記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

恒例 初日の出ハイク 2020

とりあえず去年のことは後にして、

年越しの事と初日の出ハイクについて。

 

まずは大みそか

晩ごはんは奥さんのリクエストで細巻きをこさえて、

年越しそばと一緒に。

今年はザッピングなしでフルで紅白歌合戦

ラストのMISIAの歌声に大感動してしまいました。

 

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それから毎年のように除夜の鐘を突きに。

学校や保育園の皆さんとその場で談笑しているうちに、

年越しです。

 

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帰宅後すぐに仮眠。

毎年は終夜運転をしているのだが、

今年はコロナの影響で取りやめになったので、

初発5時しか足がない。

例年初日の出は7時を少し過ぎたくらいなので、

ふもとからどうにか急げばきっと間に合いそう。

(ただまだ暗いうち、街の明かりがついている

マジックアワーには間に合わない)

 

短い仮眠から起きて支度をして、梅田駅へ。

毎年ならこんな早朝や真夜中でも

たくさんの若者がたむろしているのだが、

さすがに今年は茶屋町も人っ子一人いない。

 

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阪急芦屋川駅に到着したのが5:30。

こちらは逆にご来光目当てのハイカーが意外といて

そこそこ混雑。

渋滞につかまってしまうと間に合わなくなるので、

ぐずぐずせずに出発。

速いペースで進むのだが、

どうも年末から調子が悪く(といってもコロナではなく不整脈)、

寒さに中てられて、無理できない。

 

高座の滝からいよいよ登山道へ。

ロックガーデン主稜線はもう勝手知ったる道だが、

こんなところでも滑落でなくなる方もいるので油断禁物。

ヘッデンに手持ちの強力ライトの2本使って。

それなりにペースを維持しながら進むが、

息が上がるのが早く、ひどく疲れる…

やはりコロナ自粛の1年で随分体力が落ちてしまったなあ。

1つ目の鉄塔の所でたまらず小休止。

そこから風吹岩までの途中辺りから、

周辺に白い雪がちらちらと残っている。

風吹岩では日の出を待つ人たちがたくさんいて

待機している声がする。

 

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風吹岩はスルーしてさらに先へ進むと、

雪の量も多くなってきた。

毎年元旦に訪れるが、これだけ白いのは何年ぶりだろうか。

歩いている道もザックザク、バリバリと霜を踏む音がして、

所々滑るので注意しながら。

そうして6:45には無事いつもの場所へ到着。 

まずはカメラよりも先に、

すっかりかいてしまった汗を拭きとり、

服を着こんだり、カイロをあちらこちらに貼ったりして

防寒対策。

何よりここは開けているので、風が無遠慮に吹くのだが、

今年は台風かというような突風がやってきて、

みるみる体温を奪ってしまう。

こんなに寒いのは本当に久しぶり。

 

ここにはお一人先着されている方がいたのだが、

ここ数年、この日、この場所だけで、

いつもお会いする方でした。

あちらもこちらもご無事で何よりです。

一緒に新しい年の新しい朝を固唾を飲んで待ちます。

 

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東の空がだんだんとオレンジ色に染まっていきます。

少しだけ山間に雲がかかっているのだけど、

それを押しのけるようにして半熟卵のような朝日が

新しい朝を連れてきました。

去年も素晴らしい朝焼けでしたが、

今年も見事。

今年こそは素晴らしい1年になりますようにと静かに祈りました。

 

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しばらく自然が魅せてくれる一大ショーに見惚れ、

言葉も出ないままにしばし呆然としていましたが、

そろそろ寒さが堪えるし、

家族が起きてくる前には帰宅しないといけないので、

立ち去ります。

また来年ここでお会いしましょうと、

挨拶をして、先に失礼します。

 

いつもは芦屋川へ下るのだけど、

雪や霜の具合を考慮して、無理をせず、

今年はよりイージーな保久良さんへ下ることにしました。

 

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せっかく保久良さんの境内を過ぎるのに、

スルーするのもアレなので、初詣も済まします。

神戸のお山はどこもそうですが、

早朝登山が根付いていることもあって、

朝早くから思ったよりたくさん(密まではいかないが)の人が

詣でていました。

 

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帰宅するとちょうど家族が

起きてきたところでグッドタイミング。

お雑煮とおせちをおいしくいただきました。

 

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ということで、

改めまして今年もよろしくお願いいたします。

 

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あけましておめでとうございます!

少しだけ遅くなりましたが、

あけましておめでとうございます。

ブログはまだまだ去年の記事をいくつも抱えっぱなしで、

追いつける見込みもありませんが、

今年も気長に見守っていただければと思います。

 

2020年はまさかまさか、

思ってもみない大変な1年になりましたが、

今年こそいい年になればいいなあと思います。

(ただ実際には、個人の感想として

2020年より2021年こそ本当の正念場だと感じていますが…)

 

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ということで、今年も毎年恒例、

六甲の某所からの初日の出です。

今年は終夜運転が取りやめになったために

5:00初発の電車で大急ぎで登りましたが、

どうにかこうにかご来光に間に合いました。

今年の初日の出もとっても素晴らしいものでしたが、

何しろ前夜からの強い風が吹き抜ける中で、

ここ数年の中で一番寒かったです@@

 

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ということで、

改めて本年もよろしくお願いいたします。

みなさん、ご安全に!!

