記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

映画『嵐電』 at 出町座 (舞台挨拶付き)

先週の話。

少し前から『嵐電』という映画をやっていて、

ずっと気になっていた。

ポスターに大きく書かれた”嵐電”という

その文字づらがすでに大いに興味をそそり、

しかも最近特に注目している実力派俳優の

井浦新さんがこちらにまなざしを向けている。

これは観るしかない。

 

京都という町は、

それ自体が既にドラマチックな要素を内包していて、

町の佇まいだったり、そこに住まう人たちの息遣いだったり、

いちいちが絵になる(思わずそんなような気になる)。

なかでも、京都の西っかわを

ゆったりのったりと行き交う路面電車のある風景は、

とびきり味わい深い。

 

いきなりの余談だが自分も大学時代、

映画製作サークルに属していて、

嵐電を舞台にしたショートショートの作品を作ったことがある。

独特のゆったりとした時間や、

その時間に沿って流れる風景や暮らしの様に、

ついキャメラを向けたくなるのは実によくわかる。

 

本作は鈴木卓爾監督がメガホンを取り、

京都造形芸術大学の学生たちが参加する

「北白川派」によって制作され、

プロと学生、あるいは沿線の人達も参加して撮影された

とても地元に根付いた作品。

 

f:id:arkibito:20190628181506j:plain

 

映画は、嵐電が行き交う町の景色を舞台に、

主に3組の男女の心の交わりやすれ違いを描いてゆく。

何か特別大きな事件や出来事が起こるわけでもない

日常のやり取りが、

時にファンタジー的な描写も織り交ぜながら

丁寧に写し取られ、

ただ静かに登場人物たちに寄り添ってゆく。

 

心のどこかになにかひっかかったものを抱えたままの

井浦さんの所在無げなまなざしや佇まいの

圧倒的な存在感はさすがの一言。

あの深いまなざしはいったいどこまでを射抜いているのだろう。

 

そして、大西礼芳さんの独特の空気感。

自分の中心にしっかりとした芯はあるのだけど、

外の世界に対してそこに自信がいまいち持てずに、

ふわふわと浮遊しているような、

相反する心境が共存した女性が、

まるで役柄ではなく

大西さん自身ではないのかと感じられるくらい

極めて等身大の演技が素晴らしかった。

 

他の多くの役者さんは、

大学の映画学科に在籍している人たちで、

まだまだ青々しい演技ではあったけど、

それがこの映画では逆に味になっているというか、

フィクションというよりも青春ドキュメンタリーな

映画の雰囲気をうまく醸し出すことに成功している。 

またその青々しさは、京都の町の寒い冬の景色と

とてもよく合うのだ。

 

そして劇中に時折流れるあがた森魚の音楽が、

実に心地よく響き渡り、

いつまでも完結しない物語が、

どこまでも不完全なまま

嵐電の奏でるガタゴトに乗って、ずっと続いていく。

なんとも不思議な後味を残していく映画でした。

 

f:id:arkibito:20190628185039j:plain

 

せっかくの『嵐電』なので、

京都で観るのがよろしかろうと出町座にての鑑賞だったのだが

この日は舞台挨拶に、たくさんのキャストが勢ぞろい。

(残念ながら朝の回のサイン会は、完売で参加ならず)

鈴木監督、井浦さん、大西さんをはじめ、

みなさん、作品に対する熱い思いや京都愛を語っておられました。

このキャスト陣スタッフ陣、

きっとめちゃくちゃ仲がいいんだろうなあというのが

はっきりわかる一体感でした。

 

f:id:arkibito:20190628185527j:plain

f:id:arkibito:20190628185804j:plain

 

f:id:arkibito:20190628185844j:plain

 

井浦さんには、今回もここぞという唯一のチャンスで

絵をお渡しできました。

日曜美術館の進行をずっとされていて

すごい聡明で感性のある人だなあと気になっていて、

数々の映画やドラマでも佇まいだけで

すでに絵になる存在感を発揮されていて注目していました。

今年に入って、震災ドラマや朝ドラなどで

ますます気になっていた矢先に、

こんなチャンスがめぐってくるなんて。

実際の井浦さんは思ったよりも背が高く、

ばりばり役者のオーラが漂っていました。

 

f:id:arkibito:20190628130936j:plain

f:id:arkibito:20190621124748j:plain

 

京都”きんじよ”めぐり

週末のこと。

午前中に京都に用事があるので上洛したのだが、

色々あって、夕方まで待機。

一旦大阪に帰ってもまたとんぼ返りになるだけだし、

半日ほど京都で暇をつぶさないといけなくなった。

急に時間ができても、特に行きたいところもないし、

どうしよう???

 

とりあえず今月はまだ一度も運動らしいことをしていなかったので

サクッと大文字山に登ってみる。

せいぜい30分程度の道のりなのだが、

久しぶりの山歩きはだいぶん鈍っててヘロヘロ。

この日は特に蒸し暑くって、ただ立ってるだけでも

汗がドバドバ出るくらいだったのもあるけど。

この時期の低山はもう命取りだなあ。

 

f:id:arkibito:20190628112733j:plain

 

下山して、ぶらぶらと出町柳まで戻り、

そこから下って、神宮丸太町の國田屋さんで生大を。

ここのビールはいつ飲んでも最高に旨い!

