、せっかくのトレランシューズですから、

軽くランをしながら下っていきます。

 

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ずんずん下っていくと、

右手に三ノ池が見えてきました。

晴れていればきっとエメラルドに輝くのであろう、

美しい湖面です。

 

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なおも下っていくと、前方に五の池小屋が現れます。

ここは今最も注目を浴びている山小屋の一つで、

雲上の薪ストーブカフェ「ぱんだ屋」で提供される

手作りシフォンケーキやピザなどの絶品料理の数々や、

優雅な山岳リゾートのようなテラス席が設けられたり、

”映える”山小屋として人気で、

ここに宿泊する目的で登ってくる人も多いとか。

今回ここを視察するのも目的だったのですが、

それよりも先へ急ぐことにしたので、

なくなくスルーします。

 

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時刻は15:12。

天気はもうこれは降らないだろうし、

日没もまだ先なので大丈夫。 

だが小屋の方に心配をかけてもいけないから

いくら遅くても16:30には戻らないといけない。

ここまでの道のりの登り返しを考えれば、

15:30までに継子岳にたどり着けるか。

たどり着けなくても時間になればその時点で戻る。

先を急ぎます。

 

小屋の少し裏手から延びるトレイルへ取りつきます。

少し岩場のような場所を抜けていきますが、

危ない場所ではなく、

またなだらかで歩きやすい道が続きます。

とりあえず写真は復路に撮るとして、今はとにかく先へ。

小走り気味に歩いて、どうにか15:25に継子岳にとうちゃこ!!

 

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あまり時間の猶予はないけど、

少しだけ滞在して写真を撮る。

継子岳の辺りはなだらかながら、

意外とガレガレでした。

 

北側に広がる開田高原、そして高山の高根の山間。

さすがにこの天候なので、乗鞍や北アルプスまでは見えず。

それでもこの景色を独り占めできたので大満足。

 

振り返れば、御嶽山が静かに威風堂々と鎮座している。

その猛々しい姿に思わず見とれてしまうが、

グズグズはしていられない。

今からあそこに戻らねばならないのだから。

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五ノ池まではなだらかなので、

時間を稼げる区間はとにかく急ぎます。

取って返して五ノ池小屋まで帰ってきました。

ここで地図を確認すると、来た道とは別にもう1つルートがある。

三ノ池の方へ少し下って、

避難小屋のある中腹へとトラバースする道。

ヒダ山頂まで登り返すよりも、そちらの方が標高差が少なく、

また若干距離も短縮できるので、そちらへ。

左手に三ノ池を望みながら、ずんずん山の脇腹をなぞっていく。

最後のところはガレガレの急登が少しあり、

滑りやすいので慎重に。

そうして無事に避難小屋まで来ました。

もう二ノ池ヒュッテはサイノ河原の向かい。

目論見通り、小屋に帰着がジャスト16:30でした。

でも小屋の人はなかなか帰ってこないから

心配されてたようで申し訳ない@@

 

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小屋に戻り、とりあえず荷物を整理して、寝床も設置。

今年は、コロナの影響で、布団は支給されますが、

その上に、持参したシュラフを敷き、枕も持参したタオルを巻いて

感染予防が必要でした。

 

それでも晩御飯まではまだ1時間30分もあるので、

ロビーのおこたで暖を取ります。

すると温かさと疲労と寝不足でついZZZ…。

 

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夢うつつでくつろいでいると、

そろそろ夕食の時間となりました。

この日は、小屋締め目前ということもあり、カレーです。

もちろん、おかわりもしました。

ご馳走様です。

 

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食事を済ませて、あとは消灯まで、

引き続きロビーでまったり。

するとどうも外の様子が悪い。

びゅうびゅう、どうどうと風が強くなって小屋全体を揺らす。

時折トップが吹く音が、ぼおんぼおんと鳴るのだが、

場所が場所だけに噴火したんじゃないかとビクビクしてしまう。

実際、この二ノ池ヒュッテも天井に1か所、

噴石がぶち破った大穴があるのだそう。

消灯後も、風は強まり、雨も降ってきたよう。

予報通りとはいえ翌日は天気は望めなさそうです。

 

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翌朝。

起床して外を見ると、

やはり雨が降っており、風も引き続き強いようです。

本当は昨日行けなかった摩利支天山

通過しただけの五ノ池小屋へ行ってから

帰路に着こうかと思いましたが、

これはおとなしく下山することにしました。

雨はともかくも風がそこそこあるのが難儀ですが、

独立峰なので、おそらく山上だけがこれだけ風が強く、

高度を下げれば大丈夫だろう。

特に石室山荘直下の岩場は雨で滑るし、足元が不安なので

そこだけ注意すれば、

女人堂の手前からはハイマツ帯なので、

そこまでの我慢になるだろう。

 

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5:30になり、朝ご飯。

しっかりとお代わりをして準備万端です。

 

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もう少し待てば天候はましになるかもだったが、

どうせ下山オンリーであれば、

さっさと降りて、さっさと帰宅したいので、

7:00には発つことにしました。

 