 

秘密のミッション

諸々の事情でリリースのタイミングが難しかったのだけど、 

いずれ判明することだし、これをリリースしないと、

この後の記事が書けないので。

少なくとも、コロナに関しては、

すでに1か月以上経過した先月のことなので、

無事クリアです。

 

実は先月、ある秘密のミッションのために、

長女と東京へ1泊2日遠征をしていました。

 

その秘密のミッションとは、

ここ5年、わが家の恒例行事で、年間の最大の見せ場となっていた

アンサンブルズ東京に関わることです。

今年は他に漏れず、夏の開催は中止になってしまいましたが、

その後事務局での協議によって、

アンサンブルズ東京2020はオンラインでのワークショップ開催となりました。

もちろんそちらにも我々参加します。

(ただいま鋭意動画撮影中!!)

 

それとは別で、10月に京都アヴァンギルドでのライブの際に、

大友さん(アンサンブルズ東京の主催兼芸術監督)にお会いした際に、

実は、これまで6年間の総括として、これまで主に行われてきた、

ハンドサインによって、プロアマ問わず色々な人と

即興で音楽を演奏するアンサンブルズの教則的な動画を

アーカイブとして作成するのだけど、

ぜひ親子で参加してみませんかと、直々にお誘いいただきました。

こんな時世だし、最少人数で製作をするために、

たくさんの人に声掛けできないのだけど、

プロだけで製作しても意図に沿わないので、

マチュアの代表的な感じで出てもらえるとありがたいですとのこと。

 

まさかまさかびっくり!

わざわざ我々だけにお声掛けいただいて、大変光栄なことです。

アンサンブルズ東京は我が家にとってもとても大切なイベントで、

ずっと力を注いできたし、最後に何か恩返しできることがあるならば、

喜んで馳せ参じます、と2つ返事で承諾しました。

 

とはいえ、大阪からの遠征になるので、

コロナにまつわる状況によっては、難しいかもしれないし、

安全第一、無理はしないということで、

予定日までは対策を万全にしたり、準備していました。

当日になって、体調等もばっちり問題なし、

まだ今の完全にひどい状況に陥る前のことでもあったので、

総合的に判断して参加してきました。

 

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いつもの池袋のメトロポリタン美術館に、

いつものメンバーが集結しています。

お久しぶりですとみなさんそれぞれにご挨拶すると、

みなさんチキンの親子として覚えてくださっていて、

今年も来たねとか、期待してるよと声をかけていただきます。

大友さんにもご挨拶すると、

今日もすごい格好してるねえ、

楽しみにしてますと参加を喜んでいただきました。

 

今回はこれまでのアンサンブルズ東京の集大成で、

アーカイブとして残すためのものと聞いていたので、

新たな衣装や仕掛けをこさえるのではなく、

これまで参加してきた際の衣装や小道具で参加することにしました。

1つだけ、のんとも.Mっぽく口ひげだけ新たに追加!!

演奏するのは、もちろんシャウティングチキンです。

そういえば、2018年には東京タワーの土産屋さんで売っていた

全てのシャウティングチキンが売り切れたという逸話も生まれましたね。

 

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撮影は2時間弱。これまでのおさらい的に、

大友さんによるハンドサインの解説と実演、

そのほかに、お試しで何人か指揮にチャレンジ。

娘もチャレンジしましたが、

まさかまさか特殊なハンドサインを出しまくりでビビりました。

 

そして自分もチャレンジさせてもらいましたが、簡単そうに見えて、

きちんといい音、いいリズムを出そうとすると相当難しい!!

まず何より自分自身に自信がないとできません。

少々の間違いや、思惑の違いがあっても動じず、

みんな安心して自分についてきてという、

堂々たる姿勢を見せるのが指揮者の最も大事な部分なのだなあ。

とはいえ、はじめての指揮、

それも目の前には大河ドラマや朝ドラの音楽をやっているような

プロの面々ばかりがずらりの状況では、

畏れ多いやらなんやらでビビってしまい、

グダグダな感じになってしまいました。

でも、それもまた素人の代表で参加した役割だと思えば。

 

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無事に撮影が済んだら、みんなでお片付け。

これもアンサンブルズの恒例ですね。

 

そのあと、お世話になったドラマーの芳垣さん、

いつも大風呂敷で会場を彩っていただいた

プロジェクトFUKUSHIMA!の山岸さん、

それからいつも参加者の面倒を最前線で見ていただいた

アンサンブルズ事務局の方と、

アーツカウンシル東京の方の4名の方に

似顔絵をお渡しすることができました。

 

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動画は来年の3月初旬前後辺りを目標に、

編集作業が進められるとのことでとっても楽しみです。

残念ながら、本年度で6年間のアンサンブルズ東京はラストとなりますが、

ラストイヤーに思いがけない形で参加できて、

とってもいい思い出になりました。 

「美術と音楽の9日間 rooms」at 芦屋県立美術博物館 平井真美子ライブ(ゲスト:坂本美雨)

2週間後、再び芦屋県立美術博物館へ。

今度は奥さんも含めて家族4人でやってきました。

 

今回は、ピアニストの平井真美子さんのピアノライブで、

ボーカルゲストととして坂本美雨さんが参加されるということで

ずっと楽しみにしていました。

 

平井さんは、現在放映中のドラマ『35歳の少女』や

過保護のカホコ』などTVドラマや、数々のCM曲を手掛けられている

ピアニストです。(旦那さんが森山直太朗さん)

 

一方の、美雨さん。

アンサンブルズ東京のワークショップで初めて直接お会いして、

それ以降、ライブにお邪魔するたびに、

いつも気さくにお話に応じてくだいます。

歌や音楽の素晴らしさはもちろんですが、

子育てのこと、猫のこと、本のこと、

同世代として、ライフスタイルの色々なことに共感する部分が多く、

いつも注目している存在でもあります。

 

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会場は、先日、太田美帆さんのワークショップで、

子どもたちが合唱をしたホール。

とにかくここの空間の音響がとてもいいのです。

1Fの座席もありましたが、密を避ける意味でも、

また全体をゆっくり見るためにも、

2Fに備え付けられた座席を選びました。

 