 

f:id:arkibito:20190628132724j:plain

 

で、あてどなく御所をなぞりながら歩いていると、

ちょうどカリルさんが行列もなく空いていたので飛び込む。

ここはかの松本隆先生も御用達の京都の名店です。

今月のカレーはエビレモン。旨し。

 

f:id:arkibito:20190628135941j:plain

 

店を出て、さらに西へ。

堀川通をまたいで、拾得さんのある筋へ。

ここに今年3月に新しい本屋さんがオープン。

元ミシマ社のTさんが独立して誕生した待賢ブックセンターです。

ずっと行こう行こうと思っていながらも、

なかなかこのエリアまで足を延ばすことがなくやっと来れました。

お久しぶりですとご挨拶して、お邪魔します。

さすがTさんの目利きでセレクトされた本はどれも魅力的、

駄菓子屋、ちょっとしたおもちゃなんかも置いてあって、

さながら地元の駄菓子屋的な佇まいはええですなあ。

末永くこの地に根付いて、子どもからお年寄りまで、

誰もがふらっと訪れるような止まり木になってほしいですね。

 

f:id:arkibito:20190628142220j:plain

 

まだまだ時間が余っているのだが、

この炎天下ですでに結構歩いてて、汗だく。

特にこの日の京都は本当に湿度が高くて参りました。

ということで、ひとっ風呂浴びに、湊君のサウナの梅湯まで。

堀川下立売から清水五条までは歩いたらなかなかの距離だけど、

なにせ今はとにかく時間が余っているので、

ダラダラと町を散策してネタ収集もしつつ歩いていきます。

もう、熱中症寸前で、ようやくたどり着きます。

流石にサウナは遠慮して、普通の風呂と水風呂とを交互で

身体を冷ましてスッキリ!!

 

f:id:arkibito:20190628165154j:plain

 

そこから四条河原町まで歩いて、

マキーノさんのとこのTRAVELING COFFEEで冷コー。

(残念ながらマキーノさんはお留守)

そろそろ暑さも和らいで、

のんびり鴨川を歩いて出町まで帰ってきました。

 

f:id:arkibito:20190628171326j:plain

 

そこから一仕事終わらせ、

ちょうどいいタイミングで出町座の映画にも間に合う(映画は別記事)。

終演後、そうだ、今日は金曜日だと思いだして、

そのまま「いんえいらいさん」へ。

AYAKOママと円卓さんと、おなじみの常連さんたちが、

いつものようにまったりほっこりの空間。落ち着きますなあ。 

この日のメニューは、先日の夏至カレーの続き。

おいしゅうございました。

 

f:id:arkibito:20190628212143j:plain

 

ということで 、ほぼ一日蒸し蒸しの京都を歩き回って、

いつもの「きんじよ」めぐりでした。

夏至カレー

先日は夏至でした。

ということで夏至カレー。

夏至の日にカレーを食べる」

ただそれだけのことなのですが、

新国民的行事となるべく、

関西を中心に色々な方が普及活動をされております。

実は、去年の水間鉄道でのイベントも現地へ行ったのだけど、

時すでに遅しでカレーにありつけずでした涙。

 

今年はいつも美味しいお料理を提供してくれる

円卓さんが音頭を取って、クラファンなどもされていて

さらに盛り上がりを見せつつあります。

今年の会場は京都祇園の「Y gion」さんで

夏至カレーナイトを開催。

当初は参加できそうになかったのだけど、

色々なスケジュールの変更などで、

たまたまその日京都だったので、

お邪魔することができました。

 

f:id:arkibito:20190622162101j:plain

 

用事を終えて、16時くらいに会場にお邪魔。

沢山のスタッフさんが、大量のカレーと格闘中でした。

前日まで仕込みをされていた円卓さん、

これだけの量さぞかし大変だったでしょう@@

カレーは欧風カレーとキーマがありましたが、

欧風をチョイス。

ビールも一緒にいただきつつ、

ワイワイガヤガヤとする会場の盛り上がりと

東山の景色を堪能しました。

 

f:id:arkibito:20190622162345j:plain

 

f:id:arkibito:20190622162449j:plain

 

帰宅後、この日の晩御飯は奇遇にもカレー。

ということで、わが家で追い夏至カレー。

 

f:id:arkibito:20190622195831j:plain

「細野晴臣×松本隆×安珠」 安珠写真展 記念トークショー

写真展に引き続いて記念トークショーへ。

主役の安珠さんに加えて、

会場音楽を担当された細野さんと、

言葉を供された松本さんを加えた

スペシャルなイベントは、当然プレミアチケット。

是が非でもとチケットを手配して、10番ゲットできたので

最前列で拝聴することが叶いました。 

 

f:id:arkibito:20190616182514j:plain

 

まずは安珠さんがご登壇され、

写真展のコンセプトなどを説明されます。

世界的に活躍されるモデルさんだし、

写真展の作品たちも、エネルギーがビンビンと伝わるような

迫力あるものたちばかりだったので、

てっきり、すごいオーラを纏った、

ちょっと近寄りがたいようなクールビューティーだと

勝手に想像していたのですが、

実際はとっても気さくで、聡明で、チャーミングな方でした。

なるどほ2人の御大がゾッコンなのもうなずけます。

 

それから安珠さんの招き入れで、お2人もご登壇。

いつものようにシックな装いに、

ハッとするような鮮やかなニューバランスのスニーカーで

風のように軽やかに現れる松本さん。

一方、細野さんは、先日のアメリカツアーから帰って間もなく、

まだ時差ボケ真っ最中だそう。

安珠さんに「トークの間に、寝ないでね!ちゃんと起きててね!」って

言われて、細野さん「僕にとって睡眠は気絶だから」と。

会場大爆笑。

恐らくこの日一番のホットワードでした。

 

