記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

子連れハイク カムバック朝日小屋

この前の連休は、大型遠征ラストチャンス。
色々行きたい山はあったけれど、
やはりタマシイを置いてきてしまった朝日へ帰ることにした。
台風の被害も心配だったし、
小屋の女主人ゆかりさんをはじめ
スタッフのみんなにまた会いたい!
という気持ちでずっといっぱいだった。
もう朝日しか考えてなかった。


そしてこの連休ならもしかして行けるかもしれないと、
長女を誘ってみると、ぜひ行く!という。
一番安全かつ万一の対策のしやすいルートを選び、
天候やコンディションを見極め、
また勝手知ったるエリアで、
自他ともに万全のバックアップが可能とはいえ、
どこからでも果てしなく遠い朝日へ行くのは
小学女子にとってはかなりの大冒険になる。
なんせ朝日小屋、本当に最果ての地なのだ。
そして確実に季節は過ぎていき、今では山上は冬支度目前。
寒さ対策もしていかないといけない。
いつもの単独行にはない、
難しさや丁寧さが求められる子連れハイクのなかでも、
特に入念な準備・対策が求められる史上最大のミッションなのだ。


まずはルーティング。
朝日へは4つのルートがある。
そのうち栂海新道は初めから除外するとして、
北又小屋からイブリ尾根を越えるルート、
蓮華温泉から五輪尾根を登るルート、
そして栂池方面から三国境、雪倉岳を通るルート。
北又は地元の中学校登山でも上るルートなので難しさはないが
アクセスが至難の業なのと、恐らく三大急登よりもタフで眺望の少ないルート。
こちらはできれば下山に使いたいが上りは難しい。
蓮華温泉ルートはアクセスが簡単だが、
いざという時に登山者が少なく、しかも長丁場の道。
栂池から白馬大池もしくは白馬山荘に一泊して、
そこから水平道経由が最もイージーで安全なルートなので、
最終的にそちらをチョイス。


しかし、紅葉シーズンの連休。
どこもかしこも大混雑が予想される。
ギリギリまで天候を見極めて、小屋の予約をするつもりだったが
早々に白馬大池小屋が店員オーバーで予約不可日に!
そうなると、前ノリをして、
松本から今季ラストのムーンライトで白馬入りし、
初発のゴンドラ・ロープウェイで上がって、白馬岳を登らないといけない。
1日目がタフになるのと、宿泊地の標高が高いので、
寒さや高山病のリスクが上がる。
そもそも1日目そこまで行けけるかどうか、
行けても2日目もタフなので難易度が上がる。
しかも、天気予報1日目の序盤は雨。濡れて冷えると難しい…
んんんん!!
それでも他のルートよりは勝算が大きいのでこれで手配するしかない。
幾日か悩んで、もう予約しないとというタイミングで、
念のためもう一度だけと大池の予約サイトを除くと、予約が復活!
恐らく転機を見てキャンセルが出た模様で、大急ぎで予約を完了させる。
これで、1日目、雨山行でも短い時間だけで済む。
2日目の本番は完全に快晴の予報で、そこさえなんとかなれば行ける!


朝日小屋にも予約の電話を入れると、ゆかりさんのうれしそうな声。
これはもう頑張っていかなくちゃ!
そしてそして、なんと我々に合わせて、
1か月相棒を務めてくれたクマさんと、同じくGパトなかまのKさんも、
その日に朝日へ向かってくれることになり、楽しみが100万倍増!!
わずか1か月、されど1か月だけど、
こうして早くも同窓会ができるなんて!!


当日。早めに仕事を切り上げ帰宅して
大急ぎで準備してタクシーで新大阪へ向かう。
が……
まさかのスマホを置き忘れ!
戻ったらもう特急しなのに接続する最終の新幹線に間に合わない…
どうしよう。
一か八かで、自宅の奥さんに連絡を入れ
タクシーでもってきてもらうことに。
そうして、ギリギリセーフで事なきを得る。
初っ端から思わぬ大ピンチでした。