前半は、平井さんの独奏。

実に柔らかくて、穏やかなで、温かみのある音色を響かせて、

とっても心地よい。

次女はその心地よさから、思わずこっくりこっくりと眠ってしまうほど。

 

途中から、美雨さんが登場して、

おなじみの『星めぐりの歌』や、

大貫妙子さん・原田知世さんが歌った『彼と彼女のソネット』など。

やっぱり美雨さんの声はどこまでも透明無垢で、どこまでも伸びやかで、

混じりけなくダイレクトに響きます。

優しい音と声によって、色々な穢れが浄化されていくような、

そういう境地になります。

 

ほんのひととき、歌を愛でるために集った、

この小さな小さな集会は、ほっこりと温かい幸せに包まれ、

すばらしい時間を過ごすことができました。

 

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終演後、おみやげを持参していたので、

スタッフの方にお願いをしてみると、

美雨さんご本人がわざわざ出てきてくださり、

久々の再会を喜びました。

 

似顔絵もお渡し。「DIVAは恥ずいよ~」と照れてらっしゃいましたが、

もう美雨さんに一言キャッチを付けるのに、

この言葉以外は出てきませんでした。

とても喜んでくださってありがたき。

 

それから、色々なお話もしてくださり、

本番直後に長く引き留めてしまって申し訳なかったのだけど、

とても嬉しかったです。

 

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動画をあげてくださったようなので、追記します。

平井さんの優しい旋律と、美雨さんの透き通る歌声をお楽しみください。

 


平井真美子 + 坂本美雨 LIVE 『星めぐりの歌』『shining girl』

 

 

 

 

「美術と音楽の9日間 rooms」at 芦屋県立美術博物館 子ども合唱ワークショップ by 太田美帆/大塚ミク

11月初旬のこと。

本来は春先に開催予定されつつ、

コロナ禍で延期になってしまっていた

芦屋県立美術博物館のイベント「美術と音楽の9日間 rooms」が、

開催されることになりました。

期間中、さまざまに魅力的なプログラムが行われるのですが、

そのうち2つお邪魔しました。

まずは、音楽家・太田美帆さんとコピーライターの大塚ミクさんによる

子ども合唱ワークショップについて。

 

美帆さんとは、

2017年のアンサンブルズ東京でのワークショップ参加以来、

篠山rizm、京終駅など、

何度もライブやワークショップにお邪魔しています。

 

特に関西に来られているときは、

できるだけ駆けつけるようにしているのですが、

このコロナ禍で、いつもお会いしている方とも

今度いつお会いできるかわからない時代になってしまったので、

なおさらお会いできるときはお会いできるうちにと、

馳せ参じました。

 

今回は、コピーライターの大塚ミクさんと一緒に作られた

『このほしのたからもの』という今日を題材に、

参加する子どもたちで合掌するワークショップ。

このワークショップは去年、表参道スパイラルで行われた際に、

長女が一度参加しています。

(ご興味あれば下記リンクよりその際の記事を)

 

 

arkibito.hatenablog.com

 

今回は、いよいよ次女も参加することにしました。

長女はこの類のイベント参加は、

小さい頃からよく出ていたのですが

次女もようやくその年ごろなり、

長女がこれまでそういったイベントやワークショップで

たくさん経験してきた感動や面白さ、

またそこから学べるたくさんのことを、

同じように経験させてあげたいなあということで満を持して。

次女も、お歌もダンスも大好きで、

運動会や学芸会でもとっても張り切るタイプなので、

お姉ちゃんと一緒にやれることをとても喜んでいるようです。

 

当日は、残念ながら奥さんはお仕事だったので、

娘たちと3人で 会場に向かいます。

阪神芦屋川駅からバスに乗り、浜芦屋方面へ。

モンスターマンション群として有名な新浜町の少し手前にある

芦屋市立美術博物館へやってきました。

 

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この日はとってもお天気が良くて、受付時間までの間に、

美術館のお庭にある石のオブジェに乗っかって

楽しそうに子どもたちは遊びました。

 

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そうして、子ども合唱ワークショップのはじまり。

まずは教室で自己紹介をして、それからどんな歌か紹介があり、

それからみんなで歌を練習して、

最後にホールでの発表という流れ。

 

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実際はこの『このほしのたからもの』は

フルだと13分ほどになるのですが、

ワークショップごとに、参加する人数、年齢構成に応じて、

語りの部分をショートカットしたりして、

当日2時間で本番に臨めるレベルに調整して行われます。

今回は13人ほどで、比較的小さな子どもたちが多いということで、

5分ほどの合唱&語り(大きい子だけ)になりました。

 

教室で、一緒に歌う部分のパートを練習し、

それから大きい子は1人1人セリフを振り分けられて、練習。

そして本番が行われるホールへ移動して、

美帆さんの伴奏で合唱の練習。

ほんの1,2時間ですが、少しずつ形になってきました。

 

長女はこういうイベントに何度も出ているので心配ないのですが、

ほぼ初めての次女は少し緊張気味でしたが、

しっかりとお話を聞いて、 周りにも目を配りながら、

そして音楽のリズムを体で取りながら、

やっているようです。

 

 

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そして15時となり、いよいよ本番。

美帆さんの伴奏と、大塚さん指揮で、

子どもたち見事に歌い切りました。

終演後、次女ちゃんから、

ちゃんと歌えたよと誇らしげに教えてくれました。

 

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www.youtube.com

 

終演後、美帆さんと久々にお話し。

久々にあった長女がぐーんと背が伸びて大人になったので

びっくりされていました。

それからずっと渡せずにいた似顔絵もお渡しできました。

 