それにしても、それにしても、

細野さんと松本さん、

それぞれがもはや現代日本の歴史を

築き上げてきた超レジェンドで、

本当に実在するんだと思っちゃうくらいの人たち。

しかも、あの伝説の「はっぴいえんど」のメンバー同士だった2人が

同じステージに上がっていることがもはや奇跡的なのに、 

その場所に立ち会うことができるなんていうのは、

もう、盆と正月がいっぺんにやってきても

まだお釣りが足りないくらい笑

 

ゆるゆるとトークが進んでいくのだが、

とにかく仲の良さがにじみ出てる、

というよりも絶賛大放出してて、

安珠さんが思わず

「松っちゃん(松本さん)は本当に

細野さんのこと大好きだから!好きすぎるから!」

と茶化すと、

心底嬉しそうにほくそ笑む松本さん。

そしてその様をまんざらでもない様子でにんまりする

細野さんもまた松本さんのことが大好きで。

50年以上にわたって、激しい時代の最先端で切磋琢磨してきて

いまだにこの仲睦まじさ!!

そして、それはここにはいないけれど

大瀧詠一さんや鈴木茂さんも含めてそうで、

本当に”はっぴい”な人たちが、

変わらぬ絆で繋がっているんだなあ。

 

f:id:arkibito:20190616204348j:plain

 

トークの話題は多岐にわたって、

しかも生きるヒントになる金言がいくつも飛び出す感じで、

聴いている皆さん、ナルホド~と思わず声に出てしまったり、

それらを逃すまいと必死でメモを走らせる人たちもたくさんいました。

そして普段はなかなか聞くことのできない

貴重かつ豪華な昔話も聞け、

ちょっとした歴史の証人気分。

ということで順不同かつおぼろげながら、

できるだけここに書き残して置こうと思います。 

 

写真展のテーマが、

目には見えない平安京を現代の京都の風景に甦らせようという 

大胆かつ極めて創造的なチャレンジだったのですが、

目には見えないが大切なものってたくさんあって、

松本さんにとってのそれは何?て聞かれて、

「やっぱり愛だね」って、さらりと言ってのける。

そんなのが、ばっちり様になるのは、

何千もの愛の物語を、豊かな言葉で紡いできた

松本さんしかいないでしょう。

しかし、試行錯誤しながら誰よりも色々な愛を形にしてきた

松本さんが続いて、

「でも愛って何だろうね。

こんだけ愛について書いていても全然わからない」

「わからないからずっと書き続けてるっていうところもあって」

と、まさしく素直におっしゃられる。

うわ、すごい!

むしろ、わからないということに愛の真理があるような気がするし、

目に見えないだけでなく、言葉にすらできないようなものを、

単純に現象として受け入れたるのではなく、

どうにかその輪郭だけでもおぼろげにでも

形にすることができないか、

というたゆまぬ挑戦や努力それ自体が

もはや愛なのかもしれなくて。

特に表現の世界では、

それが前へ進むための無限大のエネルギーとなるのは間違いない。

 

そういえば、音楽も風も目には見えない。

お2人が人生をかけて追い続けているものは

つまりそういうものなのだ。

僕らは彼らの壮大で終わりのない思考の探検の記録や記憶を

ちょっとだけのぞき見させてもらって、

愛や夢について少しは知ったような気でいたりするが、

松本さんの「愛って全然わからない」という言葉は、

だからこそ、とても強烈な一言だった。

でも、その「わからない⇒わかろう」がきっと、

いつでも我々を導く羅針盤となるのだろう。

 

f:id:arkibito:20190616204352j:plain

 

それにしても時代や商業的な要因、

その他多くの要素に左右される表現の世界にあっても

長くそこに留まり続け、

しかも常に最前線に陣を構えてこられた2人の魅力は

いわゆる”京都らしさ”と称される、

この街だけが持ちうる魅力と似ている。

つまり京都という街が、1200年の長く激しい歴史の中でも、

一向に京都らしさを失わないどころか、強固に保ち続け、

しかも鎖国的にではなく、むしろ新しいものを

どん欲なまでに取り入れた結果、それを実現し、

今では世界でも類を見ない唯一無二の文化様式を確立し、

世代国内外問わず魅了する存在であるように、

松本さんの紡ぎ出す言葉の世界や細野さんのサウンドには、

時代を超越し、流行り廃りに左右されない不変性がある。

つまり、いつどの時代の作品を切り取ってみても、

またどんな世代が作品を汲み取ってみても、

誰もが共感し、自分の原風景や青春と重ね合わせることができ、

なおかつ色褪せるどころか、常に新鮮で最先端を行っている。

実際彼らは現代日本の音楽界の歴史そのものなのだが、

そこにはやはり、「やりたいものを続ける」という姿勢を

貫いたからこそ生まれるものなのだと改めて感じた。

 

松本さんが「ブレないよねえ」と笑うと、

細野さんは「いやあ、ブレないというか、

右へ行ったり左へ行ったりブレてはいるんだけど、

結局後になって振り返ってみれば、

まっすぐな道を歩いてきていて。

後悔しないようにやってるだけ。」と。

時代の風を敏感に感じ取り、

柔軟に新しいものを取り入れながらも、

芯の部分では自分らしさを損なわず、

むしろありとあらゆるものを積極的に吸収して、

それらを自分色に染め上げてしまう。

新しいものになびいたり、妥協をしたり、

飲み込まれることのない、確固たるコアがあり、

そこについて、ある意味自信過剰ともいえる絶対的な自信がある、

そしてその自信について周りが認めざるを得ない。

お2人の強みはそこなんだろうと思う。

 

