記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

アンサンブルズ東京2018 リズムの話法、そして歌 サンティアゴ・バスケス

すっかりと遠い記憶になったまま、書き残していましたが
アンサンブルズ東京2018、
もうひとつのワークショップについて。


アルゼンチンのパーカッショニスト兼音楽家
サンティアゴバスケスさんによるアンサンブルズ。
バスケスさんはあのシシド・カフカさんの師匠にもあたる方で
現在は即興オーケストラ集団を率いておられる。



去年の大友良英スペシャルビッグバンドの時と同じく、
「ハンドサイン・アイコンタクト」を通じて、
演奏者に指示を出し、基本的にほぼアドリブで展開するアンサンブル。
大友さんのサインよりも、さらに複雑で難しかったが、
その分、表現の幅が広がって、面白い。
コーラス隊の部と、リズム隊の部があり、
我々はチキン演奏家としてリズム隊に参加したのだが、
初回のワークショップが、
ラップのワークショップと被ってしまっているので、
振替で、コーラス隊の練習に参加。
声を合わせたり、サインに合わせて弾んだり揺らいだり。
去年の美雨さんとCANTUSの声を合わせるワークショップが
ここで活かすことができました。




翌日は合同練習となり、リズム隊として参加。
今回は去年に引き続いてのシャウティングチキンに加えて、
様々なトイ楽器をいくつか持ってきていて、
娘と二人で、トクマルシューゴグループのように、
あれこれと持ち替えて、音を出すのが楽しいかった。
バスケスさんからも「Nice、chicken!」いただきました。
我々は、音階を持たない”楽器”なので(打楽器グループに入りました)、
演奏に関しては、ほとんど音を出す・出さないだけ注意すればよいので、
シビアな調整もなく気軽。
むしろ、それよりもピエロ役として華を添えるということ
しっかりやります!


即興アンサンブルの魅力は、
出されるサインをきちんと理解さえすれば、
ドレミの基礎とか、難しい演奏技術などは必要なく、
とにかく音を出すという事の純粋な喜びだったり、
他の人と音を重ねたり、ずらしたり、
コミュニケーションが生まれることの楽しさを味わえる点で、
しかもそれが、各々が好き勝手に音を出して
しっちゃかめっちゃかノイズになっているのではなく、
きちんと一つの音楽、
それもプリミティブな魅力にあふれた音として成立し、
その即興性や一回性、あるいはその完成度に、
観る側も圧倒されてしまうという予測不可能なエネルギーにある。
それは日本の盆踊りだったり、アフリカの民族の祝祭のような
土着的な爆発力なのだが、
それが実は世界共通・人類共通のものとして
生まれ出てくるのが実に面白い。



そして本番。
この日は本当に信じられないくらいの猛暑で、
朝から設営をして、リハーサルをして、
ラップ本番をこなして、汗まみれ。
そしてオーラスを飾る本公演へ。


夕暮れを楽しむかのように穏やかな顔で
ステージの真ん中に佇むバスケスさん。
おもむろにアルゼンチンの弦楽器を取り出して
おもむろにノスタルジックな音色が響きはじめる。
1人1人オーディエンスがステージの方へと歩みより、
ゆっくりと温度が上がっていく。
そうして我々の方へとサインが向けられ、
目の前に弓なりのように点に突き刺さる
真っ赤な東京タワーを望みながらリズムを積み重ねていく。
伸びやかに軽やかにタクトを振るバスケスさんに
追いつけ追い越せとばかりにコーラスがリズムが
ボルテージを上げていく。
その勢いはとどまることを知らず、
リズムは大蛇のようにあちらへこちらへと、
のたうち回り、伝染し、
ついには観衆さえも巻き込んで、
気づけばエネルギッシュな音に包まれた場がそこにあった。
ここは老若男女、国籍も、貧富も何も問われることなく、
誰もが歓喜の輪に加わることが許された自由の場、
つまり音楽そのものだった。








【4K】アンサンブルズ東京2018 ③『サンティアゴ・バスケス Santiago Vazquez ×大友良英×芳垣安洋×柴田聡子 他×一般参加の人々』2018.8.26 @東京タワー南側駐車場


ということで、今年のアンサンブルズ東京も
とっても印象深いものとなりました。
まだあと2回は続くようなので、来年もぜひ。