記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『ゼイリブ』at第七藝術劇場

 

上映30周年を迎えたジョン・カーペンター監督の『ゼイリブ』が今密かにアツい。

関西では順次ミニシアターを巡回しているのだが、

出町座で見損ねて七藝さんへ。

 

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すでに30年も前に創られたB級アクション映画なのだが、ただ単にエンターテインメントとして魅力的であるだけでなく、実は現代社会にも通じる深い問題提起がテーマとして埋め込まれていて、全く色褪せることのない隠れた名作である。

 

各地を転々としながらどうにか食つなぐ労働者階級の主人公は、流れ着いたとある都市の片隅で、電波ジャックされたTVを目の当たりにする。その電波はこう告げる「彼らTHEYは自分たちが生きるために我々を眠りこけさせ、欲に狂わせている。我々は“奴隷”にされている」と。

 

そして主人公はひょんなことから電波ジャックの連中と警察官との騒動に巻き込まれ、その中で不思議なサングラスを手に入れる。何気なくそれをかけてみると、いつもの平凡な日常の光景が、実はマヤカシで、本当は地球制服をたくらむ不気味なエイリアンと、彼らに協力することで莫大な利益を得ようとする特権階級やメディアによって巧妙に仕掛けられた洗脳信号が世界を埋め尽くしているというホンモノが見えるようになる。

 

「OBEY(従え)」「NO THOUGHT考えるな」「CONSUME消費しろ」「WATCH TVテレビを見ろ」「SLEEP眠れ」。無意識化に届けられるメッセージによってすっかりと洗脳されてしまった世界を救うために主人公は立ち向かう。というお話。

 

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 ジョン・カーペンター監督は「歯止めの効かなくなった巨大な資本主義に対して大声で反対を唱える映画だ」と称しているが、それは消費主義にとどまらず、まさに現代社会の在り様を予見していたかのような内容であり、だからこそ30年という節目の今、この作品が再評価され脚光を浴びている。

 

つまり、この国はもはやリアル・バイオハザードなんだと。つまり一見してまともな人間の姿をしているが、教養を失い、社会性を失い、感染力の強い危険思想に染まり、ただ自己欲に突き動かされたモンスターの世界。それらが渋谷の街角や戎橋、あるいは霞が関の中枢で暴徒と化している。

暗黒面に落ちた人間が権力を牛耳り、様々な不正や暴挙に出ても、彼らにすがり群がる連中は甘い汁を吸えればそれを擁護し、メディアはその実態を平然と垂れ流す。そうして巨悪はどんどんと私腹を肥やし、しまいには取り返しのつかないところまで来ているというのに、一般大衆は目先のニンジンにぬか喜びをしてその実態を知る由もなく、事実上奴隷となっていることにすらも気付かない。

 

今の日本人こそ『ゼイリブ』を観るべき。

 

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