変わらないと言えば、

松本さんが「中身はいまだに少年のままなんだよ」と。

すると、かぶせ気味に細野さんが「わかるよ」と合の手。

そのかぶせ具合がまた絶妙な具合で、

この短いやり取りではっきりとわかる2人の絆と

何よりも冷めやらぬ創作意欲。

これからもまだまだ色々な世界を見せてくれそうでワクワクします。

 

話を京都に戻せば、細野さんが

「世界へのドアはきっと京都にある。東京にはない。」とおっしゃり、

松本さんが「京都は、古典とパンクが同居してる」と激しく同意。

はっぴいえんども、最初は京都でウケて、

京都のライブの時に、岡林さんに俺より目立つなっ!!と言われたそう笑

京都話では高田渡さんの話も飛び出しましたが、

息子さんで、細野さんのサポートをずっとやっている

名ギタリストの高田漣さんは、ちょうどこの日、味園ユニバースでライブ。

重なっちゃって行けなかったのは残念!

 

さらに細野さん「音楽で言えば、世界が日本化してる感じがする」と。

先日のニューヨークやロスでも、

向こうの若い世代のファンが、

日本語で「風をあつめて」を目の前で歌ってくれてと嬉しそうに話される。

お2人とも、リアルタイムで知らないような若い世代や、

海外の人達が、はっぴいえんど

再発見、再評価してくれるという現象を

とても面白がっているようで、とても話が弾みます。

もう半世紀も前に、世界の隅っこの小さな島国で、

わずか3,4年ほどの活動期間だったバンドが、

改めて脚光を浴びて、新しい解釈や価値を

今なお生み続けているというのは本当に奇跡的なこと。

それは、まるでこっそりと引き出しの奥に隠しておいた宝物を

忘れたころに見つけたような感じに似ているのかもしれない。

 

f:id:arkibito:20190616204409j:plain

 

さてさて、御大の豊富な話題に臆するどころか、

あっちこっち拡張し続ける内容を

うまくテーマにフォーカスを絞りながら、

話をまとめてゆく安珠さん、流石です。

途中、細野さんが、写真展に合わせて作曲した

あの世、この世、天、地、宇宙を模した音楽を流しながら、

松本さんの詩の朗読も披露していただきました。

(「時のミルフィーユ」なんてフレーズは松本さんにしか出せない!!)

 

そして安珠さんからはとても素敵で大切な言葉が。

「大体越えられない壁って、自分自身で作っちゃってることが多い。

自分で壁を作っているのだから、自分が壁を壊せばいい。」

「ただ、嫌なものには適度に距離を取って、離れちゃったっていい」

 

安珠さんもモデルの世界を脱して写真の世界へと転身した人で、

松本さんも、一時作詞の世界を10年ほどお休みしていた時期があり、

細野さんも商業的な音楽から距離を取って、

アンビエントワールドミュージックへと傾倒したり。

(細野さんは元来トロピカルダンディーだから放浪癖があるけれど)

3人とも、ほどよく自分と世界との間合いを取りながら、

前へ進んできた方々で、だからなおさら説得力のある言葉でした。

 

で、この安珠さん、とっても面白い方で、

お会いしたことのない松本さんの妹さんの夢を見て、

ご本人しか知らないような話を知っていたり、

細野さんがロスで大瀧さんの話題をしていた時に、

安珠さんが大滝さんの夢を見て、細野さんに電話をかけたり、

何というタイミング、何という偶然の一致という、

なにか霊感めいたものがあるのか?と

御大もびっくりなことが多いらしい。

多分、きっとこれも目には見えない

赤い糸かなにかで結ばれているようなことなのでしょう。

この日もきっと大瀧さんも

どこか客席の空いているところにおられたかもしれないなあ。

 

スピリチュアルな話題と言えば、

熊野や吉野といった古の神話が息づく地のお話もたくさん。

熊野本宮大社の大斎原(大洪水以前まで元々本殿があった場所)は

全てを生み出す地母神的な形をしていて、

細野さんはそこでパワーを感じたそう。

松本さんは神倉神社の御燈祭でなんと松明を抱えて、

あの急峻な石段を下りられたそうです。すごい!

お2人とも、日本の古い神話にとても関心があると同時に、

それら文化自然的な信仰とも相通じる

ケルトアイルランドの文化にも

とても興味を持たれているご様子。

自分にとってはそんな神々の話をしているお2人の存在が

もはや神なんですけど!笑

 

他にも細野さんのタバコ辞めない宣言や、

松本さんの能舞台とのコラボレーションのお話

(ただいま「火事場の馬鹿力」で締切に追われているそうです笑)、

細野さんが堤監督のお仕事の依頼をお断りした話をすると、

松本さんが「僕だって嵐の作詞を断った」と負けず嫌いを発揮されたり笑

終始、仲睦まじく、

アットホームなトークショーも、あっという間にフィナーレ。

 

最後には、安珠さんのいきな計らいで、

フォトセッション。

3人とも最後の最後まで笑顔!!

そして参加者全員での集合写真まで!!