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そのあと、公園を取材に来ていた新聞記者さんから、

軽くインタビューを受けたので、

どこかで記事になってるかも、なってないかも。 

 

京都西山ロストトレイル(上桂~松尾山~嵐山~烏ヶ岳~保津峡)

京都一周トレイルの東山コースを歩いた翌週、

午後から、今度は西山コースの探索に。

嵐山から高雄までの本コースは歩いたことがあり、

北山コースも学生時代に歩いたことがあるので、

残り未踏の部分である上桂から嵐山の部分を下見です。

 

途中でトレイルを外れて嵐山・鳥ヶ岳を経て、

お月見で有名な大悲閣へ下山するプランを立てたのだけど、

まさかまさか大きく道を誤ってしまったために、

本来であれば、トレイルが通じていない保津峡に向かってしまい、

気付いた時には道をロスト。

日没が迫る中、明確な自分の居場所がわからないまま、

山をさまよい、決死のリカバリーでどうにか保津峡橋へ脱出、

事なきを得ました。

あやうく遭難してしまうところで、大反省です。

 

今回はその反省を踏まえ、ロストの原因の検証もします。

結論としてはいくら里山・低山とはいえ、

(というよりむしろそういった山ほど)

油断は絶対禁物ということです。

 

参考記録:3時間20分>

14:15上桂駅⇒14:30西芳寺苔寺)⇒

14:53西山No.44⇒15:18松尾山15:20⇒

15:40嵐山⇒15:53鳥ヶ岳⇒17:00松尾ロータリー⇒

17:20保津峡橋⇒17:35JR保津峡駅

 

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この日は野暮用などがあって、時間ができたのが午後。

いつもの六甲に行こうか迷ったのだけど、

先日の京都トレイルがなかなかよかったし、

残り未踏の西山ルートも短い距離だし、

さくっと登ってさくっと下山しようと、京都へ。

上桂駅に到着が14:15。

2時間もあれば十分嵐山まで行けるだろう。

 

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上桂駅から西へ。

山田口の交差点の所のコンビニで補給して、さらに西へ。

地蔵院の所で右折して、竹林を左に見ながら、西芳寺へ。

 

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お寺をさらに進んでいくと、

小さな流れに沿って道が続いているので先へ。

途中でトレイルの案内板があり、

竹林の方だと思ってそこへ突っ込んでいきましたが、

本当は京都一周トレイルの入り口はもっと先でした。

つまり、この日は、最初の最初から間違いだらけだったのでした。

まあ、この案内板があって、横に竹林へ通じる道があれば、

行ってしまいますよね…

 

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何の迷いもなく竹林へと進んでいきます。

道は明瞭で、ずんずん歩きます。

しかも前方からハイカーさんが来てすれ違ったので、

まさかこの道が間違っているとも思わず。

ところが、道は徐々に荒れてきました。

 

京都一周トレイルはたくさんのハイカーが往来するし、

軽装のトレイルランナーも利用するはずで、

その割に、ちょっと道が悪すぎるなあとは思いましたが、

道は続いているし、行けるところまで行ってみます。

 

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竹林を過ぎると、小さな谷筋へ出て、

そこから急斜面が迎えています。

ただ、トレイルらしきトレイルがなく、

どこから上がればよいかはっきりはわからない。

よくよく見渡してみると、

ポイントポイントにピンクテープが見えるので、

それを手掛かりに登っていきます。

これはもうメインルートではなく、

バリエーションルートだなと理解しましたが、

戻るのもアレだし、むしろ面白そうなので、進みます。

 

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ピンクテープを目印に、道なき斜面をよじ登ります。

枯葉で滑るので、前方のテープを目視しながら、

登りやすい場所を選んでいきます。

そのうち、うっすらと道らしきものがあり、そこを登ると、

小さな広場のようなところに出ました。

ただ、この一帯は明らかに久しく人が足を踏み入れていない様子。

たぶん、ここはかつてのメインルートだったが、

別に、もっと歩きやすい新たなルート(京都一周トレイル)が

設けられて、人が来なくなったエリアなのかもしれない。

全く未開の地というわけでもないが、知らない山域だし、

正規ルートまでは油断できない。

 

狭い尾根上ならば、前へ進むか、後ろへ戻るか

選択肢は限られるのだが、

こういうただっ広く、どこへでも通じていそうと思える場所が

一番道迷いに陥りやすいところ。

慎重に見極めて、茂みの間にうっすらとあるトレイルを見つけて

そちらへ進みます。

 

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しばらく進んでいくと

no.44西山のトレイルの案内板の所に出ました。

これで無事に正規ルートに復帰です。

 

今思えば、この道間違いで、

今日は無理しないでおこうと思えばよかったのですが、

無事に復帰して、

逆にいいトレーニングになったと自信を深めてしまったのが

大間違いでした。

 

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トレイルに出ると道は明瞭、かつ歩きやすい道。

時々、右手が開けるところがあり、

京都の街並みを見下ろす。

先日とは真逆の方向からの景色。

 

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緩やかにアップダウンはあるが、

とても歩きやすい穏やかな道が続きます。

一度大きく下ってから、広々とした場所を抜け、

そこから登り直しをしたところが、

松尾山への分岐ポイント。

展望ルートと、尾根ルートがあった後者をチョイス。

 

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ほどなくして松尾山(276m)の山頂に到着。

広場の北側は開けていて、

嵯峨野の街並みが見えます。

 

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京都一周トレイルはそのまま嵐山へと下るだけで、

1時間ちょっとの山歩きでは物足りない。

それならば、ここから西へ伸びるトレイルを進んで

行ったことがない嵐山・鳥ヶ岳へ行ってみることにする。

 

