記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

大友良英+Antonio Panda Gianfratti+Marco Scarassatti+Paulo Hartmann at Bar Isshee(千駄木)

少しブログの時間軸が複雑なのですが、

10月末、ハギビス襲来翌日の晩、

いったん渋谷にて全感覚祭のスタッフ集合に顔を出し、

そこから抜け出して、元々ブッキングをしていた用事のために

地下鉄を乗り継いで千駄木の地に降り立つ。

(そしてまた渋谷へとんぼ返りしないといけない超過密スケジュール)

 

この晩は、地下にあるBar Issheeで、

自分が最も信頼している大人でもあり、

素晴らしい音楽家・ギタリストとして敬愛している大友良英さんが、

地球の反対側、ブラジルはサンパウロとネット中継を繋いで

ノイズを炸裂させるという壮大な実験現場のようなライブに参加。

 

ちょうど向こう側がお昼時になるようにライブ時間が設定されていて

そのために、こちらでは23時開演、1時終了。

終電が終わった後にライブ終了予定ということで、

相当にハードルの高いものだったのですが、

ちょうどせっかく東京にいるので、これは参加せねばと申込み。

本来の予定だった全感覚祭が台風で別の形でディレイして

結果的に重複してしまったのだけど、こちらが先約だったし、

一体全体どんな風になるのか、ずっと楽しみにしておりました。

 

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駅からすぐのビルの地下に一番乗りで到着。

すると、お店のドア越しからすでに、

ギターのノイズが結構なボリュームで漏れ聞こえてきて、

いくら地下と言えど、こんな爆音大丈夫?と思うほど。

でも、それはそれで楽しみでございます。

開場時間となり、中へ。

アンサンブルズ東京ぶりに大友さんとご挨拶。

実はこの少し前に、無茶ぶりな相談事に乗っていただいたりしてて、

お礼とお詫びをお伝えすると、「全然全然!」と。

いつものように広い器のお方だ。

 

結局この日、日本側に集まったお客は自分含めてたったの5人!!

そりゃあ終電がないというのは相当なハードルですが、

色んな意味で伝説のライブになりそうです。

 

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東京からは大友さんのノイズギターを、

サンパウロからは主に打楽器(ティンパンやらなんやら)を演奏して、

音を合わせるのだけど、

当然、地球の真裏との中継なので、どれだけ今の技術をもってしても、

タイムラグが生じてしまうわけです。

目の前のモニターに向こう側の映像を映し出しているのだけど、

たぶん5.6秒くらいはズレてる。いやいや結構ズレてる。

しかもそのモニターの中に映っている、

あちらのモニターに映し出される大友さんの音はさらにズレてる!!

これをどうやって克服して演奏するのかと思ったらば、

もうそのズレを織り込み済みで演奏するというのだから、びっくり仰天。

とか何とか言っているうちに、スカイプが落ちて何度も不通になったり、

復活したはいいけれど、どうも10分くらい前の映像に巻き戻ってしまったり。

いやいやこれ成立するの?大丈夫?って、

この空間にいるみんな間違いなくそう思ってたと思います。

開演時間を過ぎても、そういう技術的な部分が

テストでも全然クリアにならず、

別の回線でバーのマスターがあちらとやりとりをするのだけど、

向こうは全然大丈夫、何とかなるから、

いつでも始めていいよと返してきて、東京サイドは大爆笑。

いやいやいや~、本当????

ブラジルの人、テキトー???

そしたら、大友さんが半信半疑ながら、

ま、いっか、向こうがOKだって言うんなら、やっちゃいましょうかと、

いきなり冒頭からガーン!!ギュワ~ン!!ピキーン!!

とご自慢のノイズを炸裂させる。

少し遅れて、向こう側のモニターからその音が発せられて、

それに合わせて向こうのミュージシャンがリズムを取ったり、

色々なものを使ってノイズを重ねていく。

それがこちらのモニターにフィードバックされたのに合わせて、

大友さんが変幻自在に音を生み出していく。

それがまた時間差で向こうのモニターから流れて、向こうも音を出し、

それが無限ループのように回り出して、

もうどこがスタート地点かわからなくなって、

色々な破裂音やらノイズやらがぐるぐると輪廻する。

大友さんの演奏は、ギターを弾くというより、

ギターを引っ掻き回したり、

拳で叩きつけたり、色んなものとこすり合わせたりして、

いわゆる本来のギター小僧むきだしの大友良英!!

先回りなのか後追いなのか、モニターの様を伺いつつ、

演奏のスタイルを刻々と変化させていく。

途中ノンストップで、ひたすらに音の渦にたゆたいながら、

1時間だったか2時間だったか。

歌の終わりも、大友さんが、モニターを見つめながら、

そろそろ終わりなのかなあ?もういいかなあ?と

探り探り着地する感じ。

もうこれぞ正真正銘、再現不可能な、ただの一回きりの”その場小説”。

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いやあ、なんとも表現しづらいけれど、

とにかく、なんだかものすごいものを目撃してしまった。

まるで、ちょうどこの前日に関東に襲来して、

散々と暴れ倒していったハギビスタイフーンを、

ノイズギターで絡め捕って、

その捕獲しておいた生きたままのハギビスを、

この千駄木の地下空間に一気に解き放ったような、

そんなカオスな時間でした。

 

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終演後、サンパウロの皆さんと少しだけモニター越しでのやりとりがあって、

そのあとお開き。少し予定よりも早く終わったこともあり、

せっかくだから何かやるかと大友さんが提案されたところで、

自分は泣く泣く中座です。

大友さんとマスターに、

全感覚祭頑張ってね!マヒト君や郁子ちゃんにもよろしく言っておいて!と

送り出されて店を後にしました。

ちょうど山手線のほんとのオーラス(大崎行最終)が、

間に合うか間に合わないかギリギリのタイミングだったので、

日暮里駅までひたすら猛ダッシュ。坂道ダッシュで死にかけたけど、

出発の2分前にギリギリ間に合った!!

 

この後、まるで未だに勢力を保ったまま

縦横無尽に暴れ狂うハギビスの真っ只中に放り込まれたような渋谷の街で、

全感覚祭というカオスに朝まで飲み込まれるのだけど、

この千駄木の地下のたった5人のオーディエンスの実験的ライブとの

対極性と類似性をもつ2つのカオスを

たった一晩で味わうという、なんとも特異で贅沢な夜でございました。

 

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 大友さん、いつもいつもありがとうございます!!

またどこかで!!