はじめての子連れハイク at 須磨アルプス
土曜日。
奥さんもお休みで、音楽教室もお休みということで3人でお出かけ。
奥さんのリクエストはみんなでお山に行きたいとのこと。
それを聞いた娘も飛びついて「行くっ!」
それではどこへ行こうかと、関西周辺の低山ガイドをめくってお山選び。
できるだけ難易度の低いところで、できれば見晴らしのいい景色を見せてあげたい。
途中から「疲れた〜ダッコ〜」となるのを見越して、アクセスのよいところがいい。
やっぱり六甲のどこかかなあと思案していると、
娘が「ここがいい!ここ行きたい」と見せてくる。
そこは…須磨アルプス!
おいおい、マジか。しょっぱなから難易度の高いところ選ぶなあ。
5歳児にはかなりハイレベルです。たぶん、大人が槍挑戦するよりも難しい?
公園のジャングルジムやロープ場でさえ、
途中で足がすくむビビりの娘が果たしてクリアできるのか。
どうしようかと思ったが、核心部はそれほど長い区間でもないし、
標高もそれほど高くなく、アクセスもよいので、
絶対に抱っこはしない、自分で歩くということを約束させて向かうことにする。
自分としても初めて娘を連れての山歩きということで、
一体どうなるのかドキドキです。
これでもしもうまくいくようであれば、
たとえば涸沢あたりまで家族で行けるようになるかもしれない!
逆に散々な結果になれば、山の嫌いな子になる危険性もある。
とにかくやってみるしかない!
当日の朝に、奥さんは張り切ってお弁当をこしらえる。
奥さんも日ごろ旦那が一人で山に行ってしまうので、
今日は相当楽しみにしている様子。
お天気は少し雲が多いが雨の心配はない。
あれこれ支度をして出発したのが9:30。
自分は娘の着替えやら弁当・水筒などあれこれ入れていたら結局大そうな荷物になってしまった。
梅田へ出て、そこから板宿に向かうため、阪神の須磨浦公園行の特急に乗る。
娘はルンルンで、徐々に車窓に山が見えるたびに、あれ?あのお山?と聞いてくる。
11時前に板宿駅に到着。
トイレを済ませていよいよ出発です。
↓板宿駅を出発
板宿駅からしばらく賑やかな商店街を歩きます。
神戸西部は元々活気ある下町で、板宿はその中心です。
ダイエーにぶつかって妙法寺川沿いにでます。
手持ちの地図を確認しながら、1つ目の信号で川を渡り、住宅地へ。
電信柱などを見ると、八幡神社登山道の案内が出ていてわかりやすい。
育英幼稚園を過ぎて、さらに奥まった住宅密集地へと進んでいく。
案内がないと正直、どちらへ行けばよいかわからないぞ。
狭い狭い住宅の間を抜けていくと、急に神社の参道となっている階段が登場。
いよいよ上りが始まります。
娘は早速張り切って、ぴょんぴょんと階段をハイペースで上がっていくので
最初から無理したら最後しんどくなるよと諭して、一緒に手をつないで上がる。
娘はずっとテンションあがりっぱなしです。
階段はくねくねと蛇行し、上がっていくにつれて傾斜も急になる。
すぐ下に先ほど歩いた板宿の町並みが見え、点のように見えるビルや車を見て、
「トミカみたい!」と喜んで、こんなに高いところまで来れたことに素直に喜んでいる感じ。
階段も、自分が先頭を行こうとすると、
「自分が先に行く!」とトップを譲ろうとしない。
心強い半面、後のことを考えると体力が持つのか心配でしゃーない。
そうこうしているうちに、階段の終点にある八幡神社に到達。
ここで山行の無事を祈り、境内の脇にある登山道に入っていく。
↓八幡神社
少し階段状の土の道を登る。
神社までで大方、山上に出ているようで、道はなだらかに続いている。
娘に賀けと反対側を歩くように言いながらのんびりと進んでいく。
朝顔や彼岸花などが道の脇に咲き誇って、そこに蜜を吸いに来た蝶が舞っていたり、
大きなバッタが道を行ったり来たりしていて、なかなかのどかである。
危険な個所もなく、緩やかで一定な登り坂なので娘にはちょうどいいコースだった。
なかよくしゃべったり歌を歌ったりしながら、緩やかなアップダウンをこなしていく。
