記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

火打岳 超特急

土曜日は通常ルーティン。
水泳はあまり体力を消費しないように軽く流す感じで。
帰宅後、山行の支度をしつつ、いまだどの山に行こうか決めかねていた。
元々は南アを攻めるつもりでいたのだが、東海地方のここ数日の降雨量がものすごく、
ただでさえアクセスが非常に難しいところを
これは登山口までのアプローチが寸断される恐れが多く、リスクが大きいので断念。
台風の速度が遅いのが気にはなるが、降雨量の比較的少ない北部方面に切り替える。
これまではほぼ松本を起点として山歩きをしていたので、
今回はちょっと変えて長野起点で巡れるお山を探しているなかで、
妙高山火打山に決定した。


奥さんが仕事から帰宅し、バトンタッチで新大阪へ向かうと、
台風の影響が長引いていて、結構ダイヤが乱れていた。
特に北陸方面へ向かうサンダーバードや、
北近畿方面の特急が運休・遅延していたので
一応みどりの窓口で、しなのは無事かを聞いて問題なかったので、切符を手配する。
18:40発の新幹線に乗り、19:33に長野着。最終便の特急しなのに乗り込み、
22:30には長野駅
長野駅を利用するのは実は初めてですが、なかなか立派な駅舎です。
さて、前ノリでは宿など贅沢はしませんので、
駅からすぐのネカフェに飛び込みます。
ここがまあ、劣悪で、ほとんど満足に仮眠できませんでした。


長野駅


翌朝、5時にネカフェを出て、まずはコンビニで食料と飲料を調達。
5:31のしなの鉄道北しなの線に乗り込みます。
北陸・信州方面では新幹線が整備された結果、地元路線が分社化して、
もうどこが何線か多すぎて全然わからんわい!
車窓からお天気の具合をチェックするのだが、思った以上に雲が多く、
周辺の山々の低い位置に垂れ込めています。
どのソースを見ても今日は間違いなく晴れの予報なのだが、
ひょっとしてこれは台風が予想以上に遅いのか、
あまり好天は期待できなさそうか…


しなの鉄道


妙高高原駅に到着したのが6:14。
この駅からは妙高山火打山の2つのお山に行けるのだが、
どちらの登山口に向かうバスも始発は7:20とまだだいぶんある。
駅前のベンチで朝食をとりながら山行の予定を入念に再チェック。
この駅のすぐ西側にまずどーんと妙高山がそびえているのだが、
雲が厚くてまったく見えない。
その妙高の向こうに火打山があり、順番的にはまず奥から攻めて、
手前に下ってきた方が、万が一の時にでも自力で駅まで戻ってこれるだろう。
便利なゴンドラが運行しているのだが、そちらは最終16時までということで、
さすがにどんだけ飛ばしても無理そう。
でも直下の車道の下りは1時間コースとあるので、それであれば問題ない。
もし妙高山が途中で無理となっても、途中の分岐で燕温泉へ抜ければよい。
それが最悪、火打山の登山口で今回のスタート地点と定めた
笹ヶ峰に降りてしまうと、バスは15:50最終しかない。
タクシーだと8000円はかかり、歩きだと早くても駅まで4時間以上はかかるので
あちらへ降りるのではなく、あちらからスタートして手前に降りることを
最初から決めていた。
だが、そのもくろみはすべて吹き飛んでしまうことになる。


妙高高原駅


7:20のバスの発車となると、ポツポツと登山客が集まってきた。
と同時に早くも雨が降り出します。ん〜。
でも、台風通過直後だからか、4〜5パーティーほどで、バスは空いていました。
バスは駅を出発し、上信越を越えて、どんどん山をあがっていきます。
池の平温泉を過ぎ、杉野沢を過ぎると、いよいよ本格的な山道で、
何度も何度も九十九折れに振られる感じで、一気に高度を上げていきます。
まさかこんな道を歩いては無理だなあと車窓を見ながら感じていました。
そうして終点の笹ヶ峰に到着したのが、8:20ごろ。
バスの混み具合でみるとそんなに人気のない山なのかなと思ったが、
登山口のただっ広い駐車場はすでに多くの車で埋まっていました。
いそいそと準備をはじめ、恒例のおトイレタイムが長引いて、
出発は8:30ジャスト。登山届を提出して、いざ参ります。


