記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

坂口恭平『Pastel』展 at メリーゴーランド京都

9月某日。

京都のメリーゴーランドさんへ、

このところ大注目の坂口恭平さんの絵画展『Pastel』を観に。

完全予約制で、リリース後あっという間に埋まってしまったのだけど、

運よく予約できました。

 

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坂口さんと言えば、ある時は建築家、

ある時は文筆家、ある時は音楽家

ある時は農家、ある時は料理家、

そして死にたい人がいつでもかけてOKの「いのっちのでんわ」と、

二刀流どころか、全方位的にフル回転の大人間。

 

コロナ自粛の折に始めた、パステルでの絵描きが、

みるみるとクオリティを上げ、

今回の展示会、そして画集発売にまで繋がっていきます。

とにもかくにも、すごいバイタリティ。

 

というより近代以前の人は生活の一切合切(娯楽も含め)を

何でも自分でできて当然だったはずだから、

人間が人間に回帰した存在と言うべきか。

そしてその様は、コロナ時代の新たな光となりうると感じている。

 

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SNSにアップされる絵の様子を見ると、

その細かな描写から、大きな絵なんだろうと予想していたら、

思ったより小さくてびっくり。

パステルであそこまで細かく表現できるというのが意外でした。

とにかく筆さばきに迷いがない。

迷いがないというよりも、たとえ迷いがあったとしても、

それがその時の自分の素直な感情・感覚なのだから、

その迷いこそ本物だ正解だとでもいう風に、

きっとそのままをストレートにぶつけているのだろう。

実に清々しい。

 

どの絵も、坂口さんが毎日を暮らす熊本の風景を描いているのだけど、

あまりに日常過ぎて、うっかり見逃してしまったり、

わざわざ記憶に沸き起こってはこないような平々凡々な風景が、

やけにリアルに飛び込んでくる。

誰もがかつてそこにいた風景。

誰もがよく知っているあの場所。

まるで意識として浮かび上がる以前のプリミティブな位相に

直接アプローチされているような感覚。

 

ああ、夏の空気にいぶされる草いきれが匂う。

ザワザワと風が歌う。

空と海の静寂に、

ただ遠くからブーンという無音の音の世界が広がる。

絵を観て「気持ちがいい」というのもなんだか不思議だが、

それだけ五感がキビキビと刺激されるのだ。

 

コロナの影響で、完全予約時間制だったので、

与えられた時間の目いっぱいを使って、

1つ1つの絵とじっくりお話ししてきました。

さすがに絵を求めるのは高すぎて無理でしたが、

画集がとてもとても楽しみ。 

 

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さてさて、絵も素晴らしく画集も待ち遠しいのですが、

ちょうどのタイミングで新盤CDもリリースされてます。

その中でも、『松ばやし』という曲がとても素晴らしくて、

パステルで描く絵を

そのままギターで表現したらこうなったという風な

実に生き生きとした曲。

バックのコーラスと鍵盤で寄り添っているのは、

冬にわかれての寺尾沙穂さん。最高過ぎます。

ということで、思わず耳コピをしてみました。 

 

 

 

坂口さんがこれからますます

何を仕出かすのか、全然目が離せないし、

じゃんじゃん仕出かしてほしい!!