しばらくいくといきなり一大家庭菜園場が登場する。
ここで登山道が方々に延びている。
手持ちの地図にはここまで分岐があるようには書いておらず、
標識を確認するが、この標識の立ち具合がこれまた微妙で、
右手前方なのかセンターなのか、はたまた左手なのかわからない。
そこでそばの遊具で懸垂をしていたランニングのおっちゃんに道を聞き、
左手の菜園を突っ切るコースへと進む。
このあたりでは、でっかい松ぼっくりや、どんぐりがたくさん落ちていて、
少し時間をとって、それらを拾い集める。
思いがけないお宝発見に娘もハッスルハッスル。
菜園場をやりすごすと、少し急な階段が登場。
そこもえっちらおっちら登ってしばらく行くと南側が開けたところがあり、
いくつか木のベンチが設置されていて、そこで休憩を取る。
自分のリュックからたくさんのお菓子の入った巾着をあさってボリボリ食べる。
ここまでで1/3ほど来たが、なかなか2人とも楽しそうでよかった。
ここは見晴らしがよく、当日は少しかすんでいたが
沖合の貨物船がゆっくり横切るのやらも見えた。
上から見ると、月見山の阪神高速あの急カーブがいかに無茶な作りかよくわかる。
世界を眼下に眺めながら、娘は自画自賛で、
5歳でこんな高いところ来るなんてなかなかできへんでっ!
と自慢顔でご満悦。
うちの娘は褒めて伸びるタイプなので、そうやなあ、すごいなあと褒めておく。
実際、ここまで誰の助けも借りず自分の足でしっかり登ってきたからすごい。
でも本番はここからです。ドキドキ。
しばし休憩ののち、さらに奥へと進みます。登山道はまだまだ緩やかです。
微妙にアップダウンを繰り返しながら、再び深い森の中に入っていきます。
この辺からぼちぼち他のハイカーとすれ違ったりします。
いつものように「こんにちわ〜」と挨拶をしていると、娘がお友達?と聞いてくるので、
山で出会った人たちはみんなお友達やから挨拶をきちっとしようねと教える。
そこから娘はどんなにしんどくてもちゃんとハイカーに大きい声で挨拶をして、
今回それが一番偉かったなあと思った。
道は徐々に本格的になり、リッジになって、両側が斜面になっているようなところも出てきた。
そういうところは自分が先行して、自分の後ろを歩かせる。
木の階段も急な部分が出てくるが、手は出さずに娘一人で登らせる。
時々、ちょっと怖いかもと弱音を吐く場面もあったが、教えた通りに
時間がかかってもちゃんと1つずつ手と足を置く場所を選んで登っていく。
こんなところで手を貸してしまっては、馬の背は越えれないので、1つ1つ練習です。
そうして長い階段を登りきると、六甲縦走路にぶつかり合流します。
そこからしばらく歩いて須磨アルプスの東側のピークにあたる東山に到達。
本番前に、少し休憩を取り、水分補給等をして挑むことにします。
東山ではついいましがた難所である馬の背を越えてきたばかりのハイカーたちが休憩中。
みなこの小さき冒険家が気になるらしく、話しかけてくれます。
小さいのによく頑張るねえとか、挨拶偉いねえとか。
それを少し照れながら聞く娘は、でもとっても誇らしげで、本当にいい顔をしています。
5歳やけど、お山に行けるねんでっ!すごいやろ!そんな自身であふれている様子。
さて、しばらく一服ののちリスタートします。
ここから横尾山まで気の抜けない岩礁歩きです。
東山のピークからは急な岩場を階段で下っていきます。
下りの方が難しいのは当然で、特に身長が110cmそこいらの5歳児にとっては
大人が十分足を伸ばせるところも、ステップに全然届かないところだらけ。
本人からすれば、まるで崖を落ちていくような感覚で怖いだろうなあ。
こちらも自分のことよりも娘の安全に細心の注意を払いながらなので、
結構汗びっしょり疲れます。
先行して自分が下りて、様子を見ながら、足と手の置き場を指示しつつ、
時間をかけながらゆっくり下りていく。
娘もちょっとビビりながらも、1人で行けるところは手出し無用と頑張って下りる。
そうして、最大の難所馬の背にやってきました!
