記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

あこがれの栂海新道 めざせ日本海!(2932m⇒0m)

もはや山行なんて生ぬるいもんじゃなく、
これはれっきとした生き死にのサバイバルの話。
もう真っ白に燃え尽きちまったぜ…


↓いざ栂海新道へ


ということで連休後半、2泊3日の超強行スケジュールで、
憧れのロングトレイル栂海新道を歩き通してきました。
栂海新道は日本海とアルプスをつなぐ道として、
地元の山岳会さわがに会によって築かれた登山道で、
朝日岳直下の吹上げのコルから親不知の海岸までをつなぐ約27kmの道。
今回は栂池高原からスタートし、百名山の白馬岳直下の白馬小屋で一泊。
2日目は白馬岳から三国境、200名山の雪倉岳朝日岳を越え、
いよいよ栂海新道に突入。
そこから果てしないアップダウンの尾根道を延々と繰り返し、
朝の4:45に出発して、栂海山荘に到着したのが日暮れ間際の16:30。
この1日だけで約22km、12時間もの長丁場で、今までで最も長い一日となりました。
最終日は栂海山荘のある犬ヶ岳から、
えぐい尾根道(なんだ!あの下駒ヶ岳は!)をたどって、
白鳥山を経由し、あとは下り一辺倒かと思いきや、
ぎりぎりまでツライアップダウンの応酬。  
そうして長い長い戦いの末にたどり着いたゴール、
日本海の水に足を踏み入れた瞬間、感極まって号泣してしまいました。
槍でも富士山でも、あるいは東京ライドですらこんな感情は湧きませんでしたが、
それだけ相当に辛く過酷で、張りつめていたものが一気に出てしまいました。


日本海


この3日間で累計距離50km、登り累計4000m、下り累計5700m、
3000m級の山から海抜0mまで駆け抜けて、
もう自分の出せるだけのエネルギーをすべて出し切りました。
もう少し早い時期であれより暑くても、
逆に遅くてあれより寒くてもきっと完走できていません。
お天気も初日はガスガスでしたが、肝心の2日目、3日目は快晴で、
あれがちょっとでもガスっていたり、雨だったら、遭難してもおかしくない。
それでも、途中、朝日岳のところで蓮華温泉へ逃げる以外は
全くエスケープルートがないので
行ってしまったらもう行くしかありません。
あともう1日あって3泊なら少しは楽でしたが、
そもそも宿泊可能なポイントが、朝日小屋+避難小屋3か所しかなく、
むやみに行程を延ばせばそれだけ食料と水分を積まねばならないので、
それはそれでかなり厳しい。
実際、今回大量の食糧と水を用意していきましたが、
2日目の途中から水分を相当にセーブせねばなりませんでした。
3日目の水分を確保しておくため、2日目の晩に飲めたのは100mlもなく、
喉の渇きにもがき苦しむ夜でした。
翌朝、黄蓮の水場に流れる水を見たときは、本当に涙が出るほどうれしく、
思わずガブ飲みしてしまいました。


↓栂海山荘


単純に3000m→0mへ高度を下げていく、下り一辺倒の道かというとそうではなく、
雪倉岳朝日岳の登りは相当で、黒岩山から犬ヶ岳の間のアップダウンは相当きます。
しかも登山道は片側断崖で崩れている個所なんかもあって、まったく油断できない。
もちろん下りは下りで相当過酷で、チャリと違って、
下りのほうが足へのダメージは大きく、膝や足の指がもうボロボロ。
2日目に相当頑張ってボス級の雪倉岳朝日岳を成敗して、
これでメドがついたと思いきや、最終日も1200m級の山々と侮るなかれ。
栂海山荘から第1の目標地である白鳥山まで本当にたどり着けないかと思った。
とにかく行けども行けどもたどり着かない、全然近づいてこないのです!
道は海へ向かって一直線ではなく、山筋に沿っていて、
まるで一枚一枚、山のベールを剥いでいくような感覚。
とにかく大きく右へ左へジグザグジグザグと蛇行を繰り返すので、
前方に見えている目標点との距離が一向に近づかない。
2時間歩き続けて、まったく距離が縮められない現実はもう本当に絶望的です。
今写真整理をしながら振り返るだけでも、吐きそう…。