どうにかこうにか新幹線に乗り、名古屋でしなの号に乗り込み
松本の到着したのが10時前。
そこから少し歩いて、ビジホへ。
和室1室9100円。ぐっすり眠れました。


↓松本前ノリ


翌朝はムーンライトは断念し、大糸線普通列車で白馬まで。
この日は大池まででOKなので、
早く出発して早く着きすぎてもすることがないのと、
朝残る雨をできるだけ回避するために山行開始を2時間遅らせるため。
5:58松本発の電車で8時ジャストに白馬駅
すぐにアルピコバスに乗り、栂池高原へ。
登山届を出して、すぐにゴンドラに乗り込む。
まだ雨がしぶいている。
中間駅で一旦降りて、そこから少し歩いてロープウェイ。
上に着いたら、少し歩いて栂池自然園のビジターセンタに到着。
この頃はまだ雨が残っていて、
しっかりザックカバーやレインウェアを装着。


↓栂池パノラマウェイ


10時少し前にいよいよ山行を開始する。
登山道はしばらくの雨のせいか、
小川や滝のように水が流れ出し、
丸太や岩も滑りやすい。
慎重に丁寧に歩みを進めていく。
30分ほど登っていると徐々に青空が顔をのぞかせて、
雨が止んだ!!
これはありがたい。
しかし、足元の方はじゃんじゃか水が上から流れてきているので
引き続き慎重に進んでいく。
途中、きつい部分も多少があるが、徐々に傾斜も緩やかになり、
天狗原に到着。
そこかしこで紅葉が始まっていて、山の賑わいを楽しむ。
平原の木道はちょうど工事中で、その現場を見ながら、
朝日水平道を整備してくれていたガッパ隊の事を思い出す。


↓天狗原にて


風吹大池との分岐を過ぎ、しばらく進むと、
ゴロゴロ大岩の間を抜けていくルートになる。
先ほどまでの雨で、路面はびしょ濡れで、
それを飛び石で避けつつ進む。
徐々に傾斜がきつくなり、
歩みの遅い我々は後続に道を譲りながらボチボチ進む。
えっほえっほと急斜面を登っていくにつれて、
先ほどの天狗原がよく見渡せ、箱庭のように眺めつつ、
娘のペースで登ってゆく。
大人なら大したことのない段差でも、
からしたら身体全体で乗り越えるようなところもある。
それでもポールを器用に扱いながら、
えっほえっほとたくましく登っていく。


↓急斜面から天狗原を見下ろす


一番きついセクションを越え、上部の岩場へと躍り出る。
ここでも娘を先行させ、自分でルートを見極めさせて進む。
時々、妙な方向へ行ったり、
わざわざ難しいところ通ったりもしてしまうが、
先頭はあくまで娘に任せる。
ただ大人の後ろを歩かせて、ついてくるだけだったら全く意味がない。
考える力が身につかなければ
本当の安全や危険を理解できない。
自分で考え選択し実行するということを、
この甘えの効かない山という環境で
少しでも学んで実践してほしいのだ。
次に、手足のうちどれをどの場所へ置くか、
どのルートが最適か、
下りてくる人、後ろから追い抜いていく人、
入り乱れる限られた道の上で、どうするのがベストか。
ただ歩くという事であっても、
考える/考えないで大きく違ってくる。
岩のステージを無事クリアし、
さらに少し上ると、広大な白馬乗鞍の山上に出た。


乗鞍岳までもう一息


ここまで来るとほとんどの雲は眼下にあり、
ただっ広い青空が我々を迎えてくれる。
しばらくなだらかな道を進み、
でっかいケルン(娘曰くとんがりコーン)の立つ乗鞍岳山頂へ。
記念撮影を済ませてすぐに出発し、
ごつごつした岩の道を抜けていきます。
すると、徐々に白馬大池の青々とした湖面と、
真っ赤な小屋が見えてきました。
なんて、絵になる風景!
その奥には明日抜けていく雪倉岳と、雲を被った朝日岳
ああ、ふるさとが見える。


白馬大池


とことこと、大池をなぞりながら、岩の道をわたって、
小屋に到着したのが14時ジャスト。
まさに予定通りでした。
早速宿泊の手配。まだ到着が早い方だったこともあり、
部屋の端っこを確保できましたが、
この日は週末で、そもそもキャンセルも多かったが、
それに輪をかけて、もっと上の小屋へ行くつもりだったのが
途中断念してこの小屋に飛び込みの人が多く、
かなりの混雑でした。
テン場ももうこれ以上張るスペースがないほど
ひしめきあっておりました。