ただこのトレイルは保津峡ヘはつながっておらず、

そちらへは抜けられないということだった。

ならば、このトレイルは嵐山の最奥にある

大悲閣に下りることになるのだろうと勝手に思ってしまった。

(実はトレイルは途中で行き止まりになっていて、

大悲閣へは途中で分岐しないといけなかったが知らなかった)

 

細い尾根の北側につけられた比較的整備された

トレイルを西へ西へと進みます。

眺望が効く場所もちらほらあり、

渡月橋嵐山モンキーパーク、嵯峨野の集落を眼下に、

心地よい山歩き。

 

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トレイルが尾根の右側、左側と移りながら続きますが、

極めて穏やかな道です。

メインルートから外れるためか、時間が遅いからか、

全然すれ違うハイカーはいません。

明瞭なトレイルのほかにも、

明らかに人が入っている脇道がついていて、

そちらの方が眺望がよさそうなので、そちらへ突っ込みます。

上がってみると、小さなピークが剥げていて、

そこから嵯峨野方面、

翻って、西山の街並みが遠くに見えます。

このピークがてっきり嵐山かとおもたっら、

名もなき小さなピークで、

そのまま進んでいくとじきに元のトレイルに戻ります。

 

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その先もトレイルは続いていて整備されて歩きやすいが、

こちらでも所々台風の被害にあった

倒木が道を横断していたりします。

 

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しばらく進んでいくと、再び本トレイルと枝分かれして、

小さな道がついている小ピークに差し掛かります。

そこには小さな小さな木の看板がつけられてあり、

どうもこの小さな枝道を上がれば嵐山のようです。

そこそこ急な登りを駆けあがると、なだらかな場所に出る。

そこを道なりにずいーっと進んでいくと、

広々とした場所に出ます。

おもむろに周辺を見渡すと、木の1つに「嵐山」の看板を発見。

ここはかの有名な嵐山(382m)です。

 

全国有数の観光地で、

全国的な知名度を誇る地名でもある「嵐山」ですが、

じゃあどんな山と聞かれても、

実際に登ったことのある人はほとんどいないかもしれません。

「嵐山」の山頂は、こんな風に、何の眺望もなく、

枯れた木々が打ち捨てられた物悲しい場所でした。

しかし、だからといって「嵐山」は、

つまらない山かというとそうではありません。

例えば、天龍寺などの下界から仰ぎ見た時に、

美しい風景を構成する借景として見事な存在感を発揮する

「見る」山なのです。

(しかもちゃんと見られるのを意識して、

木々を刈り取りするなど山は整備されている)

 

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さて嵐山のピークを踏んで、さらに先へ。

もう一つ、この山域では一番高い

烏ヶ岳というピークへ向かいます。

しばらく尾根の北側をなぞるようにして歩いて行くと、

激しい倒木の後があり、そこに看板がつけられている。

どうも左手の急な斜面を登って行けば山頂で、

右手の崩れかかっているトレイルは巻き道の様。

もちろん左に進みます。

 

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分岐直後は虎ロープがあり、

急で脆い斜面をどうにかよじ登ると、

土堀のような溝をスロープにして登っていきます。

しばらくしてなだらかな一帯に出て、

そこが烏ヶ岳(398m)でした。

ここも眺望はあまりよくありません。

 

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ピークを過ぎて、ピンクテープを頼りに、

先ほどの巻き道ルートとの合流地点を目指しますが、

トレイルは不明瞭で、しかも、それなりに開けているので、

どちらへも行けそうな感じ見えるので、

しっかり見極めて進む。

途中で直角に折れるようにして進む箇所があったので、

道を誤って直進してしまうと、

道迷いの危険があるように感じた。

とにかくピンクテープを見失わないように。

ところどころ、痛々しい倒木の荒場なども通過し、

無事に合流点に到達。

 

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合流点には案内板があり、

今まで来た道のざっくりとした相関図があり、

現在地を確認。

トレイルはさらに西へ進んでいるが、

そちらには「ロータリー」とある。

この山域は初めてで、よく知らず、

きっと大悲閣のある千光寺がふもと道の終点だから

その前に広場があって、それをそう呼んでいるのだろうと、

勝手に想像してしまった。

(実際にはこの日最初に歩いていた

西芳寺の道の林道の終着点の転回場のことを

松尾ロータリーというのだった)

 

なにせ、このトレイルは保津峡には通じていないはずで、

しかし実際、明瞭に先へ進んでいて、

ならばこの道の終点はどこかを想像すれば、

大悲閣へ降りるしか先に何もないはずだ、と決めつけて、

西へ続くトレイルへ迷うことなく進んでしまいました。

まさかトレイルが途中どこへも向かわず行き止まりとは…

 

実際は、この分岐で、巻き道の方へ少し戻ると、

大悲閣へと下りる道(そちらはそちらでほぼ道なき道らしい)の

分岐があるポイントだったのだが、それを知らなかったうえに、

この案内板にもその道について、

あるいは大悲閣/千光寺について一切の表記がなかったので、

中途半端な知識と、思い込みで、やみくもに進んでしまった。

 

またこの時点ですでに時刻は16時になろうとしていて、

1時間もすれば日が暮れて真っ暗になってしまう。

大悲閣はそんなに遠くはないから、あとせいぜい30分だろうし、

下りてしまえば安全だからという油断もあったが、

同時に、はじめての山域で、万一日没は避けたいという焦りもあり、

よくよく立ち止まって考えずに、

とにかく先へと急ぐことばかり考えて、

足早に分岐を先へ進んでしまったこともよくなかった。

 

