記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

うむ〜よくわからん

久々にちょっとマジメな話。
最近ほとんどこの話題で世間はもちきりだが、集団的自衛権の話。
大事な話だからいろんな人に話を聞いたり、調べてみたりしたんだけど、
うむ〜やっぱり安倍さんのやりたいことがようわからん。
争いごと自体が好きではないので、もちろん自分は原則反対なのだけど、
そういう感覚的なところ以前に、ロジックとして納得できないところが多い。


賛成派の人はことさらに中華の脅威をいう。
でも、たとえば実際に、中華がセンカクを強引に占拠したり、
あるいはもっと飛躍していえば、我が国にミサイルでも撃ち込んできたとして、
それに対して自国の領土や国民の生命・財産を守るために、
武力を行使するということはすでに今の憲法内においても認められた権利、
つまり個別的自衛権の話ではないのか?
そしてそういう有事の事態に対応するのが自衛隊の本来のお仕事ではないの?
専守防衛は立派に認められた権利でしょう?
そこに集団的自衛権を追加する必要があるの?
それとも、何?もしセンカクが実効支配された場合でも、
自分とこの領土が奪われているのに、自国の戦力を出さずに、
安保発動で、米帝に出動してもらって、
その時に米帝の部隊や戦艦が危険にさらされていることを口実に、
集団的自衛権を主張して後方支援に回るということ?
そんなまわりくどいことを想定しているの?
そんなので本当に自国の領土守れるとお思いか。
そう考えるとやっぱり、
対中華のシチュエーションで集団的自衛権が出てくる理由がよくわからない。
それとも、現在、友好国である比や越で中華が島々を占拠しているのに対して、
集団的自衛権を口実にして、攻撃でも仕掛けようというのか。
そんなこと火に油を注ぐだけじゃないの?


対ISだってそう。例えば、こないだのレバノンでの人質事件とかでも、
もしあれで自衛隊を送り込むことができたとして何ができるっていうの?
いくら装備スペックに勝り、訓練をしているといっても
まともな情報も持たずに、過酷な実戦の現場ではひとたまりもないだろう。
人質救出どころか無駄に死人を出すだけだ。
よく例に上がるホルムズ海峡の件でも、
もはや米帝と伊朗は緊張関係を脱し、
対IS等々を睨みつつ関係回復に向かっていという情勢で
日本だけ有事を前提に話を進めるという全くチグハグな動きになってしまっている。
国際情勢の流れをちゃんと政府は読めているのか。
いつ何のためにそれを行使するつもりなのか。それが国益にかなっているのか。
むしろ出さなくていいところに首を突っ込んで
国際的なリスクを被るだけの気がしてならない。
一度手を出してしまえば、やっぱりなかったことになんてならないのだから、
抑止力というよりもむしろ新たな火種としか思えないのだけど。


結局、米帝の都合のいいように言いくるめられているだけじゃないのか。
実際の有事となったところで米帝が本気で動いてくれるという前提で
全部の話が進んでいるけど、そんな保証が一体どこにあるというのか?
米帝は日本のために矢面に立って中華とドンパチするなんてまずありえない。
米帝が以色列を攻撃するくらいありえない話だ。
話は少しずれるが、若い頃は安保反対を掲げて
日本全国で学生運動と称して暴れまわっていた連中が、
今の時代になって米帝万歳なんて手のひらを返すのは全くナンセンス極まりない。
老害でしかない。
いずれにせよ米帝米帝の損得勘定でしか動かないし、
歴史を見れば、米帝が首を突っ込んで解決した国際紛争はひとつとしてなく、
むしろより混乱を増長させて、米帝内の世論の審査で損が得を上回った時点で、
全部途中で放り投げて、あとはさらなる混乱というのがお決まりになっている。
それは中東でもアジアでも南米でもすべてそうだった。
そんな歴史的事実を踏まえたうえで、
果たして米帝におんぶに抱っこがすべての大前提というのはどうなのか。
まして任期残りわずかとなっている小浜さんに取り入ったところで何の得もない。