寝床を確保し、食堂でカップラーメンを食べたり、
池の周りを散歩したりして、
昼寝しないように17時の晩御飯まで踏ん張る。
思っていたよりも穏やかで寒くなかったから、
少しだけ遠くまで行って、ホシガラスに出くわしたり、
刻々と移り変わる雲の形をあれやこれやと言いあったり楽しく過ごす。


白馬大池山荘から雷鳥


晩御飯は17時1回目。カツカレー♪
おかわり自由だったけれど、
娘の残す分を勘定しておかわりせず。正解。
この日は夕飯は3回戦まであり、
寝床に行って布団に入ってしまうと
絶対寝てしまい、夜中に目が覚めてしまうので、
食堂が空くまで、外で星空観賞。
南の空は月の明かりが強すぎる上に、
雲が多く、月の光を反射してダメだったが、
北の空は比較的よく見えて、
星座を授業で習い始めたばかりの娘に
北極星や北斗七星、カシオペア座などを説明してあげることができた。
食堂が空いてのちは、そこで読書タイム。
ひさびさに高橋留美子の『うる星やつら』を読み返して大笑い。
20:30には寝床へ戻り、翌日の身支度を整えて就寝。


↓晩御飯はカツカレー


翌朝は4:15に起床。いそいそと荷づくりや着替えを済ませる。
まだ薄暗く寒い中、4:50には出発する。
少し風があるが、空はスッキリとクリアで問題なし。
まずは足慣らしに、ゆっくりのんびりと雷鳥坂を登っていく。
高度を上げていくにつれて東の空がほの明るくなり、
下界に広がる見事な雲海を少しずつオレンジ色に染め上げていく。
船越ノ頭辺りまで来ると、いよいよご来光。
休憩がてら、足を止めて、
半熟の朝日がゆっくりと上ってくるのを見守る。
娘も下界では見られないスケールの大きな景色に感動している様子。


↓船越ノ頭付近でご来光


しばらくしてリスタート。
なにせまだまだこの日の道のりは果てしなく長い。
船越ノ頭からは、軽くアップダウンをこなす稜線の道を
とっとこつないでいく。
右手にはこれから向かう雪倉や朝日、
蓮華温泉から伸びる五輪尾根が見え、
さらに青海の集落から日本海もちらりと顔をのぞかせている。
そして左手の絶壁の向こうには、赤く染まる後立の山並み。
穏やかにたゆたう雲海から顔をのぞかせ、
可愛らしく耳を立てているのは鹿島槍
そしてその右耳の後ろにうっうらと槍ヶ岳のアクセントまで。
そこから手前に五竜、唐松、そして白馬岳と並ぶ。
これほどのコンディションはまあない。


↓モルゲンな後立


いくつかの小さなピークをやっつけて、
ようやく1つ目のポイントである小蓮華山に登頂したのが6:35。
なかなか悪くないペースだ。
小蓮華山には標高2766m、新潟県最高峰で、
でっかい宝剣が突き刺さっているお山。
じゃあ小とついているからには大蓮華山はあるのかといえば、
そういうピークは存在しない。
実は、この白馬岳を中心とした山域全体を「大蓮華山」と総称していて
それとの対比としてこのピークを小蓮華と呼んでいるのだが、
今ではこの「大蓮華」という呼び方をすることがあまりない。


記念撮影をしてささっとリスタートしようとしたのだが、
娘が慌てて転倒してひざを石にぶつけてしまう。
ほんの少しこけただけだが、この後の行程を考えると
わずかのダメージも命取りになりかねない。
症状を聞き、痛みの具合をさぐり、動くかどうかチェックしたが
ちょっとぶつけた程度で問題なかった。
とはいえ、ぶつけた痛みが少しあるので、
無理せずゆっくりと歩くことにする。


↓小蓮華山登頂(新潟県最高峰)


ここからはカラカラの骨のような白石が敷き詰められた稜線を行く。
稜線上という事もあるが、なかなかに風が強く、
時折突風のようなものが襲ってきて、前進を阻む場面も。
小さい娘はポールに力を込めてぐっと耐える。
そうして風が収まるとまたえっちらおっちらと石を踏みしめていく。
三国境に到着したのが7:30。
いよいよ帰ってきたなあという実感と、
さあここからが本番だという緊張感。
娘はというと、ここが、ちょうど長野県・富山県新潟県
3つの境界点だという事に興味津々な様子。


