記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

2018Gパトの夏 いざ朝日小屋へ イブリ尾根格闘編

翌朝早朝。

いよいよ山に入ります。朝飯と荷づくりを済ませ、いざ出発。

米沢さんや管理署に方々に見送られて

朝日・白馬班4人、行って参ります!

 

 

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ここ北又小屋が標高約700m。目指す朝日小屋が2150m、

ということで約1400mの標高差を上ります。

山小屋の人や地元の猛者はこの厳しいイブリ尾根を、

30kgもの荷物を担いで3時間前後で登ってしまうそうですが、

信じられない強さです@@

 

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まずはダム横の階段を下ります。

最終日はここを登り返すんだなあ…

谷を下りていくと吊橋があり、といといと渡ります。

それにしても姫のザック、

思わず自分の装備が不安になるほど重たそうだ…

 

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吊橋を渡ってしばらくは 、川沿いになだらかで歩きやすい山道が続く。

そこから一気に切り込んで、急登がスタート。

うっそうとした緑の中、露出して滑りやすい木の枝と格闘しつつ上る。

イブリ尾根で多分一番きっついのがおそらく1合目までのこの急登かも。

 ほどなくして細い尾根に出て1合目。

少しだけ眺望があり、

そこからは対岸に北又小屋が見える。

よく見ると管理署の人が手を振ってくれているので 振り返します。

 

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そこからも細かくつづらになった急登をえっちらおっちらと。

まだ早朝なのだが、早くも暑さが堪える。

自分は日ごろほとんど単独行動ばかりで、

自分の娘との山行は別としても、

よその複数の人と一緒に山歩きするのはかなり久しい。

各々のペース配分とか歩幅とか、色々試行錯誤しつつ上ります。

全然眺望が効かない森の中の急登なので、

疲労を紛らわすものもなく、2合目、3合目、4合目と進みます。

時折、猿やらでかい鳥やら出没。

登山道の真横にある大木の根元にある、

これまたでっかい蜂の巣を、

熊がほじくり返した穴があって、しかもまだ新しい。

これはもう出くわしたくなあいなあ。

 

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そうして2時間半ほどかけて、ようやく5合目。

まだ600mしか上がってきていない…

ここは少し広場のようになっていて、

切り倒された木でベンチがこしらえてある。

本線から少しそれたところに水場があるのだが、

この暑さのせいかほとんど涸れてしまっていた。

30分ほど休憩をしてリスタート。

 

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5合目からは少しアップダウンなどもありつつ、

高度を上げていきます。

6合目を過ぎたあたりから北側の方面の眺望が出てきます。

それにしてもいい天気だ。

しかし4人ともすでに汗だく。

7合目辺りからは急登となり、えっちらおっちらと進みます。

 

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そうして約4時間半の格闘の末、10合目に到着!

しかーし、ここは決してゴールではありません!

ここは、これまで急登続きだった難儀なイブリ尾根の

終着点であるイブリ山の山頂なのです。

つまり朝日小屋や朝日岳はまだまだ先!

それでも標高は1791mなので、ようやく1000m上ってきたことになります。

山頂にはベンチが備え付けられていて少し休憩をはさみます。

ここは南東部に向かって眺望がよく、

ようやく朝日岳の姿を見ることができます。 

中央の朝日岳と右手にある前朝日の中間の鞍部には

目的地の朝日小屋があるはずですが、それはまだ見えません。

 

休憩がてら、周辺の清掃活動を行い、

それから標識がほとんどかすれて読めなくなっているので、

特殊なマジックで塗りつぶし。

こういう地道な作業を担当のエリアの各所で毎日やっていくわけです。

 

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休憩ののち、いったん下ってからの登り返し。

途中に一か所鎖場がありますが、難易度は低め。

ズイズイ上ると、そこからは穏やかに木道が続いていきます。

植生は背丈の高い木々から草花となり、眺望もよくなっていきます。

反対に、随分高くなった日が燦燦と降り注いで、

暑さが一層厳しくなってきました。

 

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夕陽が原の中間くらいに、

大きな雪渓が横たわっていて、

そこでちょっとばかり涼を得るために小休止。

7月中旬で、まだこの2000m辺りでも雪が残っているんですなあ。

 

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夕陽が原を抜けていくと、

そこから先もいくつかの雪渓を渡っていきながら、

前朝日を巻くようにして進んでいきます。

そうして13時を少し越えたところで、

ようやく前方に朝日小屋が見えました。

このルートでは小屋が見えるのは本当にオーラスだけなのです。

 