外に出ると、ガスガス。風も強いが、

昨晩心配したほどではなく一安心。

それでもここは標高3000mの世界、油断禁物です。

 

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いざ出発。

ほかの宿泊者の多くは天候が回復するまで待機される方がほとんどで

他には誰もいません。

雨のつぶてが横殴りで吹き付けてきます。

それに抗いながら二ノ池を過ぎます。

もう一度山頂に寄ろうかどうか迷いましたが、

体がみるみる冷えるし、また訪れるので、おとなしく下山。

吹き付ける水滴で、メガネが真っ白に曇って、

全然前が見えないので、メガネを外して進むことにしますが、

視力0.1の世界は、おぼろげで、

雨で濡れる足元の岩場もぼんやりしかわからない。

いつもの遠征用の登山靴ではなく、

ペラペラのトレランシューズということもあり、

慎重に歩きます。

石室山荘のところで、

昨晩同室だった方に追いつかれご挨拶。

 

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石室山荘を過ぎて、

注意すべき急下りの岩場に向かいます。

やはり思惑通り、

山上から少し降りるだけで風が一気に収まりました。

でも足元が濡れているのは変わりないので、慎重に進みます。

 

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アンカ・カヴァンの描くガスガスの白い世界のような中を

焦らず自重してゆっくりゆっくり降りて、

どうにか釣り鐘のところまで下ってきました。

ここまで来れば、あとはハイマツ帯を経て女人堂、

その先は森に入るので雨も風もへっちゃら。

安全地帯に到達して一安心。

 

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荒天の時ほど、ハイマツのありがたさが身に沁みますが、

本当にこんなわずかの風よけ雨よけが抜群に効果を発揮します。

どんどこ下っていくと、徐々に雲も晴れてきました。

二ノ池ヒュッテを出発して1時間で無事女人堂まで下りてきました。

 

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女人堂で少し休憩をしていると、

徐々に天気が良くなってきました。

予定よりも早く降りてきましたが、バスの時間は決まっているので

持て余してしまうので、少しだけ寄り道します。

 

女人堂からは、メインルートのほかに、

直接三ノ池方面へ続くトラバースルートがあるのですが、

途中、台風の影響などで道が崩落してしまっているらしく

通行止めになっています。

ただ、そこまでは紅葉を見るために進んでもOKと書いてあったので

少しだけそちらへ行ってみることにします。

 

所々ぬかるんや道を少しだけ登り返してみますが、

紅葉もまだ一歩手前で、

天候もまたまた雲が湧いてきて、

山上を隠してしまいうまくいかない。

雨で濡れた体も冷える一方なので、

もうすっかりあきらめて戻ります。

 

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女人堂でもしばらく待ってみましたが、

やはりすっきりしない。

元々、悪天を狙って来たので、

これはこれで予定通り。

時間調整も済んだので、引き続き下山します。

 

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どしどしと森を下っていくと、

かなりの数の登山客が登ってきて何度もすれ違います。

3000m峰とはいえ、難所も少なく、

手軽に登れる山の人気ぶりがうかがえます。

とっとこ降りて、9:20にはロープウェイ駅に到着。

これにて山行終了!!お疲れ様です。

 

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10時までにはふもとにおりましたが、

バスの時刻は11:45とまだかなり時間が余ってしまった。

とりあえず濡れて不快な衣類を着替えたり、荷物の整理。

寒いので食堂で味噌ラーメンを食べたり、みやげ屋をのぞいたり。

 

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ようやくバスが来て乗車。

この便は、木曽福島駅へはまっすぐに行かずに、

わざわざ開田高原へ大きく寄り道するので、

1時間20分もバスの旅。

そうして13時過ぎに駅に到着しました。

ここまで下りてくると、

さっきまで寒さに震えていたのがウソのように

ぽかぽか陽気。

 

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ちょうど、20分後くらいに名古屋行の特急しなの号があり、

スムーズに名古屋を経由して帰宅。

 

これにて、2020年の山行遠征は終了。

もう今年は近場の山以外はいけないと覚悟していましたが、

唐松岳御嶽山の2つに登ることができました。

来年はもっといける世の中になっていたらいいのだけどなあ。

 

<山行記録(1日目): 6時間30分>

10:00飯森高原駅⇒10:08黒沢口七合目・行場山荘⇒

10:50黒沢口八合目・女人堂⇒11:00⇒12:00石室山荘12:10⇒

12:40御嶽山12:50⇒13:15二ノ池山荘⇒

13:25二の池ヒュッテ14:20⇒14:30賽ノ河原⇒

14:50摩利支天乗越⇒15:12五の池小屋⇒15:25継子岳15:30⇒

15:45巻道の三ノ池分岐⇒16:10三ノ池乗越分岐⇒16:20賽ノ河原⇒

16:30二の池ヒュッテ泊


<山行記録(2日目): 2時間20分>
07:00二の池ヒュッテ⇒07:25石室山荘⇒

08:00黒沢口八合目・女人堂08:45⇒09:15黒沢口七合目・行場山荘⇒

09:20飯森高原駅G

 

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