記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

「かこさとしのひみつ展」

世界がどんな風に出来ているのか、
そして人々はどんな風に生きているのか。
その理解を手助けするために、
先に生まれて、失敗などしてきた先駆者として
僕なりにまとめた見取り図を手渡してやること。
それこそが、僕が絵本を通じて、
子供たちに伝えたいと思っていたことです
by 加古里子



アンサンブルズの合間を縫って、
どうしても家族で行きたかった「かこさとしのふしぎ展」。
電車を乗り継ぎ、バスを乗り継ぎ、川崎市民ミュージアムまで。
絵本好きの夫婦で、色々な作家さんの絵本を見たり読んだりしますが
かこさんは特別な存在。
「だるまちゃんシリーズ」「からすのパンやさん」「かわ」などなど
たくさんの作品が本棚に並び、
子どもができて以降はもちろん、
娘たちのベストセラーとなっていました。
今年の5月に92歳で亡くなられる直前まで、
子ども達に明るい未来をと筆を取られ、
絵本作家としてはもちろん、人生の先駆者としても大変尊敬しています。
特に、子どもや社会的に弱い人たちと、同じ目の高さになって、
一つ一つ丁寧に言葉を選び、
寄り添う姿勢は誰もが見習いたいところです。


かこさんのそういった姿勢の原点には、
子どもの頃に、戦時高揚の世間に飲まれ
自らも戦争を疑うこともなく軍人を目指していたという恥ずかしい思いと、
終戦後に手のひらを返したように
元軍人の人を軽蔑する大人たち(彼らもまた戦争に加担したはずなのに)への嫌悪があります。
世の中の正しいことを、次の世代にきちんと伝えねばならない、
それによって二度と同じ過ち=戦争を引き起こさせないという強い思いが
かこさんをセツルメント運動へと向かわせ、
今もなおたくさんの子ども達に夢を届ける絵本作家の道へと続いて行ったのでした。
優しいことばの節々や、かわいらしい絵の合間合間に、
そういった強い信念が込められているのです。


子ども達はもちろん大喜びでしたが、
誰よりも楽しんでいたのが奥さんで、
帰りのショップではこれでもかとグッズを買いだめておりました。