最高のひと時でした。

  

f:id:arkibito:20190616204436j:plain

 ↓このphは拝借(都合が悪いようでしたら削除します)

f:id:arkibito:20190625113056p:plain

 ↓このphは拝借(都合が悪いようでしたら削除します)

f:id:arkibito:20190625113506p:plain

 

イベントが終了し、御三方が退場され、

少し間をおいて参加者も退室。

ここから一世一代の大博打を。

実は4月の神戸の「風街神戸」のイベントでお渡しできなかった

プレゼント(といっても、いつもの自作の似顔絵ですが)を

まず無理、基本無理、絶対無理とわかっていながらも、

実はこの日も持参していて、お渡しするには、

このわずかのタイミングしかチャンスがない。

大急ぎで部屋を出ると、

部屋の入り口を少し過ぎたところにまだいらっしゃった!!

もうすでに若干の人だかりができているが、

ほとんどの人はお2人に気付いていない。

もうこのワンチャンス(一生に一度のチャンスといってもいい)に

賭けるしかない。ここで躊躇したら多分一生悔やむ。

ええいままよ!!いざ突撃!!

 まず手前にいらっしゃった松本さんにお声掛けし、

以前にツイッターにあげた似顔絵をいいねしていただき、

フォローもしていただいてますと、

決して決して怪しい者じゃないことを告げて、

絵をプレゼント。

「名前は?」と聞かれたので「●●です」と。

それだけのやりとりだけでも思わず声が震えてしまいます@@@

そりゃそうです。

細野さんの絵もあって、

でも細野さんがもう楽屋の手前まで進んでおられて、

これはもう無理だ…間に合いそうもない…

でもせめて、松本さんにお渡しいただくようにお願いしてみると、

「いいよ、(直接)持っていきな」と、

ありがたいにも程がありすぎるお言葉をいただきました。大涙。

差し出がましくもお言葉に甘えて、細野さんの方へ向かい、

楽屋の2歩手前でお声をかける。

「●●と申します。すみません。お土産に絵を描いてきたのでどうぞ」

きっとそういうようなことを言いながら

(というのも、もう頭パニック状態なので正直何を口走ったか…)、

絵差し出すと、

「ああ、この絵か」と一言。

実は、今年1月の神戸のコンサートで、

一度絵をいつもお世話になっているプロモーターさんに託したことがあり、

 きっと、それをご覧になられたのかもしれない。

(ちゃんと届いていた!Sさんに感謝!)

で、気づけば自分も楽屋の中に入ってしまってて、

これはさすが駄目だと思い、すぐに退散しなければ。

でもせめてお写真だけでもと、お声をかけると、

「どうぞどうぞ」と言っていただき、1枚パシリ。

いやもう、感無量です。

長年ずっと追いかけていた、

最も会いたい人、憧れの方とついに出会うことができたのです。

おかげさまでいろいろな方とお会いしたり、

ご一緒する機会に恵まれているのですが 、

細野さんと松本さんは別格中の別格。

嬉しすぎて昇天してしまいそうです。

本当に奇跡が起きました。その奇跡を逃さなかった。

ずっとずっと思い続けていれば叶うこともあるのだ。 

 

f:id:arkibito:20190616204637j:plain

 

美しき天女と2人の神様に会いました。

そんな奇跡な夜でした。

安珠写真展「Invisible Kyoto 目に見えぬ平安京」

日曜日は京都へ。

美術館えきKyotoで開催されている

安珠さんの写真展「Invisible Kyoto―目に見えぬ平安京― 」の観覧と、

記念トークショーへ。

 

安珠さんは学生の頃に”モードの神童”ジバンシーにスカウトされ、

オートクチュール専属モデルとして世界的に活躍され、

のちに写真家に転向、物語性のある作品をいくつも発表し、

現在は京都をテーマに撮影をされている女性写真家さんです。

 

f:id:arkibito:20190616175113j:plain

 

今回のテーマは、

「Invisible Kyoto―目に見えぬ平安京― 」ということで、

現代の京都の街並みの表層、

その裏側に脈々と流れている

目には見えぬ平安の文化様式や美意識たちを、

写真を通じて浮かび上がらせるという、

極めて高度な想像力を要する試み。

その作品たちの魅力を最大限に引き出すために、

細野晴臣さんの音楽と、松本隆さんの言葉が

演出として味付けされているという、

なんとも贅沢な作品展です。

 

f:id:arkibito:20190616171051j:plain

 

現在の日本の文化様式の骨格を辿れば、

平安時代にそのルーツを見ることのできるものは多い。

 

平安以前までは、自然という言葉も概念もなく、

人の営みは自然と一体であった。

それが、月を愛で、花を愛で、

人間がそれらと相対する文化が芽生えたことで、

人間の対照として自然が生まれた。

 

まだ同時期に、

最澄空海によってもたらされた中国仏教の普及は、

陰と陽、天上と地獄といった観念的な世界観を形づくることになり、

それらを模した様々な文化・芸術が花開いた時代でもある。

 

そして日本古来からのもっとも重要な理念の1つとして、

もののはあれ=無常の世界がある。

美しい花は、その短い命を全うし儚く散るからこそ美しく、

川の流れは2つとして同じようにはならないからこそ尊く、

月は欠け、雲に隠れるからこそ、愛おしく感じる。

平穏で豊かでゆとりある時代だからこそ、

めくるめく四季の移ろいの中での営みの些細な美しさを、

文化にまで昇華させることができた。

「花散らで 月は曇らぬ よなりせば ものを思はぬ わが身ならまし」 

西行が詠んだ一句こそが、

日本の理念の1つの結晶である。

 

 f:id:arkibito:20190616171427j:plain

 

現代の京都の町の在り様に、

これら平安の息吹きは、確かに、

人の営みのそこかしこに深く存在し続けているが、

それを可視化するということは並大抵のことではない。

しかし、幾つもの想像力を

複雑かつ丁寧に組み合わせながら、

その残像をどうにか朧気にでも

浮かび上がらせることはできるかもしれない。

そういった創造的な挑戦の野心や苦心が

見る者の心を捉える。

 

