記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『飛行士と東京の雨の森』 by 西崎憲

タイトルの文字の組み合わせのなんとも心地よい響き具合と、
そのタイトルにマッチした味わい深い装丁に導かれて
思わずジャケ買いした一冊。
何の変哲もない日常の風景(しかしどことなくファンタジー)を描きつつも、
ちょっとだけ違和感や波紋が沸き立つような不思議な感覚。
真夜中に喉が渇いて冷蔵庫をおもむろに開けた時に放たれる青白い光のようなイメージというか。
まるで小川洋子のあのひんやりと冷たさを感じるような文調とよく似ているように感じた。
特にお気に入りは「都市と郊外」。
これはまるでキリンジの歌をそのまま文章に書き起こしたかのようなスリリングな話。
じとじととした長雨の最中に読むにはもってこいの一冊だった。


飛行士と東京の雨の森

飛行士と東京の雨の森