ここからいよいよプチ遭難は始まってしまう。

 

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実は大きな選択ミスをしてしまったということに

全く気付かないまま、分岐を西へ取り、

整備されたトレイルをずんずんと進んでいきます。

 

手元の簡易地図では、烏ヶ岳から大悲閣までは、

それほど距離がないはずなのだが、

快適な道だったこともあり、サクサクッと先へ進んでしまう。

どうも、思ったより距離があるなあとは感じてはいたのですが、

実は、この日は最初から距離感がおかしく、

というよりも初めての山域で自分の中での尺が整ってなかったのか、

西芳寺から松尾山も、はたまた松尾山から嵐山も、

思ってたよりも距離があったなあと感じていたので、

今回も同じように、

ちょっと距離があるなあというくらいで正解なのだろうと、

違和感がありつつも自分の中でそれを正当化してしまっていました。

 

いずれにせよ、まだ所々で開けたところからは

嵐山や嵯峨野が見えているので、こんなもんかと深く考えず、

それよりも最初の見立てより距離があるってことは、

十分余裕だと思っていた日没までの時間が

あまりないのだということになり、

余計に急ぐことを優先してしまいました。

 

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おかしいな、もうそろそろ下ってもよいはずなのにと思いつつ、

明瞭なトレイルがずっと続き、

シカやイノシシ除けのネットなど、

明らかに人が手入れしているものがあるので、進んでいきます。

(これが不明瞭な道ならすぐ引き返したのだけど…)

そこそこアップダウンが始まって、

時間もないのでペースを上げてこなしていきます。

 

そろそろ黄金色の木漏れ日が木々の間に降り注ぐころになり、

また前方の合間からうっすらと愛宕山が正面に見え隠れ。

んん?大悲閣って、こんな奥まったところだったっけ?

さすがにちょっと来過ぎたんじゃないか?

でも、途中で分岐を見落としたり、別の道を来たこともないし、

どうなってる????

と、クエスチョンがどんどん膨らんできました。

迷ったら、引き返す。これが山での鉄則なのですが、

今から松尾山方面へ引き返すとなると、

ペースを上げてきたせいで随分進みすぎてしまったために、

完全に日没に間に合わなくなってしまいます。

それなら、これだけ明瞭な道ならどこかには出るだろうと

さらに突っ込んでしまいました。

典型的な道迷い、遭難の心理状況に陥っていました。

 

そのうちトレイルはなだらかな森の中の広場に躍り出ますが、

その先へ続く明瞭な道はありませんでした。

途方に暮れている場合ではないので、周辺を見渡すと、

右手に急速に下りていく、ピンクテープの連なりを発見。

右手に下りていくのだから方角的には正しいし、

やっぱり大悲閣はこんな奥まったところだったんだなあと、

この時点でもまだロストしている自覚がありませんでした。

 

道は不明瞭だけど、等間隔でピンクテープが下っている、

方角的にも正しい、ということで、

迷いなく急な斜面を下っていきます。

さっきまでのきちんと整備されたトレイルから様子が一変、

トレイルというにはなかなかの道なき道だし、

いくら裏手とはいえお寺に続く道にしては、

かなり野性味があり過ぎるなあと、

下っている途中で一気に不安が増してきました。

 

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それでもピンクテープは続いているし、

一体の木々を選定して伐採し、

整理されている様子もあるので、

そのままズンドコ進んでいくと、

いよいよ、周辺の木々が伸び放題荒れ放題のブッシュに入っていく。

これはもう明らかにおかしいが、まだテープが続いているので、

かき分けて進むと、おもむろに目の前が開けたかと思うと、

がさごそっと、風景そのものが動いたかのようにざわついた。

バサッと出ると、目の前に多分20頭くらい、

小さいのも含めたイノシシの群れ。

思わずぎょっと体が固まる。

一瞬の間があって、イノシシたちが一目散に逃げだして散っていった。

自分もひとまずそちらとは反対側に早足で退散した。

こちらに向かってくるのがいなかったから助かったけど、

多勢に無勢、本当に血の気が引きました。

あれだけのイノシシが群れて生業にしているということは、

ここはもうほとんど人間は日常的に活動している

範疇を脱しているということ。

 

気付けば、深い森の中の、

木々を伐採する末端の現場にはまり込んでしまった。

ピンクテープは登山者を誘導するものではなく、

地主か山を管理する人たちが作業場へと通じる目印だったのだ。

これで、この先へ通じる道がないのだとはっきり自覚しました。

切り出された木材がきちんと横倒しに並んでいるところから、

とりあえず周辺を確認して回って、

その先テープが続いていないかどうか、必死で確認しましたが、

この広場から先、下へ通じる手掛かりは

一切ありませんでした。

 

ここで一旦落ち着いて、まずは自分の現在地がどこなのかを

手持ちの簡易地図と、

歩いてきた道のりを頭で再び描きながら確かめます。

烏ヶ岳までは間違いなく正しい道だったが、

どこかしらで大悲閣への降り口を見失い、

おそらく随分西の方へ来てしまった。

保津峡には通じていないというのが間違いないとして、

さっき、そういえば夕暮れの陽が西から指して、

正面の木々の間に愛宕山が見えていた。

おまけにそれほど遠くない位置、それもで正面から、

バイクや車のエンジン音が聞こえているので、

きっとあれは六丁峠のある県道50号だろう。

もろもろを考慮すると、トロッコ保津峡駅の手前、

おそらく保津峡清滝川とぶつかるところの対岸、

峡谷が深く湾曲した一帯。

結論から言えば、その現在地の推測は全く正しかったのだが、

そうすると大変困ったことになった。

なぜなら、この推測が正しいとすれば、

この一帯でどこへ下っても、保津峡の一番険しい、

峡谷の部分に出ることになるからだ。

つまり、下手に降り口を間違えて、下ってしまうと、

切り立った断崖絶壁に躍り出るだけで、

行き場を失ってしまう。

そうなって暗くなれば、

もう身動きができないどころか、

滑落や事故の危険性が恐ろしく高くなる。

 