いくつかの発光を念写し、

あの世、この世、天、地、宇宙を模した音を重ね合わせる。

そして丁寧に選りすぐられた言葉によって

それらを強く結び付けた時、

どこからともなく黄泉の化身ジャコウアゲハが現れて、

我々を千年の都の時空の狭間へといざなう。

自然が大胆不敵に演じる儚き一瞬の美しさ、

地獄の門の先に末恐ろしく広がる闇、

奇々怪々、もののけたちの戯れ、

まだ人間界のすぐ真隣に居を構える神々の気配、

京の都はもはや、宇宙の中心となり、

万物のエネルギーの一切合切を抱え込む。 

平安の世が現代の京都に甦る。

 

f:id:arkibito:20190616173406j:plain

 

実に創造的で、エネルギッシュな作品展でした。

記念トークショーについては別記事へつづく。

2018Gパトの夏 白馬3日目 雷鳥フィーバーと弾き語り

3日目の朝。

快晴。清々しいことこの上なし!!

今日は空気も澄んでいるのか、

黒部の深い谷の向こうの立山・劒はもちろんのこと、

遥か奥には青空に刺さる槍のトンガリまで見えるし、

八ヶ岳や富士山といった主役級が軒並み。

もちろん富山湾もしっかり見えてます。

この景色が職場って、改めてスゴイ。

からしっかり食べて、しっかり出勤。

 

f:id:arkibito:20180730054549j:plain

f:id:arkibito:20180730064052j:plain

f:id:arkibito:20180730065556j:plain

 

まずは、先日、お邪魔した頂上小屋で、

長野Gパトさんが大雪渓ルートのところで

お花の案内をしているというので、お勉強も兼ねてお邪魔する。

こちら側は本当にお花畑で、

色々な花が我こそが一等賞!とばかりに

めいいっぱいおめかしをしていました。

 

f:id:arkibito:20180730073634j:plain

f:id:arkibito:20180730083635j:plain

f:id:arkibito:20180730085417j:plain

 

それから、一度稜線に戻り、旭岳の方面へ向かいます。

鞍部にはでっかい雪田がいまだに大きく横たわっております。

斜度はそれほどないので、キックで上がっていきます。

と、白馬山荘の方からものすごい勢いで走ってくる人がいて、

よく見ると小屋のスタッフ(名前忘れたけど外国の方)が、

半袖半パンで、猛ダッシュで雪田を駆け上がっていきます。

めっさ速い!!

 

f:id:arkibito:20180730093334j:plain

 

自分たちは雪田を抜けて、ガラガラの斜面に取り付きます。

とりあえず清水岳まで行く予定で進んでいたのだが、

途中で、生きものたちとの遭遇。

はじめは岩ヒバリだけかと思ったら、

なんと雷鳥さんたち続々と出てくる。

彼らはあんまり人間を怖がっていないようで、

油断しまくって、どんどん近くへやってくる。

こんな至近距離は初めて。

しばらく時間を置いて、茂みからヒナ1羽2羽3羽4羽5羽。

続々!!

いやあ、もっと警戒して!!

雷鳥の観察と記録も我々の仕事の一つなので、

しばらく滞在。

 

f:id:arkibito:20180730094841j:plain

f:id:arkibito:20180730100411j:plain

f:id:arkibito:20180730100606j:plain

f:id:arkibito:20180730101114j:plain

f:id:arkibito:20180730101141j:plain

f:id:arkibito:20180730101231j:plain

 

こんな至近距離で、これだけの数の雷鳥さんは

まあめったいないので、

思ったよりも時間を取ってしまい、

清水岳へ向かうのはあきらめ、

お昼ごはんに戻る。

 

f:id:arkibito:20180730101923j:plain

f:id:arkibito:20180730092408j:plain

f:id:arkibito:20180730113751j:plain

 

午後からは、ちょっと足を延ばしてみようとなり、

三国境を越えて、小蓮華岳まで行くことに。

本来は三国境以降のエリアは新潟県に属していて、

管轄外ではあるのだけど、

白馬岳へのメインルートの1つで同じ山域なので、

そこも事実上カバーする必要があるので。

それと午後半日で、行って帰ってできる範囲も限られるので。

 

途中にはトウヤクリンドウが咲いていて、

山の上は早くも秋の訪れ。

少しガスってきた岩場を詰めていくと、

カラカラの斜面にはそこかしこにコマクサのピンクが。

こんな痩せた土で、厳しい気候条件にさらされる場所で、

懸命に根を張って、花を咲かせている。

とっても健気な存在だが、

我々人間なんかよりもずっとずっとたくましくもある。

 

f:id:arkibito:20180730130255j:plain

f:id:arkibito:20180730130750j:plain

f:id:arkibito:20180730134311j:plain

 

三国境を過ぎると、山肌は白骨を敷き詰めたような

カラカラの石が連なる荒廃した風景へと変わる。

いくつかの小ピークをやっつけて、

宝剣の刺さった小蓮華岳にたどり着く。

ここは栂池~白馬大池と登ってくるメインルートの

格好の休憩スポットということもあり、

よく見ると岩の間にたくさんのゴミがたまっている。

それらを丁寧に回収していく。

 

f:id:arkibito:20180730140216j:plain

f:id:arkibito:20180730142054j:plain

f:id:arkibito:20180730142109j:plain

f:id:arkibito:20180730143535j:plain

 