↓三国境


ここから往来の激しい主稜線を外れて、雪倉方面へと分け入る。
最初はカラカラの白石が踏みしめるたびに崩れていくような斜面を下り、
なだらかな中腹へと降り立つ。
そこは風上に斜面があり、それが風よけとなって穏やか。
しばらくして大下りとなり、ジグザグと下っていく。
鉱山道との分岐のところでいったん休憩。
リスタートして鉢が岳の巻き道へと入る。
ここも山が風よけになって、一気に無風状態。
ここまで少し寒かったのだが、
上がってきた太陽の光もあって一気に暑くなる。
自分がこの一帯を職場としていた8月初旬には
まだいくつか残っていた雪渓も見事に消え失せ、
やせ細った岩の沢を慎重に渡っていく。
少し進んでいくと対向から単独女性がやってきてご挨拶したら、
「arkibitoさんですか?」と名前を呼ばれびっくり。
「朝日小屋のゆかりさんから頑張ってと伝言です」とのこと。
な、な、なんと伝言までよこしてくるとは!
どれだけサービスが行き届いてるんだ!
娘も声をかけられて俄然やる気が出てきました。
その女性にお礼を言って行き違い、
大雪渓の合った場所をグイっと上り詰めるとなだらかな鞍部に出る。
えっちらおっちらと見えている避難小屋まで。
そこでトイレ休憩。


雪倉岳避難小屋


雪倉岳の上りから白馬岳方面の絶景


さあ、ここから本日2つ目のピークに向けて大上りを開始する。
上り初めの急坂も、さくさくと先頭切って上る娘。
徐々に朝日を立った対向の人たちとのすれ違いも多くなり、
その度に「頑張って!」「スゴイね!」と声をかけられ、
ますますやる気満々に。
序盤のきついところを無事クリアし、
あとは上部のなだらかな上りを進んで、雪倉岳に登頂。
10:20。
せめて昼までには雪倉をクリアしておきたいなあと思っていたが
随分早く来ることができました。


雪倉岳登頂


↓お弁当


ちょっと風がきついのだが、お腹も減ったので、
小屋で作ってもらった三色弁当を半分ほど食べる。
後はもう少し下って風の弱いところでいただくことにして、
記念撮影を済ませて20分ほどでリスタート。
とにかく天気は抜群で、目の前の朝日岳と、
その横にちょこんと見える赤い三角屋根の朝日小屋もばっちり。
近いようでまだまだ遠い道のり。


↓いざ朝日小屋へ!


ここから最低鞍部まではひたすらに下っていくのだが、
娘くらいの年頃だと、上りも下りもあまり時間に違いがない。
むしろ着地の衝撃で足にダメージが大きかったり、
下を見て段差を下っていく怖さがあったりして、
下りの方が時間がかかる。
雪倉さえ越えてしまえば、あとは勝手知ったる水平道なれど、
距離はまだまだあるため、
下りの途中でパスしていった単独の方に伝言をお願いし、
ひとまず11時までに雪倉は越えているということだけでも
小屋に伝えてもらうことにした。
それだけでも万一の場合に場所の特定が容易になるし、対応も早い。
何より少しでも情報があるだけで安心してもらえるので。
(伝言はちゃんと小屋に届いていました)
急下りの途中、トラバースに入る上段の広いところは
風が当たらないので、そこで残りのお弁当タイム。
近くに見える池がハート形で、娘は喜んで写真をバシバシ。


そこから雪倉をまくようにして最低鞍部に降り、
そこでもひと休憩。
そろそろ早朝からの歩き詰めで娘も疲労が出てきているし、
足もなかなか進みが鈍ってきた。
自分もさすがにこの長丁場でお疲れモード。
時間的にはまだ予定を上回っているので、
休憩をこまめに取って時間をかけていく。
赤男山を巻きつつ、大崩落地をとっとこと抜けていく。
小桜ヶ原の木道の取り口で、再び休憩。
この辺りのロープやらなんやら、
全部お父ちゃんたちがやったんやでとお仕事説明したり。
そこから、ひたすら歩いて
水平道と山頂直登コースとの分岐に到着したのが14時前。
ようやく最後のセクションにやってきました。
ここからはガッパ隊が真新しい木道を整備してくれて、
また一度大きく下って上り返しを要していたV字谷のところは
水平にトラバースする新たなルートを切り開いてくれて、
とても助かりました。