これから慎重に1つ1つの判断、決断をシビアにこなし、

この後の行動を見極めないといけないが、

無情にも日没がもうすぐそこまで迫っていた。

そうやって状況をすべて頭の中で整理しきったその途端に

全身に嫌な寒気がして、

ここで初めて、自分の置かれている状況が

いかに緊迫しているものかを自覚し、受け入れた。

 

ひとまずは冷静になって考える。

ここからは余計な希望的観測に基づいて行動はしてはいけない。

つまり、ここからは下れそうとか、ここは行けそうというので

安易に進んではいけない。

なので、まずはこの不明瞭な一帯からは即時撤退し、

少なくとも明瞭につけられたトレイルの末端までは戻る必要がある。

ひとまずはたどってきたテープを頼りに引き返します。

(道が怪しくなってからは、進みながらも、何度も振り返って

いざっ撤退となった場合に、道を間違えないように風景を目に入れていた)

 

ただそのためには、さっきイノシシの群れと鉢合わせした場所を

再び通過しないといけないが、

迂回してピンクテープを見失ってしまう方が今はリスクが高い。

あの一帯は少し窪んだ広場になっていたので、広場の中央を避けて、

ヘリを回り込むようにして、次のテープのある登り口まで進む。

 

その最中でも、森全体が何やら大きな獣のように

呼吸をしているように感じ、

こちらからは見えないが、近くから遠くからこちらをじっと見ている

そんな視線を感じるし、パキパキと枝葉を踏む自分の足音に交じって、

キーンとか、グフグフという鳴き声が森を行き交う。

彼らはそうやって、こちらの行動をちゃんと観察して、

伝え合って、警戒している。

それがひしひしと肌に伝わってくるが、

こちらはもうそれに対して、何の手段も持っておらず、

ただ彼らの場所をこれ以上荒らす前に、

できるだけ早く退散するしかない。

 

かなりの急こう配をどうにか上り詰めて、

トレイルの終点までどうにかこうにか戻ってきました。

一応、最悪の事態はこれで回避できました。

しかし、ここからトレイルをそのまま引き返すとなると、

嵐山or西芳寺まで戻るのに2時間はかかる。

日没まではもってあと30分。

どうしたものかと悩みながらトレイルを歩いていると、

右手のブッシュの少し下あたりに、林道のようなものが見える。

あれは?と思って、

ブッシュをかき分け、段差を飛び降りると、

車1台が通れるほどの明瞭なダートでした。

これはひょっとしてと思って、少し進んでいくと、

案内板に記されていた(松尾)ロータリーという、

林道の終着点でした。時刻は17:00。

実に1時間近くさまよっていたことになります。

 

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日没後、暗い中、たどってきたトレイルを戻るよりも

こちらの明瞭かつ幅広の林道を西芳寺へ下る方が断然安全だし、

道を見誤ることもない。これでひとまずは一安心しました。

ただこの道は沢に沿ってつけられているために、クネクネと、

西芳寺へは距離がかなりあり、時間がかかります。

 

どのみち真っ暗な中(ヘッデンは持ってきているし)、

林道を2時間歩いて戻るならば、

ここからほんの直下にあるトロッコ保津峡駅

降りることができないか、残りの30分に賭けて、

だめならだめで、このロータリーに引き返してから、

完全に明瞭なこの林道をバックアップルートとして、戻ればどうか。

もちろん、やみくもの斜面を降りるのではなく、

それなりのトレイルがあればの話だ。

 

念のため、ロータリーを一周してみると、小さな小屋の脇に、

下へ続くトレイルを発見。

万一、15分進んで、このトレイルが途切れたなら、

残り15分、日没までにここに戻ってくる、

そうしてこの林道を引き返す。

万一、それも難しくなってしまえば、

この小さな小屋でどうにか一晩はビバークできる。

15分だけ進む約束と、2つのバックアップの手段を得て、

そのトレイルに賭けてみることにしました。

 

ロータリーからのトレイルは、

左にあるフェンスとともに激下っている。

それなりに荒れてはいるが、全く人が入っていないわけでもなく、

ところどころには目印のテープもある。

かなりの急こう配をまっすぐに下っていくと、

徐々に道はジグザグと斜面を下る道となる。

かなりトレイルは狭く心細くなっていくが、

トレイルとわかる程度にはっきりしている。

一か所、急な所に虎ロープがあり、滑らないように慎重に下る。

これはもし目論見が外れた場合、

登り返すのは厳しいかもしれない…

と思い始めた時に、下の方で、エンジン音がする。

ロッコのではなさそうだが、バイクか車かの音が近い。

もう少しだけ進んでみようと、

急勾配のわずかに張り付いたトレイルを進むと、

木々の間に線路が見えた!!

 

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線路が見えてからも、まだまだそこからさらに

ずんずん下っていかないといけない。

はやる気を持ちを抑えて慎重に下ってようやく線路脇にでました。

ただ、駅がこの右にあるのか左にあるのかわからない。

ひとまずは続いているトレイルに沿って右へ進む。

すると、トンネルの前に出てきましたが、

トレイルはそこで線路の下をくぐる排水路となって、

向こう側の保津峡へと落ちている。

当然線路内には入れないし、

んんん、ここからどうすればよいのだ…

 

よくよく周囲を観察すると、トンネルと反対側、

歩いてきた反対方向500mくらい先に、駅のホームが見える。

あそこにさえたどり着けば、いよいよピンチを脱する!!

