記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

いしいしんじの「酒はものがたる」 第3杯目 「日本酒と落語」

昨日は京都のワコールさんへ。
先日メリーゴーランドでのくまさんとの人形劇の時に、
いしいさんから、来ない?とお誘いいただいた
学びのスクールにスポット参戦してきました。


↓ワコールスタディホール京都


毎回いしいさんが、
お酒にまつわるあれこれを話してくれる講座で
1回目が「ワイン×A・ランボー」、
2回目が「カクテル×トム・クルーズ
そして今回が、「日本酒×落語」というお題目。
ということで、事前に”落ちる話”の宿題があり、
当日は可能であれば和装でという事で、
浴衣を持参していきました。


↓本日の演目は「日本酒と落語」


↓色々な人が集っています


この講座は全6回のシリーズ通しの受講でなのですが、
自分は今回スポットで参戦。
他の参加者には、いしいさんの交友関係の人や、
大関係の方、
某有名パン屋さんの職人さんや、KBSの方、
文化財にお住まいの方などなど、
流石京都という場所に集う人は一味違います。


題材が、お酒なので、ちょこちょこお猪口を傾けつつ、
名作と言われる落語を、いしいさんの解説付きで鑑賞していきます。
お酒は、立山、英薫、古都などございました。
落語はからっきしで未知の世界なのですが、
何がどう面白いか新鮮な面持ちで臨みました。


↓お酒を傾けつつ


↓いしいさん


はてさて、まずは柳家小三治さんの「粗忽長屋」を。
いわゆるきっぷのいい浅草言葉や、昭和風情の残る間の取り方なんぞが
とても心地が良い。
いしいさん曰く”声の入浴”なるもので、
そういう音を耳から体に通すことで、
すーっと力がみなぎる、心地よくなるという意味がよくわかります。


若かりし頃、東京にいたしんじさんは、寄席に足しげく通い、
そこで知り合いが落語好きの女性がいるから
3人で小三治さんの高座を観に行こうとなり、
行ったはいいが、その帰りに
好きな落語家さんを尋ねたところ、
ありえない名前を出したことで大激論となり、
お相手の女性が勢いを買って飲めない酒をグイッとな。
案の定、バタンのQで、
やむなく近所だったいしいさんの自宅へ連れて帰ったとか。
それが園子さんだというから、なんともはや。
なかなかにユニークな馴れ初め話まで聞くことができました。


続いては、孤高の天才・桂枝雀さんの創作落語の名作「いたりきたり」。
最初は何のことはない言葉遊びの類かと思いきや、
徐々に枝雀ワールドへと引き込まれ、
しまいにはナルホド!と手を打ちたくなるような
ありがたい教えの境地にまで達するような不思議な感覚。
なんとなく赤塚不二夫の「これでいいのだ」というスタンスに
近い印象を受けました。
それにしても話術だけでこれほどまでに人を引き込み、
またあたかも目の前でそれが本当に繰り広げられているかのように見せる、
というのは、これぞ芸の極みというものですなあ。


ここまで来て、落語というのは、
具体的な日常の描写があったうえで、
その舞台から一気に非現実的なものを放り込むことによって
緊張だったり、緩和だったり、ゴムのように作用して、
それがぱちんと弾んだ時の衝撃の度合いが
笑いだったり感動だったり面白さになってゆくものだということ、
そしてその作用というのは、
まるでお酒と同じようなものだということがわかります。


最後に、古典落語の1つ「芝浜」。
全くスタイルの違う噺家2人のものを見比べてみて果たしてどうなるか。
1人目は名人と謳われた古今亭志ん朝さん、
2人目は鬼才・天才の立川談志さんでした。
志ん朝さんのそれは、流れるような所作や佇まいの美しさが際立ち、
お話のもつエッセンスを丁寧に抽出するような職人技。
一方で、談志さんのそれは、まるで役柄にどっぷりと憑依して、
はらわたの裏側にある人の業なるものの正体を
暴きだすという風な調子で、スリリングかつ生々しい芸。
全く同じ演目でありながらも、演者のもつ旨み、強みの違いで
がらりと毛色を変えるという落語の面白さが、
比較することによってよくわかりました。


すっかり予定時間を延長してお開きとなり、
そのまま打ち上げ宴会へ。
落語の話から、ぴっぴ君の話から、
参加者の皆さんのお話、色々と盛り上がり、
気づけば終電間近。
大慌てで帰阪しましたとさ。べんべん。


↓打ち上げ宴会


↓また!