記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

「松本隆の世界 風街神戸」at KOBE Varit

待ちに待ったフライデーナイト。

この日は、変わりゆく東京を離れ、

海と山と風吹く街・神戸(病院も近い!笑)に居を移して7年、

日本のミュージックシーンを豊かな言葉たちで飾り続けてきた、

偉大なる作詞家・松本隆さんのトリビュートライブ!

神戸を拠点とする地元ミュージシャンたちが、

敬愛する師の曲を1~2曲ずつ披露して

松本隆ワールドをあの手この手で繰り広げるという、

なんとも素敵すぎるイベントなのでございます!

あっという間にチケットはSOLD OUTしてしまったのですが

どうにかこうにか滑り込みでゲットでき、

この日を楽しみにしておりました。

なにせ、自分が日本語あるいは言葉というものの

豊かさや難しさ、美しさと向き合う

きっかけを作っていただいた言葉の神様みたいなお方です。

 

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ということで、トアロードにある神戸Varitさんへ。

OPEN待ちの行列はすでに熱気ムンムンなご様子。

往年を知る現役世代が多いので、年齢層高めですが、

はっぴいえんど辺りを再発見した

若者たちの姿もたくさんあり、

歌が言葉が、色褪せることなく、

世代を超えて愛され、

生き続けているのだなあとわかります。

 

ライブハウスは1Fと2Fとあり、

自分は、1Fの最後列に陣取ってスタンディング。

何げなく2Fはどんな風だろうかと見上げてみると、

なんと最前列に松本先生のお姿が!!

いやあ、ご本人と一緒に堪能することができるなんて

こんな贅沢なライブがあるでしょうか。

しかしこれは演者さんは相当プレッシャーだろうなあ笑

 

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時間となり、MCを務める

ラジオ関西パーソナリティのケーちゃんさんが登壇。

このお姉さまがまた、

軽快かつ絶妙なトークで回しまくりで、

これだけ曲者ぞろいの演者さんをまるっと手なずけながら、

終始ほのぼのとハッピーな空気を醸し出していて、

単にしゃべりがうまいというだけでない、

愛すべきキャラクターだなあと、

すっかりファンになってしまいました。

 

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そして、いよいよ熱風がめくるめく神戸の夜が開幕!

自分は神戸のミュージックシーンは

あまり関わりがなかったので

ほとんどの方がはじめましてなので、楽しみ!!

 

トップバッターは、出場中最年少のガールズバンド

THE TOMBOYS!!

大量のカラフルな風船がドドドッと舞い降り、

華々しく登場したかと思うと、

キュートにめかし込んだ出で立ちからは想像できない

ぶっとい重低音を響かせながら、

松田聖子の『風立ちぬ』からスタート!!

メルヘンの国のお姫様のような聖子ちゃんの歌が、

イマドキ女子ともなるとこれほどパワフルに変化するのかと

思わず面食らってしまうが、

骨太のサウンドに一気にボルテージは最高潮!!

引き続いて、名曲中の名曲『木綿のハンカチーフ』。

こちらも若さ全開・全力ビート!!

詩とは真逆で、まるで遠距離上等!!な勢いで

一気に駆け抜けていきました。

トップバッターとしてこれ以上ぴったりなアクトはないでしょう!!

(個人的にしゃべり抜群のギターの子が面白かった&演奏もGOOD!)

 

いやあ、のっけからこんな大本命の曲で

アクセル全開、振り切って大丈夫?

なんのなんの!松本隆ワールドは名曲の宝庫なので心配ご無用!

 

引き続いては、今回のイベントの首謀者である

石田秀一さん(イナズマクラブ)が率いる

今回のための特別編成の松本隆の世界バンドが登場!!

直前の若さ爆発のライブにまだまだ負けねえぜと言わんばかりに、

人生の酸いも甘いもがしゅんだ気怠い雰囲気をたたえながら、

はっぴいえんどの『はいからはくち』をぶち上げる!! 