↓静かな山歩き


最後の木道区間を終えると、鈍い上りがあり、
そこを過ぎると、唯一慎重に行かねばならない鎖場へと突入。
ロープや鎖はあくまで補助として使い、
きちっと3点確認しながら足で歩くようにアドバイス
一か所だけスラブ上の一枚岩を下りないといけないところがあり、
自分が先頭を変わって、下で待ち受けながら、
1歩1歩足場を確認しつつ下ろす。
が、ちょっと慌ててしまって、
ズリっと足を滑らせてしまったのだが
しっかり鎖を放さなかったのと、
自分が待ち受けていたので事なきを得る。
そこからもう少し足場の悪いトラバース道を抜けて、
無事に難所をクリア。よく頑張りました。
しばらく休憩をしていると、反対側から声が聞こえる。
誰だと思ったら、なんと相棒のクマさんと、Gパト仲間のKさん!
彼らは、新潟県蓮華温泉から五輪尾根を登ってきていて、
一服ののち、我々を迎えに来てくれたようです。
ありがたや〜ありがたや〜。
そうして残り区間を行きますが、さっきの難所の疲れもあり、
もう1つ先の水場でちょっと一服。
頭から天然の冷たい水を被ってリフレッシュ!
あとは、朝日岳からの道と合流して、
最後の木の階段をえっほえっほと上って
遂に朝日小屋到着!
いやあ、5時前にスタートして、15:30に到着なので
約11時間の超ロング山行。
娘、弱音を吐くこともなく、
自分の荷物担いで、自分の足で歩き切りました。
えらい!
自分もさすがの長丁場にヘロヘロ。
やはり単独で歩いているのとは違う注意力や緊張感が必要だったので
どっと疲れました。
いやしかし、帰ってきた!朝日に帰ってきた!
みんな、ただいま〜!!


↓とうちゃこ〜♪


まずはゆかりさんにご挨拶。久々の再会!
相変わらず元気いっぱいのお出迎えです。
頑張った娘にはねぎらいの言葉とオレンジジュース。
他のスタッフさんイもあいさつしたかったが、
16時前は厨房が大戦争タイムで、
しかも連休の間という事でそこそこの数なので後回し。
ひとまずセンター(スタッフ用の小屋)のカイコ2階の寝床へ
荷物を置きに行き、着替えも済ます。
クマさんとKさんと思い出話で盛り上がる。
残念ながら工事関連のGAPPA隊の皆さんは
別の現場(早月尾根など)へ転戦されておらず、
シェルパの皆さんもすでに今シーズンの仕事を終えて帰国された後で
会うことが叶わず。ああ寂しいなあ。


少し休憩をして、夕飯時に手ぬぐいを巻いてスイッチオン!
厨房へ加勢に出向きます。
そこでスタッフの皆さんと再会のご挨拶!
みんな変わらず元気そうです。
皿洗いから盛り付けから、配膳から全部
ほんの一か月前には毎朝晩の日課でしたねえ。
この日は連休という事でそこそこの人数でしたが、
その分お手伝いの数も多く大きな混乱もなく。
そしてお客さんの晩御飯が終わったら、
今度は自分たちの晩御飯。
この日は、手巻き寿司でした。
小屋締めも目前となり、今年は天候不順もあって余剰気味の食材を
どうにか使い切らなくてはならず、これでもかとてんこ盛り♪
何も言わなくても並ぶお酒類もあやかって、楽しみました。
ああ、やっぱりええなあ。
後はみんなでお片づけ。
そのあと、もっと小屋のみんなやGパト組で盛り上がりたかったのだけど、
ちょっと自分が発作が出ずっぱりで調子が悪いのと、
娘も大チャレンジをした疲れもあり、早めに就寝しました。


↓晩御飯は手巻き寿司


翌朝、4時には起きて、朝食のお手伝いをと思っていたのだが
具合があまりよろしくなく、免除していただいて、
5:30のスタッフ朝食から参加。
そのあとは恒例のラジオ体操をみんなで。


