記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

35mmフィルム上映『銀河鉄道の夜』at 塚口サンサン劇場

2020年最初の映画館での鑑賞は、

今巷で話題の塚口サンサン劇場で

1985年の作品『銀河鉄道の夜』の35mm上映でした。

ちょうどこの後、本作の音楽を担当した細野さんの

『No SMOKING』が上映される記念で1週間限定での上映。

長女と一緒に観てきました。

 

この映画は幼い自分にとっては衝撃的な作品で、

その後の自分の人生に大きく影響を及ぼした大切な大切な作品。

 

家にもずっとVHS⇒DVDとソフトはあって、

折に触れてずっと見てきた作品ですが、

それがまさかスクリーンで観れるなんて!!

本当にステキなプレゼントでした。

 

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原作はもちろん、宮沢賢治ですが、

もちろんその当時は映像技術なんていうのは全然ないので、

アニメーション化にあたっては、

新たに創造(想像)力が試されたのだろうと思いますが、

それが見事に花開いています。

ジブリをはじめとして、日本のアニメーションは素晴らしいですが、

何にもまして本作こそがその最高峰だと思っています。

 

例えば一番最初のシーン、

つまり、真っ黒なスクリーンの真ん中にぼうっと浮かび上がる白い丸、

そしてクレジット終わりに表れる刻印、

漆黒の銀河の中を泳ぐ玉のようなもの。

子どもの頃はこれが本当に怖くて、

ドキドキしながら観ていたことを思い出します。

そして、ゆらゆらと古い大時計の振り子のようにして

ジョバンニたちの学校へとフォーカスしていくキャメラワーク。

宮沢賢治の文章からこの映像を引き出すのだからすごい。

 

そしてますむらさんの描く、

人間味あふれ、しなやかな曲線によって形作られた猫たちが、

幻想的なファンタジーの雰囲気を存分に醸し出しているし、

子どもたちに親しみやすさを与えるという意味で実に素晴らしい。

(あれがリアルな人間の表情だったら、きっと小難しくなってたに違いない)

 

何より自分が度肝を抜いたのが音楽である。

この作品が自分にとっては初めて

細野晴臣という偉大な音楽家との出会いだったわけだが、

まさか音楽で宇宙や天上の世界を表現できるなんてと、

子どもながらに驚愕したことを今でも覚えている。

メインテーマなんて銀河宇宙空間そのものだし、

巨大な黒い塊となってジョバンニの眼前に突如現れる銀河鉄道

軋みを上げながら迫ってくる様を、まさに生々しく音にしてしまったり、

何より宮沢賢治の世界をこんな風に音楽にできるだけでなく、

映像に打ち勝つでも撃ち負けるでもなく、

一枚岩のようにシンクロして、

1つの総合芸術としての映画作品として昇華していることが

まさに奇跡としか言いようがないのである。

 

そして最後のシーン。

細野さんの調べに乗せて、

常田富士男さんによる『春と修羅』の序文の朗読。

もうこのエンディングが、脳裏にずっと焼き付いていて、

この文章を何度も何度も反芻して、答えの出ない答えを求めて、

その意味や解釈を思考するというのが、

もうライフワーク?のようになっていて、

これが自分の原風景の一つ、思考の原点なのです。

 

下手をするとトラウマになりかねないような作品なのですが

ぜひ、文学や宮沢賢治の世界に触れてほしくて、

長女も一緒に連れていきましたが、面白かったようで、

難しいところもあるけど、また家で観たいと言っていました。

 

終演後は、塚口と言えばの名店タントさんへ。

ここも子どもの頃、母親によく連れて行ってもらいました。

スパゲッティー専門店はよくありますが、

ここはナスとベーコンのスパゲッティー が名物で、

本当にシンプルなんだけど他に真似できない味なのです。

そして子供の頃、大人ぶって飲んでいたのが、タントパンチ。

サングリアのノンアルコール版のようなものなのですが、

これもメニューに健在で、大変おいしくいただきました。

 

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それにしても、

自分の幼少期へとタイムスリップするような不思議な一日、

それも娘とともにというのは、不思議な感覚でした。