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小屋に入ると、受付にはブルーのシャツを着た

女主人・清水ゆかりさんがいらして、早速ご挨拶。

実はこの班の紅一点のT姫は、前年にこの小屋でのアルバイトの経験があり、

小屋のことやゆかりさんのことは、道中に色々と聞いておりました。

なかなか仕事やルール、挨拶に厳しい方だと聞いていたし、

この山域一帯では知らない者はいないほどの名物おかんということで、

ちょっと緊張しましたが、気さくに出迎えていただきました。

 

 

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ひとまず、寝床へ案内されます。

我々スタッフの部屋は、その時のお客様の混雑具合や

目まぐるしく入れ替わるスタッフの増減に応じて、色々と変更され、

基本的にはもう一つある建物(通称センター)の方の

どこか空いているところなのですが、

この日は色々と助っ人やスタッフの人員が多いということもあり、

客室の空いている部屋をあてがわれました。

部屋は、さすがスタッフの教育が行き届いていて、

ゴミはなく清潔で、至る所がきちっと片付いていて、とてもくつろげます。

それを我々も翌日からお手伝いすることになります。

 

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夕方まではひとまず休憩で小屋の周辺を散策したり。

小屋からすぐに朝日岳がどーんと広がりますが、

翌日以降足しげく通うようになるので、

この日は登頂せず。

 

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夕方17時にお客様は夕食となるので、

その準備を15時くらいから小屋の常勤スタッフさんに交じってお手伝いします。

お客さんの料理と我々スタッフのまかないを同時作業でこしらえながら、

配膳や、お客さんの誘導、お寿司やお弁当の販売、そして皿洗いまで、

この時間帯は厨房ブースは戦場となります。

常駐のスタッフは女性3名に、男性2名、

それに小屋の関係者や過去のスタッフが

繁忙期には山に上がってきてお手伝いをしたり、

あるいは詰めている消防や警備隊の方も一緒になって、

小屋の運営を支えています。

ここでは誰もが自分の役割を越えて、

みんなの生活をよりよく維持するために協力し合い、働きます。

とりあえず我々もタダ飯を食べるわけにはいかないので、

業務の一環として加勢します。

 

品数の豊富なお料理も、一品一品ちゃんとお皿が決まっていて、

配膳の細かい向きも決まっているし、

当然、調理器具やお皿の直す場所なども決まっているので、

足手まといにならないように、

それらを見聞きしながら覚えていきます。

特に男性陣は、食後一斉に帰ってくる皿洗い、

これをどれだけ手際よくこなせるかで、

スタッフの夕食時間が大きく変わってくる、

それはつまり、消灯時間までの自由時間にも直結するので、

みんな一生懸命です。

 

それらをこなして、ようやくスタッフ全員で夕食。

山に入るまでは、

きっとお客さんに出している夕飯の残りが

大半続いて単調なんだろうなあと想像していましたが、

なんのなんの。

毎日ちゃんと女性陣が食材の在庫とにらめっこしながら

献立を考えて、飽きのないよう、

そして色々たくさん食べられるように

創意工夫をこらして、最高の夕飯を用意してくれました。

これはもう本当にありがたいことで、

1か月の長丁場の現場をこなすための

大いなる原動力になりました。

しかも、毎食ビールやらお酒やら出してくれるのです。

これはとてもありがたい!

山の過酷な生活のはずが、こんな最高の食事をモリモリ食べていたら

逆に太って帰ってしまうんじゃないかと心配してしまうくらいでした。

スタッフ全員囲んでの夕食は、

その日あったことの反省会と翌日以降のミーティングも兼ねていて、

この日は我々Gパト赴任初日という事で、はじめましてのご挨拶。

なかなか、すぐには環境に慣れないこともありますが、

幸先の良いスタートを切れたかなと思います。

そして翌日からはいよいよ、本格的な任務が始まります。

しかも2班はすぐに白馬への赴任のため朝に発ち、

ここからはバディのクマさんとの二人三脚です。

それにしても初日からまさかあんな怒涛続きになるとは…

つづく。

 

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<山行記録>

5:40北又小屋⇒5:45吊橋⇒6:10一合目⇒6:30二合目⇒
6:55三合目⇒7:35四合目⇒8:00五合目⇒8:35六合目⇒
8:55七合目⇒9:20八合目⇒9:45九合目⇒10:00イブリ山10:30⇒
11:05鎖場⇒11:30夕陽が原⇒13:05朝日小屋

 

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