雪倉岳から縦走路を振り返る(中央が白馬岳)


↓はるか向こうに親不知の海岸が見える


それでも、眺望は本当に素晴らしく、今年は早めに紅葉も始まって、
見事としか言いようがない風景。
今年はもう鷲羽岳あたりからの絶景がダントツNO.1と思っていましたが、
なんのなんの。
こちらの奥座敷の静かに横たわる絶景も素晴らしすぎました。
天気も相当良く、はるか先には糸魚川の街並みや、黒部・朝日町の田園、
そうしてぐるっと富山湾をめぐった先には能登半島まで見え、
常に海を意識しながら歩くという特別な感覚はたまりませんでした。
そして、あれだけ過酷なトレイルを歩き切った達成感と解放感は
本当に言葉では言い表せない。
もう今の気力体力でしかきっといけないだろうから、本当に行けてよかった。
無事に帰りつけてよかった。
まさしく完全燃焼、一生に残る山行でした。


↓小蓮華岳にて


↓白馬岳にて


雪倉岳にて


朝日岳(ここでこの日の半分…)


↓白鳥山にて


↓坂田峠(2日ぶりのアスファルトの道)


<全行程>


<0日目>
18:40新大阪駅⇒(ひかり480号)⇒19:33名古屋駅19:40⇒
(しなの25号)⇒21:48松本駅
ネカフェで一泊


<1日目: 9.54km/5時間15分>
4:30出発⇒5:58松本駅⇒(大糸線)⇒8:00白馬駅8:05⇒(バス)⇒8:33栂池高原
8:40栂池高原駅⇒(栂池ゴンドラリフト)⇒9:00栂の森駅9:20⇒
(栂池ロープウェイ)⇒9:25栂池自然園
9:45山行開始⇒10:23天狗原⇒11:09乗鞍岳(2437m)⇒11:30白馬大池山荘12:00⇒
12:35船越ノ頭⇒13:15小蓮華山(2766m)⇒14:00三国境(2751m)⇒14:45白馬岳(2932m)⇒
15:00白馬山荘



<2日目:27.3km/11時間40分>
4:45白馬山荘⇒4:50白馬岳(2932m)⇒5:20三国境(2751m)⇒6:23雪倉岳避難小屋6:30⇒
7:07雪倉岳(2611m)7:12⇒8:14燕岩⇒9:00水平道分岐⇒10:05朝日岳(2418m)10:20⇒
10:45吹上のコル(栂海新道起点)10:50⇒11:30長栂山(2267m)⇒11:55アヤメ平⇒13:05黒岩平⇒
13:35黒岩山(1623m)13:45⇒14:48サワガニ山(1612m)⇒16:18犬ヶ岳(1592m)⇒16:25栂海山荘



<3日目:15.53km/7時間55分>
4:45栂海山荘(1592m)⇒5:40黄蓮山⇒6:08黄蓮の水場6:18⇒6:36菊石山(1209m)⇒
7:10下駒ヶ岳(1241m)7:15⇒8:10白鳥の水場8:20⇒8:35白鳥山(1287m)8:45⇒
9:30シキ割りの水場9:40⇒9:48金時坂の頭⇒10:25坂田峠10:35⇒11:00尻高山(677m)⇒
11:25二本松峠⇒11:48入道山⇒12:35親不知観光ホテル⇒12:40日本海(栂海新道終点)
親不知観光ホテルにて立ち寄り湯&送迎
14:22市振駅⇒14:45泊駅15:14⇒15:43糸魚川駅15:58⇒
はくたか565号)⇒16:48金沢駅16:56⇒(サンダーバード38号)⇒19:32新大阪駅