馬の背は長さ約20mにわたって、道幅わずか70cm、両側がスパッと切れ落ちた痩せ尾根です。
岩は脆く滑りやすくなっていて、高度感もあり、慎重さが求められる難所です。
大人ならこれまでの穏やかな山行にちょうどいい変化をもたらしてくれる、
ちょっとしたアトラクション程度の難易度ですが、子供にとってはかなりシビアな場所です。
特に、中盤に2か所大岩を巻く5mほどの段差があり、
滑りやすい岩と岩の間を抜けていかなくてはいけません。
安全という面では自分が完全にマークするので、滑落とかありえないので心配はないが、
問題は娘が途中で恐怖心にやられて、一歩も動けなくなってしまうのではないかということ。
果たして…
全体を見回してから、いざ勝負!
まずは、細い細い痩せ尾根部分を馬の背のど真ん中まで渡りきらないといけません。
中央部分から山ガール2人組が歩いてきていたので、
ちょうどいいお手本なので渡りきるのを娘に説明しながら見て待ちます。
渡りきったお姉さんたちに頑張って〜と声援をもらい、
意気揚々と難所に足を踏み入れます。
確かに両側がスパッと切れ落ち高度感はあるものの、水平道なので、
しっかりフォローしながら問題なく標識の立っている中心部分に到達。
娘も、興奮気味によくわからない雄たけびを上げている。
第1ステージクリア。
次は、ここから一旦大きく岩場を下る必要があり、
ガレガレで滑りやすい岩の斜面を慎重に下る必要がある。
自分が先導して、一歩一歩確実に足の置き場を指示して下る。
鎖も設けられているのだが、娘の体格だとそれを無理に握ろうとすると
体が開き切って余計に危ないので、片方は自分が手を握って対応する。
クラックの間を滑り台状になっている登山道を時間をかけてゆっくりゆっくり下る。
前後にほかのハイカーが待ってくれているが、慌てずに。
娘もここが勝負どころとわかっているのか、目の前のことに相当集中して真剣に取り組んでいる。
集中しているだけ回りが見えずに恐怖に気づいていない様子。いい感じ。
反対側から家族連れのハイカーがやってきて、
娘より少し上の男の子が脇を通過するときに、娘に頑張って〜と応援をくれる。
娘は真剣な顔を崩さず、必死で足場を確認しながらどうにか安全な場所まで下りきる。
これで第2ステージ終了。
あとはここから横尾山に向けて登り返しの入口に立つ階段に達すれば難所は終了。
そこからは道が2通りに分かれていて、一旦少し下りてから溝状になった部分を登り返す。
もう一方はガレの岩場のへりについた細い道を渡り歩くか。
どっちが安全でイージーかなと娘を奥さんに任せて待機させ、偵察に出る。
自分が離れると娘は待って待って〜とパニックになる(汗)
どっちもどっちのようだが、より短く手早く行ける後者のルートをチョイス。
1つ大きな岩を越え、そこで娘を一旦待機させて、
自分が身軽になって小回りが利くように階段のところに荷物を置きに行く。
が、そのタイミングでまたも娘がパニックになり、斜面にへばりついて腰が引けた状態。
すぐに迎えに行って、大丈夫大丈夫と諭し、自分ががっちり手を握って、
落ち着かせたら、そのままギリギリ狭い岩に体を預けながらカニ歩きで難所を切り抜ける。
ああ、これで乗り切った乗りきった!
娘の顔を見ると、暑さと疲労で顔が真っ赤っか。でもすごく充実した顔!
よう頑張った!お父ちゃんは嬉しい!
思わず娘に抱きついてしまいました。すごい!すごい!
