2018Gパトの夏 さらば朝日いざ白馬
さあ、旅立ちの日です。
この日、一週間滞在した朝日小屋を出発して、
向こうに見えている白馬岳へと転戦します。
雪倉岳を越えていくルートは、
通常タイムであれば8時間ほど。
途中、パトロールもしながら歩いて、
遅くても15時くらいまでには到着して、
あちらでの業務の準備や確認作業もしたいので、
朝食を終えて、ラジオ体操を済ませたら、
出発する予定でしたが、なんだかんだと出遅れて、
7時過ぎに出発します。
みなさんにバンザイで見送られて、
通いなれた水平道へと入ります。
また一週間の任務を終えれば、戻ってくるのだけど、
やはり別れは寂しい…
またね~。
7月も終わりの頃となれば、
残雪が毎日溶け出して、日々顔色を変えていきます。
あれだけあったV字谷の雪もずいぶんと貧弱になり、
雪上を行くは危険なので、
谷の脇へとトラバースして下っていきます。
木道を歩きながら、何度も朝日岳を振り返ります。
そうしていよいよ、目の前に雪倉岳がそびえます。
まずは最低鞍部までたどり着き、
そこから左手へと巻きながら、一気に登っていきます。
いつものパトロール用の軽いトレランザックではなく、
久々に一切合切の装備を背負ってなのでなかなかしんどい。
最年長コンビ、がんばりますよ。
どうにか暑くなる前には雪倉の上りをやっつけて、
9時過ぎには山頂到達。
割といいペースです。
さあ、ここからは百名山の白馬岳を筆頭に、
となりに突き出る旭岳、
手前に鉢ヶ岳が雄大に横たわっています。
この景色のど真ん中をずずっと歩いて行くのです。
まってろ白馬!!
さて、しばしの休憩ののち、
反対側の斜面をずんずん下っていくと、
雪倉岳避難小屋が見えてきます。
その周りをちらちらと赤い2人組が動いているのが見えます。
おおお、あれはもしや、カメちゃんと姫!?
初日一緒に上がってきた朝日・白馬班のもう一班は、
自分達とは逆の動きで、一週間の白馬での任務を終え、
朝日小屋に向かっていて、
ちょうどいい場所ですれ違うことができました。
2人とも元気そうでなにより!
ここで、いろいろと任務の引継ぎや、
スタッフのことや、
小屋の暮らしのあれこれ(洗濯は?食事は?ルールは?などなど)を
細かに情報交換します。
15分ほどの滞在ののち、お互いの健闘を祈って、出発。
彼らとはまた1週間後の交代の時にすれ違います。
雪倉岳を越えると、鉢ヶ岳との間の広大な鞍部を横断します。
そうして鉢ヶ岳の東側の斜面を巻いていくのですが、
この時はまだいくつもの谷筋に、
嫌な感じで雪渓が残っていて、
小さなステップを切りながら横切っていきます。
鉱山道との分岐を過ぎたところにある
小ピークで昼休憩を入れることにします。
小屋の女性陣がこさえてくれたおにぎり。でっかい!!
これ食べて元気出して張り切って行って来いよ~と
励まされているようで、疲れも吹き飛びます。
曜日的にも、エリア的にも最果ての山域ということもあり、
全然人がおらず、
この圧倒的な絶景を二人締めしながら、
のんびりと昼飯を食べるというのは、もう役得ですね。
30分ほど休憩をして、いよいよ白馬岳に向かいます。
まずは目の前の支尾根に取り付くための急登をやっつけます。
白骨を敷き詰めたようなザレザレの道を
ガシャリガシャリと登っていく。
途中咲いている高山植物を図鑑でチェックしながら、
お勉強も忘れずに。
コマクサやウサギギク、イワギキョウ、タカネツメクサ、
イワオウギ、クルマユリなどなど。
ちょっとした花弁やガクの形状の違いで、
種類を見分けないといけないので、なかなか覚えられません!
このあたりは、尾根が広大で、
ガスっている時などは道迷いしやすいので、
石を並べてわかりやすくルートを作ったり、
色々な作業しつつ、ようやく三国境までやってきました。
ここは読んで字のごとく、3つの国の境界点で、
今我々が歩いてきた富山県と、これから向かう長野県、
そしてもう一方の新潟県の県境です。
ようやくこれで、栂池からの主稜線に乗ることができました。
さすがに、ここからは登山客の往来が多くなり、
パトロールのシャツと腕章をしている我々に
声掛けしてくる方も増えます。
一般の人から見たら、
パトロールの人っていう認識だけで、
山岳警備隊や山小屋の人と区別なく、
何かあったら頼りになる人になるので、
色々と道案内とか、ルートのこと、色々声をかけてきます。
こちらも可能な範囲で
いろいろお助けキャラとして頑張ります。
三国境から、白馬岳の頂上のすぐそばまでは、
多少険しい岩場を進んでいきます。
といってもメジャールートなので、
しっかり整備されているのでまず問題ない。
30分ほどで標高2932mの白馬岳に登頂。
3年ぶりにやってきました。
ここがこれから毎日何度も訪れることになる職場になります。
山頂から、これから我々が一週間拠点とする白馬山荘は
目と鼻の先。10分とかからず下って、
まるで立派なリゾートホテルのような巨大な小屋に到着します。
なんだかんだ6時間弱で到着できました。
おじさん頑張った。
それにしても、それにしても、
設備の大きさも、人の多さも、
何もかもが朝日小屋とは違います。
田舎から大都会へとやってきたような、
カルチャーショック。
まずは受付へ出向いてスタッフの皆さんにご挨拶。
すぐに部屋へと案内されて、荷物の整理。
個室ですが、タッパのあるおっさん2人入ればギュウギュウです。
身支度を済ませて、再び受付へ向かい、
スタッフさんに色々と山荘を案内いただきます。
受付だけで1棟あり、宿泊棟が2つに、
でっかい食堂、他にレストラン棟まであります。
さすが日本最大級の収容人数を誇る山小屋です。
夕食も、週末の繁忙期などは、
3回戦・4回戦は当たり前で、
やはり白馬岳は人気の山なんだなあと実感します。
スタッフの数もかなり多くて、
アルバイトの学生さんが忙しく働いていたり、
それとは別で、昭和大学の学生さんが
山岳診療所で研修されていたり、
とにかくどこもかしこも人で賑わっています。
これだけの人数ということもあり、
ここでは小屋の手伝いは任務ではないようなので、
本来の任務に専念することになります。
そこも朝日小屋とはまるっきり違っていて、
それはそれでなんか淋しいかなあ。
夕食までの間、テラスで絶景を堪能。
向こう側にそびえるは、白馬三山の杓子岳と白馬鑓ヶ岳、
そして黒部峡谷をはさんだ向こう側には、
文句なしの絶景。
刻一刻と変化する雲の流れを追っているだけで、
もう飽きることを知らない。
これから1週間この景色の中でどっぷり。ああ、贅沢だ。
夕食の声がかかり、食堂へ。
でっかい食堂にたくさんのスタッフがどどどっと。
この日の献立はハンバーグ。
この日はよく歩いたのでよく食べた。
さあ、明日からはまた新しい一週間。
つづく・・・(そのうち)