安倍さんが守りたいのは国なのか?
それとも自分たちのメンツ(国民より先に米帝に約束しちゃった手前)や名声なのか?
そもそも、これを推し進めている連中って、
ナカタニさんにしろイシバさんにしろヒゲの隊長にしろ、
みんな防衛関連、自衛隊上がりの連中ばかり。
自分とこのシマの利権拡大・権力増大が目的なんじゃないの?と疑いたくもなる。
もし対中華を強化したい、センカクを死守したいという本気の熱意があるなら、
いっそ訳のわからない集団的自衛権など持ち出さずに、
自衛隊から軍隊への格上げを真剣に検討するのが筋だろう。
そこまで言うとさすがに支持率が下がる、政権運営が危ないからしないのだろうけど
つまり国防に関してそこまでの覚悟がない、結局弱腰なんだろう。
だいたい、なんでもかんでも問題があれば中華と高麗のせいにして
焚き付けておけば自分たちの支持率は安泰なんて言う発想と、
それにまんまと乗せられる馬鹿どもの発想は、
日本バッシングをして政権維持をし、
幼稚な民族アイデンティティを振りかざして満足している
中華や高麗と全く同じことだ。


自分でもさすがに周りから理解されてないなあと自覚しているのに、
個人的な野望を、数の勢いだけに任せてゴリ推す。
もしこれが通って、実際にそれを行使して、
自衛隊が”ない”はずの新たなリスクに直面して、死傷者でも出せば、
尻尾巻いて逃げ帰って、世論によってひっくり返されるのが目に見えてる。
お金(新国立問題)のことでさえ、誰もろくに責任を取れないくせに、
(政権側だけでなく)今の政治家が人の命にかかわることに
本当に責任取れるのか甚だ疑問。
だいたいアベさんだって、アベさんがいいから選ばれたのではなく、
民主がひどかったから、マシな方で選ばれただけ。
そんなことが百も承知でも、結局権力は握ったもん勝ちという構図は、
もはや日本も中華も金国でも結局おんなじというのが泣けてくる。
ダメなリーダーを持つと組織が腐るというのは、
どの時代、どのカテゴリーでもよくある話だ。


戦後70年間、現状の憲法憲法解釈で運営されてきた中で
自国内でそういった深刻な有事が発生したことがないという紛れもない実績がある。
このことについては少なくとも賛成派も全く否定することはできない。
それは今のような中華の潜在的脅威や、金国の脅威などとは
比べ物にならないような時代でさえもそうだったのだ。
いろいろ細かい問題はあったにせよ、すぐ真隣で朝鮮戦争が勃発した時でも、
あるいはベトナム戦争がリアルタイムで起こっていた時代でも、
明日にでも世界が終るような緊迫した米ソ冷戦下でさえも、
その戦火が日本国内に直接及ぶことはなかった。
それは現憲法の効力のたまものであり、
またそれが正しく運用されてきた証である。
少なくとも、まだ起こってもいないことに勝手にやきもきする以上に、
その歩みをもっと評価すべきであるし、
それをあえて崩してまで得られる何かが果たしてあるのか。


別に政治に限った話ではないが、何か物事に長くかかわっていると、
どうしても新しいことをしてみたくなったり、変えたい欲が生まれてしまう。
でも結局それが公共の利益のためというよりも、
自分色に変えたいという自己満足でしかなく、
良かれと思ったことが余計事態を悪くするなんてことはザラだ。
それでも変えた本人は変えたこと自体に満足してしまうからなおやっかい。
とても身近な例を挙げるとすれば、コンビニの商品だ。
毎月さまざまな新商品、新味が生み出され、店頭をにぎわし、
売上競争の分布図やユーザーの嗜好といった情勢はめまぐるしく変わっていく。
でも結局、最後まで生き残るのは昔ながらの定番商品だったりする。
あれこれ手を変え品を変えることも時には大事だが、
最も大事なのは、実は、変えなくていいものは変えなくてよいということ。
その見極めする目線の確かさと、あえて動かないという勇気もまた
リーダーの資質だと思うのだが。