植田陽貴 個展 「渡り鳥はかく語りき 火について」at BIOME kobe
先日神戸に行く用事があり、
その際に気になっていた個展へお邪魔。
県庁前に近いBIOME KOBEさんへ。
まだオープンしたばかりのギャラリーだそうです。
TLでフォロワーさんのツイで、
雪を纏った山容を描いた絵(『サンクチュアリ』)を目撃し、
すっかりその美しさに魅せられておりました。
ご存知の通り、山に魂を置いてきた人間の自分から見ても
その山容の描き方が実に見事で、
山の厳しさも気高さも美しさも全部そこに描かれていて、
是非一度目にしたいと思い、会期終わり間際に飛び込みでした。
植田陽貴さんという方で、
漢字からてっきり男性の方かと思っていましたが
女性の作家さんでした。
山や森の光景や、
そこにひっそりと暮らす野生の動物の静かなまなざし、
そして未知なる影の存在、
あるいは刹那に表情を変えていく青白き炎などが
主な題材として描かれているのだが、
人知を越えたところにあるものの穢れや尊さといった”気配”が、
荒々しくも美しい山肌の一筋や、深い森の織り成す闇の塗り重ね、
2度と同じ形になることのない儚さで燃える炎の揺らめき、
それらを表現する繊細かつ迷いのないように見える筆跡の
1つ1つに確かに宿っていて、
その美しさに思わず見惚れてしまいました。
実に美しい。
その静けさの中に確かな声が聞こえる、そんな作品たちでした。
そして余談だが(植田さんの絵の正当な評価とはまた別という意味)、
この寂しさや人恋しさといった意味とは無縁の、
本来の意味での”孤独”を帯びたこれらの絵の数々の空気は
黒坂麻衣さんの絵を観た時の感覚とものすごく似ていて、
自分の中でそことリンクしたので、
ことさら感情が複雑にかき乱された。
とっさの飛び込みで、持ち合わせが全然なくて
図録すら買えなかったのが悔やまれる…
関西の方のようなので、またどこかでぜひお目にかかりたい。