笹ヶ峰登山口


歩き始めは深い森に囲まれた、比較的なだらかな木道を進んでいきます。
すでに雨に濡れて、結構つるつる滑りやすい。
この日は最初からまったく時間的な猶予がないので、
飛ばせるところからじゃんじゃか飛ばしていきます。
たくさんの先行客をパスしていきながら、
第1の中継点である黒沢橋に到着したのが8:55でした。
このすぐ上に滝があって、そこでたくさんの方が一服されておりましたが
自分は先を急ぎます。
この登山道は、火打山の山頂までの距離がわかるように、
○/9という看板が要所要所に設置されています。
この辺りでようやく2/9です。


↓木道が続く


↓黒沢橋


この辺りからいよいよ本格的な山道となります。
すでに台風の雨でぬかるんだ道が嫌な感じ。
できるだけ浅瀬の部分を選択しながらステップを踏んでいきますが
多くの人の足跡に浸水をしてもう道全体がひどい有様です。
雨も少し降り始めてきましたが、まだこの辺りではタッパのある緑が深くて
それほど気になる感じではありません。
それより足元がひどいのなんの。でもこんなものまだまだ序の口でした。


↓ドロドロ@@


道はどんどん斜度が増して急坂となっていきます。
そして、このルート一番のしんどいところと思われる「十二曲り」に突入しました。
その名の通り、12個の九十九折れが連続する区間です。
多くの人がここで一気にペースが落ちて、体力を奪われていましたが、
それを横目に黙々と上っていきます。
12個目をクリアした時点で時刻は9:25。出発から約1時間弱で来ました。
一般的なタイム(平均くん)の約半分で来たことになるので、
序盤からいい感じでマージンを稼いでいます。


↓十二曲り


十二曲りをクリアすると、再び深い森の中の緩やかな山道となります。
この辺りの土は粘土質なのか、水を含んでもったりと重たく、
水たまりの土手付近は非常に滑りやすく、難儀します。
雨も徐々に本降りとなってきて、上からも下からも容赦なく濡れてきました。
途中からはうっすらと残雪がちらほら。ほとんど腐っていてよくない感じ。
この辺りでもたくさんの上り客がいらして、声をかけつつパスしていきます。
そうしてようやく第2の中継点である富士見平分岐に到着したのが10時ジャスト。
晴れていれば文字通りここから、黒姫山の脇に富士山が拝められるそうなのだが、
雲が低く垂れこめ、しかもタイミングの悪いことに、
到着してすぐに土砂降りの雨が落ちてきました。


↓ひたすら上り


↓うっすら残雪


↓富士見平分岐


ここで道は、妙高山のふもとにある黒沢池ヒュッテ方面と、
火打山のふもとにある高谷池ヒュッテ方面とに分かれます。
もちろん後者を選択して進みます。
しばらくはこの辺は笹の平原で、雨をよけてくれる木々がないために
心底濡れることになりました。
しばらくして黒沢岳だけの左側の斜面を行く道となり、
再び木々に守られます。
道自体はとても平坦で危険個所もなく、淡々と灰色と緑色の世界を進むのみ。
しばらくして前方が開け、笹の原が広がりました。
この辺りになると雨もやみ始め、雲も薄くなってきました。


↓雨も小マシになってきた


そこからさらに少しだけ進むと、人が増え出し、
小さな黒いとんがり屋根が見えてきました高谷池ヒュッテです。
ここは30人ほどしか入れない小さな小屋で完全予約制です。
時刻は10:35。登山口から約2時間で来ました。
少しだけ小腹が減ってきたので、小屋の前のベンチでおにぎりを一つだけ食べる。
バッチだけ購入し、10分ほどでリスタートします。