約50年前、右も左もわからぬまま産声を上げた日本語ろっくが、

その時の粗削りで未完成な魅力そのままに、

時を経て、今神戸のアンダーグラウンドに吹き上げる!

はいから~ら~ら~はくち!!

 

このあとも、松本隆の世界バンドは

他の演者のバックバンドとして、大活躍するのですが、

皆さんさすが円熟のテクニックをお持ちで、脱帽です。

特に、一番ステージの端でクールにギターを鳴かせていた

東タカゴーさんのテクが最高!!

ギンギンいわせてました。

 

続いて登場が新長田の名物おじさん?

鉄板コテ之介!

真っ赤な衣装に身にまとい、

謎のコテを装着したいで立ちで、

森進一の『冬のリヴィエラ』を熱唱。

さあ、ますますディープになってまいりました。

 

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そこからしばらくは、

代わる代わる神戸の歌姫たちが

時代を彩った名曲たちを歌い上げていきます。

荘田倫子さん、元木美穂さんと歌い手を繋いでいきますが、

それぞれにそれぞれのカラーがあってよい。

しかし、なぜにこれほど女心を見事に語れるのか!と

改めて松本先生のすごみを感じます。

聖子ちゃんの『赤いスイートピー』を歌った

シャンソン歌手の小関ミオさんが、

ご本人を前にあまりのプレッシャーで、

歌詞を間違えるアクシデントもありましたが、

そらあ、緊張しまくりだと思います。

神戸なのに『東京ララバイ』をうたったウタモモさんも、

なかなか味わい深く、

ピートの乗ったスモーキーな琥珀色のウイスキーのようでした。

 

そこからいったん松本隆の世界バンドがはけて、

若い男性デュオ・にこいちによる2曲。

若い世代で松本先生といえばkinkiの人なんだそうで、

バックダンサーを携えての『硝子の少年』、

続いて弾き語りによる『風をあつめて』でさわやかな風を吹かす。

 

そして気づけば、怪しげな2人組が舞台に登場。

劇団赤鬼のお2人による寸劇。

作品の歌詞を随所に織り交ぜながら、

絶妙に笑いを取っていきますが、

最後の大オチがまさかまさかの阿久悠オチ!!

会場大爆笑でしたが、先生の反応は…大笑いだったそうで(ホッ)、

このネタを思い切ってぶち込んだお2人の勇気に拍手です。

 

そこから一転し、mabieさんの味のある歌声に、

黄啓傑さんの哀愁漂うトランペットの音色が寄り添う、

『スローなブギにしてくれ』(南佳孝)で、

会場はいっきにアダルトな装いに。

 

と思いきや、MCのケーちゃんさんが、

いきなりマイクを持ち換えて、

初々しいアイドル感を前面にアグネス!!

多彩やなあ。

 

そうして、ライブもいよいよフィナーレに向けて、

深みを増していきます。

急遽出場のノラオンナさんは

ウクレレで『卒業』(斉藤由貴)を弾き語り、

オーディエンスをわしづかみにしたかと思えば、

深川和美 & p. 鶴来正基コンビによる

壮大な『Woman "Wの悲劇"より』に心揺さぶられ、

果ては松本先生が20年の歳月をかけて日本語に訳せられた

シューベルトの楽曲の中から、

菩提樹』を高らかに歌い上げ、万感。

ラストは、城領明子さんが、ピアノの弾き語りで聴かせる

『紐育物語』(森進一)。

これがもう、ただただ圧巻で、

堂々たる歌唱力でラスト全てを持って行ってしまいました。

 

今宵は、往年のアイドル全盛の歌謡から、

元祖日本語ロック、果てはシューベルトまで 、

松本隆の世界」はどこまでも広く深いことを

改めて思い知らされました。

その詩の世界には、

微熱少年のこじれた青春のほとばしりや、

秘められた女心のいとしさや、

遠いあの人を想う切なさや、

エネルギーを持て余した若者たちの青々しさなどが、

ポケット一杯に詰め込まれていて、

つまりそれは人と人との間に生まれくる

情念やら信念やら怨念たちが、

風街の間をすり抜けて表れた心象スケッチなのです。

ああ、自分も一人の日本人として、

そして表現者の端くれの端くれとして、

こんな風に言葉と向き合えたらと、つくづく思います。

 

そして、全ての演者が出そろい、

ラストに松本先生が登壇で、拍手喝采!!