そろそろ小屋へ戻らないといけない時間帯となり、

引き返します。

安全や、小屋への心配も考慮して、

トロールはだいたい15時くらいには終了し、

16時くらいには小屋や戻るようにしているのだが、

こんな時間でもまだ、下から登ってくる登山客は後を絶たない。

(なかには20時過ぎて小屋に駆け込んでくるようなのまでいる)

遅くても14時15時には小屋に到着するように

登山スケジュールを立てるというのがマナーというか常識なのだが…

それは山の天気は午後からの急な天候悪化が予想されるし、

暗くなってからの山歩きは危険が増す。

時間が後手後手になるほど山登りは難しくなる。

それに小屋の食事や宿泊の段取りだって、

そういうスケジュールで組まれている。

それを崩せば他のお客さんにも迷惑がかかる。

山では誰もが協力しないとやっていけない。

だから早出早着は山登りの基本の基本。

 

すでに大荷物を小屋にデポしているし、

山頂付近までのもろもろの状況を頭に入れたうえで

この辺りまで出張ってきている我々とは違って

遅く上がってくる登山客はそういったことを全然考えていない。

それは単純に遭難や事故のリスクを自ら上げることでしかない。

スタート時間がわからないからあれだけど、

だいたい今この時間に、ここまでしか登ってこれていない、

ということだけでも、余裕のないお客なのだから、

そういう人ほど、もっとリスクを考えた上で、

余裕のあるまっとうな登山計画を立てないといけないのに。

まあ、自分たちは直接注意する筋合いもないので、

ただにこやかにお気をつけてとしか言えないが。

 

f:id:arkibito:20180730143923j:plain

f:id:arkibito:20180730152734j:plain

 

16時ごろに小屋に無事に帰着。 

この日の夕食はちょっと特別。

翌日が診療所に駐在している昭和大学の学生さんたちの

交代日なのだそうで、その送別のパーティーに、

一緒にどうですかと招かれているのだ。

本当に我々チームはイベント遭遇率が高く、

なんというラッキー♪

レストランを貸し切ってみんなでパーティーです。

料理も豪勢で、ケーキまで振舞われて、

思わずバカ食いしてしまいました。

 

f:id:arkibito:20180730200823j:plain

f:id:arkibito:20180730202105j:plain

f:id:arkibito:20180730201737j:plain

 

余興の出し物もあって、ダンスやピアノの演奏会、

宮嶋さんからのご挨拶など盛りだくさん。

いつもギターを貸してくれるY君も一曲披露してました。

なかなかフォーキーで渋かっちょええ~。

 

f:id:arkibito:20180730205125j:plain

f:id:arkibito:20180730210815j:plain

f:id:arkibito:20180730212619j:plain

f:id:arkibito:20180730214113j:plain

 

で、なんか無茶ぶりで、自分も1曲弾くことになったのだが、

数日前にやってきた新参者の身で、

寄せてもらってるだけでもありがたいのに、

こんな出しゃばってよいのかしらん。

それに、こんな大勢の前で、いきなり御指名を受けて

ただただビビるしかない。

とはいえ、せっかくでもあるし、

場が白けてしまってもいけないのでなんとかステージへ。

若い子らに流行りの歌なんて知らないけど、

全く知らない歌も盛り上がらないので、

大体の人が知ってるであろうSpitzの『チェリー』をば。

途中、めっちゃ間違ったのだけど、

そこからみんなが一緒になって歌ってくれたので、

どうにか挽回をして、大盛り上がりで演奏を終えました。

いやあ、みんな優しい!!ありがたい!!

次の日から、ギターのGパトさんとみなさんから呼ばれるようになり、

スタッフさんとの距離がググっと近くなって、

白馬での暮らしの中で大きなターニングポイントになりました。

いやああ、緊張したけど、楽しい夜でした。

 

f:id:arkibito:20190531162055p:plain

 

つづく・・・

雨の東京もうで

日曜月曜の出張の仕事の合間のその他のことを順不同で。

あいにく2日とも雨で、

特に2日目は結構な土砂降り。

雨も嫌だけど、相当に寒くて、参った。

 

f:id:arkibito:20190610074302j:plain

 

奥さんへのお土産にと、わざわざ尾山台まで遠征して

フランス菓子の名門中の名門「オーボンヴュータン」へ

クッキーを買いに。大好きなんですよ。

久々だったので、移転されているの知らなかったけど、

どうにかたどり着く。

もう、ここの焼菓子以上に美味しくて、

かつ洗練されたものはありません。

ショーケースの中はまるで宝石箱のようで、

惚れ惚れしてしまいます。

めったに来れないので、ちょっと奮発して買ってしまいました。

帰宅奥さん大喜び。

 

f:id:arkibito:20190610093821j:plain

 

f:id:arkibito:20190610094209j:plain

f:id:arkibito:20190610190232j:plain

 

2日目の合間に、お昼ごはんとして、黄レンジャー出動。

大阪はスパイスカレーブームがぼちぼち安定してきた頃ですが、 

東京シーンはまだまだノビシロがありそう。

そんななかでも今おそらく一番注目を浴びているのが

吉祥寺のハモニカ横丁にある「ピワン/piwang」さん。

ちょうどタイミングよく午前の用事が終わり、 

開店2番手ゲットです。

わずか5席しかない激狭店舗とは聞いていましたが、

マジでここよりミニマム最小限のお店はないです!

