結び音 Vol.3 白いピアノと森のうた (林正樹/太田美帆)
土曜日。
このところ定期的に通っている
3回目の「結び音」の2日目、
大好きなピアニストの林正樹さんのコンサートへ長女と。
駅へ着くと、ちょうどこの日、
待合所に設置された黒いピアノがお出迎え。
こちらは最近よく耳にする
誰もが好きに演奏してよい駅ピアノ・空港ピアノ。
娘が来週の演奏会で弾く『花は咲く』を弾くと、みなから拍手。
なんか照れ臭そうでしたが、うれしそう。
そして受付を済ませて、
会場である駅舎カフェ「ハテノミドリ」さんへ入ると、
カウンターの一角に、
2回目の「結び音」の時にお渡しした絵が!
ありがたいことに、毎日飾ってくださっているそうです。
自分の作品(作品ともいえないかもだけど)が、
自分の手を離れて、どこか誰かの暮らしの中で
ひとりでに息づいているというのは、
何だかとてもうれしいことです。
しかも思い入れのある場所にそれがある。
ありがたや、ありがたや。
時間となって、NPO KYOBATEの代表の萩原さんと、
音楽監督の太田美帆さんが登壇し、京終について少しお話。
そののちに林さんが颯爽と登場。
寄贈された白いピアノに向かい、軽やかに弾き始めます。
ジャズピアノをベースとしながら、
実に様々なジャンルを横断して活躍されている
林さんの指先からは、まるで魔法のような音楽が流れ、
窓の外は、5月の陽気とは程遠い暑さなのですが、
それを感じさせない涼やかで軽やかな音色が心地よく。
曲の合間に色々なお話をされるのですが、
作曲のアプローチがとても面白くて、
例えば、『ソたち』という曲は、
あいうえおを全部曲にしていくという50音シリーズの一曲で、
曲の構成音の実に80%がソの音でできている曲。
あるいは黄金比や大和比といった
”数”を鍵盤に置き換えて曲を作ったり、
姪っ子が生まれたときに、
その子の名前をメロディーに置き換え、
さらに清く正しくという願いを込めて、
白鍵縛りで作曲をしたり、
21拍子(5/5/5/3/3)の曲があったり、
遊び心溢れる音が自由に飛び跳ねて、実に楽しい。
そして親しみのあるエレガントさを纏った弾き姿も
また素晴らしかった。
途中で、美帆さんも参加していくつか曲を披露。
20代に作ったという『犬の散歩は忘れないあなたへ』は、
当時不仲だった父親のことを曲にしたものだそうで、
歌っている途中に、珍しく美帆さん、
感極まって泣いてしまって、
思わずこちらももらい泣きしてしまいそうに。
そういうこらえきれない思いが溢れる曲ってあります。
それから去年丹波篠山のrizmで
初めて聴かせてもらった時には、
まだタイトルがついていなかった
『day』という未発表曲も披露。
この歌がとても素晴らしくて早く音源にしてほしい!
優しい音楽が流れ、
後ろに鮮やかなブルーの電車が行き交い、
大切な場所に大切な人が集う。
とても心地の良い、日曜日の昼下がりでした。
終演後、美帆お姉さんにご挨拶。
長女も久々の再会に嬉しそうにお手紙を渡しておりました。
林さんにも素晴らしい演奏でしたとお伝え。
やっぱり鍵盤を弾ける人っていいなあ。
京終を離れて、歩いてならまちを抜けて、
奈良公園を少しだけおさんぽ。
奈良には奈良じかんが悠々と流れていて、
やっぱり好きだなあ。