↓高谷池ヒュッテ


ヒュッテの正面には高谷池という湿原が広がっていてなかなかすばらしい風景です。
その池を右手から回り込むようにして、火打山に向かいます。
行けの向こう側を登り始めると、雪渓を通る個所が数か所ありました。
そこを抜けると、さらに大きめの雪渓がドーンと横たわっていて、
その向こうにいよいよ火打山が顔を出しました。


↓高谷池


↓分岐点


火打山がお目見え


雪渓はほとんど平坦で、しかもステップが切ってあるので何の問題もなくわたりきる。
その先を下っていくと、先ほどの高谷池よりさらに広い湿原が一面に広がります。
天狗の庭と呼ばれている一帯で、とても美しい。
すぐ目の前には火打山のピークが見えますが、
あそこまでには右手の山筋からずんずんと上っていかないといけないようで、
そちら側から小さな色とりどりのザックが点々と見えます。


↓なだらかな雪渓歩き


↓天狗の庭から


湿原の間を縫うようにしてつけられた木道をたどって、
池の一番東側の取り付きまでたどりつき、
そこからゴツゴツした岩場を登っていくと稜線に出ます。
天狗の庭からは確認できなかった山の反対側は大きくえぐれていて、
元々こういう険しいフォルムだったのか、雪崩等の影響で削られたのかわかりませんが
斜面が一気に崩壊していてそこに雪渓がどうにかしがみついているといった有様でした。
その場所あたりで、ルートの7/9の表示。
意外とこの先もありました。


↓裏の崩落地まで上がってきました


崩落した斜面の上を伝って、そこから先の急坂にたどり着きます。
たくさんの人がこの辺りから道端で小休止を取っています。
自分も結構疲労していましたが、時間が惜しいので立ち止まるのではなく、
ペースを落とすことで休憩としつつ、とにかく前進を続けます。
この辺りの上り意外としんどかった。
そうして雷鳥平に到着したのが11:25。
ここでもたくさんの登山客が休憩をされていました。
文字通りこの辺りから上には雷鳥さんがお住まいのようなのだが、
この日は残念ながらお会いできませんでした。
振り向くと、先ほどの天狗の庭と高谷池がまるで箱庭のように小さく見えます。
その向こうには、次の獲物だった妙高山が天辺を雲に覆われて鎮座しています。
さてさて団体さんが出発しそうだったので、
渋滞に巻き込まれる前にこちらも移動開始。
見上げるとまだまだ山頂までのぼりが続いています。
幸いにしてこの時間帯は、雨がやみ、青空もちらちらと見えていていい感じ。
ただそれに合わせてじっとりと暑さが交代でやってきました。


雷鳥


↓天狗の庭が眼下に。妙高は雲の中


↓山頂まではまだもうひと押し


木の階段を一段一段のぼり、いよいよ火打山のピークに達したのが11:55。
登山口から3.5hの道のりでした。なかなか悪くないペースです。
百名山にも数えられる標高2,462mの火打山は、
長野県妙高市新潟県糸魚川市にまたがる頸城山塊の最高峰で
日本アルプスではなく、妙高戸隠連山に属するお山です。
眺望は360度抜けているのだが、ちょっとこの日は雲が多め。
お隣の新潟焼岳と、その奥にちょこっと顔をのぞかせる雨飾山が見えたのと、
眼下の天狗の庭の絶景は素晴らしかったですが、
晴れていれば後ろ立山連峰や遠く能登半島佐渡島まで見えるそうです。


↓標高2462m 火打山


↓手前右は新潟焼岳、奥に雨飾山


↓うっすら妙高山をバックに


さてどうにか1つ目のピークを落とすことができました。
高低差1300mで標高2500mにも満たないお山ですが、
なんのなんの意外な強敵でした。
しかしタイム的にも平均くんを大幅にクリアして、
後半戦へ大きな余裕が生まれています。
天気もう好転しつつあり、この結果を自信に変えて、
いよいよ妙高山を落とすべく次なる戦いに向かったのでした。
しかし、それらがいっぺんにして覆されてしまうとは、
この時点では思いもしなかったのです。
後半へ続く…