↓恒例のラジオ体操


本当はそのあとのお茶タイムも一緒にしてから下山したかったのだが
娘の体力的なものや、
午後から天気が崩れるかもしれないという事で、
早めの出立をすることにした。
そうは言っても別れを惜しんで
何枚も写真撮ったりなんだかんだしていたら7時になってしまいました。
娘もゆかりさんに「また来られ〜」
「早く大きくなってアルバイトに来てね〜」と言われ
照れくさそうにしておりましたが、なんだかうれしそうです。
そうして、いよいよ下山開始。
みんなに見送られながらトコトコと木道を行く。
小屋が見えなくなるポイント、通称バンザイで、
こちらからお別れのバンザイ。
そうしてそれに応えて小屋のみんながバンザイを返してくれる。
何度やっても照れくさいけれど、
やってくれることの嬉しさと悲しさで思いがこみ上げてしまう。
また来る。きっと来る。


↓ゆかりママと


↓朝日小屋ファミリー


↓サヨナラ~


さて、すぐに小屋が見えなくなり、
眼下に広がる街並みと日本海に向かって下山を開始する。
自分がGパトで上がってきたときには、
そこかしこで厄介な雪渓が残っていたが、今では跡形もなく、
一面の原っぱとなっている。
何でもないところで油断することが、
一番事故の元、ケガの元となるので、
あまり慌てず急がず、娘のペースで進む。


日本海を見下ろしつつ下山開始


すぐ背後に、時間差で小屋を発ったN隊の声がする。
早くも追いつかれたかと思いつつも、
合流するとペースが乱れるので
一定のアドバンテージを置いて進む。
中学校登山のお手伝いをして、
その晩に熱中症になってしまった
苦い思い出の夕陽が原では、
まだカライトソウ(通称ピンクねこじゃらし)が咲いていた。


↓夕陽が原のカライトソウ


イブリ尾根で一か所だけある鎖場の手前で、
モーレツに追い上げてくる鈴の音。
N隊がそんなに急いでどうしたの??と思ったら、
なんと秀光さんでした。
秀光さんは1977年「日本K2登山隊」の主要メンバーの一人で、
登山界の生ける伝説のお方。
いつも雪倉の避難小屋に詰めて山域の安全を見守っていてくれています。
この日はちょうど雪倉へ行く予定だったはずだけど、
どうも調子悪いので下山するとのこと。
「ほんじゃまた」と短いながらも愛ある言葉を残して、
ささーっといなくなる。
何だあの韋駄天は???調子悪いって本当???
娘もあまりの俊足ぶりに目を丸くして驚いていました。
いやあ、やはりホンモノは違います。


あっという間に追い抜いて行った秀光さんに続いて
我々は慎重に慎重に時間をかけて鎖場をクリア。
鞍部を渡って、イブリ山の山頂に到着。
少しだけ休憩していると、N隊の声がして、
娘が追い付かれる!!といいながらそそくさとリスタートする。


↓イブリ山


イブリ山の山頂(10合目)からは1つずつ削って、
最後は0合目までなのだが、
このイブリ尾根、上りも下りも長丁場で難儀なのだ。
9合目、8合目辺りまではまだ、
眼下の平野が時折見えるのだが、
そこから下は深い深い森の中に突入する。
時々、急な斜面があり、
濡れている箇所で思わずスリップ。
5合目、水場もあるちょっとした広場で休憩を入れる。
木立にびっしりキノコが生えていて娘びっくり&大喜びしていました。
3合目の手前で、地元の写真家さんにパスされる。
さすがにこの辺りまでくれば、間違いなくゴールが計算できるし、
時間的にも十分なのだが、
ひたすら下り下りで足の疲れもそろそろピーク。
ここからはこまめに休憩をはさんで、騙し騙し下っていく。


↓がんばれ!


ようやくきつい斜面を下り切り、最後はつり橋をトコトコ。
オーラスのダム斜面の登り返しの階段をやっつけて
北又小屋にゴール。11時ジャストという事で、
ぴったり4時間でクリア。
いやあ、立派立派です。
雨に降られることもなく、後続隊に抜かれることもなく、
事故なく怪我なく、やり遂げました!!
下山を待ちわびていたように小屋番の米沢さんがお出迎えしてくれて、
ジュースを差し入れしていただきました。
本当ならここから麓までタクシーを手配しないといけないのだが、
ゆかりさんの口利きで、
この後下ってくる小屋助っ人の3人お姉さま(通称AKB)の
車に同乗させてもらうことに。
娘のペースがあまりに遅いようだったら難しいなあ、
タクシーかなと思っていたのだが、それも無事に間に合いました。
15分ほどしてN隊のお三人。
ずっと我々と一定間隔で下ってこられていたようですが、
遂に抜かれることがありませんでした。
いい意味で娘にモチベーションを与えてくれたおかげで、
うまく下山することができたので感謝です!!
彼らを見送って、お姉さまの下山を待ちわびますが、
待てど暮らせど来ず。
そして2時間ほど小屋で待機して、ようやく3人が小屋に到着しました。
途中で事故か怪我でもあったのかと心配していましたが、
小屋の仕事が押して出発時間が遅れただけだったそうで一安心。