塩尻駅のあの立ち食いそばにも負けない)

ご主人は、もう1歩2歩もなく体を左右に転換するだけの

小さな小さな厨房で忙しく作業して、

我々お客はそれを取り囲むようにして5人ずつ着席。

着席と言っても、もう膝がぶつかるので、

ほとんど立ちスタイル状態。

メニューはチキンカレーと本日のカレーの2種に、

生姜の佃煮(この付け合わせがなまら旨い!)のみ。

大抵は、いわゆる写真映えする

2種類のモヒカン盛りを注文されるようなのだが、

あんまりビジュアルとかいいんで、

チキンカレー大盛り。

ドカンと敷き詰められたターメリックライスに、

ピンクの漬物がどん。

別の器で、アッツアツ、というか煮えたぎるような

ルーがサーブされます。

ルーというよりもスープに近いほどシャバシャバ系。

これがまあ、美味しい。

ライスとの相性も抜群で、あっという間に完食してしまいました。

ごちそうさま!!

なるほど、東京のスパイスカレーも侮れない。

退席するときは反対側の通路の裏口から抜け出ます。

ロケーションも含めてアングラ感満載で、なるほど面白い。

 

f:id:arkibito:20190610113439j:plain

f:id:arkibito:20190610111819j:plain

f:id:arkibito:20190610120759j:plain

 

カレーにすっかり満足しましたが、

せっかくの吉祥寺。(吉祥寺ってなんとも住みやすそうな街だなあ)

ということで、念願のキチムさんへ。

ここはクラムボン原田郁子ちゃんの妹で、

写真家でもある奈々さんがオーナーをされている

カフェ兼イベントスペース。

お昼直後だったので、コーヒーだけ。

なんとも居心地の良い空間でした。

奈々さんとはちょっとだけお話しできました。

郁子ちゃんとはまた違った落ち着いた佇まいの方でした。

 

f:id:arkibito:20190610112907j:plain

f:id:arkibito:20190610123954j:plain

 

今回はほぼほぼ中央線沿線での動きだったので、

せっかくなので荻窪の本屋Titleさんへ。

いつもながらに、駅から結構遠くて、

行き過ぎてないか不安になります笑

雨だったので、他にお客さんがおらず、

静かにのんびりと 本を探せました。

1冊だけ購入。レジにいらっしゃる辻山さんとちょっとだけお話。

前回来た時、たまたま黒坂麻衣さんの個展をやっていて

その儚くも力強い絵に一目惚れしてしまったのですが、

まさかあんなことに…と、二人でしんみりしてしまいました。

大阪なので滅多に来れませんが、

上京の折は、大体はお邪魔している大切な場所です。

 

f:id:arkibito:20190610133714j:plain

 

そして今回の東京のメインと言ってもいいのが、

いつも優しいナベちゃん。

今回もお世話になりました。

思えば、中学時代からの付き合い。長いような短いような。

住む場所も違えば、仕事も全然違うけど、

お互い、いつもこうやって笑顔で再会できてるってことは、

それなりに頑張って人生を送ってきたということなんだろうな。

 ラストオーダーまで盛り上がってから、お泊りさせてもらい、

寝付くまであれやこれやと話が咲く。

 

やはり、共通の経験や文化を共有しているから、

根底には同じ価値観だったり、

危機感だったりを持っていて、

やっぱりそうか、自分だけがそう感じているわけじゃないのだなという

安心感というか心強さを感じられる。

我々の世代は谷間の世代と言われていて、

右も左も老いも若きも

すべての世代や層の過渡期のど真ん中にいることで

相当苦労したり、翻弄されたりしてきたのだけど、

各世代や層のいいところも、悪いところも、

客観的に冷静に見てきたし、

アナログからデジタルへと移り変わるその様を、

一緒に切磋琢磨して道を転がり続けてきたから、

どっちかでもなく、どっちもを知っているという強みだったり、

結局自力で生き抜いていくしかなかった分、 

どうにでも潰しの効く実力を身に付けざるを得なかったことが、

今こうやって報われているという気がしてならない。

まあ最終的には個人的な考え方や境遇・環境によって

大きく違っては来るのだけど、

少なくとも谷間の世代に生まれたことが

2人にとっては無駄じゃなかったなあと。

しかし、もうわずか3つ下からは、

価値観の大きな崖が横たわっていて、

そこへの危機感や絶望感が困りものだったりする。

 

そして、自分たちは自分たちの意志で選択してきたことが、

それなりにまっとうな形として今はあるけれど、

この不透明な時代に、

いつ大どんでん返しが起こるともわからない。

だから、ちょうど節目に、

ナベちゃんは大きな挑戦に旅立つことにしたようだ。

正直、彼ほどの実力や実績があれば、

確かに東京じゃなくても日本じゃなくても、

どこでも通用するのはすでに実証済み。

少し寂しくはなるけれど、

彼が彼の選択で先へ進むことを誰よりも応援する。

一方、自分はというと、自分の築いたものを末永く続ける、

北極星のようにそこにとどまり続けようと思う。

留まり続けるといっても、それは歩みを止めることではなく、

世界が二歩進めば、自分もそれに合わせて二歩進まなければ、

同じ場所にとどまり続けたことにならず、置いて行かれるだけ。

だからキープするということも全然簡単ではなく、

地味だけど立派なチャレンジだと思っている。

自分とナベちゃん、最終的なアウトプットは、

まるで正反対だけど、根底に流れているスピリットや信念は

やっぱり一緒なんだ。

それを再確認できた夜だった。

またこの地球のどこかで、笑顔で再会しよう!

 

f:id:arkibito:20190609194523j:plain 

f:id:arkibito:20190609220559j:plain