演者の皆さん、一斉にすみませんでした~とやったそうですが笑

ご本人もライブを終始楽しまれていたようです。

そしてこの神戸の街もとても気に入っておられているようで、

それはとても嬉しく光栄なことだし、

神戸が現代の風街としての一面を醸し出す街なのだとしたら、

それだけでもいつもの風景がなんだか見違えて、

ストーリーを帯びて見えます。

それから、松本先生を道端でナンパし、

このイベントへとこぎつけた石田さんとのラブラブ話も、

なんだかとっても素敵な関係だなあ。

 

そしてアンコールは、演者全員・観客も交えて、

『セクシャル バイオレットNo.1』(桑名正博)を熱唱!!

いやあ、神戸のミュージックシーンの底力を

まざまざと見せつけられた

アツいアツいアツすぎる夜でございました。

 

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<「松本隆の世界 風街神戸」at KOBE Varit 2019.4.5 セットリスト>

※一部ウル覚えなので、間違いや抜けがあれば訂正します!

(順番も一部違ってるかも)

 

●THE TOMBOYS

 『風立ちぬ』(松田聖子)/『木綿のハンカチーフ』(太田裕美

松本隆の世界バンド(石田秀一/東隆行/岡田誠司/永吉一郎/土井淳) 

 『はいからはくち』(はっぴいえんど

●鉄板コテ之介

 『冬のリヴィエラ』(森進一)/『セクシャル バイオレットNo.1』(桑名正博)

●荘田倫子 『瞳はダイアモンド』(松田聖子
●元木美穂 『赤い靴のバレリーナ』(松田聖子
●小関ミオ 『赤いスイートピー』(松田聖子
●ウタモモ 『東京ララバイ』(中原理恵
●にこいち 

 『硝子の少年』(Kinki Kids)/『風をあつめて』(はっぴいえんど

●タクロー君とナミヲ君(劇団赤鬼) 

 松本隆の世界寸劇 & 『ハイティーンブギ』(近藤真彦

●mabie & 黄啓傑

 『スローなブギにしてくれ』(南佳孝

●ケーちゃん

 『ポケットいっぱいの秘密』(アグネス・チャン

●のらおんな 『卒業』(斉藤由貴
深川和美 & p. 鶴来正基

 『Woman "Wの悲劇"より』(薬師丸ひろ子)/『シューベルト冬の旅 菩提樹

●城領明子 『紐育物語』(森進一)

 

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ここからは余談。

途中1回あった休憩の時に、

トイレでばったりご本人とお会いしたのだけど、

シチュエーション的にはやはりお声掛け、はばかられ、

自作の絵のシルクスクリーンをお渡しできればと思っていましたが

機会を逸してしまいました@@@

また神戸のどこかでお会いできればなあ。

って、もちろん風街神戸第2弾、あるよね?あるよね!!

(ひと足先に会場を出る際、石田さんがおられ、

素晴らしいイベントありがとうございました!

また次回お願いしますと言っておきました)

もし次回あるならあわよくば出たい!なんてね

 

<おまけ>

下の写真は依然、味園ユニバースでの細野さんのライブでの1枚。

たくさんの人がライブ会場にはいたのだけど、誰も気付いてなくて

なぜか自分だけはっきりとオーラを感じて

思わずお声掛けをしたときに応じていただいたもの。

我ながら興奮が隠しきれてない汗。

 

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