5歳で須磨アルプスですよ。よく頑張った。
で、残り奥さんが渡ってくるのを待っていると、
もう安全とわかってゆとりが出た娘が、「お母ちゃん、早くしいやあ〜」とでかい口をきくので笑う。
そうして3人とも無事に難所を切り抜けました。
馬の背は切り抜けましたが、ここからまだ少し難しいところが続きます。
まずは目の前に立ちすくむ階段です。
手すりを持ちながら一歩一歩しっかりとした足取りで登っていきます。
登りきると、今度は岩場の連続。高度感はそれほどないのだが、
さっきの恐怖がまだ残っているようで、少しおじけずくそぶりもありましたが、
どうにかこうにか、回りのギャラリーの声援の後押しもあって無事に乗り切ります。
あとどのくらいで横尾山かはっきりせず、時刻も14時を過ぎお腹ペコペコ。
この日は日差しがものすごく暑いので、木陰になっている縦走路のちょっと広まったところで、
中途半端ですがランチにします。
敷物を忘れたので、ザックに入っていた緊急用のツェルトを敷物代わりにする。
おにぎりと娘の好きなおかずがたくさん入ったお弁当を楽しく食べる。
みなちょっとお疲れモードで、お腹は減っているのだがなかなか固形物が喉を通らないだろうと、
自分はバーナーで湯を作って、スープを作ってあげる。
縦走路の脇なので人の通りが結構あるが、
馬の背を越えてきた娘に、「すごいねえ」「えらいねえ」とねぎらいの声をもらい、
娘も上機嫌でした。
何度も何度も、木立の間から見える小さいビル群を指さしながら、
あそこから自分の足で登ってきたんやで〜、と自分で確認するようにつぶやいていました。
お弁当を食べ終えて、あとは下山です。
本当は、おらが茶屋〜鉢伏山と進んで須磨駅でフィニッシュのつもりだったが、
時刻はすでに15時で、みな予想以上に疲労があったので、高尾台でのフィニッシュに変更します。
リスタート後少しのぼって、横尾山のトップを踏む。
そこから上がって下りてを繰り返す、地面からはみ出した木の根っこなども多く、
娘も疲労が大きいのか、慎重なのか、足取りが遅くなってくる。
奥さんも、明日絶対筋肉痛やわ〜と足をかばいながら歩く。
そうして、ようやく次のピークである栂尾山のピークに到達。
ここには見晴らし台の櫓があり、疲れているはずなのに、
景色見たいとよじ登って、絶景を味わう。
結構かすんではいたが、遠く明石海峡大橋も見えた。
高尾台をはさんで向こうには高倉山〜鉄拐山〜鉢伏山の連なりも見える。
なかなかの見晴らし。
娘はあっちの山も引き続き行きたい!と直訴してきたが、
明らかに体力の限界が差し迫っているので、あそこはまた次に行こうとなだめる。
↓栂尾山(274m)からの眺め。対岸に鉢伏山、右奥に明石海峡
リスタートし、一か所だけ岩を大きく下りるところがあり、そこは慎重に。
あとはひたすら続く山道の階段を詰めていくと、樹林帯を抜け視界が開ける。
そこからは長い長い階段の登場。疲れた足にはなかなかこたえるが、ラストです。
一歩一歩しっかりと段を下りて山行終了♪
よくがんばりました!
↓高倉台への大階段
下りきったところに幹線道路が走っていて、最初は路線バスで帰るつもりだったが、
ちょうどいいタイミングでタクシーが来たので、それで最寄りの月見山駅へ。
駅前の珈琲屋でしばし休憩をして、珈琲とケーキを頂く。
月見山駅からは阪神梅田行き直通特急に乗り、3人とも爆睡。
娘は予想通り相当疲れていて、起こしてもびくともせず半目で寝ている。
梅田からは抱っこをして帰宅。
晩は疲れた体に優しいお鍋で祝杯です。
約5km程度の山行でしたが、娘にとってはまさに大冒険です。
かなりの達成感と充実感を得たようで、次のお休みはどこの山へ行くぅ?と聞いてきます。
自分にとっても子連れの山行はいかほどか、新たなチャレンジでしたがこれは大成功。
ただ、常念縦走や南アよりもはるかに、はるかにこっちの方が疲れました!
でもとても楽しい山行でした。
<本日の行程>
板宿駅⇒八幡神社⇒縦走路合流⇒東山⇒須磨アルプス(馬の背)⇒
横尾山⇒栂尾山⇒高倉台⇒月見山駅