そのために一度線路をくぐろうと排水路を渡ろうとしましたが、

足元が滑りやすく、危うく川へ落ちそうになったので、

慌てて引き返す。

一度トレイルを引き返して、

ブッシュを通ってホームへ行けないか試すが、

あまりにブッシュがひどく先へ進めない。

あと、たった500mなのに…目の前に見えているのに…

今更、山に登り返すなんてできないし…

しかしここで途方に暮れている場合ではない。

 

もう一度排水路に戻り、くぐったすぐのところで

どうにか線路脇へとよじ登る。

線路には入らずに、線路脇の植え込みのところを伝って、

どうにかこうにか駅のホームにたどり着いた時には、

もうほとんど日が暮れかけていました。

一か八かの賭けは、タイムアップぎりぎりで成功しました。

時刻は17:20。

 

ホームにたどり着いて、

ここまでのあまりにシビアな緊張感が解け、

ヘナヘナと力が抜けて思わずへたり込みました。

自慢にはなりませんが、これまでも、

山で怖い思いをしたり、

シビアな状況に置かれたことはありますが、

久々に、本当にまずい状況に陥って、

やはりいつでも、どんな山でも難しく、

油断は禁物だと改めて思い知らされました。

幸いにして、遭難や事故など最悪の状況は自力で回避でき、

迷惑をかけることも避けられて、生還できましたが、

これはもう大大大反省です。

 

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ロッコは残念ながらもうこの時間は運行終了しているので、

これでは町へは戻れない。

なので、もう少し歩いた先にあるJRの駅まで向かうことにします。

少し休憩して、トロッコ駅から対岸にかかる

保津峡橋を渡る時分には、

もうすっかり日は暮れて、暗くなっていました。

本当に時間ギリギリでした。

県道50号に出て、左に折れ、歩きますが、

意外と往来があります。

余りに暗いので、こちらが歩いているのに気づかれないと困るので

短いながらもヘッデンをつけて歩きます。

 

短いトンネルを抜けた先、少し道が細くなっているところで、

後方から車が来たので、道を譲ろうと、

ガードレールの際まで寄ったとたん、すとんと体が落ちた。

とっさに上半身で踏ん手を突きました。

真っ暗で見えなかったのですが、ガードレールの内側まで、

道が軽く崩落?削れていたようで、

その穴に危うく落ちるところでした。

さすが崖下までまっしぐらという程のものではなかったにせよ、

道の少し下まで落ちてもおかしくありませんでした。

どうにか上半身で踏んばれたのと、

後ろから来た車の運転手の方が飛び出してきて、

引き揚げてくれたので、事なきを得ました。

せっかく死地から生還したところで、

まさか文字通り落とし穴にはまるとは…

とっさに手を突き、上半身に強い衝撃が走ったので、

五十肩と診断されたばかりの左肩がズキズキと痛みます。

今日は最初から終わりまで本当にチグハグでした… 

 

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思わぬハプニングがありましたが、

15分ほどで、ようやくJR保津峡駅到着しました。

ホームは峡谷の真上にあり、ホーム幅が狭いのだけど、

通過する列車の風圧のすごいことすごいこと。

 

そのホームからは、ちょうど正面に、

下ってきた山のシルエットが、

暗闇に浮かび上がっているのが見えます。

こう見ると、やはり山は峡谷に向かって急激に下っています。

もうあと少しでも遅く、今もまだあそこを下ってたとしたら、

ゾッとします。

 

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20分ほどで列車がやってきて乗り込み、

そのまま京都駅へ。

すっかりお腹が減ってしまったので、

構内の立ち食いそば屋さんへ。

温かいお出汁でほっと一息。

大阪までの新快速では、あまりに疲労したからか、

珍しく眠ってしまい、危うく乗り過ごすところでした。 

 

ということで、まさかの遭難一歩手前の山歩きとなりました。

ちょうど、この向かいにある愛宕山は遭難のメッカでもありますが

なぜこんな京都の市街地からすぐそばの、1000mに満たない山で、

これほどまでに遭難が相次ぐのかと、前々から思っていましたが、

それを身でもって実感することとなりました。

 

街や里から近いという、潜在的な安心感が油断につながり、

ある程度ルートが決まっている高い山とは異なり、

正規、非正規問わず、大小さまざまなトレイルが

あちらこちらに張り巡らされている低山ほど、

その選択肢の多さゆえに、迷子になってしまうのです。

今回はそれに加えて、自分自身の慢心と、

中途半端な下調べで得た情報だけを頼りにして、

自分の中身芽生えた不安やおかしいぞという感覚を、

根拠のない自身で打ち消して、

迷ったら戻るの大原則を疎かにしてしまったこと、

これが最大の誤りでした。

大反省です。

くるり『益荒男さん』

youtubeではじゃんじゃか弾き語りをアップしているのだけど

ブログの方でも久々に音楽ネタを。

 

今夏に作品展にお邪魔したイラストレーターおおえさきさんが、

なんと、くるりの新曲『益荒男さん』のMVを担当されてます。

おおえさん、くるり、大好きな2組がコラボレーションなんて、

嬉しすぎます。

 

奇妙奇天烈のんきなくるり節に、”いけず”の効いた風刺の言葉。

令和の時代に益荒男さんがゆく。

 

歌:くるり、作詞・作曲:岸田繁、MV:おおえさき

 


くるり - 益荒男さん

 

リリース翌日に早速耳コピしました。

せっかくなので、おおえさんに以前描いてもらった

似顔絵をバックに。

 


『益荒男さん』 by くるり 弾き語り練習