米沢さんに見送られて、車で小屋を出発。
ものすごい林道をクネクネ、クネクネと下ります。
お姉さま方が娘を心配して色々声をかけてお話ししてくれました。
専用ゲートを抜けて小川温泉でいったんストップ。
お姉さま方はここで解散し、
そのうちMさんの車でさらに新幹線の駅まで送っていただけることになりました。
なんと!ありがたや〜。
皆さんとお別れをして、再び出発。
途中、専用ゲートのカギを関係者のご自宅に返却し、
黒部宇奈月温泉駅まで。
ちょうど次の便の5分前で1時間に1本なので、大慌てでホームに駆け込みセーフ。
せっかく送っていただいたのに、あわただしいお別れで申し訳ない…
でも、また来年も、その次もまた来ます!また会いましょう♪


30分ほどで金沢に到着。
連休最終日の夕方のサンダーバードという事を見込んで、
一週間前にチケットを手配しに行ったのだが、
すでにいい時間帯の便は指定オールアウト。
自分一人ならば自由席の争奪戦に参戦し、最悪立ちでも我慢できるが
子連れでは難しいため、確実に並びの席を確保できる便を手配したのだ。
なので、3時間ほど金沢でトランジット。


まずは金沢駅から徒歩圏にある
瓢箪湯さんで山行の疲れを洗い流します。
娘はほとんど銭湯経験がなく、
かといってもはや男湯には入れないので、
困っていたら、番台のお母さんが色々と面倒を見てくれて、
とても助かりました。
3日間の疲れも汚れも一気に吹っ飛びました。


↓金沢の瓢箪湯


そのあと、駅へ戻り、駅弁やみやげをどっさり購入。
ホームは自由席を狙うお客さんではみださんばかりの混雑。
無事にサンダーバードに乗り込む。
二人ともお疲れモードでどっぷり寝込み、気づいたら京都。
21時前には無事に帰宅。


最高のお天気に恵まれ、
子連れハイクとしては最大級の難易度の山行でしたが、
無事にチャレンジ成功しました。
娘は弱音も吐かず黙々と歩き、
その上、楽しかった、また行きたいねと言っていたので、
少なくとももうしばらくは一緒に山歩きに付き合ってもらえそうです。
ゆかりさんをはじめ、小屋のみんなも元気で再開できたし、
クマさん、Kさんとの再会も果たせて、本当にいい山行でした。


<山行ルート>


<0日目>
18:40新大阪⇒(N48)⇒19:31名古屋19:40⇒(WV25)⇒21:48松本


<1日目:山行5時間24分>
5:58松本⇒7:03信濃大町7:18⇒8:00白馬8:05白馬⇒(アルピコバス)⇒
08:36栂池パノラマウェイ⇒09:40栂池自然園09:55⇒11:30天狗原⇒
11:35風吹大池方面分岐⇒13:05乗鞍岳13:15⇒14:00白馬大池山荘泊


<2日目:山行10時間40分>
04:50白馬大池山荘⇒05:40船越ノ頭05:45⇒06:35小蓮華山06:40⇒
07:30三国境07:35⇒09:25雪倉岳避難小屋09:30⇒10:20雪倉岳10:40⇒
13:15小桜ヶ原13:20⇒13:45水平道分岐13:50⇒15:00鎖場15:10⇒15:30朝日小屋泊


<3日目:山行4時間0分>
07:00泊朝日小屋⇒07:40夕陽が原⇒08:15イブリ山08:25⇒
09:30五合目(ブナ平)09:45⇒10:50北又吊り橋⇒11:00北又小屋
13:15北又小屋⇒14:40黒部宇奈月温泉駅14:45⇒(はくたか563)⇒
15:20金沢17:54⇒(サンダーバード42)⇒20:38新大阪